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                <ミャンマーで今、何が?> Vol.82
                 
                2014.02.19
                 
                 
                http://www.fis-net.co.jp/Myanmar
                 
                 
                 
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                ■ナーギス台風ニモマケズ その4 
                  
                  
 ・01:素朴な疑問 
                  
                  
 ・02:OPK村のニッパ椰子産業 
                  
                  
 ・03:コンニャク問答 
                  
                                  
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                北極星と南十字星の間を点滅しながら人工衛星が斜めに横切っていく。そして流れ星が一瞬の命で消えていく。彼我の間にどれほどの時間の差が存在するのだろう。早朝の4時、そんなちっぽけで壮大なドラマが頭上で展開する。 
                  
                  
                Globetrotter(世界漫遊旅行家)が今ミャンマーを目指す。バックパッカーもやってくる。便利になったものだ。多分死をも賭したであろう、一昔前の松尾芭蕉に、そしてマルコポーロに思いを馳せる。冒険野郎の植村直己が、そしてリチャード・ブランソンが頭をよぎる。 
                  
                  
                流れ星ほどの短い時間だが、そんなことを考えさせてくれるのが、ここOPK村だ。今回はきな臭い話は一服して、再びOPK村のドキュメンタリーに戻りたい。 
                  
                  
                  
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                01:素朴な疑問 
                  
                  
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                シカゴでもニューヨークでも構わない。世界の商品取引所で取引金額が最も大きいのはなんといっても原油である。そこで質問である。それでは、第二位の商品は何であろう。 
                  
                  
                答えはコーヒーだ。コーヒーの生産地は赤道を中心にした北回帰線と南回帰線の間に集中するコーヒーベルト地帯である。そして膨大な数量のコーヒーが大量に消費されるのが米国・日本・欧州などの先進国である。生産国がいつまで経っても貧困に喘ぎ、消費国は歴史的に経済繁栄を謳歌している。どうしてだろう? 
                  
                  
                スターバックスなどが“フェアトレード” という耳障りの良い言葉で、生産者支援をしているような宣伝文句を掲げているが、莫大な利益は焙煎業者などの中間業者が独占し、汗水たらして生産するコーヒーベルト地帯には決して配分されない。 
                  
                  
                欧米文化は巧妙に、形を変えたコットンフィールド、砂糖きびプランテーション、奴隷制度をいまも存続させ常にアドバンテージを得ている。世界銀行や国際通貨基金などはその仕組みを十分に知りながら、南北格差を解消する気さえない。 
                  
                  
                それではオペックのようにコーヒー生産者カルテルを作ればよいではないかという気楽なアイデアが出てくるが、世の中そう簡単にはいかない。 
                  
                  
                  
                  
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                02:OPK村のニッパ椰子産業 
                  
                  
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                OPK村に限らず、イラワジデルタではいたるところにニッパ椰子が生えている。ニッパ椰子はマングローブ同様に海水と淡水が混じりあう汽水帯で生存できる珍しい植物である。それから採取される糖分はサトウキビの数倍におよび、エタノールの生産に使用される。しかしながら、OPK村では、簡単な南洋スタイルの家屋材として使用され、主に屋根葺き、壁材に使われる。 
                  
                  
                OPK村ではあちこちにニッパ椰子で葺いただけの家内工場があり、吹き抜けの土間では、女性たちが分業でニッパ椰子のパネル(プレハブと描写したほうが妥当だろうか)を編んでいる。すべて手作業で、まだ乳飲み子を抱えた母親は、天井からハンモックを吊り、赤ん坊を揺らしながら作業を続けている。ちょっとばかり年上のお姉ちゃんがハンモックを揺するだけでなく、材料を母親の周りに整理したり、母親を手助けする光景も、しばしば目にする。 
                  
                  
                欧米のジャーナリストや人権問題運動家は、この写真を証拠に、未成年強制労働とか、児童虐待との議論を吹っかけることもあるという。日本人の目からすると、保育設備の整った先進国企業よりもはるかに人間味溢れる職場に映る。 
                  
                  
                この家内工場はもっぱら女性の作業で、男性はニッパ椰子林からの伐り出し、ボートでの運搬、積み下ろしに従事している。そして製品の出荷も同様である。話を聞くと、現在は交通の便がよくなったので、ヤンゴンに出荷されるのみならず、ヤンゴンからマンダレー、そして陸路で国境を越えて、中国の雲南省にまで出荷されるとのことである。 
                  
                  
                このOPK村でもニッパ椰子生産者組合ができたが、中国商人の巧みな個別攻撃で、組合の結束は容易に崩され、結局は製品が安く買い叩かれている現状とのことである。そして国連機関は、あるいは世界銀行はミャンマーの労賃は一日当たり1.50米ドルにも満たないと指摘し、世界の企業家はその低賃金を求めて今ミャンマーに殺到している。 
                  
                  
                何かがおかしくないか?と考えさせてくれるのが、このOPK村だ。深夜の2時か、3時ごろ目覚めて、真っ暗な中、ベッドで考える。いまでは日本も、米国も、欧州も明るすぎる。夜がない。人間に精神的に必要なものは漆黒の闇ではなかろうか。恐怖を覚えさせるほどの。“闇の奥”には恐怖と同時に安堵が潜んでいる。 
                  
                  
                  
                  
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                03:コンニャク問答 
                  
                  
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                OPK村のベースキャンプではほとんど毎晩、座学が開かれた。今回のテーマは“コンニャク”である。その道40年のプロ中のプロが講師を務めてくれた。 
                  
                  
                日本の食文化をたどると中国の最も南西、仙人の宿る四川省や雲南省、にそのルーツがあるとされてきた。だが、どっこい、そのさらに西方に本物の秘境があった。それがミャンマーである。日本そっくりの食材がいくつもあるのだ。 
                  
                  
                プロが長年踏査したところによれば、コンニャクはミャンマー全国いたるところで自然に生育しているとのことである。コンニャクのルーツは紛れもなくこのミャンマーである。そのことを聞きつけたコンニャク輸入業者がこの10年間、日本全国から、いや中国からも台湾からも買い付けにやってきた。そして野生種のコンニャクはほとんど掘りつくされてしまった。それが証拠には昨年のコンニャク収穫量が激減したのだ。 
                  
                  
                そのあたりの現状を講師が丁寧に説明する。日本語から英語に、そして英語からミャンマー語にと通訳が介在する。そして練りに練った作戦が開始される。日本では数年後からTPPが開始される、そして欧米ではミャンマー原産の農産物ということであれば、特恵関税の特典も利用できる。であれば、コンニャクを換金商品として栽培しないか? 市場は日本を始めとして海外に展開できる。だが、最も障壁が小さいのは国内市場である。ヤンゴン市場まで約8時間の至近距離である。まず、国内市場を狙おう。そして次はアセアンで、日本・欧米市場も視野に入ってくる。
                 
                 
                現地でホームガーデンを経営する篤農家たちの目が熱を帯びてくる。現金収入に結びつくなら是非やりたい。彼らは経験上知っている。コンニャクは手や顔がかゆくなり、食するといっても簡単には売れないのではないか? 質問があれもこれもと飛んでくる。ミャンマー語から英語へと、そして英語から日本語へ。双方が粘り強くコンニャク問答を繰り返す。OPK村から国際食品が生産されるということで、小学校の先生も参加してくれた。唯一の女性参加者である。子供たちにこのことを説明したいという。
                 
                 
                自宅のホームガーデンで取れたコンニャク芋を我も我もと持ち込んでくる。水洗いの後にスライスして、天日で干す。今の時期なら一日半、二日も干せば十分だ。講師の指示に従ってスライス器が組み立てられる。全員が自分の手で作らないと不満だ。大の男たちが子供のようなはしゃぎようだ。
                 
                 
                このコンニャク講座は大好評で、翌朝も朝早くから全員が集まった。しかも、人数が増えている。ニッパ椰子の失敗から学んで、一枚岩のコンニャク組合を作ったらとの意見も出てくる。そして利益が出ればその一部で、学校を作りOPK村に貢献したいとの案も出てくる。参加者全員がその気になっているのだ。
                 
                 
                講師も日本の伝統食品である主におでん食材の板コンニャクや白滝に重点を置くが、今回は生徒さんたちの熱気にサービスする形で、プディン作りに挑戦。きれいなイチゴ色をしたプティングが大量に出来上がった。その見た目といい、食感に生徒さんたちの評判が良い。これなら日本だけでなく、ミャンマー国内、そして欧米にもと夢は膨らむ。篤農家のリーダーは是非、奥さんと子供たちに作ってやりたいので、明日もう一度講習会を開いてくれと特別要望。バースデーケーキのような翌日のプディンはこのリーダーと、この村々を取り仕切る幾つかの僧院の住職へのプレゼントとなった。
                 
                 
                これほどの熱意があれば、OPK村が世界のコンニャク発信地に変貌する可能性はある。大半はやせ細っているOPK村の男性に、カロリー&エネルギーがほとんど無視できる食材は肥満で悩む欧米の先進国にはアッピール力が
                 
                あるといっても、あまり理解できない。話を変えて、糖尿病や心臓病へのリスクが少ないと説明すると十分に関心を持ってくれた。
                 
                 
                コンニャク問答はまだ始まったばかりだ。一方では、彼らのずぼらな特徴も見え隠れする。特に熱帯の蒸し暑い気候で手間隙掛けたくないのだ。講師も大きく譲歩する。外部からの方式を無理やり押し通して失敗した例を知っているからだ。いい加減なようだが、信頼関係を構築するのこそ最も重要な手段である。そして長続きする方法でもある。
                 
                 
                コンニャクの主要成分である。マンナンの計測方法。そしてその粘性のチェックと、講師は繰り返し、繰り返し教えていった。生徒たちとの一騎打ちだ。決してあきらめない。決して弱音をはかない。だが、講師と生徒の間が、一歩も二歩も近づいていく。緊張の連続のあとで、誰かがギターを持ち出してきた。そして、日緬双方のカラオケ大会に座学は移行していく。幾ら夜遅くなっても日本側は大丈夫だ。起床時間が朝二時から本来の五時頃になるだけだ。闇の奥が浅くなるだけだ。
                 
                 
                 
                 
                ■参考文献:
                 
                 
                No.01:「TEN YEARS IN PYINDAYE」RESTORATION OF MANGROVE ECOSYSTEMS AND COMMUNITY DEVELOPMENT, Ayeyarwady Delta, Myanmar (1999-2008) FREDA/ACTMANG編集 
                  
                No.02:「緑の冒険」-砂漠にマングローブを育てる- 向後元彦著 岩波新書
                 
                No.03:「土とは何だろうか?」 久間一剛著 京都大学学術出版会
                 
                No.04:「新特産シリーズ コンニャク」-栽培から加工・販売まで- 群馬県特作技術研究会編
                 
                No.05:「コーヒーが廻り 世界史が廻る」 臼井隆一郎著 中公新書  
                    
                     
                                        
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                 発行元:ミャンマーメールマガジン事務局( magmyanmar@fis-net.co.jp )                              
                                               
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