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<ミャンマーで今、何が?> Vol.105
2014.07.30
http://www.fis-net.co.jp/Myanmar
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■今、ミャンマーが面白くない!
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本当におもしろくない! 実に陰鬱な状態がこのところ続いている。
これは頻繁に襲ってくる驟雨のせいでも、降れば一面水浸しのせいでも、予告なしの停電のせいでもない。掛かりにくいケータイのせいでも、ネットが接続できないせいでもない。これらはむしろヤンゴンの名物行事であって、これをエンジョイできないようでは、当地に滞在する意味はない。
おもしろくないのは最近のミャンマーの動きである。
去年までこの地球上で最もエキサイティングなワンダーランドはミャンマーだった。テインセイン大統領の新政府が西欧社会が歓迎するサプライジングの改革案を次から次に発表してきたからだ。
だが、前にも指摘したとおり、昨年の火祭り(4月の水祭りから6ヵ月後に巡ってくる雨安居解禁の儀式)にご機嫌伺いに闇将軍私邸を訪問した大統領をはじめとする錚々たる国家最高メンバーと闇将軍との密談を下院議長のシュエマンが欧米のレポーターにリークした。当然、闇将軍のお墨付きで暴露したと思われるが、この情報発表を取り仕切ることで与党USDPの党首でもあるシュエマン下院議長は、2015年の大統領職は自分に転がり込んでくると、得意満面に見えた。
それは、自分の親分である闇将軍が、今の民主化改革に不満の色を表明し、詰め腹を切らされて、テインセイン大統領は2015年の大統領選を辞退すると、本人の口からではなく、下院議長がそれを発表したからだ。
だが、その後の東西南北研究所の見立てでは、大統領への意欲が露骨過ぎ、しかも反体制派のアウンサンスーチーに歩み寄りその協力関係を口にするようになった下院議長に、ネーウィンの最期がそうであったように、闇将軍は下院議長の忠誠心に不安を抱き、シュエマンに代わる新しい候補を立てたというのがワレワレの仮説であった。
そこで、政府系日刊英字新聞NLM紙を過去に遡って丹念に読み漁ると、三軍最高司令官ミンアウンライン上級将軍という人物の出番が圧倒的に増えていることに気が付いた。本来であれば、例えば中国人民解放軍や米国のCIAトップとの会談、あるいはミャンマー駐在の大使館付き武官との意見交換などが、通常考えられる国防軍最高司令官の守備範囲ではないかと想像するのだが、スポーツ交流から、各国の文化団体、世界各国の元首クラスから、各国政府高官まで、非常に多岐にわたっていることに気が付いた。これではミャンマー連邦大統領職の任務にそっくりではないか。
ネーウィンの事例がそうであったように、闇将軍の体力が元気な内は、国防軍幹部の誰もが忠誠を誓う。だが、その瞳が白濁してくると、次の権力を求めてパワーゲームが始まる。独裁者にとって怖いのはそこのところである。
大統領職に意欲満々だった下院議長は国軍士官学校でテインセインの2期下である。だが、この最高司令官は10期以上も離れた次世代の未知数でもある。テインセイン大統領同様に武闘派ではなくデスクワークで優秀さを顕わし、非常に控えめな性格で目立たないとのウワサがある。極度に凡庸であるということである。大石内蔵助が理想のモデルかもしれない。自分の家族身内に役得を利用した特権を与えているなどのウワサも伝わってこない。ここが意欲満々とは大きく違う。この男を大統領に据えれば、意欲満々な危険な人物をスキップできるだけでなく、一気に大統領の世代交代ができる。これは何の根拠もない東西南北研究所の推測である。
2015年の大統領選挙は来年の年末に予定されている。今からカウントしても一年半の年月が残されている。この最高司令官が闇将軍に心底忠誠を誓い、闇将軍の意図するところに従うならば、国防軍どころかミャンマー連邦国最高権力者の地位に着くチャンスを与えてやろうじゃないか。だが、この人物を見極める見習い期間とテスト期間が必要だ。当時から計算すると、残り二年間で大統領としての能力があるかどうかを厳しく吟味する。その能力があると判断したら、次期大統領にしてやる。テインセインもオレがこの指でピックアップした結果、心血を注いで大統領職に献身した。まずはテインセインに倣って、軍務だけでなく世界の指導者たちと意見交換をしてみたらよい、トップレベルの話は肝の据わり方で決まる。万事に死に物狂いで勉強してみろ。それからほどなく、国防軍の軍事パレードでこの最高司令官は国防軍の役目は「現存憲法の墨守である」と宣言した。反体制派が盛んに憲法改正を訴えている時季にである。
だから、残り一年半は闇将軍が極秘裏に若い最高司令官に与えたテスト期間である。最後のぎりぎりの段階で能力がありと判断されれば、闇将軍がテインセインを選択したように、最高司令官を与党USDPの党首に据える。首の挿げ替えである。そして総選挙および大統領選挙に臨む。通常は若い世代がトップの椅子に座れば、上の世代は一掃され、表立った舞台から消え去るのが世の習いである。
もしも能力的に闇将軍のメガネに叶わなければ、闇将軍にはどんでん返しの秘策がある。それはその時点にいたって発表すればよい。その秘策とは、テインセイン大統領の続投である。彼はペースメーカーを埋め込みもともと心臓に爆弾を抱えている。続投して2年でも3年でも体力が持ちこたえればよい。その間に、闇将軍はゆっくりと国防軍の次世代スターを探すのだ。だが、この仮説には大きな欠点がある。闇将軍は現在80歳代の半ば、テインセイン大統領が69歳。闇将軍が長生きするとの前提に立っている。どのような権力者でも自分の寿命はコントロールできない。この国では歴史的にこの不安定な時期にクーデターが発生してきた。平和な仏教国であった隣国のタイですらクーデターは起こり戒厳令が敷かれる。誰が言い出したか知らないが、“一寸先は闇”とは名言である。それはひとまず置いといて、テインセイン大統領は、自分の任期中はミッゾンダムの中止を宣言した。したがって、この点に関してはテインセイン大統領の続投は欧米からも支持されるはずだ。テインセインが大統領職を辞すれば中国がミッゾンダムの再会を強要してくる筈だ。次期大統領の最初の難関はこれである。
だが、この案にはもうひとつ別の問題がある。テインセインとスーチーは同じ1945年生まれの69歳。テインセイン大統領がもう一期続投すると年齢的にスーチーにはチャンスがなくなってしまう。欧米が求めるスーチーの大統領就任が叶わなくなる。特に米国ではヒラリー・クリントンの初の女性大統領就任とミャンマーの女性大統領となったスーチーとのあでやかな競演を夢見ているはずだ。今の、ミャンマー憲法はテインセイン大統領の続投を認めている。これも前に指摘したが、スーチーは2015年の大統領選ぎりぎりまで、つまらぬ憲法改正闘争で無駄なエネルギーの消耗を強いられるはずである。これは与党USDPが目指す高等戦術でもある。
これらを予測する裏づけなど何一つ無い。ただ、NLM紙の行間をひたすら読み解くだけである。行間には何も書いてない。心眼で読むのだ。どうして、下院議長の最近の動きには精彩がなくなったのだろう? そして、スーチーNLD党首も八方塞がりの状況が続いている。最期の伝家の宝刀はNLDが2015年の国民総選挙をボイコットし、欧米がいったん解除した経済制裁をチラつかせる戦術は残されている。前にもお伝えしたが肝心のテインセイン大統領は下院議長のリーク事件でレームダック(死に体)となっている。もう少し深読みすると、テインセイン大統領は残任期間を死んだ振りして過ごすだけでよい。すると今後は何一つサプライズは起こらない。政府の官僚も昔のお役所仕事に戻ってしまう。東西南北研究所のみならず、国内外でミャンマーは面白くない現象が発生する。路上喫茶のウワサ話では、国軍や政府は都合の悪い問題が発生すると、別の場所で問題をでっち上げ、民衆の目を逸らす戦術をこれまでとってきた。市内での爆弾騒ぎがそうで、ラカインやマンダレーの宗教対立も同様である、というのが熊さん八っつぁんの得意話である。
だから、今のミャンマーは退屈でまったく面白みがない。何一つサプライズがない。下手をするとこのこう着状態は来年まで続くかもしれない。
あまりにもむしゃくしゃするので、まったく根拠のない真夏の夜のでっち上げ物語を語ってしまった。お許し願いたい。
この数週間が正にそうで、今後も面白みのない「ミャンマーで今、何が?」になりそうである。こんなときは読書三昧に限ると、長雨の音を聞きながら、深夜に片っ端からミャンマー関係の本を渉猟している。
その中で発見したことがある。前回ちょっとばかり語ったが、アウンサン将軍と日本との深いかかわりである。スーチーさんも父親の足跡を求めて京都大学で文献を漁った。ここミャンマーにいると、主に英国人の書いた当時の書籍に出くわす。もちろん英国人の視点で捉えている。同時に日本人の置いていったインパール作戦の話もある。そして、ビルマ人の書いたアウンサン秘話もある。
当時はビルマ戦線を舞台にした主に欧米の連合軍と日本軍との戦いであった。だが、今のミャンマーは欧米各国、そして日本のみならず中国をはじめとするアジア諸国のビジネスを主体とした戦国時代がここミャンマー劇場で演出されている。アウンサンの自叙伝をはじめとして、その関連本を読み進めると当時の状況が今の2014年に極度に類似していることに驚かされる。それは、今のミャンマー人の性格がアウンサン将軍の時代と少しも変わっていないことを物語っている。ということはアウンサン将軍を研究すれば、今のミャンマーが見えてくるとも言えないことはない。
これから、海外の投資家・合弁企業家たちが、今遭遇している苦労のソリューションが見つからないだろうか、と考えるようになった。
ということで、ミャンマーが今、面白くないとすれば、しばらくはアウンサン将軍を中心とした物語をお届けすることで、現在の今を見つめ直していけないだろうかと、ぼんやり考えている。
そして今、有難いことに、日本のメディアは、ヤンゴンで発行されているタウン誌を含めてビジネス関係の動き、和式レストランの紹介等、日本語での情報が溢れかえっている。これらはすべてそちらにお任せして、「ミャンマーで今、何が?」はミャンマー人のものの考え方、事業の取り組み方、外国人投資家との信頼関係の構築など、もう少し文化人類学的な根源的な相違点・類似点を追求するのも悪くないのではと考え始めた。これが見えてくれば、現在の表面的なニュースを分析するのも容易になるはずである。
だが、読者あっての週刊メルマガである。皆さまのご意見そして主催者の意向も拝聴し、了解を得た上で、とっぴな方向に挑戦するかもしれない。もちろん、このメルマガの舵取りは大統領職と違って、非常に身軽である。ミャンマーの動きが怪しくなれば、あるいは面白くなれば、即座に対応して、どうして面白くなってきたのかを、今までどおりに解説していきたい。その点は自由自在である。
もうしばらく検討、そして内部打ち合わせを行いたい。
なお、読者の皆様で、こういうトピックスを取上げろとのご意見をいただければ、それはそれで検討してみたい。
イスラム教徒の断食期間が終わり29日はそれを祝福する“イートデイ”である。友人の奥方がわざわざ甘いケーキを届けてくれた。ここヤンゴンはこのように平穏である。
今回も退屈なミャンマー情報で恐縮です。
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