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<ミャンマーで今、何が?> Vol.170
2015.11.18
http://www.fis-net.co.jp/Myanmar
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■おもしろくなってきたミャンマー劇場
・01: 反省の言葉
・02:ミャンマー国軍最高司令官の検証
・03:スーチーの考えを総括
・04:ビジネスグループの選挙戦前のご意見
・05:新政府への移行スケジュール
・06:ミャンマーはやはり少数民族の宝庫
・07:オバマからの電話
・08:メルマガ遅延のお詫び
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01: 反省の言葉
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総選挙の結果はご承知のとおりなので、その数字についてはもう書かない。
甘美なワインの酔いからはとっくに醒めた。今週は、もう少しマシな記事にしないと、読者は嫌気がさすので、今週は自戒して、国内外の英文記事を、片っ端から追い掛けてみたい。
反省の意味で、ミャンマー国軍最高司令長官のポジションにスーチーが就任する可能性について、改めて検証してみたい。
なお、蛇足ながら、その地位の英語名は“Commander-in-Chief”で米国では歴代、大統領がその職位を踏襲することになっている。いわゆるシビリアン・コントロールである。
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02:ミャンマー国軍最高司令官の検証
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まずは、現在ミャンマーでこのポストを占めるミンアウンライン上級将軍から取上げたい。彼は1956年の生まれで、月日が判明しない。単純計算で今年59歳となる
過日、日系マスコミが11月8日の大統領選出馬のウワサもあるがと独占インタビューを行った。これは元国軍最高司令官に政権を掌握する意図があるのか、その有無を探ったものと思われる。
同将軍は、2010年6月に陸海空共同参謀総長のポストをシュエマン(今回の選挙で議席を失った)より引継ぎ、2011年3月30日にミャンマー国防軍最高司令官のポストを高齢のタンシュエより引継いでいる。ということはこのポストに年齢制限はなく、ミンアウンラインより10歳年長のスーチーでも就任可能との理屈になる。
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03:スーチーの考えを総括
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スーチーNLD党首が、11月8日の総選挙直前に、NLDが議会の多数を獲得できたら、自分は大統領を凌ぐ、その上のポジションに就任すると、爆弾発言をしている。
彼女は、軍事政権が起草して国民に認めさせた2008年憲法は、軍事政権の立場のみを強化し、スーチー個人を標的とした大統領資格剥奪条項を設け、もちろんそれだけでなく、国民のための真の公正な民主的憲法とはなっていないと、補欠選挙で国会入りして以来、改正の必要があると終始一貫主張してきた。
これまでは、タンシュエそのものが公式な肩書きもなく、常に大統領の上の存在であった。スーチーはそれを逆手に取り、それでは、国会で多数を占めることになったNLDの党首が、憲法で禁止されるなら、肩書きは別として大統領の上の存在になって何がおかしいという論理である。
それでは、タンシュエと同じ独裁政権ではないかとの質問に対しては、総選挙で最大議席数を占めたNLDの党首が大統領になれないこと自身が、民主主義的ではないことの証である。今回の選挙は国民がそうあってほしいと願い、選出したのは国民の総意である。国民はスーチーが党首を務めるNLDに投票したのだ。立派な論旨だ。
これに対する、級軍事政権側の反応を聞きたいところだが、スーチー党首はテインセイン大統領、国会の上下両院議長、国防軍最高司令官などとの協議を申し入れており、多分、今週実現する見込みである。その結果が知りたい。
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04:ビジネスグループの選挙戦前のご意見
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スーチーは行政経験皆無で、これまで4-5年間の改革実績からいって、テインセイン大統領に継続してもらうのが、ベストではないかというご意見を、多くのビジネス関係者から聞いた。特に日本人のビジネス関係者がそうであった。それとは反対に、欧米系の意見はまったくその逆であった。
その考え方の違いに大きな隔たりがあるのに驚いた。
軍関係者がビジネスをコントロールしている限り、真の“チェインジ”はこの国にやってこない。表面的には改革をやってきたようだが、最終的な肝心なところで、軍部が許認可にしても“イエス”“ノー”の決定権を握ることになる。だから、この国に“チェインジ”は必要不可欠だという。
そして、オバマにしても最初は未経験だった。ケネディのようにも彗星のごとく現れた大統領はすべてド素人からスタートしている。スーチーを大統領に、それがダメならNLDから大統領を出すべきだというのが、一般的な欧米の見方であったように思える。
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05:新政府への移行スケジュール
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第13回通常国会は上院・下院ともに11月16日(月)に開会され、これが旧テインセイン政権での最終の定例国会となる。
そして来年1月後半、今回の総選挙で当選した新議員が初登院し、新大統領、2名の副大統領など、肝心要のポストが国会内での新議員による選挙で選出される。
これによってミャンマーの歴史にとっては画期的な、国民によって選ばれた新大統領の就任式が2016年3月31日に行われる。それまでは、予断を許せないのがミャンマー劇場の醍醐味であろう。
スーチー党首が、NLD議員全員に緘口令を敷いたように、この新大統領誕生までが非常に微妙で重要な期間となる。日本では、浮かれた新大臣が舌禍事件で、マスコミの総攻撃を食らい、短期間で辞任に追い込まれるのは恒例行事だが、スーチー党首はそれを他山の石として、訓戒を垂れたのである。
それだけではなく、軍部はスーチー党首本人の発言についても、隙あらばという体制を敷いているであろうから、これからは両陣営にとって神経をすり減らす期間となりそうだ。
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06:ミャンマーはやはり少数民族の宝庫
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過去の半世紀に及ぶ軍事政権時代に決して成し遂げられなかった、反政府武装勢力との和解・和平交渉について、民主化改革に乗り出したテインセイン大統領ですら、ほんの一部の少数民族としか協定を締結できなかった。
歴代のビルマ族がビルマ中央部のみを制圧してビルマの主要民族となった。だが、その周辺から国境地帯に居住する山岳民族などは制圧されず、抵抗を繰り返していた。英国の植民地時代になってからは、逆に国境近くに住むカレン族などに英語を教え、キリスト教に改宗させ、軍事訓練を施し、そしてビルマ族を制圧する立場に彼らを導いた。その反目が今も続いている。
アウンサン将軍は、ロンドンでのアウンサン=アトリー協定締結に成功し、シャン州に飛び、歴史的に有名な“パンロン協定”を主要民族と結んだ。これは将来の連邦制を目指したものである。
だから、英語で“Hill tribe”、すなわち山岳民族は、基本的に反中央政府の立場を取り、その過激派が自治を求めて武器を取るようになった。今回の総選挙でも、多くの国境地帯では、中央政府がコントロールできずに、彼らの人口実態調査のみならず、投票権もあたえられないままとなっている。この説明で納得すれば、あまりにも単純といわれるだろう。彼らのほとんどが、反中央政府である。投票させるとその票はすべてアウンサンスーチーに流れるとして、敢えて中央政府は紛争地帯を理由に投票できないようにしたというのが、大半の識者の判断だ。
単純にいうと、彼らの大半はアウンサン将軍ファンで、中央政府は信用できないが、スーチー党首なら信用すると言う。だから、軍事政権から民主的な新政権に移行すれば、全国的な平和協定が締結される可能性が非常に大きいのである。このカードはスーチー党首のみがもつ、パパからの偉大な遺産である。テインセインが成し遂げられなかったことを、スーチーが成し遂げる。しかも、それはミャンマー国内の最優先課題でもある。
今回は、ワインの力を借りずに明言したい。これが実現したら、歴史にないノーベル平和賞を二度授与しても良いくらいだ。それが無理なら、スーチーを国連事務総長に推薦するくらいのことを、藩基文がやってもよいのではないか。それが実現できれば、軍部の嫌がるスーチーを国外(ニューヨーク)に追放できる。そして、再び国が乱れる。そこではじめて、愚者はこの国にはスーチーが必要だということに気づく。そこで、ふたたび、スーチー・コールが沸き起こる。どうでしょう、こういうシナリオは?
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07:オバマからの電話
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総選挙から3日後の11月11日、もうすでに選挙結果の大勢は判明していた、オバマ米国大統領はスーチーに祝福の電話を掛けてきた。しかも、お互いに直接英語で強い意志とジョークを取り交わす。このあたりが、日本・中国・韓国の首脳が決して出来ないトップ外交である。そのあとでオバマ大統領は12日朝、テインセイン大統領とUEC(中央選挙管理委員会)委員長それぞれに過去の功績と今回の自由で公正な選挙の成功を祝福する外交辞令の電話をかけている。
これらはそれぞれの広報担当官が明らかにしたことだが、ミャンマーで密かに根強くささやかれているのが、オバマ大統領の第3回目のミャンマー訪問だ。マニラでのアジア=パシフィック首脳会議のあとで、突然ミャンマーを訪問するとのウワサだ。
さてどうなることか、これもミャンマー劇場の楽しみの一つである。
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08:メルマガ遅延のお詫び
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今週号もプロバイダー、そして読者の皆さんにはご迷惑をお掛けするが、メルマガ発行日の18日付け現地新聞2紙を確認してから原稿を送付しようとしている。
さっそく、MT紙の第一面に“新政権への移行会談にダウト”と大きな活字で書いてある。記事を読むと、今週予定されていたスーチー党首とテインセイン大統領、国会の上院・下院両議長、および国防軍最高司令官との会談が、無期限で延期されそうな気配となってきた。
政府側のこじつけ説明は、今回の選挙でかなりの不平不満が各方面から寄せられており、これがすべて解決してから、新政府移管に関するスーチーNLD党首との会談を行いたいとしている。
これを政治用語で、一寸先は闇と表現したのだ。
であるから、2016年3月31日に、新大統領が就任を宣言するまでは、それを期待するが、最悪の事態に備えよとのアウンサン将軍の名言をもういちど読み返したい。
東西南北研究所所長はこれから朝食に掛かります。2015年11月18日午前7時30分の原稿発信です。
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