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<ミャンマーで今、何が?> Vol.253
2018.3.23
http://www.fis-net.co.jp/Myanmar
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■思いがけずの大政変劇
・01: 二つのパニック物語
・02: 心優しいボランティア募集
・03: 奇怪な大統領政変劇を分析する
・04: この事件はミャンマーの命運を決する大政変劇
・05: 巷のウワサ
・06: 混沌としてきたミャンマー
・公式ツイッター(@magmyanmar1)
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01: 二つのパニック物語
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イギリスも日本も優雅なハイソを気取っているが、ほんの100年ちょっと前はミャンマー、バングラ同様に貧しくて、暗い国だった。悠久の宇宙の歴史、いや地球、人類の歴史から見れば、100年前の歴史など、昨日みたいなものだ。イギリスの生んだ偉大な作家チャールズ・ディケンズは大英帝国、特に都市部ロンドン、の貧しく暗かった時代を思い出させてくれる。中でも、「A Tale of Two Cities」(二都物語)は傑作のひとつで、その題名のパロディをメルマガでお届けしたい。
ご無沙汰しましたが、今月初めに日本からヤンゴンに戻りました。
日刊英字新聞GNLMのスクラップ分類作業はその後も続けております。
突然ながら、今朝3月22日(木)の第一面には大ショックを受けました。
「ティンチョウ大統領が休養のためその職を辞し、大統領職は21日から即日停止された。その穴埋めは、憲法第73条(b)項に従い、7労働日以内に決定就任予定」これが21日に突然発令された大統領府布告の全文である。
同じ第一面には、同日モロッコから帰国したウ・ミンスエ上級副大統領のヤンゴン空港における出迎え写真が大きく出ている。
もう一つ右下に、ミャンマー下院議会のウ・ウィンミエン議長が、すでに昨日の議会中に辞任したとの記事。
この三つの記事はお互いに関連するので三つ巴セットとして捉え、字面ではなく行間を読み解くことに専念した。これは難しい難問だ。じっくりと分析し、後半で解説したい。
その前に、情けないお粗末なパニック話を聞いてください。
iPadの操作では化石人間の研究所長はかなり苦労してきた。パスワードをしばしば忘れ、メモしたノートもどっかへ行ってしまう。老化現象と痴呆症、それに心臓病の三点セットで、年貢の納め時と、三途の川の渡河作戦を検討中です。
ところが、iPadにはパスワードを必要としない指紋認識があるとのアリガタイ助言。早速挑戦してみた。ところが、最後の最後でセキュリティのためEメールアカウントとパスワードを挿入しろと要求され、インプットするたびに拒否された。疑わしいと機械は判断したのだろう。ソノウチニiPadは完全にフリーズしてしまった。リセットもできない。これまで発信・受信可能だった自分のEメールアカウントまで、接続不能となってしまった。
大統領の今朝のニュースもショッキングだが、商売道具のオシャカも気が動転するほどショッキングだ。気が滅入ってメルマガ廃業も考慮中。
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02: 心優しいボランティア募集
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もう一台MSパソコンの買い足しも考えるが、前に使用したノートブックもどこかに埃をかぶっているはずだ。ヤンゴン在の読者でパソコン及びメール全般に関して、ボランティアとしてこの化石人間の相談に乗ってやろうという奇特な読者がいらしたら、是非とも助けていただきたい。所長のパソコンskillはプラグを接続するのを、アッ忘れていたというレベルです。
なお、ボランティアへの報奨は当研究所にて、一夕ミャンマービールの飲み放題というのでどうでしょう。貧乏所帯のセキュリティとして、ツマミには言及しない。
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03: 奇怪な大統領政変劇を分析する
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このメールが東京のプロバイダー殿に到着するかどうか自信がないが、友人のパソコンで挑戦してみたい。
まずは事件の背景を説明する。
国家相談役のスーチーと一行がオーストラリアからネイピード空港に戻ったのが、事件前日の3月20日夕方。
スーチーは随行員とともに3月17−18日シドニーで開催された「アセアン・オーストラリア特別首脳会議」にアセアン首脳一行として出席した。
3月18日夕方、スーチーはオーストラリアのマルコム・ターンブル首相の招きで、シドニーから首都キャンベラに移動し、翌19日は歓迎式典、二国間の問題、貿易・投資、教育、ラカイン支援などが話し合われ、野党労働党党首とも会見した。午後には、オーストラリア在住のミャンマー人コミュニティとスーチーは面談。ここまでは、ありきたりのスケジュール。
疑惑の記述は、空路及び船旅の長距離移動で、スーチーは急性の乗り物酔いにやられたという。帰国の長旅を控え、スーチーは休養のため、その後のスケジュールをすべてキャンセルした。原文の英語では、the State Counsellor to take rest for her return trip to Myanmarと成っている。
大統領府の発表でも、U Htin Kyaw has resigned from his post as he wants to take a rest from his current dutiesと成っている。
スーチーも大統領の体調も同じto take a restという表現である。日本では骨抜きにされてしまったが、海外の諜報機関あるいは大使館であれば、ミャンマーの軍事政権が大物を解雇するときに使用する常套句であることにピンとくるはずだ。しかも、本人が自発的に体調不良を訴えて、自発的に大統領職を放棄したようなニュアンスだ。
スーチーに忠誠を尽くしたティンチョウ大統領が、そんなことをすると、考えられますか?
タイミングにしても、スーチーがミャンマー国内不在の時を狙って、スーチーのパペット政権における最高権力者である大統領の辞任を唐突に発表する理由はどこにあるかを考えねばならない。日本のマスゴミ報道はどう見ているのだろう。
少なくともスーチーにとっては寝耳に水のはずである。
オーストラリア出張の最終段階で、この機密情報が届いた。スーチーは体調不良を表向きの理由としてすべてのスケジュールをキャンセルした。スーチーが取り乱すほど狼狽したことは十分に想像できる。現状把握、対応策が頭の中で渦巻く。乗り物酔いなどしているヒマはないはずだ。
スーチーは特別機で首都キャンベラからシドニーに3月20日午前10:20に到着。そしてシンガポールのチャンギ空港に20日午後5:05に到着。そして午後7:30にネイピード空港に戻ってきた。恒例の空港出迎え写真が3月21日(水)のGNLM紙の第一面を飾っている。この時のスーチーの顔相をジックリと観察すべきだ。この時点では読者は知らないが、スーチーは運命共同体である大統領が舞台から引き摺り下ろされたことを知っている。
もう一度、スーチーのネイピード空港到着写真を見てみよう。
背筋を伸ばすどころか、そらし加減で写っている。そこには気の強い政治家の顔がある。スーチーは優雅な仏顔も示すが、般若顔に転じる時もある。
アナタ自身で見極めてほしい。ほんのちょっとしたことで落ち込んでしまうヤクザな研究所所長とは大きな違いだ。
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04: この事件はミャンマーの命運を決する大政変劇
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2015年8月12日午後10:30、ネイピードのUSDP(当時の与党)本部で大政変劇が発生した。詳細はバックナンバーのVol.158および159を参照願います。
その時点までは、このメルマガもテインセイン大統領をノーベル平和賞ものだと大いに持ち上げていた。だが、2015年11月8日の国民総選挙で野党NLDが大勝し、党首スーチーはすかさず与党とのトップ会談を申し入れし、12月2日にテインセイン大統領、そしてミンアウンライン最高司令長官との個別会談が午前と午後に実現した。憲法上ではミャンマー国最高の実力者と思われた二人(文官と武官の)が、実はそうではなかった。二日後に実現したタンシュエとの極秘会談で、テインセインとミンアウンラインの二人はタンシュエ子飼の傀儡(パペット)であることが露見した。この時点で、テインセインのメルマガにおける評価はノーベル平和賞レベルから、タンシュエに忠実な単なる兵隊に転落した。
この辺りの説明およびタンシュエ秘話は長くなるので、バックナンバーのVol.No.173および174を参照願いたい。
今日の時点で振り返ると、スーチー新政権誕生後、僅かに二年になろうとしている。
だが、スーチーは一国の再興の基本は教育にあるとして、国内武装勢力との平和協定にあるとして、インフラ整備にあるとして、中国・インド・バングラ・アセアン各国との友好にあるとして、努力してきた。だが、目先の経済発展は後回しにされた。前軍事政権と利益を共有してきた特権階級は、それに不満だった。外国のパートナーにも出先機関(大使館)にも、同様の説明をした。それが、スーチーバッシングとして、吹き出した。
ロヒンギャーは別個の問題だが、海外で訓練を積んだその武装勢力はスーチーの弱いところを攻めてくる。しかも、大量の資金や軍備を必要としないソーシャル・ネットワークという新兵器を用いて。現場での実態を直視しないで、SNSはツナミ効果で波及していった。これに加担した愚民やマスゴミは大勢いた。今もいる。
それを冷静に見守っていた保守軍部勢力が利用しない手はない。ただ単にタンシュエだけではない。すでに高齢のタンシュエなど手の届かないところに、これらのグループは存在するかもしれない。これまでミャンマー劇場に登場したテインセイン、ミンアウンライン、シュエマン、ミエンスエ、国防大臣、内務大臣、国境省大臣などを含めて、彼らの手の届かないところで、今回の政変劇は動いているのかもしれない。
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03: 巷のウワサ
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巷のウワサでは、大統領がタイ国・シンガポール・日本を立て続けに訪問したのは医療施設の整った精密治療が主目的で3月初めの頃の大統領は実際顔色も悪く体力も弱々しかった。もっともらしい理由だが、プロの新聞人としては納得できる説明なのだろうか。
それを納得した形で、話は大統領の後継者に移る。
即日辞職した下院議長のウ・ウィンミエンが大統領職を引き継ぐというのが次のシナリオだ。そしてウワサは下院議長の後釜に拡大する。このメルマガは政治評論家などではない。あくまでも英文記事が理屈に合っているか、それを検証・分析するだけだ。あくまでも英語のプロとしての基本姿勢である。
メルマガとしては、下院議長の後釜などどうでもいいことだ。
スーチーの国内不在中に大統領府が大統領のステップダウンを事実として発表したことに不自然さがないかというのが、唯一の疑問である。心臓発作とか脳の血管が破裂したとかであれば、不幸なことではあるが、納得できる。一国の大統領に失礼ですが、子供じゃないだからスーチーお母さんが帰ってくるまで我慢しろと言いたい。読者諸氏は如何思われるだろう。
もう少し巷のウワサに流されてみよう。
ウ・ウィンミエンはプロの弁護士で、NLDの古参メンバーである。1990年イラワジ地区パテインから立候補し当選、そして2012年にはNLD党員として当選、2015年には補欠選挙でヤンゴンのタムウェ地区から国会議員に当選した。そして前回の国民総選挙でNLDが大勝し、政権を担ってから下院議長に選出された。だから、スーチーの信任厚い生え抜きのNLD党員である。
ウワサを続ける。
そのウ・ウィンミエンの後釜に二人の名前が挙がっている。U T Khun MyatとU Tun Tun Heinである。
後者は1990年、2015年とNLDメンバーとして当選し、現在下院の予算委員会議長を務めている。
問題は前者のU T Khun Myatである。彼はシャン州Kutkaiから与党UNDPメンバーとして立候補し2010年と2015年に国会議席を勝ち取った。2015年にはNLDの支持を受け下院の副議長となった。彼は検事総局のダイレクターを務め、議会運営には精通している。そして2017年にUSDPから離党した。彼は現在法関係査定および特別問題委員会の委員長であるウ・シュエマンの筋金入り支持者である。シュエマンは2012年スーチーとの関係を深め、国防軍からは裏切り者とみなされ、前大統領のテインセインの敵と見られている。
だから、U T Khun Myatが下院議長に選ばれると国会議事運営で軍部選出議員からの反発が予想される。
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06: 混沌としてきたミャンマー
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もっと刺激的な言葉を使用すると、不安定になってきたミャンマーというべきであろう。
これはロヒンギャーが愚民とマスゴミを活用してミャンマーを無政府状態に陥れようとした作戦に則るものであり、また前政権の残滓が利益分取り作戦を復活させようとする、国家の危機でもある。
気の強いスーチーに勝ち目があるのだろうか?
レベルの低い話で恐縮だが、東西南北研究所のネット事情も風前の灯である。
3月3日の帰国以来、ワタシ個人宛のメールも開封できないままである。
次回があるのかどうか勝算はないが、ご縁があれば、お目にかかりましょう。
今朝3月23日(金)のGNLM紙では、問題のU T Khun Myatが下院議事に従い下院議長に選出されたようだ。2008年憲法に従い、大統領に異変があるときは上級副大統領のウ・ミエンスエが自動的に大統領職を引き継ぐというルールには、今のところ、従っていない。
このメルマガでは、国軍内に何らかの異変が生じたときに、ウ・シュエマンが大統領職を引き継ぐと予見していたが、これは危険な予想になるので何も語らなかった。
だが、これほど乱世になってくると、シュエマンが動くのか、動かないのかも、注目せねばならなくなった。
ヤンゴン発信予定:3月23日12:00正午
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