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 <ミャンマーで今、何が?> Vol.397
 2020.12.23
 
 http://www.fis-net.co.jp/Myanmar
 
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 ━━【主な目次】━━━━━━━━━━━
 
 ■新型コロナ・ワクチン開発の最前線!
 
 ・01: 2020年12月21日(月)午後8時発表
 
 ・02: ワクチン開発の最先端講座
 
 ・03: ソーク博士が作ったソーク生物学研究所
 
 ・04: それは中国ウーハン(*武漢)で始まった・・
 
 ・05: 陰謀と見るか?人類の救世主と見るか?
 
 ・公式ツイッター(@magmyanmar1)
 
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 ・01:2020年12月21日(月)午後8時発表
 
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 陽性感染者数合計:116,982名
 新感染者数合計:848名
 死者数合計:2,465名
 退院者数合計:96,685名
 現在検査中:17,832名
 出典:ミャンマー連邦・保健スポーツ省
 
 
 
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 ・02:ワクチン開発の最先端講座
 
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 COVID-19に関しては、風評というウワサが先行し、科学的考えを受け付けない風潮が多々見受けられる。これは知的訓練の欠如かもしれない。YouTubeをサーフィンするうちに、12月18日付け最新のワクチン開発事情を知ることができた。偶然にしてはラッキーだった。
 
 ヤンゴンの学生にとっては少し難解かもしれない。だが世界最先端の新型コロナ・ワクチン開発事情を学ぶには最適のYouTubeと思った。イノセントで世間を知らない若者たちに理解してもらうのは大仕事である。手持ちの医学辞典、百科事典、英和辞書などを総動員して挑戦してみたい。
 
 原稿は一応日本語で用意してみた。賢明なメルマガの読者には、そんなことは常識だよと笑われるかもしれない。師走の忙しい時期、貴重な時間を無駄にしないでほしい。今回のメルマガは斜め読みか、無視願いたい。
 
 だがヤンゴンの若者には、一時停止・再生を繰り返し、このYouTube全編を噛んで含めるように説明していきたい。若者へのささやかなクリスマス・プレゼントのつもりだ。
 YouTubeの題名は最後部に記述した。
 
 
 
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 ・03:ソーク博士が作ったソーク生物学研究所
 
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 ポリオ(*小児麻痺)ワクチンで名を馳せたソーク生物学研究所が米国カリフォルニア州サンディエゴ市にある。メキシコ国境からわずかに25km北に位置し、広大な太平洋を睨む良質の天然港で大規模な米国海軍基地が置かれている。
 
 Jonas Edward Salk(*1914-1995年)はアメリカの細菌学者でウィルス研究者であった。1953年ポリオ・ウィルスをホルマリンで殺し、そのワクチンを注射するとポリオの予防効果があることを発見し、彼の名前をとったソークワクチンといわれる不活化ワクチンを開発した。
 
 このワクチンは1955年アメリカで実用化され、1961年(*昭和36年)には日本でも国際ソークワクチンが検定合格し、量産体制が整えられ、当時、日本で大流行していたポリオ対策として期待された。
 
 新薬開発の競争は当時から熾烈で、ソークワクチンより優れたセービン(*米国のウィルス学者)の経口生ポリオワクチンが同じ1961年後半に開発された。日本にはこちらの新薬が緊急輸入投与されたため、ソークワクチンは短命に終わった。
 
 因みにFDR(*フランクリン・デラノ・ルーズベルト第32代米国大統領)は1921年小児麻痺に罹り、以降車椅子の生活を強いられた。
 
 このサンディエゴ市の生物研究所はソーク博士が創設し、ノーベル賞科学者を多数輩出し、特にCOVID-19のパンデミック対策では現在世界中から注目されている。
 
 今回のYouTubeの講師はジェラルド・パオ博士と自己紹介した。
 老人の目で見ると、ミュージシャンのような長髪の若いお兄ちゃんに見える。
 名前からも中国系のアメリカ人と思われる。だが色眼鏡で見てはいけない。
 彼の達者な英語からは最先端のコロナ情報が語られた。
 
 パオ博士は由緒あるソーク生物研究所で遺伝子工学などを研究し、早い段階から新型コロナの研究に取り組んできた。スパイク(*突起)タンパク質を人工合成するための情報を130以上の研究所に提供し高く評価された。ワクチン研究の基礎的材料とするためである。
 
 なお12月8日時点でジョンズ・ホプキンス大学が発表したアメリカにおける新型コロナの感染者数は1,517万3,851人、死亡数は28万6,338人で、カリフォルニア州では再びロックダウンとなった。
 
 
 
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 ・04:それは中国ウーハン(*武漢)で始まった・・
 
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 とは中国嫌いの日本人が好むセリフである。だがパオ博士はひと言ひと言非常に論理的に説明してくれる。風説が入り込む余地はない。
 
 「2020年1月23日に発表された医学雑誌の論文で、武漢を訪れた中国人の一家の例がある。家族の一人が市場に行き、それが最初の大きな切っ掛けと考えられている。そして家族が感染し、家族は深?(*広東省のシェンチェン特別市)に移動した」と博士の言葉は具体的だ。
 
 トランプ大統領は中国がコロナ感染を隠していたと攻撃し、日本のマスコミ・評論家も受売りで中国はケシカランとしている。この科学者は公表された論文について語った。
 
 「その後マスクを着けていた子供は感染せず、言うことを聞かずにマスクを着けなかった子供が感染した。その結果家族のほとんどが感染した。論文のデータを目にした瞬間、深刻な状況になると確信した」と若い博士は語りはじめた。
 
 念押しすると1月23日とは今年2020年のことである。そして博士のチームは2月はじめには動き始めた。実際の感染発生から論文に纏めるには多少時間はかかる。それは想像できる。むしろアメリカや日本の研究所がこれより速く反応できたのかと疑問が沸く。
 
 「確信したのは、感染率がとても高いからだ。同時にマスクがある程度の感染を防げることも分かった。なので一部の人たちは大問題になる前に早急に取り組む必要があると考えていた。その後大問題になることは明らかだった」と同博士は2月はじめを振り返る。
 
 「遺伝子研究で、特定の遺伝子を探すことをgWORTH(*ジーワース)と呼び、統計に基づいて、より良い結果、あるいは悪い結果に結びつく遺伝子を見つける作業を行っている。だが今のところ、白人とアジア系など人種の違いで死亡率に差があるとは報告されていない」
 
 「違いがあるとすれば、むしろ行動様式の違いによるものではなかろうか?
 中国を見れば明らかで、地域全体や職場全体を強制的に封鎖して感染率を今はほぼゼロに抑えている。個人の自由を主張するアメリカでは難しいかもしれない。ウィルスとは直接関係のない要素である」
 
 「米国や欧州に比べて日本の死亡率が非常に低かったのは、日本の医療システムや医療関係者の努力が貢献しているのではなかろうか?」と日本を賞賛する。
 
 先月アメリカの製薬会社ファイザー社とモデルナ社が相次いで、ワクチンの第三段階の臨床試験で90%を超える有効性が確認されたと発表した。これを受けて両社はFDA(*米国食品医薬品局)へ緊急使用許可を申請。
 
 今月8日バイデン次期大統領は就任100日で1億人のワクチン接種を目指すと表明した。
 今回緊急に認可されるのはいずれもmRNA(*メッセンジャーRNA)と呼ばれる遺伝子情報をつかさどる物質を用いたワクチン。
 
 mRNAを使った遺伝子技術のワクチンはこれまで承認されなかった。インフルエンザの流行期に向けてワクチンに利用する計画はあったがまだその段階ではなかった。
 
 だがエボラ出血熱のワクチンは別の方法の遺伝子技術を使い既に承認されていた。しかも非常に効果があることが分かっていた。
 
 エボラ出血熱のワクチンで使用された遺伝子技術をmRNAを使った技術に置き換えるだけで、今回の新型コロナワクチンを短期間に完成することができた。
 こういう技術はすべて遺伝子治療という概念からきており、遺伝子の一部を置き換えることにより病気を治療する。
 
 安全性とか副作用に付いては正直なところ様子を見なければ分からないが、今のところ被験者に深刻な問題は出ていない。例えば7月に接種をした人は、11月の時点で5ヶ月間は何の問題もなかった。
 
 12月を越せば少なくとも6ヶ月間は問題がなかったといえる。そして春になれば、9ヶ月間は問題がなかったといえる。だが確定はできない。今は大丈夫でも今後、何らかの副作用が絶対に起こらないとは言えない。
 
 これに関する論文が出ていないので、被験者が大人だけか、子供もテストしたのか被験者の年齢構成は今のところ分からない。今は多くの情報は報道によって伝わるが、本来は論文によって発表される。
 
 論文が発表されるには通常数年かかることもあるが、今は緊急事態なので論文は後回しとならざるを得ない。発表は難しいので、今はデータをFDAに送って承認されるのを待っている。
 世界中の人に期待される新型コロナのワクチンだが、手放しでは喜べない多くの問題を抱えている。
 
 mRNAワクチンには“脂質ナノ粒子”が必要だが、これを製造できる技術は世界中でオーストリアにあるポリミューンという会社一社だけだった。アメリカのファイザー社、モデルナ社、シンガポール政府の発注先の別の製薬会社もその他もこの会社に生産依頼している。
 
 このポリミューン社は2021年末までにmRNAワクチンを10-20kgほど作れると語っている。これは約10億人分に相当する数量である。だが地球の人口は70億人以上である。人口の3分の2にワクチン接種で免疫をつける必要があると考えるとこれは不十分で問題となる。
 
 そしてワクチンを世界各地に搬送するのにマイナス70℃-80℃の冷凍装置が必要となり、これは南極点ぐらいの温度である。少なくともドライアイスが必要で、物流関係の工程が多く関係しているので、冷凍トラックで運送するだけではワクチンの輸送に適しているとは言えない。
 
 ワクチンの生産だけが問題ではなく、ワクチンの効果がどのくらい持続するかが最大の問題となる。今月12月2日に発表された論文では、横浜市立大学山中教授研究チームの調査では、新型コロナ元感染者の98%に6ヵ月後も抗体が残っていることが判明した。だがワクチンの実際の有効期間はまだ明らかにされていない。
 
 通常の感染例からいえば、コロナウィルスは7種類あるのだが、その免疫はほとんどが一年未満で無くなってしまう。今回のワクチンの持続期間はまだ不明である。だが一年有効であれば、毎年ワクチンを接種すればよく、我々の任務も終了で、あとは工場を増やしてワクチン増産の体制ができる。
 
 今後の見通しについて、楽観的にいえば来年の夏ごろには完成し、東京オリンピックにはギリギリ間に合うかもしれない。生産スケジュールが立て込んでおり、来年6月ごろにならないと実際に充分なワクチンが確保できるか判明しないと思われる。
 
 
 
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 ・05:陰謀と見るか?人類の救世主と見るか?
 
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 ここでビル・ゲイツの関与が質問された。
 以下はQ&Aの形式でお届けしたい。
 
 Q:MS社の創業者で世界の長者番付に名を連ねるビル・ゲイツのパンデミック薬品製造関与がウワサされているが?
 A:彼はゲイツ財団の資金を投じて、さまざまなタイプのワクチンを作る工場を建設する計画があった。ゲイツ氏はパンデミック以前から色んな準備をしていた。ドラッグ・リパーパシングという言葉がある。
 
 既存の2万種ほどの薬を組み合わせて、サンプルを作り、Sarsや新型コロナなど別の疾患への効果を検査する仕組みである。ゲイツ氏はこれらの薬の蒐集に資金提供していた。だからこれら薬のライブラリーを使ってさまざまな別の疾患へのテストをすることができる。
 
 この“ドラッグ・リパーパシング”はゲイツ財団から資金提供されている。
 もう何年も前から新薬開発のために使われている。ビル&メリンダ・ゲイツ財団は2000年に創設された世界最大規模の慈善基金団体で、世界の病気および貧困解消への挑戦を主な目的としている。
 
 その他にも今回のように2万種類以上の薬品を購入して、必要な研究者たちに提供し、研究者たちはこれらの薬を組み合わせて治療薬を製造している。パンデミックが始ってから対応しては役に立たないし効率も悪い。
 
 事前に準備しておけば、後は作戦を展開するだけだ。だから今回のパンデミックから学んで次に備えるべきです。このウィルスは1-2%の人々の命を奪う可能性がある。その重要性はゲイツ氏だけでなく、多くの人たちが知っている。
 
 先ず準備をしておかねばならない。ウィルスを培養する方法や、ウィルスの検査方法、それに対する薬のテスト方法もわかっていれば、問題が起こった場合の対応も出来る。最初から準備をしていれば、もっとスムースに運べるだろう。
 
 現時点で莫大なおカネが失われた。欧米社会に対する経済的ダメージは測りきれない。幅広く研究に資金提供していれば、はるかに少ない金額でこういうウィルスに対する何らかの方法が準備できるはずです。
 
 Q:今は新型コロナウィルスの拡散パターンに付いて研究していると聞きました?
 A:はい。私たちはウィルスに似ているけれど、まったく毒性のないウィルスを作っています。中身には空っぽなので危険性はない。そこに緑や赤に光る蛍光タンパク質を加えて、ウィルスの粒子が実際に見える様にします。するとウィルスの動きが視覚できる。
 
 通常ウィルスは目に見えないが、遺伝子学的に操作されたものなので、目に見え、体に害がない。これをワクチンに利用することも出来るが、私たちは違う目的に使います。ウィルスが飛沫とともにどうやって拡散するか調査している。
 
 空調システムをテストしたり、通常の部屋でウィルスがどのように拡散するかテストして、どの程度窓を開ける必要があるか、屋外の食事はどれくらい安全か、公衆トイレの水を流すのは安全なのか危険なのかを調査し、それらを調べるツールを作っている。
 
 Q:日本は疾病に対するCDC(*Centers for Disease Control andPrevention=米国疾病対策センター)はありません。
 A:日本は他の国に対して地震対策は進んでいますが、感染症に対してはそれほどではありません。日本の研究に対する資金提供は長年少しずつ下降している。もし自分の社会を守りたければ、未知の災難から社会を守るにはあらゆる可能性を考慮すべきです。
 
 以上がすべてである。
 あとは『町山智浩のアメリカを知るTV With CNN』2020年12月18日を参照いただきたい。
 今回は字幕として日本語訳が用意されている。
 
 いつも町山の相手を務める藤谷文子の英語が町山の英語力をはるかに凌ぐのを初めて知った。
 このジェラルド・パオ博士は藤谷の人脈で、パオ博士のパートナーは日本人女性とのこと。
 なお藤谷文子の父親はハリウッドのアクションスター、スティーブン・シーガル。
 
 
 本日はここらで失礼。
 ただいまのヤンゴン時間は12月22日(火)午後1時30分。アップはプロバイダー殿に気ままにお任せしてあります。
 
               
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