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<ミャンマーで今、何が?> Vol.417
2021.03.03
http://www.fis-net.co.jp/Myanmar

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━━【主な目次】━━━━━━━━━━━

■言論統制は独裁国家の常套手段

 ・01: 2021年03月02(火)午後8時発表

 ・02: 苦ー出たー!は検閲用語

 ・03: ホップ編

 ・04: ステップ編

 ・05: 日本のTVが報じないミャンマー情報

 ・公式ツイッター(@magmyanmar1)

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・01:2021年03月02(火)午後8時発表

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陽性感染者数合計:141,965名
新感染者数:49名
死者数合計:3,199名
退院者数合計:131,534名
現在検査中:名(*数字判明せず)
出典:ミャンマー連邦・保健スポーツ省
(*2月1日のクーデター以来、軍事独裁政権となり、コロナ統計は意味を亡くしてしまった)



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・02:苦ー出たー!は検閲用語

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2020年11月8日の国民投票で正式に選出された民主政権を、2021年2月1日早朝武力によって政権奪取したのが現在の軍事独裁政権である。その後ろめたさからか、この出来事をクーデター呼ばわりされるのを極度に嫌い、“クーデター”と記載した印刷媒体を検閲し、発刊停止などの厳重処分を行い始めた。

チューキョーなど独裁政権につきものの言論統制である。
その軍事独裁政権は“クーデター”という言葉を目の敵(*かたき)としている。
その“クーデター”についてミャンマーの歴史を振り返りながら解説をおこないたい。

軍事政権がお手盛りで作成した2008年憲法に従い、2011年1月31日に上下両院(*民族代表院と人民代表院)からなる連邦議会が召集され、2月4日にテインセイン大統領と副大統領二名が選出された。

両院の議長と副議長も選出され、3月30日には軍事政権(*国家平和発展評議会SPDC)の解散とテインセイン新大統領を国家元首とする新政府の発足が宣言された。正副大統領を含む全33人の閣僚も発表された(全員男性)。

ここに23年間にわたる軍事政権の幕が下ろされ、名ばかりの“民主政権”が誕生した。テインセインは旧軍事政権のNo.4だった元大将で、下院議長はNo.3だった大物“トゥーラ”シュエマンである。二人いる副大統領の片方は今回のクーデター政権で臨時大統領に指名された軍人出身のミエンスエである。

閣僚33人中27人が退役軍人であった。さらには上下院両院それぞれの議席の25%はあらかじめ軍人に割り当てられていた。残り75%の議席は選挙で選ばれるものの、2010年11月の総選挙ではスーチー率いるNLD政党は参加出来なかった。これこそ公明でない不正選挙であった。

その結果当選者の6割強は軍出身者ないしはそれに準ずる軍にとって害のない人物だった。これでは“民政移管”したとは言え、実態は「軍による新しい形態の支配」となる。
この部分は根元敬著『物語ビルマの歴史』(*中公新書2014年)の指摘が非常に的確である。

またまた余談に入るが、この著書との出遭いも奇遇である。コロナ禍で私のパートナーもヤンゴン事務所をそのままに日本で様子見だった。だがコロナの先行きが見えない。事務所を畳む決心をした。そこで多くの家具・電化製品・パソコン類などが処分されることになった。

本棚からこっそり貰い受けしたのがこの本である。形の上では許可を頂いたが、火事場のコソ泥だ。お陰でビルマの歴史を振り返ることができた。特にクーデター後の一ヶ月を検証する強力な助っ人となっている。ヤンゴンで金鉱を掘り当てた気分だ。メルマガ上で特別にお礼を申し上げたい。

そこで話を戻すと、根元敬の凄いところは2011年から2015年のテインセイン政権を軍事政権と喝破していることである。このメルマガも前半は騙されたが、テインセインを賞賛するマスコミが多すぎる。その延長線上でクーデターを解説したらミャンマーを大きく見誤る。

国家が非常事態に直面したと判断した際は、大統領は全権を国軍最高司令官に委譲することが出来るという規定がある。この規定を恣意的に利用すれば、「合法的」に軍がクーデターを行えることになる、と2008年憲法の問題点を解説している。

根元敬は2008年の憲法を字面で解釈すればクーデターもありうる。だが実際にそれを起こす合理性はまったくないと驚愕している筈だ。だからこのメルマガではバカ殿乱心とみた。だからこそ、国軍による利益供与を受けない一般市民は連日“反軍部独裁”の狼煙を全土で上げている。♪地球の終わりまで軍事独裁政権は許されることはない♪カバー・マチェイ・ブーである。



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・03:ホップ編

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苦−出たー!解明の主要ポイントを勝手に根元敬の書籍から抜粋してみた。
ミャンマー軍事政権の年表だが、独裁政権の露骨な意図が読み取れる。

2002年12月ネウィン死去。国営メディアでは報道されず。遺族による死亡公告のみ。
2003年8月政権移譲への民主化7つのステップをキンニュンが発表。
2004年10月軍事政権No.3のキンニュン逮捕で、首相失脚。

2005年11月ネイピードへ首都移転開始。
2007年8月燃料費大幅値上げを発端とした大規模デモ発生。9月同情した仏教僧侶らによる反政府デモ全国各地で展開され、読経しながら行進し、軍事政権に反省を迫る僧侶らしい行動を取った。

日本人ジャーナリストの長井健司が兵士に撃ち殺されたのもこの時で、欧米マスコミは僧侶と市民による抗議デモを“サフラン革命”と呼んだ。

根元敬はその著『物語ビルマの歴史』の中でサフランの色も、革命という表現も、適格でないと指摘している。これは重要なポイントで、欧米および日本のメディア報道は事件の本質を把握していない。正にそのとおりである。だがこのメルマガは“サフラン革命”の言葉だけ借用する。

“サフラン革命”を銃弾で弾圧した軍事政権の殺戮は、今回2021年2月1日以降の軍事政権を占う意味で非常に重要なので、徹底的に解剖していきたい。“誰が”と言う主語を秘匿する技術は日本語独特である。検閲との智謀戦に活用するつもりだ。

2008年5月大型サイクロン・ナーギス被災(*死者14万人、被災者240万人)

ここまでは苦ー出たー!解明の基礎となるミャンマーの現代史ホップ編である。
次に三段跳びに例えてステップ編を用意した。



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・04:ステップ編

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<2011年>5月テインセイン大統領就任後初の外遊先が中国。胡錦濤国家主席と会談。
8月大統領執務室において、テインセインとスーチーが公式対話。頭上にアウンサン額縁。
10月第一回目の政治囚大規模釈放。これは政治犯のみで、極悪犯罪人ではない。

11月政治法改正で、スーチーのNLDが政党登録。
11月ASEAN首脳会議がビルマの2014年議長国就任を承認。
12月米国のヒラリー・クリントン国務長官がビルマを公式訪問。

<2012年>1月第二回目の政治囚大規模釈放。主要政治囚は全員自由の身となり、選挙への出馬資格を得たことになる。政治法改正以前は、前科があるとして資格剥奪されていた。これはスーチーの粘り勝ちであった。

4月上下両院および地方議会の補欠選挙実施。対象となった下院37議席と地方議会2議席、上院も6議席中4議席を獲得しNLD圧勝。スーチーも下院で当選。
4月EUがヤンゴンに事務所開設。

4月テインセイン来日。野田首相と会談。
5月スーチー釈放後、最初の外遊先としてタイを訪問。ダボス会議がスイスからバンコクにやってきた。World Economic Forumアジア版を開催した。スーチーを迎えるためだけにである。

6月ラカイン州北部で反ロヒンギャー・反ムスレム暴動発生。200人が死亡。
6月スーチー、欧州訪問中にオスロで1991年に受賞したノーベル平和賞の受賞演説を行う。
9月スーチー、米国を訪問。オバマ大統領と会談。

11月オバマ大統領が日帰りでヤンゴン訪問。ヤンゴン大学で講演。スーチーと会談。
<2013年>3月ビルマ中部のメイティーラ反ムスリム暴動発生。43人が死亡。
3月スーチー、国軍記念日式典に来賓として出席。

4月民間の日刊紙発行始まる。スーチー記事・写真で紙面は埋まるようになった。
5月スーチー、日本政府の 招請で来日。
5月テインセイン、訪米してオバマ大統領と会談。

5月安倍首相ビルマを訪問、テインセインと会談。
8月1988年の民主化運動25周年を記念する集会がヤンゴンで開催された。
9月スーチー、中欧3カ国を訪問。

以上根元敬著『物語ビルマの歴史』から適宜採択。
このステップ編はロヒンギャー問題を含めて2011年2月1日発生したクーデターの布石となっている。



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・05:日本のTVが報じないミャンマー情報

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最後の“ジャンプ偏”に入る前に、時間をワープして街の様子をドキュメントしたい。
月日のたつのは早い。2月最終日の2月28日(日)は22222以来の大規模なデモ展開が全国で繰り広げられた。CDMの若々しい戦略は硬軟取り混ぜ国軍側をはぐらかすことができる。

当然フットワークは軽い。大通りを走行する重量装甲車の地響きに対して、横丁から飛び出ては横丁に引っ込むゲリラ戦法で、ベトナム戦争におけるベトコンのしなやかさがある。だがその強靭さはまだない。モハメッド・アリの蝶のステップだが、蜂の一撃には至ってない。

若者たちよ死んではいけない。国軍や警察の餌食となれば、それは無駄死にだ。決してヒーローではない。血の海を繰り返してはならない。スマホで知恵を絞れ、旧式の繰り返されてきた殺戮戦を、新式の智謀で切り抜けることだ。一人の被害者を出してもいけない。

このところ生徒のスマホを見て!見て!と見せつけられる。それがこのメルマガの情報源となる。煙を吐きながらガス弾が若者たちに飛んでくる。たっぷり水を含んだ布切れで若者が着弾したばかりのガス弾を包み込む。もう煙は出ない。水満タンのバケツと布切れが若者の頭脳である。

勇敢な若者は、着弾した煙を吐くガス弾を掴み、そのまま警察隊のど真ん中に投げ返す。今度は警察隊が煙に包まれる。スマホの動画は逃げ惑う警察隊のアホな姿を捉えている。
ガス弾の煙幕で、ガス弾発射の目標までが見えなくなる。若者の頭脳は日ごとに進歩している。

警察隊がアホに見えてくるが、彼らを操るバカ殿はますます陰険な方法に逃げ込む。
前回横丁に逃げ込んだ若者たちを一階の店舗が匿う話をした。

これには後日談がある。その店舗がスマホでそっと警察に連絡して、どういう訳かころあいを見計らって突然ガサ入れが行われ、若者たちがお縄頂戴となる。生徒のコメントでは、このオヤジは警察の親戚ではないかと鋭い見立てをする。

その店舗の主は近所では親切なダンナで通っている。あすこへ逃げ込むと匿ってもらえるとウワサがたつ。そこへどういう訳か警察が突然ガサ入れに来る。そして学生たちをしょっ引いていく。複雑国家のミャンマーでは、これを見極めるのがウワサの眼である。

タクシーの運チャンはもっと悪辣で、警察隊の銃声が近くで聞こえると、若者は必死に逃げ惑う。タクシーのドアが大きく開かれ、5・6人ばかりを中に押し込む。助かったと思う間も無くタクシーは警察署に到着。運チャンはその仕事を一日中繰り返す。そして一日の報奨金300,000チャットを警察から受け取る。悪くない稼ぎだ。これこそ国軍の手法である。

ミャンマー人は日本人よりはるかに行動力がある。自分自身そう書いて忸怩たるものがある。
このメルマガは何一つ行動していない。情報を集めているだけだ。
CDMデモの勇敢さに、自分も何かしたいとボランティア活動を始める。自分でアイデアを考え貢献する。

割と裕福な4人家族が乗用車で駆けつけ、デモ隊に現金、食料、菓子類、飲料水などを手渡していた。その4人がデモ隊とともに逮捕されてしまった。現在シンガポールで働く私の生徒のガールフレンドの家族4人だ。すぐに仲間内でスマホ連絡が飛び交った。

一晩ブタ箱で過ごしたが、デモ隊と違うと判定され翌朝家族は全員釈放された。もちろん連絡はやきもきするシンガポールにも飛んだ。本当に時代は変った。極東の島国をヤンゴンから眺めるとまったく別世界だ。悪代官の田舎芝居を見せられている気がする。

生徒の一人は気が向くとヤンゴン国連事務所前で座り込みをする。
ほとんどは英語のプラカードだ。デモ隊の意図ははっきりしている。

『あと何人殺戮されたら、ミャンマー独裁政権の問題を国連の場で取り上げてくれるのですか?』と英語で書かれたプラカードを掲げた青年の写真を見せてくれた。その次にゴム弾が命中しこの青年が血だらけで横たわっている写真を見せられた。この二枚とも世界に流された。

スマホのアピールは国連だけが対象ではない。地球上の電波の届くところすべてが対象だ。若者こそスマホの使い手だ。フランスの英語放送『FRANCE24』が24時間Streamlineで国連事務所前の若者を取り上げていた。

世界の報道がバランスが取れていると思われるのが、自国フランスの前大統領のサルコッチー汚職より多くの時間をミャンマー独裁政権に割いていることだ。隣国タイで活躍する東南アジア問題専門家、国連の人権問題専門家、ミャンマー反体制派のジャーナリストなどがパネリストとして英語で連日解説してくれる。

YouTubeを日本に切り替えると、どこのデパ地下が安くて旨い弁当を売り出したとか、博多ラーメンか札幌ラーメンか、地元ビールの紹介だ。平和でなにひとつ心配事も不安もない日本が羨ましい。

生徒たちにとってアメリカンドリームは遠すぎる。ジャパンドリームならという気になる。老骨の身としては、出稼ぎではない、祖国に留まりミャンマードリームが叶えられないか? それに無い知恵を絞りたい。だがいま祖国が血の海だ。カバー・マチェイ・ブーだ!!

最後はお笑いで締めたい。
私の生徒といっても優劣で言えば千差万別である。その“劣”のほうでずば抜けた女生徒が近所の高校生を集めて英語教室を始めた。女の子3名と男の子4名の計7名である。

しっかりと私の英語理論を踏襲し、Alpha、Bravo、CharlieからYankee、Zuluまでやり始めた。
私は常にドナルド・トランプのビデオを見せて、英米語はビルマ語とは違う顔の筋肉で発声している。見てごらんトランプの顔がひん曲がっているだろうとオーバーに教えている。

二日目の授業当日、7名の生徒全員から電話があったという。
今日は顔の筋肉が痛いので授業は休ませてください。
別の日に授業参観に行った生徒の1人からこのエピソードを教えてもらった。

私のPhonetic英語理論は出来の悪い生徒にも確実に継承されている。
それからこの英語教室はまったく無料のボランティアだそうだ。このDNAも見事に受け継がれている。この国で最も高価な資源は若者世代と私は判断している。

ただいまのヤンゴン時間3月03日(水)午後4時00分。
これから発信トライ。



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