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<ミャンマーで今、何が?> Vol.101
2014.07.02
http://www.fis-net.co.jp/Myanmar
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■インドボダイジュの樹
・01:ヤンゴンの空中吊り庭園
・02:自然の摂理
・03:バニアン・ツリーあるいはインドボダイジュ
・04:伝説は語る
・05:太陽・月・星
・06:最期に
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01:ヤンゴンの空中吊り庭園
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旧約聖書に登場する古代バビロンの王宮には空中吊り庭園があったという。世界の七不思議のひとつとされ、英語ではバビロンのハンギング・ガーデンと呼ばれる。
だが、ヤンゴンでは王宮ならずとも至るところでこの世界の七不思議に出会うことができる。
最近は、YCDCの頑張りで道路が完全舗装となり、歩道までが整備されている。ちょっと前まではロッキー・バルボアのように路面に注意してフットワークを利かさないと、足元が不安定だった。だが、今は上を見渡しながら歩いても、それほど危険ではなくなった。その恩恵に浴さない手はない。それでも、3:7の割合で足元に注意しながらヤンゴンのハンギング・ガーデンを見て廻ろう。
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02:自然の摂理
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あるインドボダイジュの樹に限ってだが、その木の実はなんとも言えず美味だ。これはカラスなどの鳥類にとっての話である。たらふく腹に納めた後、今度は電柱とか、屋根の上に陣取って、天下を悠々と睥睨する。そこから見渡す下界がバード・アイで、鳥瞰図である。そして気分よく自然の要求に応えることになる。英国生まれのカラスだと“answer the call of nature”ということになる。だが、人間様のように慌ててトイレを探す必要も無い。決して場所を選ばず、その場その場で処理できる。何ひとつ不自由はない。むしろ生物としてははるかに進歩しているような気がする。人類の能力が世間体を気にして後退したと仮定したい。
つらつら考えるに、緊急事態が発生して、紙とか水がないと後始末できないのは、現代人ぐらいのものである。生きとし生けるものの中で、現代人ほど括約筋の機能が失われてしまった生物はいないのでないか。実際に資源の無駄使いであるが、一回ごとに紙や水を必要としている。それに70億の人口を掛けると唖然としてしまう。しかも、日に数回と厳しく査定したい。官僚の呼びかけに応じて安易に資源の節約などと叫ばずに、70億人がいっせいに括約筋の訓練をして、他の生物並みに紙と水を浪費せずに、フンギリ良くなったら、この地球環境はどれほど改善されることだろう。
話は横道にそれたが、未消化の木の実は‘鳥の糞’という名前のオブラートに包まれて屋根の上だろうが、軒下だろうが、処構わず、排出される。この‘鳥の糞’は天然の肥料である。南米・ペルーのグアノにしても、ナウル共和国のリン鉱石にしても、‘鳥の糞’からできた天然肥料だ。
ヤンゴンの7階建て、8階建ての建物には当然、上水道・下水道の設備が完備している。その導管パイプは工事が簡単なように外壁に立て横と這わせてある。これが鳥たちにとって格好の止まり木となっている。この導管パイプは敷設後まちがいなく一年も経たないうちにジョイント部分から水漏れが発生する。これがまた鳥たちの絶好の飲料水となって、鳥たちが自然に寄ってくる。ヤンゴンが自然に優しい街だということが良く理解できる。
あとは太陽光線と酸素の供給があれば、植物の生育には化学肥料も化学薬品に汚染された殺虫剤も必要としない。時至れば、未消化の木の実は天然肥料のオブラートに包まれてコンクリ壁の割れ目で芽を出す。そして誰の面倒も受けずに、100%オーガニックによるヤンゴンのハンギング・ガーデンができあがる。すべては自然の摂理に叶ったものである。無駄な人知の及ばぬ空中での出来事である。
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03:バニアン・ツリーあるいはインドボダイジュ
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だが、この樹には精霊が潜んでいるとして、地元の人たちは極度に恐れる。セメントであれ、鉄筋コンクリートであれ、その根は荒れ狂う大蛇のように根深く巣食い、最期には家屋を破壊してしまうからだ。彼らはこの樹を“マハ・ボディ・ツリー”と奉る。偉大なる仏陀の樹という意味である。東南アジア一帯を旅する西洋人は“バニアン・ツリー”と呼ぶ。日本語ではボダイジュの樹と呼んでいる。そして沖縄ではガジュマロの樹と呼ばれる。
空中ではなく、街の角っこなどに枝から何本も根を下ろした巨大なこの樹を見かけることがある。すると近所の人たちは小さな祠をその根の間に設置して、毎朝・毎夕お花や線香を供え、祈りを捧げる。不謹慎な表現だが、鎮守の森の街角支店のようなものだ。だが、東洋の人たちが山川海など天然自然に怖れを抱く気持ちと相通ずるものがある。
フランスの博物学者A.ムオーがアンコール・ワットを1860年に再発見したが、彼の地もおもにインドボダイジュの密林に埋没されていたものと想像できる。というのも、この巨大な石造り寺院には石灰が漆喰として使用され、インドボダイジュの根はこの石灰が大好きで、その養分を求めて石窟寺院の割れ目に入り巨大化していく。その遺跡は大自然が生み出した調和の中に埋もれている。
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04:伝説は語る
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スリランカの古代都市アヌラダープラにはゴータマ・シッダルタが悟りを開いたインドのブッダガヤのインドボダイジュの樹そのものから株分けされた第二代目が仏教に深く帰依したアショカ王の娘によってセイロン島にもたらされ、現在はこの地で大きく枝を広げて繁茂している。そして、このアヌラダープラから枝分けされた第三代目が仏教迫害で根絶されたブッダガヤに里帰りし、現在は元々のオリジナルの地で大きく育っている。
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05:太陽・月・星
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話は歴史的な、そして宗教的な、横道に入り込んでしまったが、このインドボダイジュの樹は、ミャンマーのあちこちで至るとこで見受けられる。そしてヤンゴンの高層アパートであれば、先述したとおりハンギング・ガーデンとして繫茂しており、グリーン・ビルディングの本来の意味での草分けではないかと思われる。
そしてもう一度おさらいすると、人間の余計な手間隙を掛けずに、自然の摂理に従って、人間の要領のいい人工的方法は経ずに、鳥類という自然の媒体を通して、水漏れする排水パイプ近くに宿借りし、その後はおしゃれな名前のガーデニングなどという手間隙掛けずに、太陽光線と降雨だけという自然環境の中で、立派に成長している姿は、何かを利口な人間たちに伝えようとしているのではないだろうか。
ここミャンマーでは、化学肥料がたっぷり入った成長促進剤や、化学薬品が凝縮された殺虫剤、雑草除去薬品など、何ひとつ使用せずに、しかも人間の手を何ひとつ煩わさずに、立派に繁茂するということを証明して見せてくれているのではないのだろうか。それが、バニアン・ツリーであり、インドボダイジュであるような気がする。
今ミャンマーは、大きく変化しつつある。そして、何でもかんでも、外国製品、外国の技術は最先端をいっていると思い違いして、その導入を競っているようだが、本来ミャンマーは日本を含めた貧困な先進諸国と違い、自然な天然資源が信じられないほど豊かな恵まれた国である。
特に農業技術関係では、貧困な先進諸国の技術を持ち込もうとするところに、根本的な間違いがあるのではないのだろうか。これが今回の提案でもある。むしろ、学ぶべきは先進諸国であって、その道しるべがヤンゴンのハンギング・ガーデンである。
太陽光線にきらきら輝き、祇園精舎が鳴り響くようにえもいわれぬ葉っぱたちが躍動している。植物たちはすべて自然の為すがままに成長し、フルーツを繁茂させ、子孫を残すすべを知っている。そして大半のプロのボタニストが失敗するのが、最初から手を掛けすぎていることである。先進国のプロたちは、何もしないという無策に耐え切れないのだ。この国では、寒さ対策ではなく暑さ対策が必要である。それを寒さ対策のプロたちが、その先進技術を持ち込もうとしている。どこの国でもそうだが、敵を知り己を知れば、百戦危うからずである。先ずは一年間、何もせずにミャンマーの自然から学んだら、どうなのだろう。
この国にはシャドー・ツリーという言い方がある。まず直射日光を避けて影をつくるのだ。確かにマニュアルでは太陽光線を受けて、ほとんどの植物は光合成を行うとある。この世の中には太陽を崇める国もあるだろう。だが、月を敬い、星を敬う国々も多数あるということを、この国で勉強することができる。
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06:最期に
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バード・アイから下界の出来事を眺めると、したたかな軍事政権が仕掛けた巧妙な罠で、スーチーさんは気の毒なほどに無駄なエネルギーを浪費させられている。憲法改正という不可能に近いハードルに向かって。このセットされた嫌がらせは来年の総選挙まで続くかもしれない。本来であれば、ミャンマーという潜在力を秘めた偉大な国の未来を議論し、次世代を背負う子供たちの未来を真剣に語り合うべき、この大切な時季にである。
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