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<ミャンマーで今、何が?> Vol.44
2013.5.15

http://www.fis-net.co.jp/Myanmar


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・週刊メルマガ一周年記念
  00:長ったらしい前置き
01:ミャンマーの麻薬ストーリー
02:初代麻薬王ローシンハン
03:二代目麻薬王クンサー
04:ワ州(Wa State)
05:三代目麻薬王パオユーチャン
06:麻薬地帯は独立王国
07:中国の介入
08:ワ州が新たな火薬庫となるか?

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00:長ったらしい前置き

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「ミャンマーで今、何が?」と目の前の話題ばかりを追いかけてきた。そして1年が経過した。6年ぶりに日本を訪れ、今ミャンマーが政治関係はもちろんのこと、経済紙・一般紙のみならず、スポーツ紙にまで大きく取上げられるようになり、世の中が確実に変わったことを実感した。

数年前であれば、日本なり、隣のバンコクを訪れるミャンマーの人たちは始めて体験する外国の玄関口でびくびくしていたものだ。いかめしい制服を着た空港の移民官に意味不明な外国語で話しかけられ、恐る恐るパスポートと入国カードを提出したものだ。そしてあまりにも落ち着かない不審な態度のため、別室で厳しい調査を受けることもあった。そして実際に入国を拒否され母国へUターンさせられたミャンマー人もいた。

だが、時代は変わった。確実に変わった。しかも突然変わった。

変わったのはアウトサイダーだけではない、明らかにミャンマー人自身が変わった。特にミャンマーの若い世代が変わった。これまでの卑屈な態度が消えてしまった。もうびくびくする必要がないのだ。

例えば、高田の馬場で、浜松で、名古屋で話しかけられて、インドと中国の中間にあるのがミャンマーです。シンガポールからマレー半島を北に向かい、マレーシア・タイの次がミャンマーですなどと余計な説明が不要になったのである。

籠の鳥だったスーチーさんがノルウェーのオスロでノーベル平和賞を受賞する。ノルウェー国王ご夫妻がご臨席の世界で最も格式の高い場所である。ロックバンドU2のリーダーBonoがスーチーさんを自家用ジェット機で送り迎えする。そしてアイルランドのコンサート・ステージにスーチーさんが登場する。スーチーさんに捧げられた“Walk On!(歩き続けなさい)”が演奏されると会場は総立ちで歓喜の声に包まれる。オックスフォードでは旧き友人たちがこれまでの苦労を慰労するように温かく迎える。それだけではない。このほっそりとした一人のミャンマー女性を世界各国の首脳が尊敬のまなざしで恭しく迎えた。

ニューヨークでもそうだった。懐かしい国連でもそうだった。女学生時代を母親と共に過ごしたインドでもそうだ。そして日本の京都でも。一連の国際ニュースはミャンマーの人たちに誇りと自信を与えてくれた。中にはそっと涙をぬぐったミャンマーの年配者も何人かいる。多分これまで苦労してきたのだろう。そして今信じられないことが目の前で起こっている。

決して同質ではない。だが、1936年ベルリン・オリンピックで優勝した前畑秀子を雑音ノイズに耳をそばだて必死に応援した当時の日本人と同じような心情だったのではないだろうか。そして“勝った!勝った!前畑勝った!”は伝説となった。貧しくひもじかった戦前の日本に一人の日本女性が誇りと自信を与えてくれたのだ。

今の若い世代には信じられないだろうが貧しかった日本。そして今のミャンマー。ラジオと衛生テレビの違いはあるが、すべてがオーバーラップする。若い日本人の両親の時代、そして祖父母の時代。それが今ミャンマーで起こっているのだ。その大役を果たしてきたのがスーチーさんで、これからもスーチーさんが果たす仕事は際限なくある。ミャンマー人に自信を与え続けながら。

オーストラリア人が創刊し、社長兼編集長を務める“ミャンマー・タイムス紙”が最近露骨なほどのスーチー批判を展開している。ロヒンジャー問題に対するスーチーさんの沈黙、そしてレッパダウン銅鉱山問題での政府批判をスーチーさんが手控えていること、が同紙が批判を開始した出発点と思われる。典型的な西洋人的発想法で、東洋的な深読みと相容れないものがある。

この点の相違を明確にするために、‘ミャンマーの今’に囚われずに、ミャンマーのDNAにも取り組んでいきたい。

前置きがかなり長くなったが、ありがたいことにミャンマーの経済記事、そして日本企業のミャンマー進出については多くのメディアが取上げるようになった。それはそれでそちらにお願いするとして、週刊メルマガ「ミャンマーで今、何が?」は創刊一周年を記念して少し毛色の変わったお話をしてみたい。多分、今週号だけでは終わりそうにないお話である。話は古いが今のミャンマー人のDNAにその痕跡を見出すことがあるかもしれない。


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01:ミャンマーの麻薬ストーリー

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突然だがオーピアム、すなわち麻薬の話である。

ミャンマーの麻薬王は初代がローシンハン(羅新漢または羅星漢)、二代目がクンサー(張奇虎)、そして三代目がパオユーチャン(鮑有祥)。

このあたりの事情にずば抜けて詳しいのは高野秀行氏で、同氏は1996年ミャンマーのアヘン地帯に7ヶ月間潜入し「ビルマ・アヘン王国潜入記」にまとめた。同時に同氏の「ミャンマーの柳生一族」はこのあたりの事情を知る必読の書でもある。


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02:初代麻薬王ローシンハン

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同氏によれば、米国ジャーナリストチームが1970年に“Opium King”というドキュメンタリー映画を製作した。初代麻薬王ローシンハンはラショーから東に数十キロのコーカン(果敢)地区出身の漢人である。この地区は90%が漢人で、明朝最後の皇帝が清に追われてビルマに逃げ込んだ時、皇帝に同行した一族で、現在の人口は10万人以上に上る。アヘン生産は全ミャンマーの2割近くを占める。

「我々は貧しい。アヘンを作らないと暮らしていけない。もし米国が経済援助をするなら、私がアヘンを根絶して見せよう」と映画の中で大見得を切り、当時のニクソン大統領に新書を送ったりもした。

だが、米国からは無視され、ミャンマー政府に逮捕・投獄され、初代麻薬王としての在任期間は3-4年で、二代目と交代することになる。だが、ローシンハンは3年後に出獄し、ミャンマー政府と手を結び、裏表のビジネスに深く関わっている。


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03:二代目麻薬王クンサー

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ラショー近くの町ロイモーの出身で中国人とシャン人の両親のもとに生まれた。1970年代後半から1980年代半ばまで活躍するが、二代目の凄さはアヘンを精製し純度99%のヘロイン、いわゆる“No.4”を開発したことにある。その高品質のために、世界のヘロイン市場が一変したといわれている。タイ国境付近を支配地区として「我々はミャンマーではなく、タイ人である」と語っていた。クンサーが作ったタイ国のホームン市場には学校、水力発電所、ダム、カラオケ、ゴルフ場もある。しかし、1996年にはミャンマー政府に降伏した。この二代目は2007年10月27日ヤンゴンの自宅で亡くなった。74歳であった。


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04:ワ州(Wa State)

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タイ・ラオス・ミャンマーの三カ国が国境を接する“黄金の三角地帯”の内、アヘン生産はミャンマーが9割以上を占める。そのほとんどが中国との国境地帯で、ミャンマー国内のアヘンの6-7割は日本の岐阜県とほぼ同じ面積の“ワ州”の生産である。

初代のローシンハン、そして二代目のクンサーもヘロイン原料のアヘンの半分以上はこの“ワ州”から仕入れていた。この“ワ州”は中国雲南省の人民解放軍や共産党幹部との結びつきが非常に緊密である。


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05:三代目麻薬王パオユーチャン

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ラショーから数十キロ離れた“ワ州”の軍関係者で、ワ州連合軍司令官とされるが、地元の村人はゾンスーリン(総司令)またはターパンと呼ぶ。

ワ族は昔から首狩族として名高い。国民党の残党がワ州に逃げ込み、一時居座ったが、これがタイに出て行くと、今度はビルマ共産党がここに拠点を構えた。ところが、1989年ビルマ共産党内にワ族・中国系によるクーデターが発生しビルマ共産党は追放された。その首領が三代目パオユーチャンで当時の首相キンニュンと停戦協定を結ぶ。


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06:麻薬地帯は独立王国

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このようにミャンマーの麻薬地帯は中央政府がコントロールできない不法地帯で、私兵軍団を構えた独立王国でもあった。

ミャンマー政府も下手に手を出せないのである。一方、民主化の影響というかこの地区一帯の状況がマスコミで報じられるようになった。そのひとつが週刊ジェーン防衛誌の4月29日号である。


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07:中国の介入

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中国の兵器廠は中国・ミャンマーの国境地帯に沿って軍事行動を展開している連合ワ州軍(UWSA)に対して、攻撃用ライフル・マシンガン・ロケット砲・MANPADSと呼ばれるHN-5シリーズの人が携行できる対空防衛システムのみならず、PTL-02 6x6車輪の"戦車デストロイヤー"および中国製4x4 ZFB-05sと判明したその他の装甲戦闘車輌などを供給している。週刊ジェーン防衛誌の4月29日号には、TY-90空対空ミサイルを装備した中距離輸送ヘリコプターMi-17を中国はUWSAに供給したと報じている。


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08:ワ州が新たな火薬庫となるか?

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ミャンマーが世界のビジネスチャンスと浮かれるのも結構。この週刊メルマガは別の角度からミャンマーという国を眺めてみたい。次回をお楽しみに。「ミャンマーで今、何が?」は毎週水曜日発行で、しかも無料です。





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