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<ミャンマーで今、何が?> Vol.470
2021.11.23
http://www.fis-net.co.jp/Myanmar
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━━【主な目次】━━━━━━━━━━━
■ブーゲンビリアの咲き乱れ
・01: 国力低下は我々自身のせいだ
・02: 下街情報
・公式ツイッター(@magmyanmar1)
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・01: 国力低下は我々自身のせいだ
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世間がくるくる変わる中、陋習に囚われず、新天地を模索中である。
宇宙はアインシュタインのスピードで膨張している。自分が変わらなければ島国に取り残される。ガラパゴスに閉じこもっては絶滅の危機だ。
やがて地球は燃え尽き、ブラックホールへと吸い込まれていく。そこで地球外移住などSF的計画が真面目に実験されている。宇宙は無限とも言えるし釈迦の掌中とも言える。その宇宙ではロシアとアメリカの先端技術が長年にわたり死闘を繰り広げている。薩摩の守タダ乗りではないが、ちゃっかり島国日本もJAXAの名前で宇宙へ参入している。
ワタシのYouTube鑑賞は宇宙旅行と一緒で際限がない。惑星に出会ったり、銀河系とまるで無秩序だ。そこで遭遇したのが、そのJAXAのエリート採用試験に簡単に合格し4月5月と勤務し、2ヶ月でキッパリと辞めた疑惑の人物のYouTubeに出くわした。もちろん島国の話である。忘れていた名前だが、この人物のパパラッチをはじめた。追っかけを始めると自動でこの人物関連のビデオがリストアップされる。週刊文春よりも面白い展開にほとんどの動画をサーフした。やることは山ほどあるのにワタシの悪い癖である。
日本の友人からYouTubeを習い、ワタシの玩具となった。オモチャとは言え奥行きは深い。ガラパゴスを脱出するのに利用できそうだ。それを切っ掛けに、現在も失敗を積み重ね、その真っ只中で暗中模索がはじまった。デジタルと数字に弱く、当然スマホを恐れた、最初はいやいやだった。ヤンゴンの髄から世間を覗き、スマホを使いこなさぬと淘汰される、漠然と強迫観念に襲われた。コロナでも国軍の銃口でもない。スマホに抹殺される危険が迫っている。
「親も無し、妻無し、子無し、版木無し、金も無けれど、死にたくも無し」と辞世の句を残した林子平は“無”を6つ詠み込み“六無斎”と称した。ひとつ一つがワタシに当てはまる。ワタシ流英語で“シックス・ゼロ”と翻訳した。“シックスティ”ではない。
メンターとあがめる林子平は寛政の三奇人のひとりで“海国兵談”全16巻を自費出版し、江戸後期の幕府に国防の警鐘を鳴らした。「日本橋よりシナ・オランダまで国境なしの水路なり」とグローバルな話しで、北朝鮮など小粒の話ではない。
東京の南南東1000キロを越える南海洋上に小笠原諸島がある。この小笠原諸島が国際紛争もなく、日本の領土としてすんなり世界から公認された歴史的経緯には林子平が出版したこの書籍がエビデンスとなっている。江戸後期のあの時代にである。
ワタシの苦手な政治家は竹島・尖閣諸島、そして北方領土を問題にする。だが江戸の後期に大きな布石を打った林子平の大偉業に思いを馳せる政治家は1人もいない。せいぜい漁船のエンジンに軽石が詰まると心配する近視眼ばかりだ。小笠原はBonin Islandsと呼ばれ、海運国イギリスと捕鯨船の国アメリカで領有権争いが繰り広げられた。開国を迫るペリー提督の時代である。Bonin Islandsは日本語の“無人島”が訛ったものである。この小笠原が強国の領土に盗られていたら、日本の経済水域は大きくしぼんでいたはずだ。
参考:植松三十里(みどり)著『命の版木』(中公文庫)
当時の版木は畳半畳ほどでページ毎に一枚彫った。UKIYOEの世界である。現代っ子ならプリンターと英訳するかもしれない。その版木351枚を彫師お槙と命を賭して守った。ワタシが敬愛して止まない警醒家に無礼だが、無断で“Club60”に借用させてもらった。完全に盗用である。事情を知らぬ若者には60歳以上の年寄りクラブ、あるいは60番街が所在地と勘違いされる。軍事クーデターが頻発するこの国ではこの誤解が隠れ蓑となる。こうやってここヤンゴンでサバイバルゲームを楽しんでいる。
それだけではない。“死にたくも無し”の一念で毎日を生き延びている。しかも楽しみながら。それには老獪なコツがある。強力な助っ人は身近な生徒だった。先ずは初手の一歩としてスマホの特訓が始まった。生徒に頭を下げお願いした。基本を覚えると欲が出る。動画のビデオに挑戦したくなった。負うた児に教えられYouTubeの猛訓練がはじまった。ビデオの見方にもコツがあることが分かってきた。YouTubeの徹底的な活用法である。
YouTubeを見終わり、分かったとする現代人が多すぎる。時間に追われているのである。パソコンやロボットは生活を楽にするのが目的だ。チャールズ・チャップリンはサイレントの時代に『モダン・タイムス』でその病を活写した。一見しただけで分かったとサムアップしたり、ヘイトスピーチを発信する。それだから、緑のシャツを着たジョーカーが京王線に登場し、それをコピーする人間が増殖する。この世からか“遊び心”が消えてしまった。
YouTubeを鑑賞するには作法がある。アップロードの日付と再生回数、主催者名とSubscribers数は必ずチェックする。その下に表示される説明文を熟読し、Show moreをクリックして動画だけでは表現できなかった文字情報ですべてを補完する。
ここまでの過程を生徒と共に楽しむ。生徒との共通語は英語しかない。日本語でもビルマ語でもない。これが双方の英語力アップに大きく寄与する。YouTubeが英語教室に新境地を開拓してくれた。そして住めば都のヤンゴンで“遊び心”が育まれる。
ワタシのパソコンもスマホも基本言語はすべて英語に設定してある。日本語設定のままなら、最先端技術から周回遅れで取り残される。2021年にもなってデジタル革命など世界の常識からバカにされる時代遅れを口走ることになる。面白いことにこの国の軍服を着た非公認首相も国際的非常識にヤケに執着する。世間の笑いものになっていることに気付いていない。両国は非常に類似している。
NYのJFK空港に大勢押しかけたマスゴミ駐在員が“真子さ〜ん、今のご心境は?”と人目もはばからずに余計なお世話に大声を張り上げる。先日までは“真子さま〜!”と黄色い声だった。日本式マニュアルに沿った対応なのだろう。このヤンゴンで、日本語と日本人について考え込んでしまった。
アナログの世界では1から9そして10と順番が決まっていた。それが0と1ですべてを表現しろと言う。2は10、3は11、4は100、世界の超大国アメリカは単純な新ルールで二番手以下を振るい落す作戦だ。だが中国やロシアが簡単にコピーして差がつかなくなった。韓国までもがマネし始めた。
それでもアメリカは優位に立っている。アルファベットは1バイト、露路・中国語・韓国語などエスニック諸語は倍の2バイトを消費する。日本語もそのハンデを背負っている。軽量・軽薄化の時代、この容量の差はアメリカにとり断然有利だ。
別の面から検証してみたい。
YouTubeのSubtitle=字幕を参考にしてみた。
例えば人気司会者が仕切るアメリカ大統領選候補者の公開討論会をサンプルに挙げよう。
男女性別・年齢・方言も異なる英語話者の音声を拾い、英語字幕が同時通訳のようにほぼ正確に流れていく。アメリカにおけるAI技術者の努力と進歩には目を見張るばかりだ。
それでは日本語の字幕を検証してみたい。
YouTube番組で“GLOBIS知見録”を例に挙げよう。若き日本人起業家を育成する番組である。正統日本語にはほど遠い単語・字幕が次々に飛び出す。当然裏方の自動翻訳技術者は日本人である。未熟としか言いようのない字幕の羅列である。どうして日米の間ではこれほどの差がついてしまったのだろうか?
日本語と英語の大きな違いは“分かち書き”にある。その上に日本人は弁論の士である政治家が意味のない「あのー、そのー、えーと」を連発し、言い直しも多用する。日本語は論理的でないと指摘されるが、その特徴・癖を把握したうえでアルゴリズムを組む能力が欠けている。今問題にしているのは外国人の英語を日本語に翻訳しているのではない。日本人が話す日本語が正確に字幕に転写されないのを問題にしている。日本語の会話なら耳で聞き取れるから問題ないと見逃すなら、日本のデジタル革命はアメリカに10周遅れもの差を空けられる。
という訳でヤンゴンの若者には母国語以外に英語の修得を最優先で推奨している。国際競争で引けを取らず有利に立つのが目的である。地名・人名をカタカナ英語で覚えても、海外の大学院・MBAではほとんど通用しない。ゼロからネイディブの英語発音を学び直さねばならない。これは医学界、芸術界、動植物界、ありとあらゆる学問でいえる。国際競争の時代、日本の若者に二重の苦労を負わせているのが、日本の英語教育である。
話題がまたまた逸れてしまった。
下記のYouTube番組の話しだった。
『元オウム真理教 上祐史浩/早稲田大学院からJAXA内定も麻原と出会い教団幹部に』前編・後編に分けての収録である。1,114,355回の再生。Jul22,2020
オウム、上祐と聞いただけで吐き気を催すご同輩もいよう。ワタシがYouTubeから学んだのは、好き嫌いで判断しないことだ。嫌いでも逆に源流を遡り、徹底的に本来の現場(原典)を発掘する。ヤンゴン川の濁流に惑わされず、イラワジ河水系を遡り、ヒマラヤ連峰東端の天然氷河の最初の一滴を求めるのである。すると思いがけず隠されたエピソード出会い好奇心をくすぐることが出来る。
松田聖子で有名な佐賀県久留米市の小学校で同窓。その期間は短く東京へ引っ越した。サリン事件発生当時ロシアに長期滞在していたため、アリバイが証明された、死刑判決を受けた幹部13名とは異なる人生を生きながらえている。
この番組は“街録ch〜あなたの人生、教えてください”がホスト番組。空っとぼけた質問の仕方が絶妙だ。間断なくしゃべる上祐の口をさらに饒舌に思いがけぬ答が返ってくる。
AIが次々にリストした中で秀逸だったのが、『あわせたい2人 水道橋博士X上祐史浩 街録chスピンオフ』219,848回の再生。Oct19,2021が抜群にオモシロかった。
オーム真理教の内情を曝露すると同時にオカルト教団である幸福実現党、公明党、トランプ大統領の陰謀説などにも波及していく。興味は尽きない。
という訳でYouTubeに関してはミイラ取りがミイラになった。興味あるテーマだとAIがリストアップする関連番組をほとんどを見まくっている。ある国の極秘文書、国家機密と言えども、一定の期間が経過すれば、丸秘文書が公開される。しかも映像でだ。いったんPCに保存した文書が消滅することはないことも学んだ。改ざん・黒塗り・焼却など島国でしか通用しないおとぎ話だ。
世界はジュリアン・アサンジやエドワード・スノードンのスピードで展開そして曝露されていく。
日米貿易交渉の直前に首相官邸で極秘の打ち合わせが行われた。その会議が終了すると同時に優秀な米国インテリジェンスは首相の個人スマホをハックする。この個人スマホから各省庁の次官など首相が直接電話指示した会話内容がすべて整理され、大統領をはじめ米国通商代表部などにブリーフィングされる。米国は日本政府の落しどころなど手の内を交渉前にすべて把握していることが上記両人によって曝露されている。海外で暗躍する米国CIA代理機関は国際法上で違法とされる情報活動を好き勝手にやってきた。日本のカウンター・インテリジェンスはそれを見破り阻止できる能力はない。
アサンジまたはスノードンどちらでも構わない。興味のある方はそれらをキーワードに英語検索すればCIAの悪事を知ることが出来る。その数は厖大だ。これは日本だけに限らず中南米でも、欧州でも、ロシア・中国でも行われてきた。カウンター・インテリジェンスもその気ならいくらでも調べられる。それがスマホ時代である。ヨチヨチ歩きのデジタル革命など危なっかしくて見ていられない。
と言うことで機密漏洩罪、国家犯罪、そして正義の線引きが紙一重の時代となった。世界はとっくに紙一重の時代である。特にスマホのビデオとSNSのひと言で国家の恥部が国外に流布する時代だ。瞬時にスキャンダルが地球を一周する。時代の変化も把握できず、ここミャンマーでは大バカものが頻繁にWiFiを遮断し、ネット接続を小細工し、最後は電気のカットと、無駄な抵抗を続けている。この国もヨチヨチ歩きだ。
今となっては古い話しだが、アウンサン将軍暗殺(1947年7月)の真相も、首謀者として慌しく絞首刑(1947年11月)になった元首相のウ・ソーが、当時の宗主国である大英帝国の情報局に操られ、大量の武器弾薬を供給され犯行に至った事実が、暗殺50周年の特別記念番組(1997年7月)で当事国のBBC国際放送によって曝露された、当時のイギリス人高級将校など証人一人ひとりにインタビューしたこのドキュメンタリーはNHKより遥かに迫力がある。この事実はスーチーは勿論、ビルマ国民すべてが驚愕の事実としてこの海賊版DVDに殺到した。70年以上も昔からこの国は国際スパイの餌食となってきた。
今現在の話しに戻そう。世界のジャーナリスト界はこれからの報道はどうあるべきかと真剣に取り組んでいる。日本では偏見のラベルが付いているかもしれないが、“Al Jazeera English”も母国語ではない英語を国際共通語として採用し、報道機関としてのモットーを堂々と謳っている。偏向を避けるため必ず両サイドの論者を招いて公開の場で議論させている。島国の報道機関は組織は大きくなり、語学力不足の日本人駐在員の数も増えているが、基本は現地新聞の解説に終わっている。そしてインタビューするのもどこの馬の骨とも分からない行きずりのデモ参加者に声を掛け、それで現地報告を終わる。アルジャジーラに話を戻すと、その問題の責任者を引っ張ってきて話を引き出している。そしてデモを組織した責任者の反対意見を報道してくれる。現在のアルジャジーラは中東の連中だけを相手にするのではなく世界を相手にしている。だから140カ国以上に2億8千2百万の視聴者を誇る報道機関へと成長を続けている。
かってはロシア貴族までが高貴で優雅な香りのするフランス語に夢中になった。ドーバーを渡った隣国のイギリス人が英語で話しかけても下品で野蛮な言葉として相手にしなかったフランス人。その誇り高きフランス国が“FRANCE 24 English”を立ち上げた。名前が示すとおりフランスの報道機関が24時間“英語”でニュースを流し続ける。決して下品な英国に屈した訳ではない。単に国際共通語として“英語”を採用しただけだ。だがカナダを初め欧州・アフリカ諸国に多数の視聴者を抱えている。
フランスに対抗するドイツも“DW News Live”という英語番組があり、“TRT World”もトルコ国の国際ニュース番組である。なんとロシアまでもが“RT News 24/7”という英語ニュース番組を流し続けている。24/7とは一週間7日間、一日24時間連続でという意味である。
振り返って我等が日本には“NHK WORLD-JAPAN”がある。だが上記の独自カラーで取材・報道する国際的ニュース番組ではない。その大半は画一的な日本文化の紹介に終始し、「日本固有の領土である」など説得力のない文言を何年も繰り返す。それ以上に貴重な時間を食い物関係に割き、24/7態勢とは報道姿勢が真逆の方向に進んでいる。
このヤンゴンにいて、その国力低下に本当に我が祖国は大丈夫かと、空っぽの頭を悩ませている。
YouTubeから学んだひとつ一つを深掘りしたいが紙数も限られている。
DWは“ドイツ世界”という意味だ。国際ニュース報道番組とは別に同じDWの冠で“DW Documentary”という争点となっている国際案件を絞り込み、徹底的に問題を炙り出していく。旱魃と洪水から気候変動を考える、遺伝子組み換え問題、米国が英国式ロータリー交差点を嫌う理由、南極条約は存在するが微妙な各国バランスの南極基地問題、ミケランジェロとダビンチの時代からルネッサンスを概観、巨大薬品会社のドラッグパワー、現代ビジネスを解き明かす完璧なコーヒーそのフェアトレードと持続可能性。などなど好奇心を掻き立てられる問題ばかりで、メルマガに集中する時間が無くなってしまった。
確かに英語力は要求されるが、生徒たち同様に辞書を引く手間を厭わなければ意味は解明していく。だが現段階の自動翻訳は絶対にダメだ。本質的に日本語を知らない技術者が、隔靴掻痒の手抜きで誤魔化しているからだ。一見自動翻訳は進歩しているようだが、英語の完璧さに比較するとあくまでも周回遅れである。ということをYouTubeで知った。
マスコミ界に対する不満をぶつけただけでは何一つ解決しない。
行動しないということは、ヤンゴンからの遠吠えに過ぎない。
自国の国力低下を招いたのは我々自身であると猛省している。他のナニモノでもない。
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・02: 下街情報
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“下街”という日本語は、日本では山の手の高台と対比として商工業に従事する町家が軒を並べる低地というニュアンスがある。
このヤンゴンでは、ダウンタウンとは都市の中心部にある商業地区を指し、高層ビルが立ち並ぶビジネスの中心街という英国式に解釈される。
ヤンゴン近郊の郊外一帯はダウンタウンではない。
その郊外である日突然フェースマスクをしている若者が片っ端から逮捕された。理由は反体制運動の支持者という理由だ。保健スポーツ省は外出時にはマスク着用を勧告している。だが逮捕前日にはこの郊外ではその条例は適用されずとの緊急政令が発布されており、ミャンマーは完全な無法地帯となった。朝令暮改は当たり前で、アメリカの西部劇映画を髣髴させる無法地帯だ。
別の郊外では熱帯夜で表に出て夕涼みをしていた二人の婦人が兵士に射殺された。
このメルマガでは敢えて場所、日付、人物を特定できないように、ボカシた書き方をしている。政府系の諜報機関、インフォーマー(密告者)を恐れるからだ。
つい最近も目の前で事件が起きた。ドキュメンタリー風に記述したい。
午後2時45分。完全に雨季は終わった。眠気を誘う時間帯である。下の道路で異常なエンジン音がし、車のドアが大音響で2つ閉じた。礼儀知らずのミャンマー人でもこんな乱暴はしない。メルマガ原稿を弄っていた寝ぼけ眼が飛び起きた。鉄の格子戸のベランダから覗くと青赤の点灯ランプを消したパトカーが真下に駐車している。そしてライフルを両手で構えた警官が左右の後部座席飛び出したばかりで、乱暴な音は左右の後部ドアだった。2人の警官は青いフェースマスクで防弾チョッキも着込んだ完全装備だ。有り難いことに目線は合わなかった。二人とも道路向かいの8階建てのビルを見上げている。この住居ビルは階段の出入り口が右左真ん中と3ヶ所ある。Gガーデンの真正面が真ん中の階段だ。
通常は2階分を一軒で使用している。踊り場2つ目ごとに左右2軒の勘定だ。だが財力がないとこの2階を分割し、1階分を賃貸に出しているオーナーもいる。子供のいない未亡人やお年よりはこうやって生活費を工面している。階段部分は流行のミラー式ガラスをはめ込んでいるので採光には適するが、開閉出来ないと熱さがこもってエレベーターなしが堪える。と言うことで全前のビルは計算上24軒の家族となる。下街のこのビルの住人はほとんど自家用車を所有し、郊外に工場や小規模ホテルのオーナーだったりと、ミャンマーの中産階級に属している。
今の時期Qガーデンにはブーゲンビリアが泥棒除けの鉄の格子戸から枝葉を思いっきり外に伸ばし赤白ピンクと咲き誇っている。そしてオレンジ紫イエローと乱れ咲が始まる。
これらの枝葉がスナイパーの目を遮ってくれる。極度に注意しながら真下を覗くとひとりは真正面の階段下に移動し、ライフルを両手で構え、銃口は地面に向けられたままだが、ビル内に侵入するかどうかを様子を窺がっている。もうひとりがそれをカバーするようにその後に続く。まるで映画のスローモーションを見ているようだ。地上にいる2人の目線はあくまでも道路向かいの住居ビルで私のビルではない。ワタシの目線はヘルメットの頭に釘付けだ。ときおり警官が振り向くと横顔が見え、見つかったのではとびくりとする。
双眼鏡を持ち出したいが、見咎められたら一巻の終わりだ。咲き誇るブーゲンビリアに助けられ真下のパトカーに目をやると、その前後に一台づつ濃紺の小型軍用車が停車している軍用車の中はライフルを膝に突きたてた完全装備の警官官が向かい合わせに座っている。間違いなく私の住む横丁通りが大捕り物のターゲットだ。自分自身のビル入り口は見ることが出来ない。もしスナイパー部隊が階段を駆け上がってきたら、そしてワタシのドアがノックされたどうする。音を立てずにドアを開け鉄柵ドアが大型南京錠でロックされているのを確認した。仮にドアがこじ開けられたら、ノックの時点でシャワールームに逃げ込み換気扇を回す。こうすれば室内の音はまったく聞こえない。便器に腰掛け読書に徹するとの言い訳と作戦を考えた。
作戦が決まるとピーピング・トムは気持が落ち着き大胆な行動に出た。
山本五十六連合司令長官が撃墜されたブーゲンビル島に思いを馳せ、独自のブーゲンビリア作戦でスナイパーたちの動きを葉陰から追いかけた。
ひとりは真ん中のライフルを構えたまま階段を上っていった。ひとりは上り口でライフルを構えている。真向かいのビルとは言え、どの階がターゲットかは分からない。各家庭の窓際から人影が消えた。
ハラハラのしどうしだったが、不揃いのTシャツを着た若者たちが4人か5人、ライフルに急かされるように降りてきた。そして軍用トラックに押し込まれたように思えたが、ライフルを構えた完全武装がこちらのビルも見上げているので、詳しくは確認できなかった。
そしてゆっくりと扇動の軍用トラック、それからパトカー、そして後続の軍用トラックがマハバンドゥーラ大通りへと消えていった。時間は3時15分だった。30分のドラマだった。その途端にむかいのビルの窓窓が下の通りを眺める人で満艦飾となった。そしてシタの通りには男どもが大勢繰り出し情報交換が始まった。外国籍の人間はあくまでも居候である。ベストの対応は達磨のごとく沈黙していること。
という訳で、シュシ学はまたしても次回に繰越となった。
今のミャンマーでは何が発生するか分からない。
ただいまのヤンゴン時間11月23日(火)午前8時20分。今から発信トライします。
東西南北研究所
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