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<ミャンマーで今、何が?> Vol.172
2015.12.02

http://www.fis-net.co.jp/Myanmar

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■ウワサを馬鹿にしてはいけない

 ・01: あるウワサが国内を流れた

 ・02:ウワサの解明は、原点に立ち戻る

 ・03:ミャンマー民主化の原点

 ・04:子供の使いではないメッセンジャー

 ・05:首脳会談は12月2日

 ・06:大統領の上に君臨することは可能

 ・07:遅かれ早かれ

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01:あるウワサが国内を流れた

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友人から電話をもらった。スーチーがタンシュエの孫とネイピードで面談したという。その会談内容をあれこれ考えていたタイミングだったので、話の中身を問いただした。だが、そこまでは知らないという。情報は二人が会ったという事実のみで、手の内はワタシと同じだった。

国内発行のジャーナルも最近はネットで英文情報を流してくれる。今回は、その情報から今の流れを読み取ってみたい。まずは11月26日付のイラワジから抜粋する。

スーチー党首がタンシュエの孫と先週会談したと11月26日に認めた。だが、会談内容は明らかにしていない。Radio Free Asia(RFA)のビルマ支局がスーチー党首にその事実を確認したところ否定せず、肯定的な感触だった。

総選挙でNLDが大勝し、2週間も経たぬうちに、タンシュエの孫であるネイシュエトゥエイアウン(NSTA)が11月19日に、自分がいまネイピードにいて「今夜は歴史的なものになるだろう」と、そのフェースブック(FB)に載せた。これがウワサとなってミャンマー中を回覧されていった。

スーチー党首のRFAへのコメントをミズマが掲載したが、それを参照して、NSTAは感謝のメッセージを11月26日のFBに載せている。「アンティが会談の事実を公に確認してくれた。私にいえることはただありがとうのみだ」と書いている。ミャンマーでは、年輩の女性にはアンティが、男性にはアンクルが最大の敬意を意味する。

2010年の国民総選挙以降、タンシュエは政治の舞台から離れ、目立たぬ生活を続けている。政府のトップ高官も敬意を持って対応しているが、タンシュエはもはや政治には関与していないと明言している。

スーチーがNSTAとの会談内容を明らかにしないため、観測者の間ではミャンマーは来年3月の新政権発足までの長い移行期間に入ったとの憶測が飛び交っている。

スーチー党首は会談内容を明らかにすべきだとの声も上がっているが、NLDの広報はコメントを控えている。

イレブンのネット版では、スーチーのネイピードの自宅でNSTAは11月19日に面談したとなっており、11月26日のFBには「これ以上皆さんを悩ませたくない。彼女は自分に対して温かく接してくれた。国のためになることを自分はやっていきたい」とNSTAは記載している。

MT誌も同情報を流しているが、19日夕、ネイピードのスーチーのアパートで面談したとなっている。



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02:ウワサの解明は、原点に立ち戻る

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もちろん火のないところに煙は立たない。ミャンマーの場合はそのウワサをどう分析するかでウワサの質が変わってくる。これは推理小説の先を読むのと似ている。当ずっぽうの犯人探しではない。どうやって理路整然と分析するか、その推測過程が大切なのである。

途中から入っていくと筋道の糸はこんがらがってしまう。東西南北研究所の基本は、その原点からスタートするのである。



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03:ミャンマー民主化の原点

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今の民主化はどこからスタートしたのだろう。

ご承知のとおり、キンニュン首相時代の「民主化への7つの道標」が原点である。当時ミャンマーは経済・資源開発・軍事・政治の分野で中国の植民地になりかかっていた。軍事政権はその危機感を募らせていた。そこで、国防大学の某学者が「民主化への7つの道標」を起案した。作者は一人なのか複数か明らかにされていないが、どちらにせよタンシュエ元老の参謀である。
そしてキンニュンによって公表された。当時は軍事政権である。これは、国民に宛てたものではなく、NLD党首に宛てたものでもない。もちろん中国に当てたものでもない。

この深謀遠慮に富んだ提案はなんとアメリカに当てたメッセージであったと見るがいかがなものであろう。だが、アメリカがこの意味するところを読み取るかどうかは何の保証もない。ミャンマー国防軍の、あるいはタンシュエの賭けである。キンニュンの失脚は主要テーマでないのでここでは省略する。

これが時を経て、ブッシュからオバマ新大統領への政権移管、ヒラリー新国務長官の登場という過程を経て、ヒラリーのお庭番であったデレック・ミッチェルが密かに動き始め「ミャンマーで今、何が?」につながるのである。

それを、2015年国民総選挙におけるNLDの大勝、タンシュエの孫、という樹だけを見つめていては森という全体が見えなくなってしまう。



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04:子供の使いではないメッセンジャー

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タンシュエの孫といっても、子供の使いではない。なんといっても雲上人の孫である。そのメッセンジャーとしての役割は意味深で、非常に大きい。ミャンマーの国運を左右するものである。だが、今の外野席はマスコミや評論家を含めて、何でもかんでも一つ覚えの透明性に欠けると安易に非難する。だが、国策や外交政策では、墓場まで持っていく機密事項があってもおかしくはない。一国の首脳はむしろそれを分別し、活用すべきであろう。

日本の国務大臣だと、こういう重要なときに、ポカを犯した実例が歴史に残されているが、今のところこの孫は、感心なことに、余計なコトは口にしていない。


そして今、ピンウールインのアラビカ種の香りを楽しみながら明日発行の週刊メルマガの原稿を書きはじめたところである。
今朝も6時ころから、明るくなり始め、いつものとおりMT誌とGNLM紙を買い求め、一通り目を通した。



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05:首脳会談は12月2日

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朝一番に両紙を見比べて確認できたことは、明日(12月2日=水)午前中にスーチー党首はネイピードの大統領府でテインセイン大統領と会見。同日午後に、スーチー党首は三軍最高司令官事務室でミンアウンライン上級将軍と会見。これはそれぞれ個別会談だ。

スーチー党首は総選挙の大勢が判明した、総選挙のわずか2日後の11月10日に政権移管に関する会談を、両者に個別に手紙で申し入れていた。

それが、今朝の新聞で大統領府、および三軍最高司令官事務所ともに、明日2日の会談を確認している。

この今朝のニュースと、タンシュエの孫とを絡ませると、何か見えてくるものがありませんか?

先週までは、大統領・最高司令官ともに、スーチー党首の会談申し入れに対して、両者ともに、先延ばしの回答しか出来なかった。

そして今、われわれは、現在の体制においては、大統領といえども、そして最高司令官といえども、単に使い捨ての駒でしかないことが見えてきた。ということは、雲上人が方向を示さない限り、イエスともノートも言えないということである。

そこで、この孫が重要なメッセージをスーチー党首に伝えた。そして、このメルマガの発行日である12月2日(水)にテインセイン大統領、そしてミンアウンライン最高司令長官との面談が設定された。そこで、雲上人の意思が明確になると、見てよいのではないだろうか。



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06:大統領の上に君臨することは可能

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モノゴトには裏表がある。諸刃の刃というところだ。
1990年の国民総選挙ではNLDの圧勝であった。軍事政権は憲法などないがしろにして、すべての国民の意思を無視した。そして、今、スーチーに対して憲法を盾に大統領職を付与しようとはしない。それだけではなく、ミャンマー国の最高権力者である、テインセインという大統領がいるにもかかわらず、憲法上はなにひとつ職務権限のない雲上人が、大統領も三軍最高司令官まで、意のままに操ろうとしている。

そして、何の公的役割も持たないその孫までが「国民のためになることに、自分は奉仕したい」みたいなことを述べている。冷静に判断すれば、何かおかしいと思わねばならないところだが、それが大手を振ってマスコミでも、国民の間でも、そして外国人という第三者の間でも、まかり通っている。

雲上人の目玉が白濁したときに、ネウィンのときと同じく、その王国は虚を衝かれる可能性がある。

すでに老獪なレベルに達した政治家であるスーチー党首は、そのところが、見えているのではないだろうか。かといって同じ歴史を繰り返すということではなく、彼女の場合は、もう少し深い読みをしているのではというのが、当研究所の見方である。

憲法が大統領職から締め出すのであれば、その上に立つとの彼女の発言は、非常に意味深である。雲上人も憲法上何一つ権限はないのに、大統領と三軍最高司令官のはるか雲の上に君臨してきた。だが、彼女は民主的で、もっと賢明な方法で、それを実現するのではないだろうか。



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07:遅かれ早かれ

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言い忘れたが、「民主化への7つの道標」の最終目標は、理想的な国民のための民主化である。
それが、スーチー党首の新政権で促進されるのか、あるいは軍部の介入でスローダウンするのか、それが、12月2日(水)の両会談で見えてくるかもしれない。見えてこないかもしれない。

遅かれ早かれの問題だが、そう熱くならずじっくりと拝見しましょう。

アナタは居候の身分で、あくまでも野次馬で、異邦人で、外国人なのだから。

追伸:なお、RFAは米国政府がスポンサーの国際放送で、ビルマ語によるアジアだけでなく、アフリカ版や、RFEという欧州版もあり、東京にも支局がある。特に各国の反体制派を通じてのアメリカが大好きな人権問題からの問題定義が紛議を醸してもいる。



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