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<ミャンマーで今、何が?> Vol.265
2018.7.23

http://www.fis-net.co.jp/Myanmar

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■それは奇跡だった!! 2週間におよぶ試練物語

 ・01: 少年たちの記者会見をAFP電とAP電で読む

 ・02: この救助作戦は、21世紀の難問解決を示唆

 ・03: 波乱のドラマが開始した

 ・04: 暗闇に閉じ込められた

 ・05: 奇跡

 ・06: AFPの図解説

 ・07: 英雄とは誰なんだろう?

 ・08: AFP電を、今度はAP電で補う

 ・09: 選りすぐりの海底洞窟プロダイバー

 ・10: サッカーとは英語?

 ・公式ツイッター(@magmyanmar1)


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01: 少年たちの記者会見をAFP電とAP電で読む

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AFP電チェンライ発が7月20日GNLM紙に出ている。詳細な図解5枚のキャプションがこれまた貴重な報道となっている。その後、英字紙ミャンマータイムズも入手できた。こちらはAP電である。AFPはフランス通信社、APはUPIとともにアメリカの二大通信社のひとつ。
詳細な図解をご覧になりたい方は“AFP”および“Thai cave rescue”をキーワードとして検索願いたい。

前回のメルマガは、少年たちの発見までで、肝心の脱出劇は記述なく、手抜きした。しかし、12名の少年およびコーチ揃っての初記者会見で、全貌がかなりはっきりしてきた。今回はこのAFP電およびAP電を参照して救出劇を主体にまとめた。この救出劇は、ミャンマーの若者たちへの教材として見事な物語となった。

AFP電&AP電に感謝したい!なお前回のメルマガは未熟で、不親切な内容だったので、破棄願いたい。



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02: この救助作戦は、21世紀の難問解決を示唆

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タイ国政府は歴史上かってない救出劇を演出した。そしてマスコミ対策も万全であった。少年たちは救出されチェンライの病院にヘリで搬送された。家族とも隔離され、身体的・精神的苦痛・トラウマなどを主体に綿密に検査された。過酷な経験を顧みる時間も、身体をリラックスする時間もたっぷりと与えられた。マスコミはその間、少年たちとの接触を厳重に禁じられた。その代わり、退院と同時に記者会見が設定された。だが、官房長官のブリーフィングとか、政府側の談話はない。イキな演出だった。

7月18日(水)夕方、チーム全員は退院を許され、マスコミに対し初めて記者会見が開かれた。今やWild Boarsのメンバーは、ワールドカップ出場選手よりも、世界的に有名になった。その記者会見内容を主体にしたAFPとAPの記事である。

今回の発見・脱出・生還劇はまさに総力戦の勝利であった。人間の叡智・現代の技術を結集すれば、インポシブル・ミッション(不可能な使命)でも達成できることを証明してくれた。日本の総力戦は第二次世界大戦で民族滅亡寸前まで瓦解した。だが、軍事政権といわれるタイ王国で、その総力戦を平和利用に転用することに成功した。同じ軍事政権でも、天と地の隔たりがある。核ミサイル騒動でオタオタする米国、韓国、日本、そして仕掛け人の北朝鮮、それら政治・軍事指導者に学んでほしい画期的な教材だ。

そこには、東洋的な智慧と発想があった。

この13名の生還作戦の途中、命を落とした元タイ王立海軍SEALのSaman Gunan軍曹に、感謝と冥福を祈るため、Wild Boarsのメンバーは、退院翌日、家族友人とともに、ミャンマーを見下ろすタイ北部国境のWat Pra That Doi Wai寺院に詣でた。そして、僧侶団の読経に和して無心に祈りを捧げた。

記者会見ではSaman Gunan軍曹の遺影が飾られ、最も若い11歳の少年が涙をぬぐった。25歳のコーチが語った。「自分たち全員を生かすためにSaman Gunan軍曹は自分の命を犠牲にされた。本当に悲しい。自分たちが無事に外に出てこれたとき、全員が悲しんだ。本当に悲しかった。軍曹が命を亡くされたのは、私たちに原因があるのだから。軍曹のご家族は悲嘆にくれ、これから先、さらなるご苦労・困難に直面されるでしょう」
救援作業の途中で命を落とした軍曹に最大の敬意を表するために、全員で相談し“出家”を決心した。タイやミャンマーでは一生のうち最低一度、Noviceという一定期間、僧院に入門し剃髪して“出家”する儀式がある。

ただひとつ残念なことがある。アノAdul君がクリスチャンを理由に参加できなかったことだ。今の世の中、大人の勝手な解釈で思想がまだ未成熟な子供に信仰・行動を押し付ける。フリーシンカー(自由信仰)の身からすると、この宗教という怪物が世界の歴史を歪めてきた張本人でもある。今年3月に亡くなったスティーブン・ホーキング博士は、クリスチャンが支配する西洋社会において、稀な例だがAtheist(無神論者)として有名であった。オカルトであるいかなる宗教も信じなかった。西洋文明のそして西洋科学の最先端に立つ“智の巨人”が、行き着いた哲学である。
話がまた逸れてしまった。本題に戻ろう。



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03: 波乱のドラマが開始した

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(*人名は、勝手ながら年齢だけで省略させてもらった)

サッカー練習後の小旅行は楽しみであった。それが生命を脅かす、2週間の試練の旅路に急変した。水位は上がり続ける、脱出路がまったく見えない、洞窟内に閉じ込められてしまった。

6月23日、サッカーチームWild Boarsのコーチは、若手の12名を引率して洞窟内に入った。これまでの経験からせいぜい1時間も掛かるまいと思った。だから、食料はまったく携帯していない。

7月18日(水)の記者会見で、12名の少年(11歳から16歳)と25歳のコーチは、初めて恐怖の体験と奇跡の脱出劇について語った。

少年の一人は、その日の夕方個人授業の予定であった。コーチは考えた。チーム全員が練習後、何度も複雑な洞窟内を探検し、曲がりくねったトンネル内を熟知している、だから、せいぜい一時間もあれば十分だ。これも判断基準となった。

タイのモンスーン雨季は間近だ。もうそこまで来ている。土砂降りだと洞窟内はしばしば洪水に見舞われた。今回も入り口付近はすでに水溜りができていた。入り口の注意書きは当然知っている。だが、子供たち全員、単純に内部を覗きたいというアドベンチャーを選んだ。

慎重で民主的なコーチは、洞窟を探検したいかどうか、皆に相談した。「行くなら、泳ぐほど深い場所もあるかもしれない?」 この25歳のコーチは少年たちにとって信頼の置けるメンターで、心から慕われていた。「中は濡れているうえに、寒いよ!」と言い聞かせた。だが、全員の希望は“それでも行きたい!”だった、とコーチはそのときのことを振り返った。

11歳から16歳の少年たちは、自転車とサッカー靴を入り口付近に置いた。実は、これが捜査の貴重な手がかりとなった。一人の少年が水溜りを掻き分けて中へ入っていった。そして皆はそれに続いた。



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04: 暗闇に閉じ込められた

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土砂降りにならなければ、全員は午後3時頃には我が家に帰りついたはずだ。(*これから逆算すると、洞窟に入って行ったのは午後1時過ぎと推定される。外はまだ明るい時間帯である) ところが、水流が洪水となって洞窟入り口から押し寄せ、壁際の水位は着実に増していった。結果として、洞窟奥へ奥へと追い込まれてしまった。

そこで、歴史に特記すべき、運命を決する(Fateful)際どい(Touch-and-Go)救出大作戦が開始された。

タイ王立海軍SEAL特殊部隊と洞窟潜水のプロ中のプロが世界中から呼び寄せられた。その特殊任務は、全員が協力して、この悪魔の迷路から消えてしまった少年の居所を特定すること。それが第一の使命。次に、何マイルにもわたる洪水の氾濫した水路を通って、少年たちを無事に地上に連れ戻すこと。それが第二の使命。世界中の観客が固唾を呑んで見守る中、ソレをやり遂げねばならない。SEALと潜水のプロたちにとって、名誉がかかる難題だ。

王立海軍SEAL部隊の元一員で、物資補給任務のSaman Gunanは、少年たちの所から入り口に戻る途中で空気を切らして死亡した。これで、子供たちの救出作戦は根本から、ヤリ直しとなった。

ジメジメした漆黒の暗闇に捕われた少年たちに、誰かがやって来るなど、思いもよらなかった。漆黒の暗闇と同じく、子供たちの生死も闇の中だった。これらが世界のトップニュースとしてノンストップで世界を駆け巡った。「もう家へは戻れない、そう思うと急に怖くなった」と13歳の少年は語っている。

幸運にも彼らは新鮮な飲料水、そう“命の水”、を手に入れた。「岩から滴り落ちる水を飲んだんだ!」と最初に水を掻き分けて中に入った16歳の少年が記者たちに語った。「水は透明で、普通の飲料水の味がしたよ!」 外野席からするとコレは予想外の発言であった。

長い時間が日となり週に変わっていった。少年たちは気分を盛り上げるためあらゆることをやった。このコーチは地元の僧院で仏僧として何年か過ごした。そこで、少年たちに瞑想のヤリ方を教え、心を平静に保ち、空気を意識して温存し、ゆっくり鼻で呼吸する方法を教えた。

少年たちには時間の観念がなかった。初めて眠りに着くとき、気持ちは落ち着き、少年たちは安らかに祈りを捧げた、とコーチは語った。



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05: 奇跡

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静寂な友愛関係が育まれていった。一方で、恐怖の瞬間も何度か経験した。水位が上がると、洞窟の奥へ奥へと移動していった。

ひとつ、少年たちが必死に試みた脱出作戦を付け加えておきたい。それは壁に穴を空け、掘り進むことであった。だが、地表から何百メートルも下の石灰岩の岩盤では、それはまったく無駄な愚かな企てであった。

「僕たちは岩石を使って壁に穴を掘り始めた。そして3-4メーターは掘ったと思います」と13歳の少年は語っている。

結果としてチームが落ち着いた先は、ちっぽけな棚状の場所だった。そこは洞窟入り口から約4kmも奥深い場所だった。そして最終的な結論としては、自分たちにやれることは、誰かが見つけてくれることをひたすら待つ。その希望を捨てないことだった。

ところが、少年チームにとって信じられないことが起きる。救援隊がやってきたのだ。ソレは9日目のことだった。チームのメンバーが人の声を聞いた。だが、その話し声はタイ語ではなかった。

洞窟ダイビングの英国人専門家二名だった。この二人は氾濫した洪水の水路で何日間も必死に闘ってきた。だが、終には、追い詰められた少年たちの居場所を発見した。
Wild Boarsの中で、唯一Adul Sam-on君14歳のみが英語を話せた。「ダイバーが水中から出てきて飛び上がらんばかりに驚いた。というのも、二人が西洋人だったからだ」とAdul君はそのときのことを思い出す。そして「それは奇跡だった。ショックを受け、僕は彼らに訊ねた“Can I help you?”(何かお手伝いしましょうか?)と」

その瞬間はダイバーの携帯するボディカメラでビデオ撮影された。その後、ビデオは放映され、世界をグルッと一周した。救援者に感謝する、びしょ濡れの少年たち、泥で作ったサッカーボールも見られるはずだ。

「沢山の人がやってくる。もっともっと沢山の人がやってくる」と、ダイバーは少年たちの気持ちを安心させた。実際、ダイビングの出来る医者もやってきた。
もう少年たちは一人ぼっちではない。発見活動は終了した。今度は救援活動だ。AFP発。



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06: AFPの図解説

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AFPによる感激のドラマは以上で終わりだ。だが、AFPの図解が、それに輪をかけて素晴らしい物語となっている。だが、字が小さくcがeに見えたり不鮮明なので、誤訳はご勘弁を。

見出しは「タイ洞窟救出」となっている。2週間以上水浸しの洞窟内に捕われた12名の少年とコーチの救出作戦は、7月8日から10日にかけて一人ずつストレッチャーに包んで冷静に実行された。それは時間に追い立てられた危険な賭けであった。

この図解はタイ海軍SEALが放映したビデオを基に作成した。元SEAL隊員によれば、少年とコーチ全員は救助作業の間、ずっと静かに落ち着いた態度だった。何人かは静かに眠り、何人かは酔ったように指が震えていた。だが、シッカリと呼吸はしていた。

タイ国首相Prayut Chan-O-Chaは「不安を取り除くため、少年たちにはわずかな精神安定剤を投与した。そして少年たちはひとりひとり、ダイバーからダイバーへと、注意深く手渡しでリレーされていった。4km以上の脱出経路には医師がひとりひとり一定間隔で配置され、少年たち一人ひとりの健康状態を都度モニターしていった」と語った。

まず第一図を見ると、長い4km以上にわたる脱出経路には延々とロープ二本が張られ、岸壁にボルトで固定されている。その二本のロープに滑車を引っ掛け、少年が横たわるストレッチャーを持ち上げている。(*これだと、鉄砲水が発生しても、ストレッチャーを持っていかれるリスクが軽減する)

問題のストレッチャーだが、これは特殊な軍用で柔軟にしなる小型ボート形。子供たちは仰向けに寝かされている。ボート全体はキャンバスで覆われる。雪崩事故の救難に使われ、犬ぞりで引かれるイメージで理解してほしい。身体を暖かく保つため薄いフェルトで全身を包み、フルフェースのマスクで顔は覆っている。足元にはエアタンクが置かれ、浮揚ブイとともにシッカリとハーネスで固定されている。このストレッチャーが4本のベルトで上部の滑車に取り付けられている。

第2図:水中や狭い脱出経路を抜けるとき、ダイバーはストレッチャーを身近に引き寄せ運搬する。この図では前に一人(二人か?)、後ろに二人のダイバーが付き添っている。当然ながら、ダイバーはひとりひとりマスクを着けエアタンクを背負っている。
第3図:水路内には排水作業を行うため大口径のゴムパイプが横に4本並べて張り巡らされている。ホテルのプールで使用するゴムマットをイメージしてほしい。水量が少ない場所ではストレッチャーをこの上で滑らしながらダイバーが引っ張っていく。ここでは四人の救助隊がアテンドしている。マスクもエアタンクも着けてないので、要所要所でダイバーではない要員も配置されていたことが分かる。

第4図:狭い経路では、ダイバーはかがみ込む様にして滑車ロープに沿ってストレッチャーを引っ張る。ボルトで固定されたロープが全脱出経路に沿い張られ、出口まで道に迷うことはない。

第5図: 洪水の心配のないところでは、救助隊員がストレッチャーを手で引っ張り上げ運んでいく。この場面ではストレッチャーの左右3名ずつ合計6名で一人を運んでいる。
以上ですべての和訳は終わりである。

これらの説明で、SEALの救助特殊部隊がどうれほど万全の処置をとっていたかが学べると同時に、この万全の配慮があったからこそ、全員を無事に短時間で救い出せたかが、理解できた。

最下段に、この指揮を執ったSEAL司令官の名前Chaiyananta Peeranarongが目立たぬサイズで書かれている。緻密な作戦を決断した彼こそ、最大の英雄かもしれない。



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07: 英雄とは誰なんだろう?

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地球上の人類の歴史は、東洋の中国も、西洋のローマも、勝利者または征服者によって記述記憶されてきた。だが今回の、奇跡の脱出劇には、武勇伝を誇る勇者は一人もいなかった。欧米社会が(恥ずかしながら日本も!)“ミー・ファースト”の時代に突入したのに、東南アジアの一国、タイでの救出作戦には、何一つ手柄話は聞こえてこない。むしろ、その沈黙が偉大な東洋の智慧を雄弁に語っている。英雄とはオレがオレがのヒーローではなく、この救出劇を陰で支えた、すべての人たちが英雄だ。価値観の歴史がこのドラマで今、変わった。

洞窟入り口で救出隊員に、いや押し寄せた報道陣にまで、食事を炊き出して配った地元の人たち。手柄は挙げなかったが、他の空洞を隅々まで探し回ったダイバーたち、必要資材を黙々と洞窟まで運んだ地元の人たち、すべて名もなき人たちである。
映画の上映が終了し観客が出口に殺到する。スクリーンでは薄いカーテンを通して映画製作に参加した大勢の名前が延々と流れている。所長の趣味は客席に居残り、ソレを最後まで楽しむことにある。ひとつの映画を製作するのに、末端の仕事がどれほどあるのか、学ぶことが出来る。今回の救出劇でも行間に名も無き人たちが大勢浮かんでくる。

英国人ダイバーが世界の注目を浴びたが、大量の水流が氾濫した小部屋・大部屋はいくつもあった。それらの小部屋・大部屋を必死に探し続けたプロのダイバーたちは何人どころか、何十人もいた。彼らが、一つ一つの部屋を、ココには居ない、ココにも居ないと、確認して消していったから、英国人ダイバーの勝利に結びついたのだと思う。コレはサッカーではないが、ラグビーの“ワン・フォア・オール”、“オール・フォア・ワン”の精神である。

今の愚民といわれるワレワレ大衆は、この英国人ダイバーだけに賞賛の拍手を送る。スーチーは盛んにソコのところを強調する。「木」だけに注目する人には「森」も見なさいと。「森」だけに注目する人には「木」も見なさいと。政治家として非常にバランスの取れた発言だ。ラカイン州には争いごとだけでなく、ヒンドゥーとムスレムが平和に共存している地区がいくらでもある。と彼女は説くが、欧米社会はそれを受け付けない。

このところ、古代ギリシャ・古代ローマ時代の歴史を渉猟している。すなわち西洋文明とは何かを今になって勉強している。結論として、西洋文明は独裁者が法律であって、今から見るとヒューマニティ(この場合は人情と訳しておこう)とバランス感覚に欠けた時代から出発している。ソレを今時の子孫たちが、ヒューマンライトなどという舌を噛みそうなたわ言を抜かすから世の中はますますオカシクなっていく。

またまた話が逸れた。



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08: AFP電を、今度はAP電で補う

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スーチーの言うとおり、一つだけにこだわると、全体のバランスを欠く。AFP電とAP電を保管させると情報に厚みが出てくる。AFPの記者が報道から落とした所で、AP電が見事にカバーしている所がある。今度はソレを拾っていこう。落穂拾いにキラリと光るものがある。

子供たちは、SEALの軍曹が尊い命を落とし、その命で自分たちが生かされていると、並みの大人では言えない、非常に成熟した発言をしている。13歳の少年は、繰り返すが弱冠13歳ですぞ、今回学んだことはと訊かれ、「自分は強くなったように感じる。前よりも辛抱強くなった。苦難に耐え、さらに忍耐強く生きていけそうな気がする。そして、これからは注意深く人生を生きていきたい」とまで語っている。

今回の救出劇はまさしく奇跡だが、洞窟内での出来事を語る少年たちの物語も、予想を遥かに超えた事実で満たされている。

外野席のわれ我は、山岳地帯育ちの子供たちは泳げないと頭から思っていた。救援部隊の最大関心事もそこにあったらしい。だが、コーチが語るには、子供たちは全員泳ぎを知っていたと言う。コーチの説明では、時間が経つに従い、かなり奥まで入ってしまっていた。水深の深いところではすでに何ヶ所か、冒険心を奮い立たせ、全員泳いで渡ったと言う。

戻ろうとしたが、退出路が分からなくなってしまった。そこでルートを探るためコーチは先頭を切って泳ぎ始めた。だが、少年たちとはロープでつながれていたので、もし必要なら子供たちがロープを引っ張ってくれることになっていた。もう一つの驚きは、長さは不明だが、そこそこの長さのロープを携帯していたということだ。彼らが救助されたという幸運はあるものの、その一方で、ロープを携帯する慎重さが、救助に繋がったと見ることも出来る。決して彼らは今時の若者ではない。

そして実際に子供たちにロープを引っ張ってもらった。そして子供たちに言った。「この方法では脱出できない。他の方法を考え出さねば」と。その時、レポーターが子供たちのリアクションを訊ねた。13歳の少年は、「家に帰れないかと思うと、僕は怖くなった。帰ればおかぁチャンに叱られる」 記者団から爆笑が起こった。

奇跡の瞬間が明らかにされた。

少年たちが岩盤を岩で掘っていたときのことである。人の声らしきものが聞こえた。コーチが「静かに!!!!!」と言った。「大急ぎで声のした方へ降りて見よう。声が通り過ぎてしまうかもしれない・・・そのようなことを言ったことを覚えている」とコーチは語った。

もう一つ驚かされたことがある。救援隊だけでなく、外野席も疑問に思っていたことである。

少年の一人はフラッシュライト(懐中電灯)を携帯していた。ロープといい、懐中電灯といい、少年たちは決して無謀ではなく、用意周到ともいえる。だが、その子は怖がって行こうとしなかった。そこで例のAdul君が懐中電灯をひったくると、急いで下に下りていった。そして“ハロー!”と言ったんだ。

別の14歳の少年が語っている。「皆で話し合って、先ずは冷静になって問題がどこにあるかを突き止めること、それから脱出方法を考える。冷静になってパニックを起こさない」と皆で決めたそうだ。 本当に君は14歳なのかと言いたくなるほどの理屈であり、哲学である。

現代の奴隷貿易である、人材派遣業務に精を出す方はいらっしゃるでしょうが、これら11歳から16歳の少年を会社経営の役員にでもヘッドハンティングする賢明な起業家は出てこないものだろうか。Jリーグのコーチとしても通用する理念ではなかろうか。

もう一人の少年は語った。「食料は携行しなかったので、岩から滴り落ちる水だけで生き延びました。食い物のことは考えないようにしました。辛かったが努力しました。考えると余計お腹が空いたからです」



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09: 選りすぐりの海底洞窟プロダイバー

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もう一つ貴重なレポートがある。ワシントンポストの記事である。これはタイ国政府から緊急要請を受けたプロの洞窟ダイバーたちの物語だ。

世の中には、生存競争に落ちこぼれたり、職場のプレッシャーに耐えられなかったり、過労死が問題になる国もあるそうだ。だが、欧米では、IT技術などで金を稼ぎ、若いうちに引退し、トロピカルのヤシの葉陰でユッタリと人生を送る若者も大勢いる。

東南アジアには、欧米の若者がウヨウヨしている。特にタイには世界中から集まってくる。最初はバックパッカーでも、夢に描いたココナツの林、真っ白なビーチ、オーシャンブルーの海原、水平線に沈む夕日、潮風が心地よい。こここそパラダイスだ。最初はシュノーケル、次にダイビングと魅了されていく。リゾート地として知られるクラビ湾、プーケット島、タオ島、サムイ島には、そうやってプロのダイバーになった欧米人が一杯いる。そしてダイビング学校や海底洞窟探検などのツアー会社を経営している。

そのダイバーたちにタイ国政府から緊急招集が掛かった。“君のダイビング技術が必要だ”“これは決死の使命だ”“ボランティアで協力してほしい”“その技術を少年救助に役立ててほしい”“アナタが工夫して編み出した救助キットも持ってきてほしい”“時間が無い、今すぐ飛んできてくれ”“一刻も遅れれば、多数の少年が死に直結する”

それに素早く応じたのが、カナダ、デンマーク、ベルギー、フィンランド、英国の海底洞窟ダイバーで、その他に15名が加わった。SEALの公式発表では彼らを特に“オール・スターズ”と呼んでいる。米軍は、世界のトップ洞窟ダイバーの中でも選りすぐりの連中だと認める。だだっ広い海洋でのプロ・ダイバーはいくらでもいる。だが、狭いトリッキーな海底洞窟のプロ・ダイバーは世界でも少ない。中には地中海のマルタ島から駆けつけたダイバーもいる。そしてタイのリゾート地から駆けつけたダイバーもいた。

その内の何人かは7月2日朝にチェンライに到着した。英国人ダイバーが少年たちを発見した数時間後である。彼らの使命は即座に少年たちの救出作戦に切り替えられた。



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10: サッカーとは英語?

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今回、サッカー音痴のワタシは、資料を漁るうち、僅かながら学ばせてもらった。

英国・欧州圏ではAssociation Football、すなわち“フットボール”が正式名称。そのAssociationの短縮形socにcerをつけてSoccerサッカーと呼ぶのが日本。アメリカではフットボールと言えばアメフトを意味し、日本同様にサッカーはサッカーと言う。だから、日本とアメリカの呼称“サッカー”は世界では少数派となる。ここミャンマーでは英国植民地時代からのスポーツで、当然“フットボール”が正式名称。と言うようなことを岡野俊一郎さんが解説していた。


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