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<ミャンマーで今、何が?> Vol.36
2013.3.20

http://www.fis-net.co.jp/Myanmar


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・01:AAA:(政治)
  -A1:2008年憲法を見直す委員会設置が下院で承認
-A2:ヤンゴン市長が日本を訪問
・02:BBB:(経済)
-B1:4月1日から日刊新聞が発行
-B2:日本向けミャンマー産米の第1陣が5月に出荷
-B3:バングラデッシュに淡水魚が出荷される
-B4:外貨勘定の引き出しが拡大
-B5:マースクラインがヤンゴンに駐在員事務所開設
-B6:ミャンマー通貨のチャット安

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<AAA:(政治)>

○A1:2008年憲法を見直す委員会設置が下院で承認

3月17日のNLM紙によると、2008年憲法を見直す法律専門家・知識人を含む委員会の設置を下院議員の満場一致で決定した。

2008年5月2日に直撃したナーギス台風数日後の大混乱の中で、ヤンゴンを含む被災地を除いて形式的にはミャンマー全国で国民投票を行いこの憲法は採択された。現行の新政権ではなく旧軍事政権がすべてお膳立てしたこの憲法は明白にスーチー個人をターゲットにして、ミャンマー国の大統領はミャンマー国民に限るとして外国人との婚姻者および外国籍子供を持つものは資格無しと規定されている。そして議会制度を超越した位置にミャンマ国軍を置き、国会議席の25%を国民の投票を経ずに国軍が指名でき、さらには緊急事態を宣言し民主的な政権をいつでも解散できる権限を与えられている。

時の首相はテインセインでタンシュエ議長の指揮下にあるとはいうものの形式的には最終責任者でもある。このことがミャンマー問題をさらに複雑にし、欧米のメディアからはテインセイン大統領を改革派のチャンピオンと呼ぶことには矛盾があるとの批難が抜け切れないことも付け加えておきたい。

2008年5月10日、選挙管理委員会はアセアン各国を主体とする国際的投票監視団を受け入れ、形式的には憲法採択の賛否を国民に諮ったとするものの、実態は投票内容がすべて当局に筒抜けであったことが判明し国際的な批難を受けた。したがって国軍が巧妙に仕組んだ“いわくつきの憲法”であることは確かで、旧軍事政権が制定したという意味で2008年憲法と呼ばれている。

しかし、2008年憲法のどの部分を見直すのかは何一つ明示されておらず、委員会のメンバー構成およびその力関係、そして内外の世論の声が影響してくるものと思われる。


○A2:ヤンゴン市長が日本を訪問

U Hla Myintヤンゴン市長およびYCDCの高官が3月16-23日東京で開催されるヤンゴン活性化計画セミナーに出席のため日本へ向かった。これは2012年5月1日にヤンゴン地区政府とJICAとの間で調印されたヤンゴン開発プロジェクトの覚書の一環である。同市長は前駐日ミャンマー大使で日本との間に構築された人脈パイプが効果的に作用しているものと思われる。



<BBB:(経済)>

○B1:4月1日から日刊新聞が発行

ミャンマーでは7日間ごとに発行される週刊新聞を‘ジャーナル’と呼んでいる。新聞は毎朝(毎夕)読むものというのが世界の相場だが、ここミャンマーはそうでない。

ヤンゴン市内何ヶ所かにジャーナル紙の集配デポがある。毎朝早朝、刷り上ったばかりのジャーナル各紙が製本もされずにこの集配所にトラックから降ろされていく。大勢の集配人が群がり枚数を確認すると折りたたみ作業が路上一面のあちこちで始まる。これでページ割にしたがったワンセットが出来上がる。そして政治・経済・芸能・スポーツなど各専門紙を自分の引受け部数にしたがい合計50部なり100部に纏め、その代金を清算する。集配人は自転車の荷台に山高く積み上げて朝もやの中に消えていく。あるいは早朝のバスに重たい部数をヨイショと積み込み自分の売場に戻って行く。

ミャンマー新政府は昨年8月印刷物への検閲を廃止し、間もなく4月1日からの日刊新聞の発行を許可すると発表した。約50年ぶりのことだ。民間各社の準備態勢は日刊発行に向けて開始されたばかりだ。未経験の作業だけに、芽生えたばかりのジャーナリズム産業にとっては新しい挑戦となっている。今回はその内情を掘り下げてみたい。

最初に政府のメディア基準をクリアせねばならぬが、地元報道では25社が日刊紙の発足に参加する予定となっている。政府発表では17社が日刊紙のライセンスを申請を済ませた。その内14社が精査を受け、8社が4月からの発行を承認され、6社が拒否され、現在3社が審査中となっている。

ミャンマーで発行部数がナンバーワンと見られる“イレブン・メディア・グループ”の申請が拒否された。このグループのウェブサイトでは、拒否されたのは100チャットの印紙が貼付していないためと新聞で使用する言語の明記がなかったためで政府からは再申請を申し渡されたとしている。

“ヤンゴンタイムズ”は4月1日の解禁に備えてこの3ヶ月間日刊ベースでの記事の作成方法、編集、大量印刷の実習訓練を行ってきた。他のメディア各社も日刊ベースに切り替えるべく社内は臨戦状態に入っている。

1962年の軍事クーデター以降、2000年になって初めて‘週刊ジャーナル’の発行が許可された。これは不都合な記事の検閲に1週間は必要と政府が判断したためらしい。この数年間で‘週刊ジャーナル’の発行はビジネスブームとなり現在はすでに200紙を上回っている。そして日刊新聞が解禁となる。日刊紙が発行されれば、誰が週刊ジャーナルなど読むかと、各社は生き残りを掛けて日刊紙に挑戦する。

政府が変革するにしたがい、発行者が変革を迫られる事態になってきた。日刊紙の発行はジャーナリストにとって長年の夢であった。だがこの夢が実現化するとなると、決して簡単な仕事ではなく、会社の存亡を左右する大変革だということに気付く。これまで1週間のインターバルでこなしてきた仕事が、時間単位の締切となる。そして翌日の早朝にはミャンマー全国の配布所に新しいインクの臭いが届いていなければならない。だがほとんどの発行者にとってこれは未経験で未知の分野である。

芽生えたばかりのジャーナリズムが生存競争に淘汰され、何社が生き残れるか誰にも分からない。言ってみれば1週間の仕事量が1日に凝縮され7倍の負荷が掛かる。それが365日一日も休まずに続くのである。威勢の良い発行元は勢いに乗って日刊紙に着手するが、7倍の人員、それもクオリティの高い人材、そして印刷関連資材・ロジスティックなども考慮すると7倍の事業資金が必要となる。ここで始めて社内のインフラが未整備であったことに気付く。そしてヤンゴンの停電事情がそれに追い討ちを掛ける。すなわち典型的なミャンマービジネスである。

政府系日刊英字紙の“NLM”は一部100チャットで購入できる。現在の週刊ジャーナルが一部約700-1000チャット。民間各社が努力して広告収入を増やしコストを削減しても日刊紙は一部360チャットになるという。だがこのミャンマーで毎日300チャット以上支払って読者がついてくるだろうかとの懸念が大きい。他社との生存競争に勝ち残るには販売価格を300チャット以下に設定せねばと語る業者もいる。ある発行元は最終的に残るのは5社くらいで、あとは莫大な損失を出して倒産と大胆な予測をする。

ミャンマー最大の発行部数を誇る“セブン・デイ・ニュース・ジャーナル紙”が45日間の訓練コースを開催した。これに参加した100名の内、10名は能力的に適格と判断したが、このコースを終了したのはたったの7名であったと語っている。仕事の少ないミャンマーでは多くの人が金を稼ぐために訓練コースに参加するが、ジャーナリズムの仕事が好きだというわけではない。ミャンマーのいろんな業界で同様の問題が発生している。生存競争に勝ち残るには、現在のスタッフを2倍以上に増やさねばと経営者は語る。だがジャーナリストの数はミャンマーではあまりにも少な過ぎると編集者は口にする。


○B2:日本向けミャンマー産米の第1陣が5月に出荷

ミャンマー産米の日本向け第1陣は5月始めに船積み予定で、輸入元は三井物産、出荷主はミャンマー農産物民間会社(MAPCO)となっている。第1回目の輸出数量は5,000トンで輸出価格はUS$490/トンとなった。日本の輸入制限は厳格で、今回はミャンマー産米が高品質で、化学物質の残留がないということが日本側に認められたとして、MAPCO社は今後の日本向け輸出に意欲的となっている。

ミャンマーは2012-2013会計年度の米輸出目標を1.5百万トンとしていたが、今の時点ですでに目標を0.6百万トン上回った。


○B3:バングラデッシュに淡水魚が出荷される

国境経由でバングラデッシュに輸出するために、3月12日淡水魚84トン(輸出金額US$85,215相当)がイラワジ地区からラカイン州のシットウェー港に到着し検品を受けた。出荷主はShwe Yi Min社で同社はヤンゴン地区に約500エーカーの養殖場を経営し2012-2013会計年度でUS$3.8百万の淡水魚をベングラデッシュ向けに輸出したと語っている。


○B4:外貨勘定の引き出しが拡大

外国人の外貨引き出しが週5日間可能になったと当局が発表した。この新政策は3月6日から実施され、それまでは週2日間に限られていた。この外貨引き出しは国営銀行のみに許可されていたが、民間銀行でも可能になったと3月14日当局は明らかにした。

外貨口座の開設は政府系のMyanma Economic Bank, Myanma Investment and Commercial Bank, Myanma Foreign Trade Bankの3行と民間銀行14行で可能となった。ミャンマー中央銀行は2012年5月に民間銀行14行に対して外貨口座の開設を、同年7月に外貨取り扱いのライセンスを許可し、同11月に外貨送金の制限を撤廃し、現在は月曜から金曜までこれらの銀行での外貨送金が可能となっている。ひと口座当りの引き出し金額制限は未だに$10,000だが、外国人は口座を5口開設することで一週間に最高$50,000まで引き出せるようになった。現在の送金は米ドル・ユーロ・シンガポールドルで行われているが、一部銀行は日本円・中国元・タイバーツの取扱いを中央銀行に申請している。なお、外国人にはこれらの銀行での預貯金口座の開設はまだ認められていない。


○B5:マースクラインがヤンゴンに駐在員事務所開設

デンマークの多国籍企業であるAP Moller-Maerskグループはその海運子会社を通じてミャンマーに支店を開設すると3月8日に発表した。同社は世界最大のコンテナ船運航会社で、今年の後半の支店開設を目指している。同社は関係会社であるWin Universe社を通じて約20年間ミャンマー事業を続け、現在のヤンゴンからの配船数は週4航海となっている。


○B6:ミャンマー通貨のチャット安

3月14日、米貨1ドルに対する公式換算レートがK890となった。3月1日のレートK865からドル高・チャット安の傾向が続いている。政府当局は輸出振興のために米貨1ドルをk1000に持っていきたいと漏らしていたが、その方向にマーケットは動き始めたようで、闇ドル市場でもドル買いが噂されている。そして一部輸入業者はドル購入に走っているとの報告もある。






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