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<ミャンマーで今、何が?> Vol.202
2016.10.03
http://www.fis-net.co.jp/Myanmar
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・01: スーチーのNY滞在
・02: スーチーのNY滞在を検証
・03:さらに検証
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01: スーチーのNY滞在
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9月26日(月)付GNLM紙には、スーチーが25日夜ヤンゴンに無事帰着したとある。外務省は今回の米国におけるスケジュールを総括して記者発表した。今回のメルマガはそこからミャンマーの今を見てみたい。
今回の外遊全体の日程は以下の通りだ。
■9月10日〜13日:
英国ロンドンに地域12カ国のミャンマー大使を呼び寄せ訓示および意見交換。
英国のテレサ・メイ新首相と初会談。
■9月13日〜16日:
米国ワシントンDC滞在。
オバマ大統領、副大統領、国務長官、上院・下院のトップと個別に会談。
■9月16日〜24日:
ニューヨーク(NY)滞在。
9月17日: ミャンマー国連常駐事務所にて、米国に住む、少数民族を含むミャンマー人代表たちと会見。
ハーバード大学からヒューマニタリアン賞を受賞。
■9月18日:
ミャンマー国連事務所職員の家族と面談。
■9月19日:
ユネスコ長官、デンマーク首相、メキシコ大統領、バングラデシュ首相と個別に会談。
■9月20日:
国連のハイレベルな「2030年議題」会議に出席、パネリストとして討議に参加。
イスラム協力機構の事務局長と会談。
■9月21日:
第71回国連総会にて演説。
包括的核実験禁止条約批准式典に参加。
アジア・ソサイエティにて演説。
■9月22日:
CNNとの単独インタビューを受ける。
クラウス・シュワッブ博士(世界経済フォーラムの主宰者・議長)と会見。
オープン・ソサイエティ基金のジョージ・ソロスと会見。
国連難民高等弁務官と会談。
NY公立図書館で学問的業績によりゴールデン・プレート賞を受賞。
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02: スーチーのNY滞在を検証
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このスケジュールだけは、どの新聞も掲載している。
重要なのはその中身だ。だが、チープなマスコミはその表面的な現象だけを捉え、論評している。ミャンマーの新聞は特にそうで、スーチーの仕事の中身を分析するところまでいかず、ミャンマー新政権のネガティブな"重箱の隅"報道が多すぎる。これでは、木鐸を鳴らす使命を失い、言論の自由を履き違えたままだ。揚げ足を取られる前に、ひとこと言及すると、ミャンマーの新聞でもキラリと光る、珠玉のようなジャーナル新聞もある。それに倣い、"モノの見方"を研ぎ澄ましてほしい。
床屋談義でスーチー政権をケナすのは一向に構わない。庶民は常に反政府であるからだ。だから、どんどんやってほしい。だが、ジャーナリストの看板を掲げるなら、床屋談義や銭湯談義は見当違いだ。東西南北研究所は吹けば飛ぶような野次馬だ。だが、五分の魂は堅持したい。
今回の旅程で、スーチーはオバマ大統領とじっくりと話し込んだ。
詳細は漏れ聞こえてこないが、来年早々に退陣するオバマと、名実ともにミャンマーのトップに躍り出たスーチーとの間では、二人でタッグを組んだ過去5年間の民主化闘争を懐古するように話し合われたことだろう。
2011年11月18日、インドネシアのバリ島で東アジアサミットが開催された。それに出席するオバマ大統領は"エアフォース・ワン"機上から、スーチーの自宅に電話をかけた。用心深く超極秘会談が始まった。「ミャンマーの民主化推進に、米国が介入した場合、マダム・スーはゆるぎない態度で、最後まで米国を支援してくれるね」と。スーチーがオバマに哀願したのではない。スーパー大国の大統領がスーチーにお願いしたのである。ミャンマー民主が混沌の中から動き始めた歴史的な瞬間である。5年前のことである。
このときスーチーは自宅拘束から解放されたばかりのただの一婦人である。敢えて言えば、無力な野党勢力の党首でしかない。民主化が今後どうなるか、全く先が読めない時である。スーチーが国会議員に当選し、NLDが政権を奪取し、国家相談役に就任し、憲法を度外視して大統領の上に君臨し、実質ミャンマーの元首になろうとは、全く見えない時期であった。それだけにオバマの識見には驚かされる。他国の首脳が、スーチーを無視して、軍事政権に擦り寄っていたことを思い返すと、米国の凄さを改めて見直さざるをえない。
去りゆくオバマと新政権を始動したばかりのスーチーの胸中には、口には出さずとも、"二人で創り上げたミャンマーの民主化"という意識が密かに過ぎったことだろう。
欧米のマスコミを含めて誤解していることがある。スーチーはスーパー大国の軍門に下った。あるいは米国の手先になったの類だ。実に皮相的な見解である。繰り返すが、スーチーがオバマに頼んだのではない。オバマがスーチーに頼んだのである。だから、二人の間は対等である。
ミャンマーは米国の傘の下にいるのではない。ミャンマーはアメリカと対等の立場にある。それを英語でパートナーシップと呼ぶ。上でもなく下でもない。
スーチーはオバマ大統領と会談する当日、ジョー・バイデンに招待され彼の私邸で朝食を共にしている。大統領を補佐する副大統領である。そしてジョン・ケリー国務長官がブレア・ハウスで昼食会談を用意した。これにオバマ大統領を加えると、米国の最高権力者トップ・スリーである。
大統領とのツーショットは世界中の ミーハー首脳が希望するところだが、実務家スーチーの思惑と米国側の細やかな配慮が窺われる。米国のミャンマー政策を動かしているのは、後ろ髪に花をかざしたこの細身の女性である。というのが東西南北研究所の見方である。
テインセインは政治犯の大量釈放や、宝玉をちりばめた額縁を、手土産に経済制裁の解除を、懇願した。もちろんプライドの高い国柄である。表面上は要求の形をとったが、中味は膝を屈しての哀願である。これが軍事政権のスタイルであった。
スーチーは背筋を伸ばしてオバマにパートナーの立場で要望した。米国大統領に凛として要求できる外国首脳はどれほどいるだろう。世界広しとはいえ、このスーチーぐらいではないだろうか。しかも、米国大統領が揉み手をして、用意して、待っていてくれたのだ。これは5年前の借りをオバマがスーチーに返済しているとも見て取れる。
仮に例えばの話である。日本の超エリート集団の官僚たちが英知を絞って、屋上屋を重ねる会議を繰り返し、次官級折衝や大臣折衝も繰り返し、半年から一年かけてホワイトハウスに根回しし、否上院下院の議会対策も必要だ。気の遠くなるような時間とエネルギー、そして経費(国民の税金)を費やし、大統領と日本国総理大臣の対決が実現する。スミマセン、これは例え話です。
スーチーは優雅に、ジョークは交えるが通訳は交えない、英語による直談判で、しかも半年はかかる大仕事を数分間で、たった一人で、成し遂げているのである。
新政権は半年経っても何もしないという地元新聞の受け売りをするアジア系の大新聞社もあるが、このメルマガで言及したように、軍事政権の悪弊が染み付いた風土では、巨大タンカーがフル・アスターン(バック・ギア)をかけても行き脚がついて、急には止まれないのである。
だが、スーチーは超エリート官僚の仕事を、たった一人で、ほんの数分間、大統領と直談判することで片付けている。注釈すると、副大統領と国務長官との会食も、料亭での密談ではない。
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03: さらに検証
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9月16日付日刊英字紙GNLMによれば、第一面でー歴史的な"パートナーシップ"と大見出しが踊っている。
経済制裁の解除、特恵関税の付与などにばかり経済大国における情報は片寄っているが、現在史の中では、歴史が今どの方向へ向かっているかを、見極めるのが大切だ。歴史はいま確実にコペ転している。
9月21日付GNLM紙によれば、ヤンゴンの米国大使館が、ミャンマーのSMEsに対し1千万ドルの新規の貸付金計画を発表した。しかも、これはオバマ大統領がスーチーに約束したミャンマーとのパートナシップ計画に基づくものだと駐緬米国大使は強調した。スーチー新政権は、巨大な世界企業が雪崩れ込めば、企業とも言えないほどのミャンマーの小中企業(SMEs)は、ひとたまりもないことを重々承知しており、なんとかその育成・成長を願っての、外国依存を想定している。それに応えたのがオバマの"パートナーシップ計画"である。何ひとつ手土産を持たない、スーチーのしたたかさと見たい。
同紙同ページに、国連本部でハシナバングラ首相と会談するスーチーの写真が出ている。当然、ロヒンジャー問題、国境問題、宗教問題などなどが話し合われたはずだ。そしてスーチーの編み出し、国連で演説するスーチーの対応策に理解を求めたものと思われる。
ワシントンでもハリウッドでも、アメリカでは、超ビッグなセレブを招いての会食が、軍資金獲得の仕組みとして出来上がっている。スーチーを主賓とする、米国超大物ビジネスマンの晩餐会でも、そのスタイルが採用された。参加者はひとテーブル$25,000(乱暴換算で250万円)という突出した金額であった。
国内では 超コワモテの、どんなエライ、将軍さんでも、内弁慶ではない、スーチーの外弁慶ぶりには、恐れ入る他ないはずだ。だから、スーチーは凄いと言っているのだ。
話を続けると、スーチーはWEF主催者で議長のクラウス・シュワッブ博士と会見している。冬季のダボスで世界の超一流人士を招いて世界経済フォーラム(別名超金持クラブ)を毎年開催している博士だ。そしてスーチーが自宅で拘束されている時代から、常にスーチーの支援者であった。
スーチーがミャンマーの小企業や中ほどの企業を破滅させることなく育成していくことに、世界超一流の学者、実務者、事業家を必要とすれば、即座に揃えられるマジック・ネットワークを築きあげている人物がこのシュワップ博士である。スーチーは当然ながらミャンマの経済発展について意見を交換した。そして、その博士がスイスで開催される来年の超金持クラブに出席して欲しいとスーチーを招待した。もちろん、メイン・ゲストとしてだ。
スーチーのスケジュールは実に殺人的である。続いて待機していたのがジョージ・ソロスである。彼は一国・地域全体に通貨危機を起こすことなどヘイチャラで、自己利益を確保できる目先の効いた天才である。そして、フィランソロピストとしての顔も持っている。そのソロスは何度もミャンマーには姿を見せた。ソロスが現れると、その国に何かが起こる兆候だ。
なんと、スーチーはこの札束の匂いを嗅ぐ天才に、ミャンマーの教育問題について相談している。こんな発想が並の政治家にできるだろうか。スーチーは無手勝流で、世界の舞台で闘っているのである。チープなマスコミに分かるだろうか? ワカンネーダロナ! せいぜいグーグル検索で"Open Socirty Foundation"について調べてみることだな。
大物との面談はこれだけはない。国連人権委員会長官との会談をこなし、CNNの単独インタビューをこなし、さらにはGPSの編集長兼プロデューサーとも会見している。
今回はここで集中力が切れてしまった。また次回に。
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