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<ミャンマーで今、何が?> Vol.99
2014.06.18
http://www.fis-net.co.jp/Myanmar
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■頭髪の抜け毛
・01:ターバンまたはヘッドギア
・02:問題の記事内容の全文
・03:国益よりも頭髪の抜け毛を心配する議員
・04:国家機密とウェスト・ウィング物語
・05:マグマの凍結
・06:闇将軍の見果てぬ夢
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01:ターバンまたはヘッドギア
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今週は、ミャンマーで今、何が問題となっているのかを探ってみたい。それは“下院が提出したターバンを脱ぐ要求案を上院が拒否”したことにある。と言っても、ちょっと分かりにくいが、お付き合い願いたい。
これは6月14日(土)付NLM紙の第三面記事のタイトルである。そこにはミャンマーの今が凝縮されているので少し詳しく説明したい。
英語でターバンと表現しているが、これは男性議員が国会に登院するときに被るミャンマーの伝統的被り物を指す。英語ではHeadgearまたはTurbanとなっているが、ターバンといってもインドのシーク教徒が頭に巻くあれとも異なる。イスラム教徒の縁なし帽子とも違い、ユダヤ教のそれでもない。テインセイン大統領が外国首脳と会見するときの報道写真を想い出してほしい。縁なしのキャップで、ウサギの右耳が垂れ下がったように見える帽子だ。
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02:問題の記事内容の全文
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国会で議長が着席した後は、男性議員はターバンを脱いでも良しとする下院の要求法案が健康促進委員会のメンバーによって6月13日拒絶された。下院議員によれば、国会開催中に長時間ターバンを被っているのは健康上問題があるというのが法案提出の理由だ。しかし、健康促進委員会のメンバーは、ターバンを被るのはミャンマーの伝統で、男性議員は尊敬、吉兆、高貴、威厳、優雅さの象徴としてターバンを頭に被ることを要求されており、国会議員がターバンを被るのは歴史的な伝統で、勲章みたいなものだとしている。
健康促進委員会のメンバーはさらに、このターバンさえ被っていれば、議員が国の利益のために働き、国の伝統を擁護する人たちだと国民は見做すと付け加えた。
健康上の点からすれば、ターバンを被ると頭が締め付けられ、熱がターバン内側に篭り、頭髪が薄くなる原因と思われかもしれない。だが、伝統尊重を優先すれば、健康上はそれほど深刻な問題ではないと健康促進委員会のメンバーは指摘した。
健康促進委員会のDr.マウンマウンウィンは(そんなことよりも)下院が承認したミャンマー医療審議法案を討議するよう提案した。6月13日の上院では、質疑を提出した代議員の選出区における道路・学校建設に関して担当副大臣が答弁した。
上院ではまたヤンゴン地区第8選挙区のDr.ミンチーが提出した、政府はインフレ退治の政策を早急に行うべきだとする提案の討議が合意された。
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03:国益よりも頭髪の抜け毛を心配する議員
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今、ミャンマーの国会では、民主政権か軍事政権かを問う憲法改正問題、軍事政権時代に収奪された土地の返還、仏教徒とイスラム教徒の対立。外国人投資法案、各省庁に関係する法整備など、重大な案件が目白押しである。だが、それらを押しのけて、頭髪の抜け毛を心配する議員たちの要求案を最優先で審議している。
もうひとつ理解できないのが、どうして文化庁などではなく健康促進委員会が、ミャンマーの伝統とか、尊敬、吉兆、高貴、威厳、優雅について講釈をたれるのか、第三者としてはまったく理解できない。
今回の記事によると、下院を通過した要求案が上院で拒否ということは、貴重な国費と時間を浪費して、下院で十分にこの要求法案を審議した上で、多数決によってこの法案は採決され、上院に廻されたということになる。
議員先生たちが、常日頃、忙しい忙しいと口にする理由がこれで分かったような気がする。
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04:国家機密とウェスト・ウィング物語
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ヒラリー・クリントン米国元国務長官の歴史的なミャンマー訪問は2011年11月30日のことであった。そのとき、シュエマン下院議長がミャンマー連邦国会の国家機密をヒラリー長官にそっと耳打ちした。自分たちは民主主義というものが、実は良く分かっていない。そして国会運営の方法もまったく知らない。だから、自分は“ウェスト・ウィング”からアメリカの民主主義と国会運営を現在学んでいる最中だ、と。
さすがに、ミャンマーの下院議長である。自分たちが国会チルドレンであることを十分に自覚した上で、そのお手本を日本の小泉チルドレンとか、安倍チルドレンに求めずに、世界の民主主義国家アメリカに求めている。
この“ウェスト・ウィング”というのは、1999年9月22日から2006年5月14日まで米国のNBCテレビで放映された連続政治ドラマである。脚本は非凡な才能の持ち主アーロン・ソーキンが主に担当し、マーチン・シーンが主役の大統領(民主党)を好演している。能力溢れる製作スタッフ、実力派の俳優陣によって、外国映画記者クラブの‘ゴールデングローブ賞’や米国テレビ優秀番組・演技賞の‘エミー賞’を7年間にわたって総なめしている。
そのストーリーはフィクションであるが、米国議会での上院・下院の熾烈な議論、それを陰で取り纏めるロビイストたちの動き、2001年の米国同時テロ、オサマビンラディンに模したドラマ展開、サウジの米軍基地化など、多種多様な実際の事件を巧妙に取り込んでおり、視聴者は息をつく暇もないほどの政治ドラマである。しかも、マーチン・シーン演じる大統領の執務室を主軸に大統領を補佐するスタッフたちとの“歩きながら会話する”スタイルがこのドラマでは頻繁に取り入れられており、視聴者は自分がホワイトハウス内をこれらスタッフに寄り添って歩いている錯覚に囚われる。
オッと言い忘れたが、ウェスト・ウィングというのは、歴代米国大統領が居住し、執務を取るホワイトハウスの西翼を占めるビルの一画である。大統領を支えるホワイトハウスの主要スタッフの会議室、大統領上級顧問との会議室、有名なオーバル・ルームもここにある。そして大統領閣僚との会議室、戦略協議の会議室、記者プレス会見室などが迷路のように配置されている。
タフト、フーバー、ルーズベルト、アイゼンハワー、などなど歴代の米国大統領が改装に改造を継ぎ足して現在の“ウェスト・ウィング”は出来上がっている。それを仔細に例証すればアメリカの時代と歴史が見えてくるほどだ。
この“ウェスト・ウィング”の大ファンであるとミャンマーのシュエマン下院議長はアメリカのヒラリー国務長官に白状したのだ。
そのとき、ビル・クリントン大統領のモニカ・ルウィンスキー事件もこのシリーズで扱われていることを下院議長が知っていたかどうかは、東西南北研究所は掴んでいない。だが、国務長官がそのことを知っていたのは世界の常識だ。
だが、当時ミャンマーの下院議長をはじめとしてミャンマー国会の議員たちが議事運営についてほとんど初歩的な知識も持ち合わせていなかったということは、事情通の間で密かにささやかれていた国家機密でもあった。
だから、最初に戻って、頭髪の抜け毛を心配する法案が下院を通過して、上院で審議されたという事実は、ミャンマーの民主化にとって大きな第一歩だったのである。
どれほど大きな第一歩であったのかというと、この週刊メルマガのバックナンバーで最初の最初2012年7月4日付けで詳述した<ミャンマーで今、何が?>と<センチメンタル・ジャーニーbyザ・レディ>の2号分とをお暇な方は読み比べてほしい。
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05:マグマの凍結
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前にも書いたが、2014年になってからのミャンマーは、表面的な動きは別にして、マグマの部分では肝心なところが凍結してしまった。
シュエマン下院議長の暴露で、闇将軍はテインセイン大統領のスピーディな民主化移行に不快感を示し、テインセイン大統領は詰め腹を切らされるように次期大統領への不出馬を飲まされてしまった。この時点では下院議長は次期大統領の最有力候補として自信満々であったが、その後どういうわけか覇気が失せてしまった。そして自分はスーチーさん支援の理解者であり、協力者であることを公然と語ってきたが、それもメッキが剥げてきた観がしなくもない。
その原因をお馴染みの国営日刊英字新聞の行間から読み取ると、国防軍の最高司令長官ミンアウンライン上級将軍の台頭がどうも鍵になりそうである。英語ではコマンダー・イン・チーフと呼び、最高司令官を意味する。その任務からすると、陸海空三軍の最高司令官だが、その下に副最高司令官を従え、さらに陸・海・空それぞれの最高司令官がいる。例えば陸軍最高司令官のようにである。最近のNLM紙によれば、その公式行事は軍関係だけでなく、スポーツ・文化・芸能・経済・農業・宗教関係と多岐にわたり、それもミャンマー全土のみならず、外国使節との会見も各分野にわたって精力的にこなしている。本日6月18日も恒例だが、日本の新任駐ミャンマー大使のMr.タケシ・ヒグチと会見し、両国の歴史的友好関係から現在の諸問題に至るまで意見交換している。
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06:闇将軍の見果てぬ夢
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その名前を聞いただけで今でもミャンマーの首脳たちがビビッてしまう闇将軍は1945年生まれのテインセイン大統領の次には、オレがオレがの自意識が強く憲法修正まで口にする下院議長を危険視して、世代が大きく変わる1956年生まれの国軍最高司令官に一気に移管するという国家の骨組みを書き換えたのではないだろうか。そして今は、この若い上級将軍に大統領見習生としてのチャンスを与えたというのが東西南北研究所の分析である。それだから、この若い大統領見習生は必死になって軍関係以外の多岐にわたる公式行事をこなしている。だが、闇将軍に忠実なだけでは駄目だ。世界の首脳から恥をかかないだけの実力を備え、体外的にはテインセイン大統領のような華麗なパフォーマンスができる役者でなければならない。闇将軍の過去の手法は、有能な候補者数人にチャンスを与え、言葉ではなくその行動が、闇将軍のメガネに叶えば採用し、そうでなければ斬り捨てる。
闇将軍の手持ちカードは豊富だ。今はテスト期間中の若い見習生をじっくりと観察しているところだろう。メガネに叶わなければ斬り捨てるだけだ。手持ちの候補者はいくらでもいる。だが、東西南北研究所の見方はこうだ。
国際的信用と人気度は現在テインセイン大統領に集中している。このカードを廃棄する必要はまったくない。しかも、本人は心臓に欠陥がありシンガポールでバイパス手術を受けている。跡取りの息子はなく、慎み深い妻と娘たちは決して目立ちたがり屋ではなく、商売に色気を示してもいない。だったら、本人が倒れるまで大統領を継続させるという代案を闇将軍が描いたとしても不思議ではない。
永田町でも、ネイピードでも、一寸先は闇という言葉がお似合いだ。
そしてもうひとつ見逃してならない大問題はこの闇将軍が、テインセイン大統領(69歳)よりもはるかに年長の80歳代半ばであるという事実だ。どんな名医でも、星占いの大家でも、人生の命運を左右することはできない。諸行無常の琵琶の音が響くときが何時かはやってくる。隣国のタイとは異なるパワー闘争が始まるかもしれない。
ミャンマーの現在史の中で、シュエマンが、スーチーが、ミンアウンラインが、そしてテインセインが、その時どう動くか?
頭髪の抜け毛を国会で審議できるほど、このミャンマーは平和で安定した国家に成長したことを、野次馬としてもう一度噛み締めてみたい。
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