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<ミャンマーで今、何が?> Vol.93
2014.05.07

http://www.fis-net.co.jp/Myanmar


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■FRESHNESS BURGERのヤンゴン上陸

■ケーススタディ
 ・1〜9

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ヤンゴンからの最新情報は、場所によって異なるが5月6日(火)夕方、強烈な日射が突然翳りだし、一陣の冷たい風が吹いたかと思うと、周りでトタン屋根を叩く音がする。ひょっとしてと思って外を覗くと案の定、各家屋の屋根が濡れている。ほんのわずかな5−15分位のドラマだった。

だが、着実に季節は変わり目にきている。あと一週間、いや二週間の辛抱だ。だが、その一週間・二週間が猛烈に暑い。北部のマンダレーではもっと暑い灼熱地獄だという。

斯様にしてミャンマーの人たちは真夏にはモンスーンの雨を恋焦がれ、連日の豪雨には晴れ間を待ち望む。そうして一年が巡り巡る。この一年間のサイクルを経験しないと、ミャンマー・ビジネスも隠された落とし穴があるような気がする。


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■“FRESHNESS BURGER”がヤンゴン上陸

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ミャンマー・タイムス5月5−11日号の最新ニュースだと、日本のファーストフード・チェーン“FRESHNESS BURGER”がミャンマー初の第一号店を出店準備中とある。場所はシュエダゴン・パゴダ西門の前面に広がる人民公園内に地元のネイチャー・ワールド社が現在開発中のショッピング・センター内という一等地である。

同店舗の公式サイトによれば、FRESHNESS BURGERは1992年に東京でその第一号店が誕生した。現在は日本国内で189店舗、韓国に20店舗、そして香港、シンガポールにも事業展開している。

同店舗の責任者にコメントを求めたが、連絡は取れなかった。

ミャンマーでは、この2年間、飲食業界の進出がめざましく、日本料理屋の数もうなぎのぼりである。この“フレッシュネス” はその中でも最新の参入店舗となる。韓国のチェーン店“ロッテリア”は2013年4月にヤンゴンにその第一号店を開き、現在までにヤンゴンで3店舗を展開するまでになった。その他の外国資本によるファーストフード店としては、マレーシアのMarrybrown、韓国のBBQ Chicken、タイのPizza Company、カナダのSwensen’s Ice Creamなどがある。

人民公園内のショッピング・センターはシュエダゴン・パゴダにも至近距離で“FRESHNESS BURGER”のビジネスにとっては最高の立地条件である。だが、この場所は2012年8月に開発がスタート以来、さまざまな論争を巻き起こしている。

当初の計画では3階建てのショッピング・センターを予定していた。ところがYCDC(ヤンゴン市開発委員会)は計画規模を縮小するようにと強制的に指導してきた。その理由は、ミャンマー最高の仏教聖地にあまりにも近接しすぎているというクレーム。それから、どうやってこの最高の場所を入手できたのか、という疑問が噴出したためとされている。
ネイチャー・ワールド社は昨年YCDCの要請に応じて、すでに建築中で、ほぼ完成していた3階部分を取り壊した。当然のことながら、これは同社にとっては予想外のコスト高となって跳ね返ってくる。だが、同社は最終的にこれには応じている。

YCDCの庭園・遊園地の担当部門はショッピング・センターを建設したいとするネイチャー・ワールド社の申請を2009年に承認している。当時のヤンゴン市長は現在の市長の前任者である。

そして最後に、ミャンマー・タイムス誌はこの認可ライセンスにいくら支払ったのか、取引内容などに関しては一切明らかになっていないと、いかにも不透明性があることを示唆して報道している。





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■ケーススタディ

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01:このプロジェクトの許可が下りたのは今から5年前の2009年である。ということはテインセイン大統領の新政府が誕生する前の話である。ということは許認可権を握るYCDCの市長もその当時の人脈で、ビジネス慣行も旧軍事スタイルが横行していた。



02:2012年8月に開発がスタートしてから、さまざまな問題が噴出している。ということは現在の新政府になってから問題が表面化してきたということになる。



03:テインセイン大統領による新政府の方針は、米国および欧州の経済制裁を解除させるために、欧米好みの政策に変更することにあった。欧米といってもその尖兵は米国のヒラリー・クリントン国務長官である。その要求は、民主主義の確立、人権擁護、政治犯の即時釈放、複数政党による総選挙の実施、議会政治の実現、言論の自由、新聞・雑誌・通信社・放送などの検閲廃止、北朝鮮との不健全な外交断絶、自由競争による産業の育成、これらのためのインフラ整備、などなど問題は気の遠くなるほど山積みであった。だが、テインセイン政権はこれらを着々とこなしていった。



04:かといって、個々の問題が不慣れな官僚政府の中で取り組まれており、順調に行くものもあるが、問題を含むものが大半である。民主主義の半面で、デモ行進は許可され、おまけにソーシャルネットワークの普及で、一般市民からのクレームは中央政府にも、地方政府に舞い込むようになった。これが今回のケーススタディである。

チョット前までは、前の市長さんのOKさえ取り付ければ、なんでもOKのはずであった。ところが、一般市民というか、声なき声が、今はミャンマー全土で問題の表面化を起こしている。したがって、ネイチャー・ワールド社は仕方なしに、コストを無視してまでも、3階建てを取り払い、2階建てで譲歩した。



05:だが、問題はこれで片付いたわけではない。今度は新政府のお役人が問題となってくる。海外の先進国であれば、窓口となる関係官庁が、当局だけでなく、あすことあすこの課長さん・局長さんにも挨拶しといたほうがいいよと耳打ちしてくれる。ときにはあの課長さんはクセがあるからと、貴重な情報も教えてくれる。この根回しスタイルで成長してきたのが日本経済である。

ところがここは噂のミャンマーである。新政府のお役人といっても、中身は旧態依然である。お釈迦様がいくら諸行無常・盛者必衰といっても、軍事政権は永遠に続くと思って宮仕えしていた人ばかりである。彼らは今でも自分たちの国がこのような激変を起こすとは想像していなかった非常に優秀な官僚ばかりである。だから、シュエダゴン・パゴダの周りに高層のビルが建てば、美観・景観を損なうとか、日照権がどうのこうのなど、まったく想定外の話となる。そうなると、国民の声がどちらに転ぶのか、YCDCにとっても、まったく予測付かないというのが現状であろう。



06:ネイチャー・ワールド社にとっては、2009年に監督官庁であるYCDCの認可を取り付け、その3−4年後にはミャンマーの経済環境も大きく好転し、先見の明があったと言えるだろうが、彼らにしても、国民の声という得体の知れない怪物には慎重に対応せざるを得ない。これまで、特にヤンゴンで、大きく成功したというビジネスマンは内外合わせて非常に少ないが、彼らの成功の秘訣はロー・プロファイル、すなわち目立たないことである。特に、華僑の人たちにこのポリシーを掲げる人たちが多い。

ネイチャー・ワールド社にしても“フレッシュネス”にしても、会社自体は仮にロー・プロファイルに徹したとしても、場所が場所だけに、どうしても目立ってしまうところが痛いところだ。



07:“フレッシュネス”の公式サイトによれば、1992年12月14日、東京大学(駒場校)界隈の奥まった場所に第一号店をスタートしたとのことである。そして同社社長によれば、画一的でマーケッティングだけに頼るような店は作りたくないとして、自然の食材を使い、ハンバーグの作り置きはせず、オーダーを受けてから5分以内に焼いてサーブする。ジュースは目の前で果物を絞って出す。売りは「フレッシュ&オーガニック」で、これを英語で表示してある。と非常にアイデアマンである。

そのユニークな発想法でもって、是非とも食材の豊富なこのミャンマーで、そして世界で最もホットなビジネス激戦地ヤンゴンで、解決策を見出し、新しいシステムを編み出してほしいものである。



08:ミャンマー・ニュースとは離れるが、5月6日付けでハノイからのベトナム情報が飛び込んできた。日本の運輸コンサルタント会社の贈賄に絡みベトナム鉄道公社の4名が身柄を拘束されたというニュースだ。

アジア諸国では、ありきたりのビジネス手法だと言われている。ミャンマーでも、汚職があたりまえになっており、その撲滅にテインセイン大統領は必死となっている。だが、DNAに染み付いたとしか思われないほどミャンマーのお役人はこれが身についている。と欧米のマスコミは聖人のような顔をして非難する。

そして米国政府も、エネルギー部門、武器の購入、大型船舶・航空機など、特に公共事業の透明性を、執拗に繰り返しているが、なかなか改善されない。先進国もキレイごとを口にはするが、汚職などというのは、非常に洗練した形で米国議会内にロビイストとして入り込み、一見ビジネスと見せかけた裏金作りとか、なかなか検出されないような偽装が行われているのは歴史が証明するところだ。マフィアなどの犯罪組織もそうだが、追求すればするほど、ソフィストケーとされた形で深部に潜行するようになる。



09:老子の第18章には、昔、人間が素朴であった時代には、人々は自然に従って平和であった。後世、人々の知恵が進んで不自然な人為が行われたので大なる偽りを生じて世の中が乱れたとある。すなわち、<知恵出でて大偽あり>である。

老子の時代に比較して、果たして今の時代は進歩したのであろうか。

ビジネス業界でも世界の英知が今ミャンマーに集中しているが、果たして本当に世界の英知は利口なのだろうか。




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