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<ミャンマーで今、何が?> Vol.49
2013.6.19
http://www.fis-net.co.jp/Myanmar
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・週刊メルマガ一周年記念特集第3号
15:今日は昨日の続きで、明日は過去の歴史の上に作られる
16:ミャンマーの今は2003年8月30日に始まった
17:「民主化に導く7段階の道しるべ」は米国政府に対するラブレター
18:ミャンマーを変革した影の功労者はオバマ大統領?
19:中国の不気味な動き
20:イメージと異なる国家主席
21:米中間の競争はさらに熾烈に、そしてミャンマーがその鍵を握るか?
22:「ミャンマーを民主化に導く7段階の道しるべ」の要点
23:次にお節介ストーリー
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<週刊メルマガ一周年記念特集第3号>
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この一周年記念特集号はVol.44でミャンマーの麻薬王から説き起こして、Vol.45ではミャンマーを舞台とした世界の地政学・軍事地勢学が熾烈な闘いを引起していることまで語った。しかし、途中で安倍旋風・テインセイン大統領の消息不明・世界経済フォーラムが飛び込んできたので、そちらに寄道をしてしまった。今週号からまた記念特集に戻りたい。
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15:今日は昨日の続きで、明日は過去の歴史の上に作られる
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これはヤンゴンのシンクタンク「東西南北研究所」の考え方の原点である。ミャンマーで今起こっていることの兆しはすでに昨日どこかで発生していた。だが、愚昧な我々はそれに気付かないだけだ。それでも「東西南北研究所」は<ミャンマーで今、何が?>にこだわり、今を追い続ける。それを徹底的に追求すると、昨日のことが納得でき、時には明日のことまで見えることもある。
徹底的にということは、ミャンマーの今を追いかけながら、今→過去→未来、そしてもういちど今、と順繰りに水面下で考えを回転させるに他ならない。
そこでこの一周年特集号ではタイトルに違反するが読者の皆さんをミャンマーの「過去」にお誘いしたわけである。だが、それも今⇔過去⇔未来の延長線上にあるということでご理解いただきたい。今を知る最短距離は歴史に学ぶことだ。
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16:ミャンマーの今は2003年8月30日に始まった
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2003年8月30日、「ミャンマーを民主化に導く7段階の道しるべ」を首相に就任したばかりのキンニュンが国営メディアを通じて発表した。首相就任後、わずか5日後のことであった。しかも、キンニュンは約1年後の2004年10月18日に首相職を解雇され、その後汚職の罪名で44年間の刑期を言い渡され、彼がコントロールしていた情報局の機構そのものが解体させられた。
「7段階の道しるべ」は海外のメディアそして特に欧米政府からは軍事政権を恒常化するものとして不評を買った。だが、今進行中のミャンマーの変革の芽はこの「ミャンマーを民主化に導く7段階の道しるべ」にあったのではと我々は見ている。
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17:「民主化に導く7段階の道しるべ」は米国政府に対するラブレター
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これが我々の読みである。当時のアメリカ政府を見てみよう。第43代大統領ジョージ・ブッシュは2001年から2009年までホワイトハウスの主だった。その間にこのラブレターはワシントンに届いた。だが、2003年はブッシュ大統領がイラク侵略で超多忙だった時期。そして2004年はジョン・ケリーを相手の大統領中間選挙で忙しかった。2005年はハリケーン・カトリナのお粗末な善後策に無能とののしられた。そして2007年12月以降、米国は戦後未曾有の景気後退に襲われる。大統領の執務期間中を通して、2001年9月11日の米国本土テロ攻撃がトラウマとなったのかもしれない。
この7段階が発表されてしばらく経つと、ある噂が流れた。軍事政権のトップ層だけに回覧された極秘の内部報告書があるという。この「ミャンマーを民主化に導く7段階の道しるべ」の意図する本来の趣旨を解説し、ミャンマーは経済的にはすでに中国の配下にあり、政治的にも危うい状況である。このまま何も手を打たなければ、最後は軍事的にも中国の隷属国になり、独立国としての自尊心を剥奪されてしまうという警告の報告書である。編者は国軍士官学校の教官で仮名で著述したとされるが実態は不明。結論として欧米、特に米国との間でカウンターバランスをとる必要性を強く訴えている。そこで米国好みの「民主化」を主題としたラブコールを発信したという噂だ。
だが、ブッシュ政権の諜報機関はこれを歯牙にもかけず、その後もミャンマーの軍事政権を人権違反として批難し続けた。
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18:ミャンマーを変革した影の功労者はオバマ大統領?
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2009年1月20日に第44代米国大統領としてバラック・フセイン・オバマ2世が就任する。この若くてスマートな大統領はブッシュ大統領が出来なかったことをすべてやったと言ったら言い過ぎだろうか。彼の諜報機関はミャンマーのラブコールというシグナルを敏感に受け止めた。彼のブレーンはヒラリークリントン国務長官・ペンタゴン首脳を含めてミャンマーに対する米国の戦略を徹底的に精査した。仮想敵国は当然、中国。だが、口が裂けてもその本心は何一つ表情に出さない。
それが外交というものだ。米国大統領の凄さはその人材の層がずば抜けて厚いことだ。ヒラリー国務長官の配下でキッシンジャーを凌ぐと思われるデレック・ミッチェル特使が忍者外交を粘り強く繰り返す。(Vol.01を参照)
デレック・ミッチェルの外交裏舞台での活躍は日露戦争時代の明石元二郎を髣髴させるものがある。しかも、伝説となったヒラリー国務長官とスーチー女史との初の出会い。歴史に残る現職大統領として初のオバマ大統領の訪緬など、すべて彼のシナリオで動いたものと当シンクタンクは見ている。そして1990年以来空席だった駐緬米国大使として当然のようにヒラリー国務長官はデレック・ミッチェルを指名した。間もなくヤンゴンの米国大使館はこの地球上で最も重要な大使館の一つに昇格しミャンマーを21世紀を見据える最重要戦略拠点に指定した。その諜報活動は人員も増強され世界中に散らばる米国大使館の中では最も突出したものになったといわれている。オバマ大統領が太平洋・アジアに軸足を移したことがここでも確認できる。
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19:中国の不気味な動き
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記念特集第1号Vol.No.44の‘07:中国の介入’でお伝えしたとおり、中国の人民解放軍はミャンマー・シャン州のWa族が支配する無法地帯に地対空・空対空のミサイルを含む最先端の重砲火器類を大量に提供した。これはミャンマー国防軍に対して反乱を起こすに十分すぎるほどの規模で数量である。
さらに、Vol.No.47で指摘したとおり、先月の5月26日夕方から29日夜までのテインセイン大統領の行動がマスコミの報道から完全に削除されミッシング・リンクとなっている。
消えた3日間はテインセイン大統領が中国に国賓として迎えられことになっていた。だが、ミャンマー側にはこの3日間を報道規制する理由はない。合理的な考え方をすれば報道規制は中国側からの要請としか考えられない。
今世界の大きな潮流はミャンマーが西側に大きく門戸を開き、西側諸国も競ってミャンマーに押しかけている。中国としてはこの流れをなんとしても食い止めたい。だが、逆転の秘策はあるのだろうか?
テインセイン大統領に対する致命的な脅迫。あるいは個人的に贅沢三昧の残り人生を保障する。凡人の考え付くことはこの程度だが、今はウィキリークの時代である。どんな内緒ごとでもいつかはお天道様の下に曝されると信じている。ノーベル平和賞の可能性も出てきた。そしてミャンマーの歴史に残る輝かしい実績を積み重ね、日米欧からの膨大な支援を取り付けているテインセイン大統領が簡単に中国からの裏取引に応じるとは考えられない。
その一方で、この新興スーパー大国がこの国を簡単に西側に引き渡すとは思えない。日本とは違い彼らの外交交渉は遥かにしたたかである。三国志の国でもある。
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20:イメージと異なる国家主席
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そのスーパー大国を率いる国家主席にまで上り詰めたのは習近平。その人物を英文インターネットで追いかけると興味ある情報が掲載されている。西側では容易に閲覧できる、すでに公開された情報だが、中国国内ではこの情報は徹底的にブロックされている。
エリートファミリー出身の彼の一族が巧妙に蓄財して事実は国家的なスキャンダルといえるもので、不満を抱く低所得層が知れば暴動に走ってもおかしくない内容だ。それゆえに完璧なサイバー・ブロックが取られている。
その一つは、同主席の娘は2009年から杭州外国語学校で翻訳を学んだが、2010年5月に米国のハーバード大学に別名で入学し、中国人のボディガードが24時間身辺を警護し、米国のFBIも彼女を保護する秘密契約を結んだというものだ。そして極めつけは、2012年6月29日付Bloomberg News社が世界に発信した情報で、同主席の兄弟姉妹・叔父叔母など親戚一同が同主席の昇進にしたがって不動産投資会社・レアメタル会社などで中途半端でない莫大な富を蓄積していった足跡を調査したものである。ブルームバーグと言えば、現役のNY市長が実質オーナーでその北京・香港・NY支局が追跡した迫真の長文のレポートである。英文グーグルから上記のキーワードをヒントに検索すれば、簡単に行き着くはずだ。元のヒラリー国務長官であれば、これをネタに北京政府を相手にサプライズの外交交渉を展開することだろう。
前置きが長くなったが、中国の主席に上り詰めた同氏一族の富の蓄積には中国の国体からすると目を見張るものがあり、同主席の桁外れのしたたかさが見えてくる。であれば、テインセイン大統領を抱きこむ秘策など意外と簡単なのかもしれない。
もうひとつ踏み込むと、6月7-8日のカリフォルニア州でのオバマ大統領と習近平国家主席との首脳会談では国家機密・民間企業内へのサイバー攻撃に関して激しい応酬があり不信を残した形となった。さらに中国側は機密を確保するために米国が用意した国賓用宿舎ではなく下町のホテルに最後の土壇場で変更したとも伝えられている。
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21:米中間の競争はさらに熾烈に、そしてミャンマーがその鍵を握るか?
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この週刊メルマガ一周記念特集号で取上げたのは、米国・中国・ミャンマーの三つ巴戦だけでなく、それぞれの外交交渉は日本の明るい善意的な経済戦略とは異なり、かなり込み入ったしたたかな外交展開であること。そして最初に報じたように、ミャンマーの今後の実業界・経済界を牛耳っていくと思われる集団は、かなりダークな歴史があるということだったが、ミャンマーを語るときに避けて通れないのが、軍事政権の大きな遺産である。それを次回か、その後に取上げて今回の特集は一応完結にしたい。
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22:「ミャンマーを民主化に導く7段階の道しるべ」の要点
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第1段階:1996年以降中断していた政府の全国大会を召集する。
第2段階:全国大会が成功裏に終われば、民主的なシステムを一歩一歩実施して
いく。
第3段階:全国大会で採択された方針・細目にしたがい憲法の原案を起草する。
第4段階:この憲法は国民投票によって承認を得る。
第5段階:議会の構成を確立するために自由で公平な選挙を実施する。
第6段階:選出された代議員を国会に召集する。
第7段階:議会によって選出された国家の指導者たちによって近代的で民主的な国づくりを行う。そして議会を通じて政府とその他の中央諸機関が構成される。
当時この7段階の道しるべには明確な時間枠が設定されていないと批難されたが、2013年の今、これを振り返ると、公平な憲法・選挙などの中身は別として、形式的にはすべてクリアされたことになっている。
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23:次にお節介ストーリー
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国営日刊英字紙New Light of Myanmar(NLM)6月15日付犯罪欄にひとつの記事が掲載された。「6月11日夕、ラインタヤ町の縫製工場に勤める女性工員がベイナウン橋から投身自殺を図った。だが、近くで橋梁工事中の作業員が救助し一命は助かった。ラインタヤ病院への入院は許可されたが、自殺の廉で起訴されることになっている。女性はデルタ地区の出身で百万チャット(本日の換算レートで邦貨約12万円)の借金が返済できず自殺した」
これで全文だが、名前・年齢・家族背景などは分からない。だが、脚光を浴びる華やかなミャンマービジネスの影に救いようのない哀しい‘ミャンマーの今’が行間に詰まっていることを深く深く読み取っていただきたい。
余計なことだが、もし読者の中で“脚長オジサン・オバサン”になってみようという太っ腹で奇特な読者がいらしたら、その“真心”を東西南北研究所(連絡先:LFewest@gmail.com)および奇特な方のお名前を出さずに‘ある日本人からの善意’としてNLM社にお届けいたします。全額その女性工員に手渡されたという証明はNLM社と相談の上責任を持って取り付けます。
もし今後、東西南北研究所に対するご意見・ご希望等ありましたら、LFewest@gmail.comにメールでご連絡ください。場合によっては直接返信あるいは今後の参考にさせていただきます。
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