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<ミャンマーで今、何が?> Vol.95
2014.05.23

http://www.fis-net.co.jp/Myanmar


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■水について考える

 ・01:印象派モネのハス池

 ・02:「ダラ村ではハス池の水位が落ち、水の汲み取り時間を制限」

 ・03:ミャンマーの水道水

 ・04:人間はペットボトルしか飲めないのか?

 ・05:「水」を再考する

 ・06:経済発展で幸福は達成できるか?

 ・07:スリランカのローテクに学んでは?

 ・08:ダラ村を訪れる

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01:印象派モネのハス池

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一葉の写真が印象的だった。日刊英字新聞2014年5月1日付NLM紙第一面だ。ちょっとピンボケというよりも、印刷の不鮮明さが、逆にモネのハス池を連想させる風景画となっている。一面を覆ったハスの葉の緑に開花した白い花が散在する印象派のモネだ。

だが、このハス池の水位はかなり低く、取り囲む土手の上には空の水桶を天秤棒の両端に担いだ女性たちが長い列を作っている。その先頭は土手の階段を下ってハス池の中ほどまで続き、そこからハス池に降りて水を汲み取り、満タンの水桶を両手にまた階段を戻っていく。両手分だからズシリと重くなる。上半身裸の男性もいるが、この水汲みはほとんどが女性の仕事だ。モンスーン雨季の土砂降りには、小さく写っている先頭の二倍・三倍の身長まで水位は溢れかえるのだろう。だが、今は底の泥水を避けて上澄みを汲み取るのがやっとのようだ。

土手の上には天然の巨大盆栽ともいえる美しいシルエットのレインツリーがたっぷりと木陰を提供している。



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02:「ダラ村ではハス池の水位が落ち、水の汲み取り時間を制限」

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これがこの記事のタイトルだ。

ダラ村とはヤンゴンのダウンタウンから、フェリーでヤンゴン川を渡った向かい側の地帯だ。モンスーン雨季開始直前の今、溜池の水はほとんど干上がり、ダラ当局は水の汲み取り時間を午後4時から5時の一時間に制限すると発表した。このダラ地区には33ヶ所の溜池があるが、モンスーン雨季到来の一ヶ月を前にして、大半の溜池はすでに干上がっている。この写真の溜池でも水位は約30cmしかないとのことだ。

この水源地の担当官によれば、一回の水汲みで村人一人約10ガロン(約45リットル)を取水する。このハス池からは一日約10,000ガロンが汲み取られていく。その用途は飲料水、食器洗い、洗髪・水浴び、洗濯などを含む生活用水で、村人はそのすべてをこのハス池に依存している。

気象庁専門家によれば、今年のモンスーン入りはミャンマー南部が5月15-20日ごろ、そしてヤンゴン地区ではそれよりも数日間は遅れるとしている。
記事はこれで全文だ。



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03:ミャンマーの水道水

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日本全国の家庭では、蛇口をひねれば簡単に水道の水を利用できる。トイレも、浴室も、台所もその恩恵にあずかっている。

当地ミャンマーではモーターを廻して自宅内の水槽に溜め込んでおかないと、その恩恵にはあずかれない。だが、水槽の容量が限られているため、すぐに満タンになる。そこでモーターのスイッチを切る、この作業を小まめに繰り返さないと、水槽からは水がオーバーフローしたり、水槽が空っぽということになる。そこに、ミャンマー名物の停電が頻発すると、トイレの水が流せずに立ち往生することになる。特に他人のお宅や、事務所で、トイレを借用したときに、このような事態になると、雪隠詰めで「水問題」を考えることになる。

だが、ミャンマーにはミャンマーの知恵がある。当地では電気に頼らないで、すべての生活が可能なシステムとなっている。便器の横には、風呂桶ほどの水槽に常に水が満タンになっており、小さなプラスチックの桶が置いてある。なるほど、これですべては水に流せ、すべては解決できる仕組みだ。勧進帳ではないが、そこで弁慶少しも騒がずで、すこしばかり頭を使って処理すれば、自分の不始末を他人様にとがめられることは決してない。
ただひとつ困るのは、ミャンマーのトイレは昔の日本同様で薄暗い。停電になると真っ暗で、何も見えない。だから、小さなLEDライトは、出かけるときは忘れずにを励行願いたい。



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04:人間はペットボトルしか飲めないのか?

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NLM紙によれば、ハス池の水は飲料水としても使用されると書いてある。ここでまたひとつ考え込んでしまう。ヤンゴン近郊で見かける溜池の水は果たして飲めるのかと?

だが、地元の人たちは事実このハス池を飲料水の水資源として活用している。ここで、二つの考え方が成り立つ。

ひとつは、こんな不衛生な水を飲むから、子供たちは原因不明の胃弱になり、ミャンマーの平均寿命も短命なんだ、と主張する医者を含めた常識派。

もうひとつは、体内に子供時代からナチュラル物質を取り込み、免疫性の増強につながる、と主張する専門医を含めた自然派。

ヤンゴンに長いこと暮らしていたある日本人は、平気でヤンゴンの水道水を飲んでいた。ところが、日本に帰国した際、例のごとく水道の水を飲んで腹をこわした、と嘘のような本当の話がある。彼に言わすと、カルキで消毒した日本の水は身体に不健康だが、ヤンゴンの水道水は何の処置もしていない分、自然に近く健康には非常に良いと野生派の意見を聞かしてくれた。

だが思い出すと、日本でも一昔前までは水道の水を飲んでいたし、山道で出会った冷たい泉で喉を潤したものだ。いつごろからだろう。ペットボトルの水を銭を出してまで飲むようになったのは。その、世界的なトレンドが今、ミャンマーにまで押し寄せている。水をコンビニで購入するとは、考えてみるとこれほど不自然なことはない。そしていろんなブランド名を試しても、本当にオイシイと感じたことがない。



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05:「水」を再考する

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さらに「水」についてしつこく考えてみたい。

「水」は人間の生存に無くてはならない。その生存に不可欠な飲料水をコンビニで調達せねばならぬとは、ある意味では、人類はすでに危うい状態に追い込まれているのではないのだろうか。

コンビニに頼る日本人(もちろん欧米人を含めての話だ)よりも、天水の溜池に頼るミャンマー人のほうがはるかに危機管理に強いのでは?

ラカイン州のロヒンジャーをぎゅうぎゅうに詰め込んだボロ舟が、ミャンマー沖合いを南下し、同じイスラム教のマレーシアやさらに南のインドネシアを目指す。途中でミャンマーの海軍、そしてタイの海軍は、見つけ次第、武力でベンガル湾沖合いに追い出す。本当にミャンマーやタイは慈悲深い仏教国なのだろうか。

このボロ舟にもブローカーが活躍し、今にも海水が入ってきそうな喫水一杯までお客を取り込む。各自持ち込んだ食料は乏しく水もない。炎天下で赤ん坊がギャーギャー泣き出す。母親が周りをはばかるように子供をあやす。赤ん坊にふくませる自分の乳房からは母乳はもう出ない。母親自身がろくなものも食べていない。無知な母親が舷側にたっぷりある海水を掬って赤ん坊に飲ませる。赤ん坊はしばらく静かになる。が、まもなく火が付いたように激しく泣き始める。海水の下剤効果を知る母親はほとんどいない。幼子は下痢が止まらず体力は消耗していく。この世に生を受けたばかりの、小さな魂がこのボロ舟の上で消えていく。

これは外信電によくあるレポートのひとつだ。強力な太陽が肌を焦がす。喉はからからに干上がる。ボロ舟の周りはどこもかしこも「水」がたっぷりとある。ついついその誘惑に負けて海水に手を出す。ジリジリと照りつける炎天下、身動きできない船の中。その忍耐も限界に達し、頭は朦朧としてくる。人間の生存がかかっている。そこで海水の誘惑には逆らえない。誰がこれを無知の一言で片付けられるだろう。海水で死ぬのは赤ん坊だけではない。



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06:経済発展で幸福は達成できるか?

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スリランカの港湾都市コロンボから朝早く北東へということは右上に切り上がるように斜めにトリンコマリーを目指す。そこは世界有数の天然の良港で、大英帝国が東洋艦隊最大の海軍基地を築き、真珠湾に続き日本軍の空爆の対象となった港湾都市でもある。

長距離ドライブの途中で、突然、平原の中に巨大な花崗岩の岩山が現れる。ここでシーギリアの美女と逢瀬を楽しむことができる。西暦477年にカッサパ1世が“獅子の山”と呼ばれる要塞を兼ねた王宮をつくったところだ。岩山の頂上には生活用水を賄う巨大な溜池がある。美女たちには後ろ髪を引かれるが、そこは単なる通過地点。ホコリっぽい道を先に急ごう。

そして夕日が沈む前には交差路のハバネラに到着する。今晩はそこで一泊だ。ここまでくれば明日のトリンコマリーは二時間とかからない。シャワーでゆっくりと埃を落としても、夕食までにはまだ時間がある。西日を浴びながらの散策で、ゲストハウスは巨大な湖の畔にあることに気付いた。だが、周りを自然のジャングルに囲まれており、それが人工池だとは到底信じられなかった。人の足音に驚いたエリマキトカゲが何匹も水草の上を左右に揺れながら放射状に逃げていく。しばらく行くと何人かの男の子たちが真っ裸で水に飛び込み遊んでいる。その近くでは女性たちが洗濯を兼ねて水浴している。それが終わると、こぼれんばかりの水がめを頭にのせて女性たちが家路に向かう。子供たちがその後ろに従う。その先には、夕餉の時間なのか、村の家々から白い煙が立ち上っていた。二十年も前の話だ。

ぐっすり眠った後、早朝、山小屋風の表戸を開らくと、あたり一面、野生のサルが座り込んでいる、この光景にはびっくりさせられた。ジャングルの何本かの木から落ちた木の実を拾って食べているようだ。小猿が母親の背中におぶさっている。その当時はシンハラ族の政府軍に反政府のタミル族が激しいゲリラ戦を挑んでいたが、先進諸国が追及する経済発展では絶対に得られない、自然に調和した究極の豊かな生活を、この村から教えてもらったような気がした。



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07:スリランカのローテクに学んでは?

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インド洋のスリランカはミャンマー同様にモンスーンの影響を受ける。シンハラ族の偉大な王は、天からの慈雨を活用せずに一滴も海洋に流してはならぬとお触れを出し、セイロン島内に多数の灌漑用水の溜池を作った。モンスーン雨季の大量の雨を活用した灌漑システムだ。今でも2,000以上の溜池がスリランカには残っているといわれる。ハバネラの溜池はそのひとつである。それが生活用水として今でも役立っている。水力発電や、原子力発電を、はるかに超越した、GDPの計算には含まれない、美しい村人の生活がそこにはある。

何が言いたいのかというと、今ミャンマーは何でもかんでもハイテクを求める。

同じ上座部仏教の兄弟国であるスリランカのローテクに学び、ハイテクではない昔の知恵を導入したらいかがなものだろうかというのが、このメルマガの提案である。



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08:ダラ村を訪れる

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ミャンマー版モネのハス池に魅かれて、モンスーン雨季に入る前にと、ダラ村を訪ねてみた。現地到着予定は夕方の4時にセットした。パンソダン桟橋でフェリーに乗り、外国人は片道2ドル。往復で4ドル徴収される。向こう岸のダラ桟橋まで所要時間は5分。ダラの桟橋付近はいつもマイクロバス、貨物乗り合いバス、タクシ、乗降客で混み合っている。農耕用の牛までがゆったりと徘徊している。サイカーを見つけ、NLM紙の写真を見せ、約一時間のダラ村一周を交渉する。何と5,000チャットの外国人値段を吹っかけてくる。

そのとき、空が真っ暗になったかと思うと、突風が吹き荒れたかと思うと、大粒の雨が地面を叩き始めた。空では雷が鳴っている。子供たちは大望の雨に大喜びで、踊り狂っている。こちらは日傘は持ってきたが、桟橋の待合室に一時避難だ。先ほどのサイカー運チャンが追いかけてきて、こちらが提案した1,000チャットでOKだと簡単に現地値段で交渉成立。

この一帯は、ティラワ工業団地の日本勢に対抗して、ヤンゴン川に大型架橋を渡し、工業団地をつくると韓国勢が大見得を切ったダラ村である。その後、韓国の友人に聞くと、あの話は立ち消えになったと噂されているそうだ。

ダラ村一帯を10年ぶりにサイカーで駆け巡ったが、昔のぬかるみがすべてコンクリ舗装に変わっている。そして幾つかのハス池は周りを鉄条網で囲われ、その正門に当たるところに水道の蛇口がいくつか並び、村人たちはここにプラスティックの水桶を持ち込み、水の配給を受けているようだ。確実にダラ村にも変化が現れている。

なかなかモネの写真は撮れない。サイカーの運チャンは小降りになった雨の中、一時間以上もあちこちのハス池を廻ってくれた。その労に報いて、さらに1,000チャットのボーナスを払うとニコリとしてくれた。

どうした訳か、ネット回線でモタモタしているうちに、ヤンゴンも本格的な雨季入りの感がする。今回の話題はちょっとタイミングを踏み外してしまったようだ。それも含めてメルマガ遅延のお詫びを申し上げます。





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