******************************

<ミャンマーで今、何が?> Vol.317
2019.7.3

http://www.fis-net.co.jp/Myanmar

******************************


━━【主な目次】━━━━━━━━━━━

■U Myint Swe副大統領が鍵を握るか?

 ・01:2020年の総選挙を控え、読めないこと

 ・02:不気味なU Myint Swe副大統領?

 ・03:ていでん、テイデン、そして停電

 ・公式ツイッター(@magmyanmar1)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━



=============================

・01:2020年の総選挙を控え、読めないこと

=============================


来年2020年末に総選挙が予定されており、当然、スーチー内閣(第一次)の評価が国民から下されることになっている。

総選挙を一年半後に控えた現時点での分析はするが、選挙予想はしない。
このメルマガは競馬の予想屋ではない。それはミャンマーの国民の仕事である。

その分析をするに当たった、このメルマガで読めてないことが幾つかある。
それを順不同で列記してみたい。


#1:これまで、スーチーの盟友とされたシュエマンの動きがおかしい。


2019年2月28日付イラワジ紙によれば、2016年に国会の承認を得て特設され、12月毎に任期延長されてきた、シュエマンが委員長を務める“法関連特別ケース審査委員会”の任期延長がNLD党員が多数を占める議会で昨日否決された。参考までに、賛成20票、否決555票、棄権10票。

この特別委員会は、法案の改正・廃止、新法の提案を推進する強力な権力を有し、NLD新政権になって新設された。言ってみれば、シュエマンはスーチーと軍部の橋渡しを行う仲介役と見られていた。だが、シュエマンは2月はじめ突然Union Betterment Partyという新政党を立ち上げ、来年の大統領選に出馬すると発表した。なお、新政党のメンバー12名は同委員会のメンバーでもある。NLDでは、この動きはスーチーに対する裏切りであり、挑戦であると捉えているようだ。

2019年4月9日付イラワジ紙によれば、タンシュエの健康問題がウワサとして取りざたされるなか、その憶測を助長する行動は慎むため、シュエマンは今後タンシュエとは一切会わないと同紙に語った。

現地マスコミでは、この頃からタンシュエの老化が問題とされていたようだ。シュエマンはいち早くタンシュエの目の白濁を見て取り、行動を起こしたとも取れる。


#2: 初代大統領Htin Kyawの解任


スーチーが全幅の信頼を寄せる同志として民主化後の初代大統領に据えたティンチョウではあるが、僅か2年間の任期で2018年3月21日に突然解任された。そして現在のWin Myint現大統領に取って代わられた。当然スーチーの意向と見るべきだが、その真意が見えない。

確かに、解任前の2017年9月バンコク、2018年1月23日シンガポールへ、それぞれ健康診断に出かけたが、解任後の元大統領は地元英字紙への登場が皆無となった。それだけに何かあったと見ていたのだが、それを証明する情報は何一つ流れてこなかった。

そして、今年初めごろから、何らかの式典に参加する元大統領夫妻の姿を地元紙で見かけるようになった。

実は、もうひとり重要人物がいるのだが、この人物は別に章を設けて説明したい。



=============================

・02:不気味なU Myint Swe副大統領?

=============================


上記ティンチョウ大統領の辞任によって、このミエンスエ副大統領は、次期ウィンミエン大統領が就任するまでの約一週間、憲法の定めるところにより臨時大統領を務めた。

ミエンスエ現副大統領は、国防軍が指名権をもつ25%枠の国会議員として参画し、民主政権後初のティンチョウ大統領の第一副大統領として2016年3月30日に宣誓した。

同副大統領は、ビルマ人が大半を占める軍隊では珍しいモン州の出身で、軍隊ではモン族の出世頭といえるだろう。

2012年ごろ、元Tin Aung Myint Oo副大統領が辞任した後、後任としてミエンスエが取り沙汰された。だが、彼の娘がオーストラリア人と結婚していたため、憲法上の規定でミエンスエの副大統領就任は立ち消えとなった。

だが、これは明らかに、憲法上スーチーの大統領立候補を阻止するための陽動作戦に利用されたと見るのが地元識者の一致するところである。
さらに、おもしろいのが、その後このオーストラリア人は外国籍を捨てミャンマー国籍を取得したので、現在のミエンスエ副大統領は2008年憲法に抵触しないというオチがつく。

どうしてミエンスエ副大統領を、不気味なと大げさなタイトルで別格としたのかと言うと、彼の本籍は軍事政権時代の与党USDPであるからだ。

だが、この副大統領は現在何をしているかというと、重要な仕事は多数あるが、最も象徴的なのが7月19日に迫る殉難者記念日の準備委員会の総指揮官である。多くの担当連邦大臣やヤンゴン首相以下に必要な指示を下す。

なぜ、象徴的かというと、シュエダゴン北口の殉難者廟、日本大使公邸近くのアウンサン将軍博物館、アウンサン臨時首相以下が暗殺された旧総督府、という重要な国家施設に関連しているからだ。すでに当日、それらの施設付近での交通規制は、担当省庁から発表された。

これらはすべてアウンサンスーチーの父親であるアウンサン将軍に関するものである。
この父・娘のシナジー効果を最も怖れたネウィン、タンシュの両元老は、殉難者廟ですら近寄らず、軍人の参加にも目を光らせていた。だから、当日は近親者のみが、勝手に花輪を捧げ、深々と参拝することを許していた。

もちろん、マスコミのカメラマンは、スーチーを一番のターゲットに遠巻きに参列者の写真を撮り、翌日の新聞に掲載していた。

ところが、スーチーの新政権が発足すると、チラホラと軍関係者が参列するようになり、陸海空三軍の最高司令官であるミンアウンラインは、スーチーの自宅で挙行される法事にすら出席するようになった。

その席上で、法事を執り行う高僧より、軍の総指揮官ミンアウンラインと政治の指揮官アウンサンスーチーは、国父であるアウンサン将軍が残した真の兄弟・姉妹のようなものである、これからも仲良く歩んで欲しいと二人に諭した。するとスーチーは即座に、ミンアウンラインは私より齢下の弟です。ミャンマーでは年長者の姉の言うことを聞くべきですと発言している。
スーチーの強気の発言に、国軍の長は、何ら反論できなかったと言う。

話はミエンスエ副大統領の話であった。
彼を不気味と称したのは、新聞のどこを読んでも、シュエマンのような不満な行動が何一つ見えないことである。副大統領は殉難者記念日の下準備を率先して黙々とこなしている。

タンシュエ元元老の老化現象が現実のものとなった今でも、何一つ動かない。
淡々と自分の職務をこなすだけである。

スーチーの身近で副大統領職を務め、国政舵取りのその手腕を見て、しかも自分の鑑とするアウンサン将軍の娘である。心の内面に何らかの変化が起きたのだろうか?

シュエマンが最大野党のUSDPから追放された今、USDPの最高幹部であるミエンスエの影響力は大きい。軍人世界には命令系統の組織である。シュエマンが12名の同志というか部下を率いて新党を結成した。

仮説を立ててみる。
かってはUSDP内で最も強硬派と怖れられた人物である、シュエマンと違い最大野党のUSDPでの同調者はかなりの数に上るだろう。
その副大統領がタンシュエの弱体化を知り、さらにはスーチーの権力を目の当たりに見て、この国の空気が大きく変化するのは、当然感知しているはずだ。
そのような状況下で、スーチーに挑戦するのは、負け戦に突入した日本軍のようなものだ。

負け戦に突入する将軍はいない。
老獪な将軍ならば、寝返るのも、ひとつの戦略だ。
同調者を多数引き連れて、スーチーの傘下に下る。スーチーは当然優遇する。

これはスーチーのシナリオでもある。
軍部の一角が大きく崩れる。
2008年憲法が改正できる。
不可能を可能にするスーチーの戦略である。

だが政界には“一寸先は闇”という魔物が潜んでいる。
ヤンゴンでは赤鉛筆を耳に挟み、日刊英字新聞を読み耽るのが最高のギャンブルである。


=============================

・03:ていでん、テイデン、そして停電

=============================


2時間の停電時間を延長すると発表した途端、ブーイングがヤンゴン全域で発生した。
風見鶏のヤンゴン地区政府は、慌てて新聞発表し、停電解消に全力を尽くすと明言した。
それからがミャンマーのおもしろいところで、ヤンゴンのアチコチで静音式発電機が地響きをたてている。

スーチーもこれには頭を痛めている。
最も大きな問題は、前軍事政権が国庫を空っぽにして、スーチー新政権にバトンタッチしたため、何をやるにも予算が付かないことだ。
そしてミャンマーには豊富にあるはずのエネルギーを海外に売却して、将軍の私腹を肥やし、国家百年の計など無視したことが最大の失政である。

それを軍部に煽られているのか知らないが、すべてスーチーのせいにする輩が大勢いる。それを鵜呑みにする外国人のヤンゴン居住者も多数いる。それが日本人であれば、同胞として尚更情けない。それがまた日本のマスコミに流される。

そこでスーチーが環境問題などを勘案して力を入れ始めたのが、太陽光発電である。
6月28日のGNLM紙には、マグウェイ地区ミンブの太陽光熱発電開所式にスーチーが出席と大きく第一面に出ている。正直なところ、この程度では焼け石に水である。

そのほかにもオランダ、スウェーデン、アイルランドなど諸外国の支援で風量発電、地熱発電、なども検討中と聞いている。
軍事政権は、巨大なミッゾンダムを中国専用にすると契約した。無責任なテインセイン軍事政権はその工事を突如中止したが、膨大な巨額の違約金が日毎にスーチー政権を圧迫するばかりである。

このような状況下で2020年の総選挙を遠望すると、スーチーに再び国政を任せるとの国民の審判が下ったとしても、多事多難である。

不吉なことを書くが、総選挙の前に異変が起これば、もちろん重石としてのタンシュエにである、シュエマンとUSDPが手を結ぶことも不可能ではない。大統領職、それがシュエマン最後の野望であるからだ。

一寸先は闇である。
ミャンマーの政界は字面を読んでも分からない。すべては行間に書いてある。
夏の選挙よりも、南国の来年の選挙がもっとホットになりそうです。
時間はたっぷりあります。ぼちぼちネタを仕込みましょう。
分析はそれからのことです。



========================================

公式ツイッター(@magmyanmar1)

========================================


<ミャンマーで今、何が?>の公式ツイッター(@magmyanmar1)をはじめました!


今月よりアカウントを取得し、<ミャンマーで今、何が?>の
公式ツイッター運用を開始いたしました。

公式ツイッターでは読者のみなさまからの感想などをツイートしていただけると
嬉しいです。

ツイッターをご利用の方はぜひ『フォロー』をお願いいたします。

現在のところリプライには対応しておりませんので、
質問等は下記メールアドレスまでご連絡ください。

お問合せ:magmyanmar@fis-net.co.jp 

公式ツイッターをぜひご覧ください。


■公式ツイッターはこちら

https://twitter.com/magmyanmar1




東西南北研究所




━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ご意見、ご感想、ご要望をお待ちしております!
 http://www.fis-net.co.jp/Myanmar
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
※「ミャンマーは今?」の全文または一部の文章をホームページ、メーリングリ スト、ニュースグループまたは他のメディア、社内メーリングリスト、社内掲示 板等への無断転載を禁止します。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
※登録解除については下記のページからおこなえます。
○購読をキャンセル: http://www.fis-net.co.jp/Myanmar
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
発行元:ミャンマーメールマガジン事務局( magmyanmar@fis-net.co.jp )
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━