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<ミャンマーで今、何が?> Vol.155
2015.07.29
http://www.fis-net.co.jp/Myanmar
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■2016年の行方
・01:風林雨山
・02:強硬派で知られた大物議員が死去
・03:大統領選が泥沼化
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01:風林雨山
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モンスーン雨季が本格化してきた。
ミャンマー全土から、洪水、鉄砲水、土砂崩れ、木造の橋が流されたり、家屋崩壊などの災害状況が、写真つきで報じられてくる。
“月さま、雨が、う〜む、今宵は濡れて行こうか”などと、悠長なものではない。日本だと、手のひらを差し出し、上を見上げて、オヤッと風情のあるところだが、ミャンマーは上ではない、横からやってくる。
地平線のかなたから、雨軍団が絨毯爆撃のごとくに迫ってくる。雨の音が聞こえたら、もうダメだ。数分ではない。数秒で叩きつけるような土砂降りとなる。樹の下なり、軒先に駆け込まねばならない。キャンバス・シートが装備された路上喫茶ならOKだ。端っこの席だと、この叩きつけた雨の跳ね返りにヤラレル。客席は真ん中でスクラムを組むことになる。気温は急下降して、時には肌寒く感じることもある。これが一日に何度も波状攻撃でやってくる。
農村地帯に行くと村全体が冠水し、借金して育てた換金商品の農作物と自宅を見捨てて、安全な場所へ避難せざるを得なくなる。家族にとってさらに大きな悲しみがスタートする。
この地では孫子の兵法も“侵掠すること雨の如し”となる。風林雨山である。
最近は、ミャンマー政府の省庁も国際機関の支援とリンクし始めた。ベンガル湾の気象情報および予報も、事前に発表される。だが、その影響地域が、細長いミャンマーのほぼ全土にわたっている。だから、大雑把といえば、非常に大雑把である。日本だって威張れたものではない。気象衛星が登場する前まで、天気予報といえば、当たらないことの代名詞であった。
そして消防庁などの救援隊員は、昨日仕立てたような蛍光オレンジ色の制服にヘルメットを被り、太いベルトには頑丈なカラビナが装備され、水没して見えない道路に張った安全ロープにつながれている。数年前だとロンジーにスリッパであった。チョット滑稽な気はするが、災害大国のミャンマーである、この実地訓練が繰り返されれば、数年後には世界最強の災害救援集団に成長するかもしれない。
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02:強硬派で知られた大物議員が死去
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7月8日真夜中にめまいを感じ意識不明におちいった74歳の男性がネイピードの病院に運び込まれた。その夜、神経外科の専門医がヤンゴンからネイピードに飛行機で呼び寄せられた。手の施しようがない。事態は緊急を要する。飛行機をチャーターして患者をシンガポールへ運んだ。このあたりでこの人物が大物であるということに気づく。
そして7月23日、シンガポールの病院で息を引き取った。
この人物は1964年、マンダレー大学を卒業すると、軍隊に入り、大佐のクラスまで上りつめた。軍政権時代、1997年から2011年の長きにわたって工業大臣の地位を占め、ウィキリークによれば、その地位を利用して、建設業および貿易業契約を軍のネットワークに取り込み、本人および二人の息子を含めて家族ぐるみで蓄財システムを築き上げた。いまでは、ミャンマーで最も裕福な一家とウワサされている。
米国政府はその家族を経済制裁の対象にしようとした。だが、結果的には2014年10月に本人のみが経済制裁のブラックリストに掲載され、息子たちは制裁を逃れた。
本人は与党USDPの大物政治家で、銀行金融発展委員会の議長も務めていた。この人物には奇妙なウワサがささやかれ、ウィキリークによれば、仕事にあぶれた放浪者たちをヤンゴン郊外・レグーにある軍事訓練施設に送込み、私設軍団のようなものをつくりあげ、デモ対策に活用したと、2007年のウィキリークは報じている。
2013年3月に発生したミッチーナでの反ムスレム暴動は、この私設軍団が関与しているとされるが、本人はこれを執拗に否定している。遡って、2003年にNLD党首がキャラバンを組み地方遊説に出かけた際、党員数人が殺害され、スーチー党首も運転手の機転で脱出できた事件があった。この事件を仕組んだ黒幕がこの本人だといわれている。
テインセイン大統領がすすめる、シャン・カチン・カレン・ワ族などとの平和交渉で、この大物大臣は仲介役を果たしてきたともいわれている。
昨7月27日(月)、ヤンゴンのイエウェイ墓地で100名以上が出席してその葬儀が行われた。
シュエマン下院議長、両副大統領、国軍最高司令官ミンアウンラインなど政府のトップ高官から贈られた花輪が棺の前にずらりと並んだ。だが、テインセイン大統領およびタンシュエ元SPDC最高議長からの花輪はなかった。
この辺りが、よく理解できないところだが、スーチーNLD党首も花輪を贈り、7月24日には、彼女自身が直接自宅を訪れ弔意を示したと報道されている
この人物の名前はウ・アウンタウンで、四人の子供がいる。そのうちの二人の息子はヤンマーの複合企業であるIGEグループを創立し、天然資源、ホテル業、ユナイテッド・アマラ銀行を経営している。
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03:大統領選が泥沼化
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“日刊ボイス”7月15日付けで、与党USDP党首であるシュエマン下院議長を徹底的に非難する記事が掲載された。政府とジャーナリズムとの間で、言論の自由がホットな議論となっているが、ある意味ではミャンマーもここまで自由になったかといえる記事である。7月28日付のMT紙で英文に翻訳されているのでご紹介しよう。
最近の動きとして、6月26日にシュエマン議長が率いるUSDP党内で連邦政府法の修正案をめぐってひと波乱あった。この修正案が国会で承認されれば、テインセイン大統領およびその内閣閣僚は、党員としてではなく、独立の候補者として選挙を争うことになる。
これは明らかにシュエマン派閥が、テインセイン派閥を与党USDPから除外することを意味している。それだけでなく、テインセイン一派が新党を結成して選挙に出ることも禁止するものである。この修正案は下院は通過したが、上院で拒否された。その結果、テインセイン大統領を追い出す努力はまだ実っていない。
同時に、大統領府の二人の大臣がカヤ州から立候補することを阻止された。USDPの承認が得られなかったのである。候補者選定調査を指示するUSDP党首の仕業とされている。
他の問題も出てきた。国軍が候補者の個人名リストをUSDPに提出した。これは国軍がUSDPを牛耳る動きと見られている。候補者数は140名にのぼるが、候補者選定委員会は50名のみを承認した。国軍はこの回答にもちろん不服だ。
この問題の理由は単純だ。総選挙後の大統領選に誰が選ばれるかということだ。
現憲法下では、大統領の権限は非常に強力だ。内閣を組閣するだけでなく、14の州および地区それぞれで首席大臣の指名権も持っているからだ。もし、USDP党首が大統領に選ばれれば、その派閥のメンバーが内閣に指名され、その家族および取り巻き連中が政府関係の仕事を請け負い、その家族が裕福になれるからだ。現在の議会内で、力のない、元将軍たちは、大統領選でどの勝ち馬に賭けようかと、真剣に検討している。
7月14日、シュエマン議長率いる下院は次の手を打った。大統領および副大統領選の修正法案である。ミャンマーの大統領選は国民による直接選挙ではなく、国会議員が大統領を選出する。大統領候補を下院、上院、そして国軍がそれぞれに指名する。これは2010年10月28日に、当時の軍事政権、SPDCが制定した憲法に基づく。この憲法はタンシュエ上級大将が署名し、2010年の総選挙のあとで、大統領選は行われた。この細則をはじめ政令はSPDCが実施できることになっているが、このSPDCを下院に変更しようとするのが、シュエマン議長の狙いである。
現法律では、三人の候補者の最多得票者が大統領となり、他の二人は副大統領となる。しかし、修正案が承認されると、誰も50%を越える得票者がいない場合、上位二者で決選投票を行うことになる。
この修正案が承認されれば、USDPにとってライバルはいなくなるので、軍事政権としては望みどおりの結果を得ることができる。
そこで、2016年の大統領選挙で、USDP党首がどのような手を打ってくるか、じっくりと見極めたい。
となっている。
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