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<ミャンマーで今、何が?> Vol.130
2015.01.28
http://www.fis-net.co.jp/Myanmar
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■YSXをご存知ですか?
・01:YSXをご存知ですか?
・02:上場会社は?
・03:企業文化の背景
・04:不動産高騰のあとに株式ブーム到来か?
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01:ヤンゴンに証券市場が新たに登場
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今年10月の開設を目指して、急ピッチで技術的なインフラ整備を進めているのがヤンゴン証券取引所(YSX)である。これまでのミャンマー証券取引センター(MSEC)からすべての証券市場業務がYSXで執り行われる。
MSECはミャンマー経済銀行と大和証券グループが50対50の出資で1996年4月に設立した合弁企業だが、これまで長いこと2社の株式がカウンター越しに店頭取引されるだけであった。
2011年に登場した新政権は、ヤンゴン証券取引所を新規に発足させるため、選抜した大和証券グループと東京証券取引所に対して協力を申し入れていた。これら二社の支援のもと、ミャンマー中央銀行は証券取引法の草案を作成し、ヤンゴン証券取引所にその業務を委任するという新たな法律を2013年7月31日にスタートさせ、今年10月にはミャンマーの商業都市ヤンゴンで証券市場が発足する。
「アセアン加盟10カ国の中で、証券取引所が整備されていない加盟国はミャンマーとブルネイの2カ国だけとなった。地球規模で見ても、証券取引所がないのはミャンマーを含めた9カ国のみで、そのうちの6ヶ国は小さな島嶼国、他の2つは北朝鮮とブルネイである。民主主義国家として証券取引所は必要とされ、市場経済を象徴するものである。ミャンマーでも店頭取引は存在したが、その対象株式は2社しかなく、近代的な証券取引所とはいえなかった」と財務省の副大臣は語った。
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02:上場会社は?
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現在最も有力と見られているのは次の3社である。
Asia Green Development Bank(AGD)は銀行業務のライセンスを受け、外国部門では外国為替も取り扱い、株式を公開し、ミャンマー全土で事業展開を行っている。
なお、AGD銀行はかっての前軍事政権と関係の深いMr.テイザーの所有銀行で、チョーネーウィン、エイネーウィン、ズウェネーウィンの3兄弟が同銀行の株式60−85%の取得に動いている模様だと、2014年7月23日付DVBが報じていた。
同3兄弟は名前から察せられるとおりネウィン元大統領の孫で、タンシュエ軍事政権を転覆させる目的でクーデターを企んでいたとして死刑判決を受け収監されていたが、現テインセイン大統領の特赦で2013年11月15日に釈放されている。
この辺りが、ミャンマーを読み解く上で、非常に複雑怪奇で、特に日本人にとっては難しいところでもある。
投資持株会社であるFirst Myanmar Investment(FMI)は1992年に設立され、ミャンマーでは最大の株式公開会社である。FMI社は子会社を通じて銀行業務、自動車、農業ビジネス、小売業、不動産、観光業などミャンマー国内で幅広く事業を展開している。このオーナーは「ミャンマーで今、何が?」Vol.61で詳述したMr.サージパンである。同氏の活躍ぶりを覗く意味でも参考にしていただければ幸甚である。
残る1社は、ミャンマー米生産者連盟が設立したMyanmar Agribusiness Public Cooperation Limited (MAPCO) で2012年に設立され、現在1,400名の株主を抱える。その資本金は110億チャット(米貨11百万ドル)に上る。最近の設立で、この企業のバックグラウンドは掴みきれていない。
今年10月までに資格要件が整うのはせいぜい4・5社ではないかと語る業界通もいるが、同副大臣はYSX開設時には10社は大丈夫だろうと見ている。
大和証券筋によれば、10月のスタート時に上場できるのは5−10社、2017年までに10−20社としている。
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03:企業文化の背景
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ミャンマーの地元産業で名前の売れた優良企業は多数ある。そして一般消費者を獲得しようと有名俳優や歌手を起用して盛んにコマーシャルを流している。しかし、不思議なことにこれら企業の名前は納税企業トップ10などのリストではほとんど見当たらない。
したがって、証券市場開拓の前任者であるMSECが幾ら努力しても、たったの2社しか応募してこなかった事実が、これまでの実態である。当然、有価証券届出書に類する義務が生じるものと思われるが、この国の文化では、政府を信じないところからすべてはスタートするので、届出どころか、秘匿がこの国の企業文化であった。
2011年3月に新政府が発足した。だが、最初は、国外も、そして国内も、政府を信用しなかった。注意深く様子を見てみよう。そして1年経ち、2年経過する。海外の政府が投資家が、ひょっとしたら本気かもしれないと思案するようになった。そして米国が動く、欧州が歩調を合わせる。そして日本がそれに追随する。経済制裁が解け、ビジネスマンが飛び込んでくる。付和雷同型はどの国にもいる。それほどの見識もなしに、遅れてはならじとミャンマーへ飛び込んでくる。それを見て、ミャンマーの企業までがミャンマーは変わるかもと思うようになった。海外の対応を気にするところなど、ある意味では日本人そっくりだが、皮肉や冗談ではなしに、これが普通の感覚かもしれない。
これまで政府を絶対に信用しなかったミャンマー企業までが、最初は意味不明だったトランスペアレンシーなどという英語を使用するようになった。米国の戦略はミャンマー政府に対して透明性を要求したのだが、税金を取り立てられる側の企業までが、財務諸表の提出を躊躇しなくなった。
これまでは、利益を隠すことが企業文化で、政府当局に実態を掴まれるのを極度に恐れてきたミャンマー企業だが、今、空気が変わろうとしている。
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04:不動産高騰のあとに株式ブーム到来か?
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そして、上記の3社以外にも、さらに数社が上場を目指して静かに準備段階に入っている。各社ともに上場基準をクリアするために財務・経理の手直しを開始している。
国際的な標準では上場会社は透明性を求められ、財務諸表も明確にする必要がある。したがって、上場を目指す国内企業も同様のシステムを採用しなければならない。上場基準はまだ発表されていないが、間もなく公表されるだろうと同副大臣は語った。10月の発足までには十分な時間があり、企業が遵守すべきポイントは9ないし10項目である。しかし、まだ発表する段階にない。
ミャンマー・ティラワSEZ会社などは目論見書を印刷して一般への人たちへの会社案内としている。同社はティラワ経済特区を開発する企業集団の一部である。欧米日では当たり前のことだが、事業内容について紹介し、企業の役員構成、会社の経歴なども記載している。これなどもミャンマー企業にとっては参考になり、学習のよい材料となることだろう。
ミャンマーには、これまで真の意味での証券市場は存在しなかった。それだけにすべてが新規のチャレンジとなる。
そしてこれまで慣例とされてきた店頭売買は、結果的には消滅することだろう。この線に従って、財務省も近々、店頭売買禁止の方針を発表する予定だ。これで国際標準に基づいた株式取引が施行され当局の指導が実施される。
証券会社、株式ディーラー、株式仲買人、コンサルタントの資格を取得したい会社は1月の第3週から、受付が開始されることになっている。
ヤンゴンに海外からの投機資金が流れ込み、実際の事業を展開する前に、不動産市場はすでにバブル現象を見せた。そこでYSXによる証券市場が整備されると、もうひとつ別のバブル投機が匂ってくる。10月というタイミングは申し分ない。大統領選挙の成り行きもかなりはっきり見えるころだ。もし行き場を失った大量の投資資金、あるいは投機資金が手元にあれば、彼らはどこで勝負するのだろう。
まだ時間はたっぷりある。バート・ランカスターとトニー・カーティスが演じた1957年製作のアメリカ映画「成功の甘き香り(Sweet Smell of Success)」のDVDがどっかにあったはずだ。今夜は地元のラム酒と薬草で一杯飲りながらゆっくりと鑑賞してみたい。
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