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<ミャンマーで今、何が?> Vol.15
2012.10.16

http://www.fis-net.co.jp/Myanmar


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■スーチー議員が大統領選に挑戦

・01:スーチー議員が大統領選に挑戦
・02:ミャンマー独立の英雄が国外追放中に死亡
・03:サイアム・セメントがミャンマー進出で外国人投資法案待ち
・04:日本株式会社がミャンマーで復活

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・ミャンマーで今、何が?

■スーチー議員が大統領選に挑戦


<01:スーチー議員が大統領選に挑戦>

米国訪問から帰国したスーチー議員にとって初の記者会見が10月8日ヤンゴンで開かれた。その席でスーチー議員はミャンマーの国民が望むのであればとの条件つきで、NLDの党首として大統領選に挑戦する責任があり、その勇気を持たねばならないとその態度を明らかにした。

旧軍事政権が制定した現行憲法では、ミャンマー大統領の要件として配偶者あるいは子供が外国籍でないことと、明白にスーチー個人を阻止しようとする規定が設けられている。

したがって、今回のスーチー議員の発言は更なる民主化改革と憲法改正の限界をテストするものと見られている。

憲法改正に関しては、スーチー女史は今年4月の補欠選全国行脚で国会議員の25%を民主的方法によらず一方的に軍事政権が独占するシステムを非難する大キャンペーンを開始した。そして、スーチー党首の率いるNLDが大勝した補欠選挙後、議会初登院の議員宣誓式で、憲法を尊重(respect)すると言う宣誓文言なら同意するが、憲法を死守(safegurd)するとの宣誓は全員がボイコットという行動をとった。このため、議会は一週間以上にわたって空転した。快調に進んできた民主化変革の失速を恐れる米国のヒラリー国務長官は直接スーチー党首に電話し「貴女はもうこれまでのアイドルではない。政治家とはキブ&テイクを勘案するものだ」との助言がなされたという。その結果、5月3日に議員宣誓がなされ議会が通常通り動き始めた。

ここまでを憲法改正の第1・2ラウンドとすれば、スーチー議員の今回の発言は第3ラウンドの開始ともいえる。

先の米国訪問でテインセイン大統領がBBCとの独占インタビューに応じ、スーチー党首がミャンマー国のリーダーである大統領になる可能性について容認する異例の発言をした。「彼女が大統領になれるかどうかは、ミャンマー国民の意思次第である。もし国民が彼女を受け入れというのであれば、私もそれを受容れねばならない」とテインセイン大統領は語っている。

これは表面上は政治改革を進めるテインセイン大統領のスーチー議員に対するエールとなる発言だが、その裏には議会内でしのぎを削る保守強硬派と親民主改革派の微妙なバランスを斟酌した上で、世界のひのき舞台であるニューヨークから、しかも英国を代表する国際的マスメディアのBBCを通じてこの強硬・改革の双方に大問題を投げかけたメッセージでもある。そしてもうひとつ忘れていけないのが、ミャンマー国民に対するテインセイン大統領の強力な意思表明と取れないこともない。

であるから、NLDのスーチー党首は、そのエールに応えるために次期大統領選に出馬する意思を今回表明したものと思われる。

同時に彼女の政党NLDでは、スーチー党首を大統領にするための障害となっている現行憲法の修正箇所を検討していくとの声明を出している。



<02:ミャンマー独立の英雄が国外追放中に死亡>

ミャンマー独立の闘士で伝説上の“30人の志士”の生き残り2名のうちの一人が国外追放中に死亡した。

イラワジ通信ウェッブサイトによれば、92歳のKyaw Zawは雲南省の昆明で10月12日死亡した。同氏の娘は葬儀は共産党の手で行われると語っている。この30人の志士は民主化運動のリーダー・スーチー議員の父親アウン・サン将軍とともに第2次世界大戦中に英国植民地から独立する闘いの訓練を受けるために日本へ赴いた。

Kyaw Zawは独立後のビルマ軍に参加したが、左翼的であるとして軍から排除された。1976年には地下に潜り、当時禁止されていた共産党に入り、1989年には中国へ逃亡していた。



<03:サイアム・セメントがミャンマー進出で外国人投資法案待ち>

タイの大手複合企業のサイアム・セメント・グループ(SCG)はミャンマーでのセメント工場建設計画着工を目前に外国人投資法案の成り行きを見守っている。

“提案しているミャンマー工場計画の承認はミャンマー当局の外国人投資法案次第である”とSCGセメントのPramote Techasupatkul社長は語った。

タイ最大のセメント製造会社のSCGは100億バーツを投入して日産5,000トンのセメント工場をミャンマーに建設する予定である。

この外国人投資法案はテインセイン大統領が一部手直しを要求して議会に差戻したためにその実施が遅れている。

“年内には何とか実質的な進展を見たいものだ”とPramote社長は語っている。SCGは1993年にミャンマーへ進出し、当時ミャンマーで配合済みコンクリートを販売する最初の会社となった。

今回の工場はまったくゼロからのスタートで、SCGの方針に沿った環境にやさしいグリーンビジネスであると同社長は語った。

SCGはプロのチームでグリーン・ビルディングと呼ばれる環境に優しいコンサルタント事業部門を立ち上げている。

同社長によれば、SCGの建設資材を使用した新事業部門は今後5年間で10億バーツの売り上げを目指している。

タイ市場では関心が高まり、この事業部門は昨年から商業ベースのコンサルタント業を開始した。主な顧客にはNakhon Ratchasima地区にあるスターバックスやトヨタのディーラーなどがある。

スターバックスの店舗はクリスタル・デザイン・センターにあり、グリーン・ビルディング資材を使用して、これまでに光熱費の20%、水道代金の30%を削減している。さらに同社の15店舗が現在工事に着工中である。

“グリーン・ビルディングに関心のある顧客には新築であれ、旧ビルの改装であれコンサルタント業務をいつでも提供できる。しかも、コンサルタント費用は建築総額の1-2%と割安である”と同社長は語っている。(ナイトリッダー/トリビューン)



<04:日本株式会社がミャンマーで復活>

ミャンマーが旧体制から脱皮しようと努力している今、まったく異なる景観が発生しようとしている。日本が世界の経済大国として躍り出た1980年代を思わせるような大型投資が日本政府および日本企業の援助策としてミャンマーに雪崩れ込んでいる。

ヤンゴンの中心部にある市庁舎では何十名という日本人のエンジニアが長いこと疎かにしてきたヤンゴンの道路・電話・インターネット・上下水道システムなどのマスタープランを作成中である。

日本人のエンジニアはお得意の緻密さでヤンゴンの交通形態を計測し、70年以上の水道管を点検し、地図と青図とを突き合わせている。

今年初めに東京を訪問したテインセイン大統領が日本に求めたのは自国再開発につながる肝心な部分の業務委託である。ヤンゴンの改装だけでなく、大規模な工業団地とヤンゴン郊外の衛星都市の建設に日本の技術と資金を導入したいという。


日本のこれほどの大々的な関与は海外で波紋を呼んでいる。

ミャンマーがこれまで長年の投資家であった中国から日本へと大きく針路を変更した。

アジアの2大経済大国である中国と日本をミャンマーという土壌で戦わせる戦略のようだ。

中国と日本ではその対象とする目の付け所がまったく異なる。日本はミャンマーの安い労働力に魅力を感じており、タイやインドシナで推し進めてきた工場ネットワークという巨大なシステムをミャンマーにも拡大しようとしている。特に、昨年のアユタヤ・バンコクの大洪水による工場被害・輸送路の分断等でリスク分散が検討された。一方中国の関心は、ミャンマーに眠る膨大な天然資源に集中している。それは天然ガスであり、宝石であり、さらに木材もゴムもある。そして水力発電のダムから作り出される大容量の電気を、それが欠乏している中国本土に引き込むという大計画を着々とこなしてきた。

しかし、これらの資源を強奪しているようにも見える中国のやり方はアンチ中国の感情をミャンマー国民に植え付けてしまった。それが最近中央ミャンマーの都市、モニワで発生した銅鉱山にたいする抗議運動であり、テインセイン大統領が地元国民の声を無視できなくなったとして突然の工事中止を命令したミッゾン水力発電ダム工事である。

ミャンマー政府の中国から日本への方針転換は中国に対する激怒ほどには日本にとって魅力的なものではない。だが、ミャンマー国のリーダーとの信頼関係をあらたに構築するチャンスとはなっている。

他の数多くの政府が、今ミャンマーとのビジネス関係の修復、あるいは関係強化を狙って首都のネイピード入り、あるいはミャンマー最大の商都ヤンゴン入りに必死となっている。現在、このネイピード・ヤンゴンのホテルは韓国・タイ・シンガポール・欧米のビジネスマンで溢れかえっている。だが、日本政府・大手企業のアプローチ方法は彼らとは若干異なるようだ。日本の三菱・丸紅・住友という大複合企業が日本株式会社と揶揄される総力戦で日本の通産省などと協力して事業計画に一歩踏み出している。

日本政府はわずかに0.01%という低利で50年間の借款をミャンマーに付与しようと検討に入った。しかも、最初の10年間は償還を棚上げする予定となっている。

民族問題はミャンマーのアキレス腱だが、貧困に打ちひしがれた少数民族および国境地区の各州にとって必要なのはまずは経済発展である。教育問題などの根本的な大問題もあるが、現在彼らを含む大多数の国民が望んでいることは民主化という流行語の本来の意味は理解しないとしても、表面上軍政権が消滅した今、’民主化の配当金‘だけはきちんと受け取りたいということである。“ミャンマーの国民一人ひとりは民主化というものの果実は欲しい”と思っていると日本財団の笹川陽平会長は語っている。

テインセイン大統領は笹川会長に遠隔地の小学校など、短時間で完工できる計画を最優先でお願いしたいと語っている。

日本が担当するヤンゴンの改造計画は果てしもないものである。ヤンゴンのインフラの大半は英国の植民地時代の代物である。

英国が建設したヤンゴンの周回電車は朽ちかけている。ヤンゴン市内の歩道はひび割れたり危険な穴ぼこがあちこちにあいている。

完全に用を成さない下水施設はヤンゴンの中央下町地区だけをカバーしている。そして下水管からは汚物が漏れ出している。

現在必要資材は日本を出発したばかりだが、ピンポイントでの地下の漏出部分の修理には役立つだろう。

ヤンゴンのインフラの手当ては大半がバンドエイドのパッチ当てである。ヤンゴン郊外にある貯水池の浄水設備も手をつけねばならない。

日本政府が見据えている計画には大量輸送電鉄計画、ヤンゴンに配電する4箇所の発電所、ティラワ工場団地とヤンゴンを結ぶバゴー川を跨ぐ第2の橋の架設、ヤンゴン近くの6つの桟橋などなどである。これらの事業見通し調査は今年末までには完了させる予定だ。資金の目処も日本からの優遇借款が検討されている。(インターナショナル・ヘラルドトリビューンなど)



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