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 <ミャンマーで今、何が?> Vol.486
 2022.03.29
 http://www.fis-net.co.jp/Myanmar
 
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 ━━【主な目次】━━━━━━━━━━━
 
 ■総司令官のスピーチ解読
 
 ・01: 傲慢になった総司令官
 
 ・02: MAHのスピーチ
 
 ・公式ツイッター(@magmyanmar1)
 
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 ・01:傲慢になった総司令官
 
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 先週は浮足立ってしまいました。ノンポリとしてお恥ずかしい限りです。
 
 新たな動きとして、クーデター政権自身が任命していたヤンゴン発展委員会(YCDC)議長のボーテイ知事(都知事に相当)逮捕のニュースが先週金曜日に流れ更に動揺を起こしました。理由は発表されず。
 
 軍事裁判所の裁判長・裁判官も先週末、新顔に交代させられました。これで国軍の残虐行為を外部に隠蔽したまま正当化し法的処理をスピーディーに行う手筈が整った事になります。
 
 利権・コネを求めて国軍のいろんな関連団体にすり寄り寄っていった海外の政府、正体不明のNGO・NPO、商人など外国勢力が、結局は軍人社会を甘やかし、総司令官の判断を狂わせ、大それたクーデターにまで走らせてしまった。
 
 その無責任な外国勢力は現在軍部の手玉に取られて動けなくなってしまった。
 
 ウクライナではプーチン次第、ミャンマーでは総司令官次第という攻め手のない局面を迎えている。
 
 外国勢力にはその自覚さえなく、ミャンマーから撤退を表明しさえすれば、その重大責任から逃れられると勘違いした商売人ばかりだ。
 
 目先の自己利益だけで契約を結んだ相手側の軍人エリートは愚かではない。撤退表明会社をこれからゆっくり料理しようとありとあらゆるレシピを検討中である。
 例えば撤退会社の所有株式49%をゼロ価格で奪ってやろうと優秀な地元弁護士を揃えても良い。
 それが駄目なら国内法を改悪することも意のままである。
 それだけではない。事前相談無しのパートナー破棄および撤退表明は信義にもとるとして、莫大な離婚慰謝料を要求されるリスクが潜んでいる。
 すべては目先の自己利益追求が招いた代償である。そこまでの覚悟はあるのだろうか?
 
 話をヤンゴン下街あるいはミャンマーで今、何が?に戻そう。
 
 財界の大物Dr.キンシュエそして国軍の大物シュエマンというコワモテの両有名人を陥れ、国軍が任命していた大物の現役大臣・知事などを逮捕したことで身内の国軍内部に激震と恐怖が走った。これは国内外にアピールする明白な見せしめである。
 この恐怖政治は国軍内部と市民との間でシナジー効果を引き起こした。
 
 暗雲立ち込める事態に下街の住民はベランダから外部の様子を覗い、兵士や警察が潜んでいないと確認すると三々五々路上に集まり、ヒソヒソ声で噂し、今日と明日の不安に怯えている。
 
 自らの戦略無き行動に誤った自信を抱いた総司令官は、一方で傲慢さをも露呈し始めた。
 
 3月27日、総司令官MAHの娘キンティディテッモンが通信会社Telenorの株式、数量不明、を取得したとの情報がイラワジ紙ビルマ語版オンライン情報で流れた。
 
 これこそMAHの愚かさを証明するもので、Dr.キンシュエ一族とやっていることは何ら変わりないどころか、最高権力を乱用したそれ以上の悪辣さである。
 無邪気に写真まで暴露された娘も、イノセントに見えるが、オヤジと同罪。MAH夫人も、そして息子も一家全員で特権を享受し総司令官と同レベルの国家反逆罪を犯している。
 
 ここから日本の叡智「サルも木から落ちる」あるいは「弘法も筆の誤り」という諺に想いを馳せたい。総司令官の近未来を暗示する諺である。
 
 
 
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 ・02:MAHのスピーチ
 
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 3月27日(日)は第77回ミャンマー国軍記念日であった。ネイピードの軍事パレード広場で制服着用の大々的なパレードが行われた。
 
 ロシアも中国も、そして北朝鮮までもが、この手のパレードには、実力以上の背伸びをして、国家の威厳を誇示している。ミャンマーは威信をかけてその真似事をこれまでも必死にやってきたし今年もやっている。
 
 だがミャンマーの歴史には英国軍のみならず、日本軍のネガティブな歴史が深く深く関わっている。
 そのネガティブさ故に、日本の戦後教育は、負の遺産として過去の事実を埋没させ、次世代に引き継がない選択をしてきた。
 
 繰り返すが3月27日はミャンマーの
 国軍記念日である。
 
 歴史を掘り起こすと、大日本帝国陸軍軍政下であった1945年のこの日、アウンサン将軍率いるビルマ軍は完全に日本軍の指揮系統から離脱した。
 そしてファッシストである日本軍に対してビルマ全土で一斉に抗日蜂起した。
 それを記念するのが正にこの国軍記念日である。
 
 さいとー・ナンペイ著『アウンサン物語2015』(下巻)第61話には、このように記述されている。
 もう少し深読みしていきたい。
 
 若い読者の中には、日本がファッシスト?と憤る方がおられるかもしれない。だがここでは日本ではなく“日本軍”をはっきりとファッシスト呼ばわりしている。
 
 陸軍参謀本部の船舶課長だった鈴木敬司大佐に特殊任務が命じられた。東南アジア問題の調査である。
 
 南益世の偽名で、それから日緬協会の事務局長そして読売新聞の特派員を装って、鈴木は1940年6月ビルマに入国した。その頃、英国当局の弾圧は厳しく、ビルマ国内には愛国的な独立運動が密かに水面下で展開していた。
 
 この物語の遥か延長線上に、アウンサン将軍と三十人の志士が登場し、さらには陸軍中野学校にその源流はある。そして陸軍中野学校の建学精神はロシア帝国を崩壊させた明石元二郎に行き着く。
 
 21世紀の今、すなわち2022年3月27日で発せられたMAHの長ったらしいスピーチを分析しながら読み込むと、ノンポリの時代分析が誤っていた事に思い至った。
 
 過ちは一刻の猶予を置かずに正さねばならない。
 
 読者と一緒に確認していきたい。
 
 鈴木敬司がミャンマーの現在の混乱を招いた。そして明石元二郎がロシアの共産主義を作り上げ、結果的にウクライナとの今日の混迷を招いてしまった。
 
 その元凶は日本の陸軍参謀本部にある。そして薄々気付きながらも、反対意見を封じ込めた日本の戦後教育にある。
 
 だから次世代を担う日本の若者は、SNS評価同様に拳を握り、親指を上に向けるか、下に向けるかの二者択一しか出来なくなった。
 そこには議論を闘わすとか、相手を説得しようとする技術を練磨する場が失くなってしまった。
 
 これは若者だけでなく、日本を代表する大手マスメディアの外国首脳との独占インタビューに如実に表れている。通訳からはじまって段取りが不十分なものだから、攻撃したい相手首脳の言いたい放題をすべて言わせて、インタビュウワーの反論も出来ぬままで、結果的には相手首脳の見解を広報する役目を担っている。
 
 これこそ日本の危機であるのだが、日本のマスコミは独占インタビューと銘打って得意になっている。
 そして最近の海外マスコミは日本語・英語ともに達者で日本が手玉に取られる様を海外で皮肉を込めて流している。日本語番組だからといって、海外に内緒にしておける時代ではなくなった。国会討論にしても海外のマスコミが注目する時代である。
 
 特に東南アジアの記念日では日本のネガティブな歴史に関係することがある。その日に祝日だからといって一気飲みなど日本人だけで盛り上がると白い目で見られるだけでなく、口論から殴り合いに発展する恐れも有りうる。くれぐれもご注意を。
 
 更に言及すれば、日本人だけではない、歴史上の悪事を働いたのは。
 
 1789年米国建国時、ジョージ・ワシントン政権の財務長官に任命されたアレキサンダー・ハミルトンを主役にしたミュージカル『ハミルトン』は現在アメリカのブロードウェイでロングランを続けている。
 
 これは国立銀行の設立など数多くの功績を残したハミルトンの陰の部分である“A skeleton in the kitchen”を余す所なく赤裸々に見せてくれる大胆さが評判を呼んだものである。
 
 時代は今、そして世界は今は、大きく変動し始めた。
 
 アメリカ人が自国の偉大な人物の恥部を暴露して、歴史の再検証をやり始めた。そして劇評は大きく2つに分断されている。それが今日のアメリカでありアメリカ人である。ブロードウェイの劇場の前に長い長い列が連日できている。
 
 学校で習った歴史が再検証を求められる時代に突入した。それだけではなくて欧米の若者は議論の腕を磨いている。
 日本の政治家、そして企業の重役人が得意とする“ゴメンナサイ”だけでは議論は不毛で、決して建設的な結論は見いだせない。
 
 ハミルトン同様に世界の潮流を見極めた上で太平洋戦争も見つめ直したい。日本人は真面目すぎる。
 
 時間を掛けて若者の議論術を磨き直せば、欧米人に劣らぬ、太平洋戦争談義を再スタートできるだろう。
 
 ということで今週も完結しないが、総司令官のスピーチを分析するのにもう暫く時間を掛けたい。
 
 以上
 
 東西南北研究所
 
 
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