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<ミャンマーで今、何が?> Vol.248
2018.2.19

http://www.fis-net.co.jp/Myanmar

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■スーチーの理屈

 ・01: 象を撫でる話

 ・02: スーチーの政治的手法は?

 ・03: 国連をミャンマー建国の主軸とする

 ・04: 世界が忘れている国連憲章

 ・公式ツイッター(@magmyanmar1)


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01: 象を撫でる話

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東洋の日本人が未知のミャンマーを学ぶ手掛かりは、戦後の1948年竹山道雄が著した「ビルマの竪琴」で、もう一冊がビルマの捕虜体験を綴った会田雄次の「アーロン収容所」だろう。

その対極の西洋人は、明治維新の3年前にボンベイで生まれたラドヤード・キプリングの「ジャングル・ブック」あるいは「キム」であり、ジョージ・オーウェルの「ビルマの日々」かもしれない。ちなみにこの「キム」を、スーチーは次男の名前に拝借した。

古書店が並ぶヤンゴンのパンソーダン街、あるいは最近設立されたテインビュー街のBook Streetで、これらの書籍をたびたび目にする。ラングーンあるいはヤンゴンの住人、又は旅人たちが置いていったものだろう。

これらを読むと、ビルマが、そしてミャンマーが、少しばかり分かった気になる。

だが、もうちょっとミャンマーに長居すると、あるいは何度か再訪するうちに、自分が何一つ分かっていなかったことに気付く。それから、ミャンマーの仕掛けたワナに落ち込んでいく。熱帯のジャングル奥に潜む流砂(quick sand)に囚われたように!

ミャンマーは大雑把に言って、日本の1・8倍、イギリスの2・8倍の面積がある。チッポケな国の人間がこの国を安易に理解するなど、思い上がりも甚だしい。

盲人が象を撫でるとはよく言ったもので、日本人も西洋人も巨象の一部しか見ていない。彼らこそ盲人である。英国の植民地行政に批判的だったイギリス人のG.オーウェルがShooting a Elephant(象を撃つ)と自作に名付けた気持、それを斟酌したら良い。

だからこそ、スーチーは日本の外務大臣(現大臣ではない)に「ミャンマーは複雑なんです!」と語った。経済外交の権化はキョトンとしていた。こちらの外務大臣の言葉にはイギリス仕込みのアイロニーが込められている。「単純な日本人には分からないでしょうが…」が外交的解釈だろう。



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02: スーチーの政治的手法は?

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ヤンゴンでスーチーの追っかけをやっていた。不在中に溜まった新聞紙上でだ。スーチーが今、何を考えているのか、探るためである。人生の残り時間が少ない今、朝・昼・晩を徹して、日刊英字紙(THE GLOBAL NEW LIGHT OF MYANMAR)のスクラップ帳作成を急いだ。せいぜい1週間で終わるとタカをくくったが、隅から隅まで目を通して、切り抜き貼り付けをやっていると、そう簡単ではない。やっと2017年の12月半ばまで整理は出来たところで、ひどい風邪で咳き込み寝込んでしまった。それでもボヤ〜ッとした頭で、目をつむりスーチーの考えを追い求めた。

日本を含め世界中のマスコミが寄ってたかってスーチーに罵声をあびせかける。今の世の中は旧約聖書の世界に舞い戻った。衰弱した乳児を抱え荒野にうずくまる母親に、寄ってたかって石つぶてを投げつける。正義とまでは言わない、だが人情はあるのだろうか? 昔のジャーナリストは、弱いものの味方だった。今は違う。石つぶてを持って投げつける方に加担している。世の中が弱肉強食に落ち込んでいくのも当然だ。情けない世の中になったものだ。

かと言って、吹けば飛ぶようなメルマガが叫んでも、犬の遠吠えにもならない。

だが、一寸の虫にも五分の魂はある。

大社屋を構え、インテリ面の連中に対峙するには、それなりのリクツが必要だ。

その根拠を英語の新聞紙に求めた。昔、欧米マスコミに軍事世間のマウスピースと蔑まれたGNLM紙である。この新聞も古い殻を破り、新生国ミャンマーの国づくりに貢献しようとしている。他のローカル紙を英語に翻訳し地元の話題も提供してくれる。問題は売れ行き好調で、早朝ならOKだが、うっかり朝7時を過ぎると売り切れてしまう。逆の見方をすると、一般民衆の関心が高くなったいうことである。

Vol.236(2017.12.26)の<04: Dr. Pe Myintをご存知だろうか?>を参照願いたい。

この人物は現職の連邦政府情報大臣を務めている。この重職は、軍事政権時代には武闘派の軍人どころか、インテリの情報局が独占していた。それこそ泣く子も黙る情報局であった。

だが、スーチー新政権の登場で、時代は変わった。

この人物は、元々は大学の薬学部を卒業したドクターで、ジャーナリストでもある。そして国民文学賞を受賞した文人でもある。スーチーがピックアップした新政権でも、ズバ抜けたインテリである。

その人物にスーチーはテレビ・ラジオ、映画、雑誌、新聞を監督する情報局のトップを任せた。

だったら、語彙の乏しい欧米人の表現を借りるなら、Dr. Pe Myintはスーチーのマウスピースと言っても良いだろう。最初に言及したテインビュー街のBook Streetは彼が創設した。路傍の書店街は雨季の4ヶ月間以外の土日祝日にオープンしている。このドクターの活躍は文化面だけでなく、ミャンマーの国造りそのものに関与している。彼の八面六臂は日を改め、追い追い説明したい。コワモテだった情報大臣が様変わりの大変身だ。

ハサミと糊の作業で、スーチーの新政権としての方向が、おぼろげながら見えてきた。



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03: 国連をミャンマー建国の主軸とする

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軍事政権時代、この国は外の世界から完全に孤立していた。北朝鮮みたいなものだ。

前の軍事政権は国際世論という外敵に包囲されると、悪魔とも手を結ばんとばかりに、世界から爪弾きとなった無法者国家としか、外交関係は結べなかった。

スーチーの発想法は、その真逆であった。

国際社会すべてを味方につけたい。国際社会に仲間入りしたい。そのためにはどうすれば良い。

コロンブスの卵を追い求めた。

ハタと気付いた。「国連」、正式には国際連合、英語ではThe United Nationsがあるではないか。

ありがたいことに、加盟国は190カ国を超え200カ国に近付いている。

一時は冷戦の激しい応酬の舞台であった。

そして今、日米が協力して逃げ場のないロープ際に追い込もうとしている北朝鮮までが国連のメンバーである。

スーチーのコロンブスの卵は「国連」だと発見した。

国連は、スーチーにとって未知の世界ではない。

祖国の良識ウ・タントが第3代目の国連事務総長を務め、NYの国連本部で働く機会を、独身時代のスーチーに与えてくれた。

それだけではない。国連の第7代目事務総長のコフィ・アナンは同じノーベル平和賞を受賞した仲間でもある。

それを明瞭に物語るのが、2017年9月19日(火)午前10時から30分間、ネイピードの第2国際会議場から英語で訴えた、ラカイン問題に関するスーチーのスピーチである。その全文は2回に分け、このメルマガのVol.227(2017.9.25)およびVol.228(2017.9.26)で、解説付きでお伝えした。



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04: 世界が忘れている国連憲章

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多分、国連加盟国のほとんどが、国連創設時の崇高な理念を忘れていることだろう。

試しに自国の外務大臣に問い質してみたら良い。多分、その大半が国連の本来の使命を忘れていることだろう。それが証拠には、190数カ国のほとんどが、その理念とは反対の方向に今、歩み始めているからだ。失格なのは外務大臣だけでなく、各国の元首・大統領・首相も同じだ。

だが、スーチーは違った。

大バッシングの中、ラカイン問題の解決に手間取っている言い訳をするのではなく、スーチーは、第二次世界大戦の悲惨さから学んだ教訓を基に創設された地球市民としての国連憲章の貴重な価値を世界中の指導者に覚醒させる言葉で、スピーチを始めた。

役人が作文した原稿をぎこちなくツッカエツッカエ読み上げる総理大臣はいくらでもこの世にいる。だが、スーチーは自分でペンを取り格調ある文章に推敲できる稀有な政治家の一人である。

自分が代表するミャンマー国は、すでに国連の加盟国であり、その国連憲章の使命と原則に絶大な信を置いていると、スーチーはこの場で再確認の宣言を行った。

この言葉には国連憲章が謳う人権の擁護を尊重し、実践することが含まれており、世界の非難に屈服しない信念が述べられている。

その国連憲章は、全人類の故郷であるとこの地球上に、連帯して平和で栄えある世界を建設すると謳っている。まさに新生国家のミャンマーがラカイン州のみならず、ミャンマー領土内に作り上げようと努力しているその精神と全く同じ願いであることを国際社会のメンバー諸国と分かち合いたい。

と同じ説明を繰り返しても、仕方がない。

本当にスーチーの新政府を、この1年半で何をやってきたかを、知るには、どうかVol.227& Vo.228に目を通して頂きたい。

その後で、東西南北研究所のヘリクツを述べさせていただきます



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