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<ミャンマーで今、何が?> Vol.326
2019.9.18
http://www.fis-net.co.jp/Myanmar
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━━【主な目次】━━━━━━━━━━━
■ヤンゴンの若者には夢がある
・01: 最近のYouTube事情
・02: 当世ミャンマー学生気質
・03: IMPOSSIBLE DREAM
・公式ツイッター(@magmyanmar1)
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・01:最近のYouTube事情
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ヤンゴンの生活が長くなったが、典型的な日本人と自分を強く意識する。モノの考え方が平凡で悲観的なのである。
偶に日本に戻るとガッカリする。地方を訪ねても駅前・町並みがステレオタイプで地方色が薄れた。絵画クラブの事務局長を務める70歳後半の先輩が“若手が入らず、オレは今でも最年少だ”とうそぶく。
若者が安定した職業を選ぶ時代になってしまった。サッチャー元首相にインタビューした日本の元官僚は、役人より政治家を目指せと叱咤激励されたという。日本の若きエリート150人を集めた英語フォーラムで、司会のBBC放送ベテラン記者が質問した「将来政治家を目指す人は?」、大半は起業家を目指し、政治家志望はたったの一人だったという。
これらはYouTubeから学んだ日本事情である。
「末は博士か大臣か?」は今の日本では死語となっている。
もちろん大学院に残り、さらに博士号を目指す学生もいる。だが、それもステレオタイプで、ほとんどがアメリカのスーパー成金に刺激を受けIT関連に偏っている。
無限にあるYouTube講座をサーフィンして学んだ。
世界はGAFA=Google, Amazon, Facebook, Appleに支配され、その商売を海賊コピーしたBATH=バイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイの台頭にアメリカのトランプが激怒しているという。これが米中貿易戦争の主戦場であるという。
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・02:当世ミャンマー学生気質
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ひょんな切っ掛けで地方に住む男子学生に英語の学び方を教える機会があった。
私はパソコンとスマホを手ほどきしてもらい、バーター取引となった。
高校最終学年の大学選抜試験で優秀な学生は普通、医学部、情報工学などを目指す。この学生ははるかその上を行き、マンダレー地区メイティーラ市にある航空宇宙学エンジニアリングを教える特殊大学への入学が許可された。空軍訓練基地に隣接するこの大学は元首相キンニュンの肝いりで2002年に創立されたという。
暫くご無沙汰だったが、フェースブックを閲覧してビックリした。日本の国立大学に担任教授と共に招待され、日本国内の他国立大学との交歓会を大いに楽しんでいるようだ。
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英語を教えるのではない。独りで学ぶ英語の学び方を教えているだけだ。
募集するわけでも無し、授業料を徴収するわけでもない。どこで聞いてきたのか、時折母親たちから頼まれる。今二人の女子学生を教えている。今年のMatriculation exam(大学入試資格試験)で二人とも6科目Outstanding(全優)の17歳と18歳で、素直で頭が良い。ひとりはスーチーが卒業した名門高等学校の生徒である。
私の対処法は二人を相手にしても、マン・ツー・マン方式を採用している。ミャンマー人特有の二人が顔を見合わせて同じ返事をするのは許されない。私語を禁じている。これは5人のクラスでも同じだ。そのためにはトリックを用いて工夫をする。男子生徒は気まぐれだが、女子生徒は一般的に辛抱強く素直である。
英米語の発音で、日本人とミャンマー人はオモシロイほど欠点が似通っている。だが、一ヶ月基礎を叩き込めば完全に克服できる。教材も試行錯誤したが、使用単語が簡単な“Fairy Tale=おとぎ話”に落ち着いた。辞書を引かずともここの単語はほとんど理解できる。
この17歳と18歳も優秀で、しかも素直だ。
スマホの辞書アプリを利用し、解らない単語は辞書を自分で引くようになった。
優しい単語で書かれたおとぎ話を速読するレベルになると、スマホの時計機能を利用してストップウォッチで計測し、都度ノートに記録させている。それをアスリートのごとく何度も繰り返させる。脳で考える時間を与えない。ノン・ネイティブにとって英語はスポーツである。
LとRの教え方にはコツがある。一回の教え方で発音ががらりと変わる。
LとRをマスターしたら、今度は子音で終わる単語の特訓だ。
そこまで出来たら、英語の歌をカラオケさせてみる。もうミャンマー人の発音ではない。らしく聞こえてくるから不思議だ。
眠くなるような英文法は教えない。巧妙なトリックを使って、気がつかないうちに英語の規則を習得させてしまう。ここは生徒と先生の真剣勝負である。
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先日シャン州の金持ちグループのHouse Warming(新居お披露目)に招待された。
新築されたコンドミニアム最上階のペントハウスである。多分ヤンゴンでも一等地であろう。前々回歴史散歩で進入したネウィンやガロン・ウ・ソウの邸宅付近を眼下に見渡し、遮るものは何も無い。
大勢の老若男女が祝いに駆けつけ、いつも通りの食事が供され、中はごったがえしていた。友人はこのコンドミニアム全体のオーナーで、何室でも良いから日本人の買い手がいたら紹介して欲しいと頼まれた。
それが本題ではない。
奥さんの姪っ子を連れてきて相談に乗ってくれと紹介された。奥さんとは私と同年代で面倒見が良く、シャン州サオボア(*インドのマハラジャに相当)のお姫様である。
この姪っ子レベルの家庭環境だと、欧米人でも日本人でも物怖じしない。相手の目を見てキチンと質問に答えてくれた。あさって日本に行くという。「えっ!えっ?!」急な話だ。
北海道大学への入学が決まり4年間の留学にひとりで旅立つ。年齢は18歳、日本語は話せない。これから勉強するという。英語は普通の日本人より達者だ。
成田では知り合いもおらず、無事に札幌へ到着できるだろうかと相談される。
両親らしい中年の男女が心配そうに見つめている。そりゃー心配だろう。
先ずはヤンゴン空港でのシミュレーションから始めた。
ヤンゴン空港のANAチェックインでは、必ず日本人スタッフに声を掛けること。
行き先は成田空港で、国内線に乗り換え、最終目的地は札幌空港と告げること。
日本語はまったく分からないので、成田空港では、札幌行きの国内線に本人を誘導して欲しいと依頼すること。同時にチェックイン荷物も国内線へ積み替えて欲しいと、ヤンゴン空港の日本人スタッフに確認するよう指示した。この賢い姪っ子は、この手続きのすべてを理解できた。
どうして国立の北海道大学へ入学できたのか? 私の好奇心が頭をもたげた。
父親が説明してくれた。すべてインターネットで娘が独りで手配したという。
英国ケンブリッジ大学には海外の大学に入学できるレベルを検定する機関があり、英米日の大学を比較検討した結果、北海道大学への奨学金を獲得できたという。
父親の英語が達者なので、ひょっとして船乗りか?と質問すると船長だと返ってきた。潮っ気のある仕事に就いたことがあるので、この手の話は得意だ。彼が属するシッピング・エージェントの名前を聞くと日系の海運会社でPCC(*Pure Car Carrier=自動車専用船)に乗っていたと話してくれた。
現在勉強中のYouTubeで、横浜山下埠頭にカジノ誘致を図る陰謀に対して横浜のドンが体を張って阻止すると息巻いているのを見たばかりだった。そのドンが父親の海運会社のボスでもある。このような話題の切っ掛けはそこいら中に転がっている。しばし父親と船乗り談義が続き、両親も私の話を少しばかりは信じてくれたようだ。
ミャンマーでも船長・機関長クラスになると、一ヶ月の給料は100万円を越える。一年契約で10ヶ月乗船すれば、年間手取りは1000万円以上だ。乗船期間中の衣食住制服などのコストはゼロである。年季明けごとに、当時の貨幣価値で、ヤンゴン郊外に土地を、あるいは都心部にアパートを手当てして家賃貸しをすれば、結構な蓄財となる。あるいは日本の中古自動車が年季明けの船員だと無税で持ち込めた。こうやって優雅な生活を送る船乗りを何人か知っている。この父親もそのレベルの生活をしているはずだ。今年の冬には、両親で札幌の雪祭り見学がてら娘のキャンパスを訪ねるという。
セピア色のクラーク博士の話をこの娘さんにしたら、スマホをタップして“BOYS BE AMBICTIOUS”の石碑を見せてくれた。この娘さんなら、心配することは無いだろう。
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日本人の友人が私の町内に事務所を構えている。彼は英語を話さない。
20歳になったばかりの若い女性に日本語を仕込み、有能な秘書に仕立て上げるつもりだ。
先日、日本語のスピーチコンテストが開催された。
その女性が密かに挑戦し、ある部門で優勝してしまった。他部門の優勝者たちと一緒に10日ほどの日本旅行がご褒美だそうだ。
何を言いたいかというと、ミャンマーの若者たちには若者らしさがあり、したたかで楽観的ですらある。老婆心や老爺心は不要だということである。帰国後の彼らとの再会が楽しみだ。
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・03:IMPOSSIBLE DREAM
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今回ご紹介した例は皆、優秀な賢い若者たちばかりである。
じつは今、私が興味を抱くのは、彼らと対極に属するデキの悪い若者たちである。
今の教育システムはテストで優秀な学生を選別し、彼らに高等教育を施す。
これは誰にでも出来る。
だが、デキの悪い生徒に人生の醍醐味を語る。これが教師の本分ではなかろうか?
これに挑戦したくなった。
ミャンマーのMatriculation Examは国語、英語、算数、物理、生物学、化学の6科目である。
この主要6科目以外の能力は、ミャンマーでは計測も評価もされない。
主要6科目から落ちこぼれた若者に、未来は無いのだろうか?
それで教育と言えるのだろうか?
先ずは親を口説いて、それから本人をヤル気にさせる。
そのためには一捻りが必要だ。
YouTubeにはいろんな可能性が潜んでいる。
ヒントが転がっている。
今年一杯掛かるかもしれない。妙案は出ないかもしれない。
だが、挑戦してみたい。
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