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<ミャンマーで今、何が?> Vol.73
2013.12.04

http://www.fis-net.co.jp/Myanmar


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■イラワジデルタのマングローブ林が激減

・01:シュエマン下院議長夫妻率いる使節団が日本へ向け出発

・02:SEAゲーム開会式の予行演習が挙行される

・03:フローティング・ホテルの準備が着々と進む

・04:シンガポール郵政局(SingPost)がミャンマーへの送金を開始

・05:ロヒンジャーに関するミャンマー政府の公式見解

・06:世界の米どころとして昔の栄光を今一度

・07:テインセイン大統領が恒例のラジオ放送

・08:イラワジデルタのマングローブ林が激減

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01:シュエマン下院議長夫妻率いる使節団が日本へ向け出発

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日本の衆議院議長の招きで、シュエマン下院議長夫妻が率いるミャンマーの上院・下院両副議長を含めた大型親善使節団が日本へ向けて11月27日ヤンゴンを出発した。2015年以降のミャンマーを見据えた場合に、次の大統領の本命と目されるシュエマンUSDP党首を取り込みたいと思うのは米中2カ国だけでなく、どの国も必死である。

今回の下院議長夫人を含めた日本政府の招待は日本の政治・経済・文化の多方面で長期的な好結果を招来するものと期待されている。この後の動きは、むしろ日本のマスメディアから拾っていただきたい。

なお、ヤンゴン空港における見送り・出迎え風景は、成田開港前の一昔前の羽田空港を髣髴させるもので、役所・会社関係者はもちろんのこと、家族・親戚・友人一同で賑わい、これが今ミャンマーのトレンドとなっている。



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02:SEAゲーム開会式の予行演習が挙行される

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第27回SEAゲームが間近に迫り、開会式の予行演習が大統領出席のもと、11月28に首都ネイピードで挙行された。SEAゲームのテーマソングがミャンマーを代表する歌手たちによって歌われ、実行委員会のパトロンであるニャントゥン副大統領以下、政府高官が勢ぞろいして見守る中で、正装着用による開会式の予行演習が行われた。

ミャンマー政府にとっては来年のアセアン・サミット主催国の前哨戦ともいえるこのアセアン域内オリンピック・ゲームはミャンマー改革の桧舞台となるものである。それだけに、出場選手のみならず、実行委員会を始め、関係者全員の心意気が問われるものである。


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03:フローティング・ホテルの準備が着々と進む

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2014年1月の開業を目指すフローティング・ホテルの準備がヤンゴン港にて着々と進んでいる。フローティング・ホテルの国際基準では6つ星級となるもので、英国から購入した全長105M、幅18.4Mの客船は、今年8月にヤンゴンに到着し、2つの大型レストランを備えた客室104室のホテルとなる。船名はビンテージ・ラグジュアリ・ヨットと名付けられた。

ホテル不足が慢性的なヤンゴンで、しかも2014年のアセアン・サミット主催を見越した正鵠を得たビジネス・アイデアと言えるであろう。



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04:シンガポール郵政局(SingPost)がミャンマーへの送金を開始

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SingPostはミャンマー向け送金を開始すると11月27日発表した。同局はミャンマーのアジア・グリーン開発銀行、協同組合銀行、カンボザ銀行、トゥン財団銀行の4つの商業銀行と提携してミャンマー向け送金事業を開始する。これはミャンマー向け郵便事業としては世界でも初のサービスとなる。

シンガポールには現在約15-20万人のミャンマー人が住んでおり、このサービスは母国の家族に送金するだけでなく、シンガポールで稼いだ金を母国の自分名義の銀行に貯蓄してその利息を稼ぐこともできるとSingPostは語っている。

シンガポールの事業家たちはミャンマーが開放政策を進めるに従い、ミャンマー市場の開拓に躍起となっている。



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05:ロヒンジャーに関するミャンマー政府の公式見解

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過去2年間の宗教暴動で240名以上が殺され、240,000名以上が自宅から強制退去させられた。その大半がロヒンジャーである。

1982年の市民権法で認定されたラカイン州に住むベンガル族は市民権が与えられるが、それ以外はどこから圧力がかかろうと市民権は与えられない。この市民権法によれば、8つの民族と130の少数民族グループが国民として認定されているが、国内に住む800,000人に上るロヒンジャーは認められていない。

ミャンマーの多くの仏教徒の見解はロヒンジャーは英国植民地時代に、現在のバングラデシュから移籍された侵入者で、一方、当事者のロヒンジャーは何百年に亘ってここに住み続けてきたと主張する。ロヒンジャーはベンガル方言を日常会話に用い、バングラ人に似てミャンマー人よりも肌が黒いが、バングラ政府は自国市民として受入れるのを拒否している。

ロヒンジャー問題は仏教徒が多数を占めるミャンマーではいまや非常にデリケートな問題と化している。過激な民族主義者たちは反ロヒンジャー宣伝を繰り広げ、国内でのムスレムに対する偏見を生み出している。

反体制派のリーダーであるスーチーは旧軍事政権に対する人権問題の闘士であったにもかかわらず、この問題に関しては生ぬるい態度を取り続けている。次期大統領への意欲を示したスーチーは、宗教的マイノリティの窮状を調査するために最近ミャンマー入りしたイスラム協力機関(OIC)代表団との面会を拒否した。そしてスーチーのNLD党広報官は国連であろうともミャンマーの国内問題に干渉すべきではないと国連の決議案を非難していると欧米系のマスコミはこのような調子で続く。


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06:世界の米どころとして昔の栄光を今一度

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ミャンマーは米の輸出を2倍以上に増産する計画である。ミャンマーはかっては世界最大の米の輸出国であった。いま経済開放化に当たって、タイ・ベトナム・カンボジアに挑戦して世界に米の大量供給を狙っている。今年の輸出予想の180万トンから2014-15年には250万トン、そして2019-20年には480万トンに増産しようとしている。

テインセイン大統領も、もし世界の投資を引き付けることができればミャンマーは食糧を地域一帯に供給する国となれると語っている。

輸出コストは近隣のタイなどよりはるかに安いが、インフラ不足のために大量物流輸送に対応できていない。港湾施設は慢性的に混雑していて効率も悪い。ということは、インフラの質が悪いということである。例えば、2万トンの米を船積みするのにタイやベトナムでは約4日間の荷役であるが、ミャンマーでは8日間かかる。

今年タイの粉砕米5%入りの標準価格はトン当たり442ドルと24%暴落した。世界の貯蔵米はタイ・インド・ベトナムなど5大輸出国の増加で2013-14年は1.2%増の1億930万トンとなる見通しである。ミャンマーの米はタイやベトナムと比較してトン当たり80ドル安く、世界市場では非常に魅力的な商品となる。

ミャンマーは中国と国境を接しているが、来年の買い付けは340万トンになり、中国はミャンマーからの米の最大の輸入国になると米国農務省は予測する。ミャンマーは世界最大の米輸出国になれないとしても、中期的には主要輸出国になれるだろう。ミャンマーはこの地域で、土地・水・労働力が不足していない唯一の国で、戦略的に中国とインドを隣国に控えているからだ。



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07:テインセイン大統領が恒例のラジオ放送

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テインセイン大統領は政府が過去一ヶ月間で何を行ってきたかを易しい言葉で毎月全国民に向けてラジオ放送で直接語りかけている。米国の第32代大統領、フランクリン・ルーズベルト、の炉辺談話(Fireside Chat)を真似したのかもしれない。米国が大不況に悩む最も苦しいときに、アメリカ国民の一人ひとりに大統領が直接訴え、アメリカ人の心をひとつにすることに成功し歴史に残る政治パフォーマンスであった。テインセイン大統領も歴史に学んだのであろう。大統領主導でこの方式をミャンマーの今に取り入れた。

12月1日の放送も、ミャンマーで行われている政治改革の幾つかについて、私の立場を説明することから今日の話を始めたいとその第一声は流れた。そして11月のハイライトである、ミャンマーとEUの特別対策委員会の設置に関して噛んで含めるように国民に説明している。

当然、これらのスピーチ原稿は大統領府のスピーチライターが想を練るのであろうが、そういう人材を配置するのも大統領主導で、月初めに大統領がラジオで直接国民に語りかけるというアイデアも大統領主導で行われている。

これまでの軍事政権のトップでは考え付かないような国民への配慮である。国民の声を聞くとか、国民が望むならばという、リップサービスは誰にでもできる。が、このような地道な努力を続けるテインセイン大統領は普通の政治家とは一回りもふたまわりも桁が違うように思われる。

前の将軍が自分の指でピックアップして大統領職に据えたといわれるテインセイン大統領ではあるが、ミャンマーという国にとっては天の配剤としかいいようがない。

日本を訪問中のシュエマン下院議長は以前、自分が大統領になりたかったと心の内を曝したが、こういう気配りのできるテインセイン大統領だからこそミャンマーの奇跡を起こせたのではないだろうか。彼にはシュエマン下院議長には無い、そしてスーチーNLD党首にも無い、古武士のような潔さがある。

今のミャンマー憲法からすれば、彼の大統領任期は2015年までではなく、さらに4年間の二期目が保障されている。このあたりのことは、三人の視野も含めて改めて検討してみたい。



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08:イラワジデルタのマングローブ林が激減

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1978年には2,623平方キロに亘って繁茂していたマングローブの密林が、2011年には1,000平方キロ以下に落ち込み、このままでいくと2026年までには完全に消滅してしまうとのショッキングな調査結果が ‘世界の環境変化ジャーナル誌’に発表された。

この調査期間でのマングローブ林消滅率は年率3%となっている。同調査によれば、マングローブ林消滅の主原因は米作農業を確保するための農地拡大政策にあるとしている。
マングローブは沖縄・鹿児島以北の日本人にとっては目にする機会の少ない水陸両棲の珍しい植物かもしれない。しかも海岸線の潮間帯で生育する。ということは満潮時には海となり、干潮時には陸地となる海岸線がその主要生育地帯となる。

イラワジデルタはミャンマーの国土を北南に貫流するイラワジ川の支流が網の目のように張り巡らされてベンガル湾に注ぐ肥沃で広大なウォーターフロントで、例えてみればナイル川の恩恵を受けるエジプトの肥沃な洪水沖積地帯ようなものである。

だから、海水でも真水でも、ブラキッシュウォーター(汽水)でも、そして時には水なしでもOKな珍しい植物といえる。特に生物が水中から陸上に這い上がった進化を思えば、このマングローブには地球進化の自然の秘密がふんだんに込められているような気がする。
2008年のサイクロン・ナーギスによる暴風雨ではイラワジデルタを主災害地として138,000人が亡くなったとされている。自然の猛威がもたらした大災害である。だが、こうは考えられないだろうか。もしイラワジデルタの海岸線にマングローブの木が一本もなかったら、この数字ははるかに大きく書き換えられていたのではと。この調査によれば、それが2026年のことである。

インドネシア・スマトラ島の北端、バンダー・アチェで最大級の地震が起こり、そこを起点としたツナミはインド洋をジェット機のスピードで四方に分散して拡大波及していった。その直撃を受けた最大被災地のひとつが同じくミャンマーのイラワジデルタ地帯である。ある日突然、南海のまばゆいシリカサンド・ビーチに海水の壁が縦になって襲撃する。海浜の優雅なリゾートホテルが一瞬のツナミで押し流される。何度も何度もCNNで放映され、いまだに我々の網膜に記憶されている画像だ。

今、世界の投資家たちがドル箱事業としてミャンマーの開発に取り掛かっている。ミャンマー政府もそれを歓迎している。観光事業は手っ取り早く、現金収入が期待できる。そして仕事のなかったミャンマーの廉価な労働力を大量に雇用できる事業でもある。スイートリップスは幾らでも言えるだろう。

だが、彼らが唯単純に税金逃れのフィランソロピストでないなら、ここでもう一度再考してほしい。ミャンマーは世界のどこにも無い人跡未踏の自然がわずかに残された処女地でもある。ロンリープラネットの地球をかけがえのない人類の故郷として未来を見通す本物の事業家ならば、イラワジデルタのマングローブを単なる飾り物ではなく、海浜の優雅なリゾートホテルと立派に共存させ増殖させていく知恵をクリエートできぬものであろうか。

多分、この鍵を握るのは2015年のシュエマンかスーチーのどちらかであろう。テインセイン大統領の経済改革を主体としたミャンマー改革路線は、極度に対立するものの中で信頼というものを醸し出し、ポスト軍事政権の初代大統領としては高祖ともいえる役割を果たした。

だが、次に難しいのはそれをどの方向に、どのように発展させるかで、これには二人の歴史観、哲学が大きく反映する一大絵巻物でもある。人口70億が乗り込んだこの地球を救えるのはこの二人かもしれない。






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