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<ミャンマーで今、何が?> Vol.185
2016.03.09
http://www.fis-net.co.jp/Myanmar
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■歳月人を待たず
・01:軍事政権のイヤらしさ
・02:朋あり遠方より来る!
・・・また楽しからずや。
・03:ヤンゴンでロマネ・コンティを?
・04:ヤンゴンの文化人類学
・05:Time & Tide wait for no man
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01:軍事政権のイヤらしさ
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先週のメルマガを出稿した翌日(3月3日)のMT紙のニュースに「大統領職委管式典でNLDと政府に新たな不協和音」という見出しが躍った。
テインセイン政府は来る3月30日に5年間の任期を終了し、そしてNLD主導の新政府に政権は移管される。
現政府側は大統領交代の式典を大統領府で行う意向を示し、3月17日までに確認の回答をしろと提案した。NLD側はそれに反対し、新たな火種となっている。
2008年憲法を解釈すれば、大統領を指名するのは議会であり、新大統領が権力を授与される前に、宣誓を行う場は議場である。したがって式典は国会でやるべきだというのがNLD反対の根拠である。
前にも指摘したが、軍事政権は姑の嫁イビリか、学童のイジメを楽しむがごとく、最後の最後まで、チャンスがあれば、NLDとスーチーに難癖をつけている。その典型的な実例がこれである。
往生際が悪い。まるで腐った何とかのような軍人根性である。
どちらにせよ、式典は3月30日、あるいは31日に挙行される予定である。そして翌月1日から新政権が発足する。
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02:朋あり遠方より来る!
・・・また楽しからずや。
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このところ、ヤンゴンの出入りが激しい。大変革前のヤンゴンを見て起きたいのかもしれない。新聞報道による著名人のみならず、世界のビジネスマン、そして観光客の数が殺到している。地球の過疎地であったヤンゴンが、急速に世界の注目を浴びている。さらに、今月後半から、来月初めにかけては、スーチー効果で、世界のマスコミがヤンゴンとネイピードにどっと入り浸るだろう。
メルマガ効果なのか、東西南北研究所のあばら屋ですら、未知の人たちが、訪ねてくれる。新しい友人たちとの出遭いは楽しいものだ。異なる分野の新しい情報を持ち込んでくれる。ありがたい。
ミャンマーに変革が起こる前は、1940年代にハリー・ジェームス・オーケストラの演奏で流行った名曲をもじって“スリーピー・ラングーン”と揶揄したものだ。だが、今は違う。
それだけではない。先週は30年ぶりの友人が訪ねてくれた。
30年前はお互いに紅顔の美青年であったが、ハリウッドにも負けない見事なメーキャップで年齢相応にうまく化けていた。だが、話し始めると、昔の身振り、声色まで、そっくりそのままである。
もともと国際的な業界であったが、優秀な部下を大勢揃え、今では、日本国内はもちろん、シンガポール事務所を通じて、東南アジア全般をカバーし、国際的な有望企業として大きく成長している。マレーシアでは、外国人としては稀有な貴族の称号まで授与されたそうだ。
彼の多彩な活躍ぶりから、久しぶりに心地よいカツ!を入れられたような気分だ。ヤンゴンで安穏と眠っている場合ではない。彼との出遭いを演出してくれた、昔の仲間たちにお礼を述べたい。
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03:ヤンゴンでロマネ・コンティを?
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ワイン製造に欠かせない、ある道具を友人が譲ってくれるという。
ただし、タダではない。「アウンサンスーチー 愛と使命」に登場する1チャット札を用意しろという。これ以上でも、これ以下でもない、と謎をかけてきた。
彼もワタシも実にシャイな男で酒が入らないと一言も口が利けない。何時間でもにらみ合いが続く。仕方なしに、彼の場合だけ特例を設けて、昼間っから飲むことにしている。宵の口には二人して出来上がっている。彼も、このメルマガを介して、ヤンゴンでお付き合いするようになった。
「独立以来、ビルマのほぼすべての紙幣にはアウンサンの顔が載っていた。だが、軍政が1989年(八十八年の翌年である)に新しいデザインの1チャット札を導入しようとしたとき、デザイナーは自分の反軍政の気持ちを微妙なヤリ方で表現した。
新紙幣はアウンサンの透かしが入るものだった。いつもの高い頬骨、ぐっと結んだ唇、力強い顎という国家的英雄の顔だ。しかし、顎の線を少し柔らかくし、鼻と口元と頬にちょっと手を加えると、父親の顔は娘によく似た顔に見えた。
新札は、軍政がこの優雅な破壊行為に気づく前に印刷され、町に流通した。
全国で人びとは、この紙幣を貯めこみ、ささやき合い、そしてまたこのデザイナーが透かしの花弁模様にどうやって八八八八という数字、全国ストの日付を入れ込んでいるかを見つけ出した。
軍政に対するこの侮辱が明らかになるや、新札の流通は停止された。そして、これ以降ビルマ紙幣は二度とアウンサンの顔を載せていない。」
以上が同著書の説明である。さらに、その注では「1チャット札の事件に関するもっとも詳細な一部始終はSteve Crashaw and John Jackson, Small Acts of Resistance, Union Square Press, 2010 に書かれている」となっている。俄然興味が湧いてきた。
そこで、ボージョー・アウンサン市場近くの英書販売店を訪ね、馴染みのオヤジに尋ねた。だが、この書籍は置いてなかった。代わりにといっては何だが、棚の上のDVDコーナーはオヤジの趣味で、路上では売られていない掘り出し物が時折見つかる。
今回は、DVD3枚版『アメリカを作った男たち』という米国のTVシリーズ。鉄道王:バンダービルト、石油王:ロックフェラー、鉄鋼王:カーネギー、投資家:JPモーガン、自動車王:フォードなど、彼らの駆け引き、裏切り、決断を含めた成功と失敗が懇切丁寧にドキュメンタリーされている。
そしてもう一枚はBBC製作の『LADY OF NO FEAR』これは反逆者スーチーのドキュメンタリーを多くの関係者にインタビューしてまとめてある。一枚600チャット、四枚占めて日本円で240円という買い物だ。帰宅してチェックしたら、二つとも中味の濃い実に有意義で見ごたえのあるDVDだった。
本屋の並びには、外国人相手のみやげ物店が多数並んでいる。本当かどうか分からないが、1989年発行という1チャット紙幣色違い2枚を2千チャットで入手した。当方としては、ヤンゴンでロマネ・コンティをゲットした気分だ。
透かしでアウンサンの顔は見てとれるが、八八八八が見つからない。これで勘弁してくれるか分からないが、今週末にでもこのシャイな友人に確認してみたい。これで勘弁してくれるかどうかを。
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04:ヤンゴンの文化人類学
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帰りにパンソダン通りの古書店街も覗いてみたが、目的の英書は見つからなかった。近くのインド大使館に寄り、クーラーの効いた暗く静かな図書館に入り、汗の引くのを待つ。ここの女性の図書館司書はいつも親切で有能である。インド音楽、文化についての英書を拾い読みし、興味ある文言を手帳に写し取る。
今朝は何となく快適だ。久しぶりにボーガレーゼイ通りのムスレム・レストランに足を向ける。昼食時のせいか、目の前のモスクで礼拝を済ませた、白装束のヒゲ男たちで店内は一杯だ。店先の水道で、ベトベトする手を洗い、肉の柔らかなオックステール(牛の尻尾)、ダール豆、野菜を注文する。
面白いことに、ヒンドゥー教徒のインド人そしてミャンマー人は牛肉を食さない、といわれている。聖なる動物だからだ。インド人でもムスレム教徒は牛肉は平気である。だが、ポーク(豚肉)はダメだ。これはユダヤ人も同じである。ところが中国人は豚肉が大好きだ。混雑した店内を見回しながらアンスロポロジーを一考する。
右手の第一指関節だけでパサパサの白飯をうまく丸め、親指の爪で口の中に放り込む。第三指関節まで汚したら上品じゃない。インド人はもちろん、ほとんどのミャンマー人は、これが実にうまい。伝記によると、オックスフォードで過ごしたスーチーさんも、これを上品にこなしたというという。
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05:Time & Tide wait for no man
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3月9日(水)早朝。朝の路上喫茶でいつもの通り、GNLMおよびMTの日刊英字紙に目を通した。
軍事政権が泣いても笑っても、どんなイジメをやろうとも、新大統領の就任式は着々と迫っている。4月1日である。これはエイプリル・フールではない。本当の話である。だが、政治の世界は一寸先は闇だ。
その第一歩としての、上院・下院・軍部による大統領候補者指名は明日3月10日がデッドラインだ。そして、この三人のうちから大統領が決定し、残り二名が副大統領となる。
そのウワサの候補者が何人か新聞紙上を賑している。明日にも判明することなので誰とは言うまい。ワタシと個人的に親しい人物もその中に含まれている。ミャンマー居候16年ということは、そういうことなのか。
そして4月になれば、ミャンマー人待望の水祭りである。ことしの水祭りはミャンマー人が心から楽しめる例年とはまったく異なる雰囲気になるだろう。
シャン州の友人からは、水祭りの期間中、遊びに来いと、お誘いの電話がかかってきた。2週間でも一ヶ月間でも、部屋と食事はすべて面倒見るといってくれている。
場合によっては、メルマガを臨時休刊(日本の年末・新年休暇に当たる)として、友人の好意に甘えるかもしれない。
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