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<ミャンマーで今、何が?> Vol.57
2013.8.14

http://www.fis-net.co.jp/Myanmar


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■八八八八(はちはちはちはち)

・AAA:(政治)
  A1:八八八八
  A2:再び内閣改造
  A3:新たに3名の大統領顧問を発表

・BBB:(経済)
B1:米国政府は引き続きミャンマー産ヒスイ・ルビーを輸入禁止
B2:Wilmar Internationalがミャンマーで砂糖事業を開始か?
B3:ホテルは満杯だが、外国人の個人宅宿泊は違法
B4:ミャンマー通貨の対米ドル・レート速報値

・CCC:(生活一般)
C1:AP通信がヤンゴンに本格的な新支局を開局
C2:少年兵62名を軍隊から解放

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AAA:(政治)

A1:八八八八

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25年前の1988年8月、ラングーン市内および主要都市での国民デモはかってない高まりを見せていた。軍事政権の終焉を求めて街に出た大学生のデモが最初であった。これに僧侶が加わり、尼さん、低学年の子供たち、一般家庭の主婦、ビルマ人以外の少数民族の人たち、政府の役人、中には一部軍人・警官までも参加してデモは巨大化していった。大通りはデモで埋め尽くされ、首都ラングーンだけでなく、全国の主要都市に飛び火してビルマは大きく揺れ動いていった。

1988年8月8日の午後、軍隊は空中に向けての空砲ですら禁じられていたが、大通りを埋め尽くした群集に恐れを抱いたのか、軍隊はデモ隊に向けて突然発砲し、学生・市民たちが銃弾に倒れ、あたりは血の海となった。最低3,000人が殺戮されたといわれている。

怒りをあらわにした街頭デモはさらに激化していったが、特にこの流血の惨事が発生したこの日を指して人々は8の4並び“8888”と呼んでいる。だが、私服の秘密警察が聞き耳を立てる路上喫茶などでは、“8”の発音はひとつだけでも警察にしょっ引かれる十分な根拠となった。この恐怖政治はほんの数年前まで続いていたのだが、最近参入してきたビジネスマンたちには信じられない話だろう。

だから、“ミャンマーで今、何が?”が発足したたった一年前ですら、執筆者の名前が表に出ることは危険で東西南北研究所という怪しげな名前でスタートした。当時のEメールは軍部からの検閲・摘発を恐れ、算用数字の8の字を避けて、当局には理解しにくい漢字で用心深く八八八八と書いたものである。

だが確実に時代が変わった。その25年後の今年2013年8月8日にヤンゴンのMCCホールで第25周年記念集会が開催された。昔の学生運動家・野党の人たち(その大半がムショ帰りか、海外逃亡者で、今では ‘88年世代’と呼ばれる)が正式に政府の許可を得て組織したものである。「我々は許すことはできる。しかし忘れてはいけない。」のメッセージの下に大勢の人たちが集まった。今年の参集者たちには当時まだ生まれていなかった25歳以下の若者たちも大勢含まれている。そして会場に展示された当時の血塗られた数々の写真からミャンマーの8888の歴史を真剣に見入っていた。この集会は3日間連続して行われた。

政府を代表する上院・下院の両議長からは親展が送達され、大統領府のアウンミン大臣および与党USDP幹部の元将軍たちも多数出席した。そして8888のシンボルともいえるアウンサンスーチーその人も、当時の学生運動のリーダー・ミンコーナインもこの日出席して演説した。長い間睨み合っていた政府と国民の双方が和解に向けての一歩を踏み出したのがこの第25周年記念集会といってよいだろう。

ひとこと言い添えると、スーチーは8888の当日、デモの先頭に立って行進した訳ではなく、政治活動に参加していた訳でもない。ただひたすら死の病床に横たわる母親の看病に明け暮れていた。だが、8月26日シュエダゴンパゴダ西口で開催された抗議集会に運命が彼女を登場させる。そして50万人の大観衆が今では伝説となったスピーチに酔いしれた。スーチーが政治の舞台に初登場した瞬間である。スーチーの母親ドー・キンチーはその年の12月28日に78歳で亡くなり、翌年1月2日に20万人が参加して葬儀が営まれた。軍隊はタンクを持ち込みその集会を蹴散らそうとした。ドー・キンチーは夫のアウンサン将軍とはシュエダゴンパゴダを挟んで反対側の南口近くにひっそりと一人眠っている。だが、今回の集会でもスーチーは“恨みを抱くな!”と記念集会参加者に語っている。

テインセイン新政府は2011年3月に発足した。ほんの昨日のことだ。発足当初は市民服の下に軍服をまとっていると誰もが疑っていた。それほどに恐怖政治はミャンマー市民の心に深くトラウマとなっていた。世界は今ミャンマー投資で沸き立っているが、政治改革・経済改革・社会改革、そしてメディア改革が本物かもしれないと内外が納得し始めたのはつい最近のことである。それほどミャンマーは変貌し、あの暗黒の時代へは後戻りしないと確信できる状況が形成されつつあるということでもある。


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A2:再び内閣改造

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7月25日に4名の大臣が他省大臣として移籍、4名の副大臣が更迭、新たに3名を副大臣として任命、内務副大臣は警察庁長官に転籍と発表されたが、改造の目的が説明されないため、巷ではいろいろな憶測を呼んでいる。
この数ヶ月間、エネルギー部門での腐敗が取りざたされ、特に海上オイル&ガス鉱区の落札で政府系MOGE(ミャンマー・オイル&ガス企業)の透明性に欠ける決定と国内企業を優遇しない処置に不満の声が上がり、これが内閣改造の一因だとするもの。
一方で、労働副大臣の鉄道省への移籍は、チャオピューから中国向けパイプラインが稼動したことで、次の最重要課題はチャオピューから中国への高速度鉄道敷設で、それに専念するための改造であるとの説。
テインセイン大統領が内閣諸大臣の上部に位置づけられる大統領府にさらなる権力集中を図ったものとの見方も出ている。しかし、大統領府からの説明は何もない。


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A3:新たに3名の大統領顧問を発表

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大統領府は政治・経済・法律それぞれの部門に各3名、合計9名の顧問団を2011年5月に設定したが、今回は新たに2名の経済顧問、1名の法律顧問を追加発表した。当然のことながら、これは明らかに大統領府の権力強化である。


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BBB:(経済)

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B1:米国政府は引き続きミャンマー産ヒスイ・ルビーを輸入禁止
何十年も武力衝突の舞台となってきた少数民族地域での宝石採掘は軍関係者、関連業者たちに膨大な利益をもたらし、その独占は軍部の腐敗構造の元凶で人権問題も引き起こしているとして、米国政府は8月7日ミャンマー産ヒスイ・ルビーなど宝石類の輸入禁止をさらに延長する決定を下した。
今、ミャンマー政府と米国政府はハネムーン状態にあるようだが、軍部・将軍・取巻き企業の利権ビジネスは別の話だと米国財務省は釘を刺した。


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B2:Wilmar Internationalがミャンマーで砂糖事業を開始か?

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シンガポールの上場会社Wilmar Internationalは第2四半期の純益が87%増の$219百万になったと発表した。同社はマレーシアの億万長者ロバート・クウォ(89歳)がオーナーで、甥のKuok Khoon HongがCEOを務める。同社の主力事業はパームオイルをはじめとする食用油だが、需要の伸びにもかかわらず、最近はインドネシア・マレーシアでの耕地確保が難しくなっている。これはシンガポールを覆い尽くすスモッグの原因が“捕らえてみればわが子なり”ではないが、シンガポール資本が出資したスマトラ島での農耕地の焼畑が原因だとの調査報告が発表されたためである。このため同社は西アフリカでの事業拡張も企画しているが、最近注目のミャンマーでの砂糖生産も検討中で、詳細は6ヶ月以内に発表できるだろうとCEOは語っている。このWilmar社はマレーシアにおける砂糖加工事業で財産を築いた。したがって、同社が未開拓のミャンマーで砂糖用地をあちこち嗅ぎ回っている事実は決して驚くに値しないとフォーブス・ニュースが伝えている。Wilmar社に限らず、ミャンマーの肥沃な土地は農産物商品を扱う多国籍商社にとってはプランテーションを企画するに魅力的な国とみなされている。


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B3:ホテルは満杯だが、外国人の個人宅宿泊は違法
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先週、ホテル観光大臣が旅行ガイドたちに語った。外国人観光客は生活様式がミャンマー人と異なるので個人宅への宿泊は許可されていない。外国人は就寝時に顔を東に向けるとか、ひとつのスープ皿からひとつのスプーン共用で食事をするなどミャンマーの方式に従えないとしている。江戸の末期、長崎に、神戸に、そして横浜に上陸した紅毛人へ対する徳川幕府のご法度そのものだと思いませんか。今は簡単にジェット機でミャンマーに入国できますが、その時差は150年あるような気がします。
まだ未改定のミャンマーの現行法律に従えば、大臣のおっしゃる通りなのです。違反すれば逮捕されても文句は言えません。そして大臣は続けます。しかし、ホテルがまだ無い地方においては例外であると。これも不思議と納得させる理屈ですよね。
ですから、ホテルの乱立するヤンゴンで、どのゲストハウスも満杯であっても、屋台で盛り上がった地元友人から自宅へ誘われても、そこで宿泊するとなると、夜中にヤワタという町内会を訪ね、薄暗い電灯の下で、カーボンコピーを何枚も挟み込んだ申請書に、どういう訳か自分の亡くなった父親の名前も含めて必要事項を記載し、パスポートのコピーを添付して、ただしこの時間帯コピー屋は閉店で大騒ぎするのですが、とにかく町内会長の許可を受ける規則になっています。地元友人もゴソゴソとIDカードを提示します。このころにはイイ気持ちの酔いも完全に醒めるでしょう。事態が事態ですから、町内会長以下への心づけも気の利くアナタであれば当然配慮したいですよね。視点を変えると、21世紀のヤンゴンで、江戸時代の五人組そっくりの制度を体験できるということです。


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B3:ミャンマー通貨の対米ドル・レート速報値

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現在、銀行業務も改革の真っ最中だが、8月5日、為替取引業者に対する銀行間外貨スポット市場が発足した。
2013年8月12日より、外国為替レートはミャンマー中央銀行のウェブサイトで閲覧でき、電話による問い合わせにも録音テープで確認できるようになった。
コンタクト先:WWW.cbm.gov.mm および 電話番号:01-8605100 



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CCC:(生活一般)

C1:AP通信がヤンゴンに本格的な新支局を開局

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AP通信社(Associated Press)が8月7日ヤンゴンにフル・スタッフが常駐する国際報道可能な本格的新支局を開局した。
ということは、取材スタッフをフル動員してこのヤンゴン支局から直接海外にミャンマー情報を発信するということで、ミャンマーの改革が政治分野・経済分野に限らず、マスコミ分野でも確実に進展していることを象徴している。

1989年までの20年間、過酷な弾圧の中で投獄の危険を冒してまでAP通信のために尽くしてくれた通信員Aye Aye Winと彼女の父親U Sein Winに感謝を捧げて開局式典は行われたがU Sein Winは健康を損ない出席できなかった。会場には同氏の写真が掲げられ、1969年から1989年までヤンゴンのAP通信員として活躍したU Sein Winの勇気と献身はミャンマーのジャーナリストの鑑であったとのキャプションがつけてある。

AP通信の上級副社長兼編集長はこのモダンな事務所には才能豊かな3名の国際的ジャーナリスがチームを作り、ビデオ・ジャーナリスト、通信員、プロの写真家などと仕事を進めていくと語っている。


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C2:少年兵62名を軍隊から解放

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8月7日、ミャンマー国防軍は62名の少年兵を解放した。これは国際社会からの人権問題非難に応えるものとしているが、少年兵の数はこんなものではないとの声が高まっている。英国のビルマ人権問題活動家グループは少年兵の数を約5千名としている。




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