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<ミャンマーで今、何が?> Vol.320
2019.8.8
http://www.fis-net.co.jp/Myanmar

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━━【主な目次】━━━━━━━━━━━

■ビデオのリンクに挑戦

 ・01:群れたがる日本人

 ・02:明石元二郎と鈴木敬司

 ・03:ビルマ戦補充兵

 ・04:YouTubeに中毒

 ・05:ビデオの参考記事
 ・公式ツイッター(@magmyanmar1)

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・01:群れたがる日本人

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ある日本人との急接近には理由がある。
話しているうちに、同じ大学の同窓生と知った。
だが、急接近の理由はそれではない。

日本の大学はすでにマスプロ化し、同窓生には海外でも何度も出会った。
嫌なヤツもいれば、ナイスガイもいた。
当然の話で、それはどこの世界でも同じだ。
コンビニ的にひと括りにすべきでないということだ。

当地では日本人というだけで、同胞に紹介されたこともある。
困ったもので、ヤンゴンに来てまで、日本人に会いたいとは思わない。
愛国心が薄いわけではない。
安逸なナショナリズムで団結するのを避けたいだけだ。

ヤンゴンのとある日本語版タウン誌を見て驚いた。
北海道から沖縄まで、県人会、同窓会の呼びかけが盛んである。
今の時代、まるで地の果てに済んでいるような呼びかけだ。

「天の原ふりさけみれば春日なる三笠の山に出でし月かも」と阿倍ちゃんの時代を連想させる。アベちゃんと言っても仲麻呂さんで、シンゾーさんではない。
玄宗皇帝に寵遇され在唐五十余年、海難のため帰国叶わず、長安にて72歳で客死した。
遣唐使の時代なら、心境は理解できる。

和風居酒屋はモドキの味とサービスで、値段が高い、だが日本人客でいっぱいだ。
このミャンマーは最後の経済フロンティアと言われている。ビジネスの主戦場である。
現地情報を日本人から入手する? 英国仕立ての老獪術では、同胞すら出し抜くとある。
何でもかんでも同胞に頼る心境が、どうしても理解できない。

国際通によれば、群れたがるのが日本人の性格という。欧米でも、中東でも、世界中、同じ現象が起こっているという。世界を股にかける商社マンも、大使館詰めの外交官もそうだと聞かされた。信じられない。



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・02:明石元二郎と鈴木敬司

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明石元二郎大佐は、福岡藩士の子弟である。
日露戦争当時、レーニンらロシア革命派に資金、武器を与えて謀略工作を行った。そして帝政ロシアを瓦解させた。その実践と行動力は陸軍中野学校のテキストとなった。
オーバーな言い方をすると、ソビエト社会主義共和国連邦は日本人がつくったと豪語したい。だから歴史はオモシロイ。

「北方領土は日本固有の領土」などという、無能なセリフは国際的には通用しない。
本気で北方四島を奪還するなら、林子平、伊能忠敬、間宮林蔵という偉大な先人に学ぶべきだ。おっと忘れていた。大黒屋光太夫も抜かしてはいけない。当時の国際的雲行きを知ることができる。それでも不十分だ。

己だけでなく、敵を知るのは鉄則だ。
クラウゼウィッツの「戦争論」を読み、ルーデンドルフの「国家総力戦」から戦略と戦術も学ぶ必要がある。本気で北方四島を奪還する気があればの話である。

鈴木敬司大佐は、日本のヘソ、静岡県浜松の出身である。
陸軍中野学校の卒業生を中心に南機関のネットワークを組み立てていった。

憂国の詩人タキン・コウドウマインや、後に初代駐日大使となったテインマウン博士と密かに面談し信頼関係を築いた。アウンサンやネウィンなど、三十人の志士たちに海外で軍事訓練を施し、武器を与え、打倒大英帝国に燃える彼らを祖国に送り込んだ。

鈴木敬司の老獪学はアラビアのロレンスに通じる。ビルマと日本の濃密な歴史はそこからはじまる。その経緯はさいとうサンペイ著「アウンサン物語2015」(上下二巻)に詳しい。

明石元二郎も、鈴木敬司も、和風居酒屋で情報を仕入れたのではない。現地の生情報を自分の足で、そして嗅覚で選別したのである。
明治のみならず、大正も昭和も遠い過去になってしまった。



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・03:ビルマ戦補充兵

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例の日本人とは、父君がインパール作戦に従軍した下士官であることから、交流が始まった。
私が興味を抱いたのは、失礼ながら父君が高級将校ではなく、使い捨ての末端兵士であったことが私の好奇心に火を点けた。

中東やインドそしてビルマを植民地化した大英帝国も、大日本帝国も現地事情を把握していなかった。そして両帝国ともに致命的な失敗を犯していた。そこで父君の足跡を独自に調べてみましょうと安請け合いした。その調査は今も続けている。

福岡県博多出身の父君は1944年(昭和19年)5月20日に博多港を出航した。日本最強の菊兵団に組み込まれ、高雄港・マニラ港を経由してシンガポール(日本占領後は昭南島)に上陸し、あとは陸路でビルマ戦線に送り込まれた。父君に関する記録は、虫食い情報で読み解くのが難しい。

だが犬も歩けば棒に当たるで、長崎県大村出身の吉田悟が2007年7月に(株)光人社から出版した『ビルマ戦補充兵』に出くわした。この著者も赤紙一枚で招集された一兵士である。
ただし急接近した友人のヤンゴン滞在中には、この本は手渡せなかった。

その著書で次の記述に目を見張った。
「4000トン級の数隻の船団は腹いっぱいに兵隊と物資を呑み込み、門司港の岸壁に別れを告げた。昭和19年5月25日午前2時過ぎであった」

同じ菊兵団に組み込まれ、わずか5日違いで北九州の門司港を出港してほぼ同じルートでビルマ戦線に送り込まれている。驚いた。父君の虫食い情報をこの著書でかなりの部分補えることになる。

幸運なことに、この二人とも敗戦後ビルマの捕虜収容所に入れられ、日本へ帰還できた。
父君は1946年(昭和21年)7月21日ラングーン出発、8月10日浦賀港上陸。
著者の吉田悟は7月11日午前11時30分ラングーン出航、7月26日午後6時広島県宇品港沖に入港。二人の命運は完全に重複している。戦死者の所属確認となる認識票の番号も、それぞれ菊の8000番台で数字はわずかに3番違いである。

ただし敗戦後の捕虜収容所は父君がヤンゴンであったと聞かされているのに対し、この本の著者は大河シッタン東岸のモパリンに収容されたと記述している。これはモン州のMoatpalinと推定される。ここからはシッタン川を渡河すればバゴーを経由してヤンゴンは目と鼻の先である。

だからこの著書をこの友人と私の二人で読み合わせすれば、父君の足跡にかなり近づけるものと確信する。この本の発見が遅れ、手渡すことは叶わなかったが、この友人の話題は豊富であっという間に、一週間は過ぎてしまった。

驟雨が駆け抜ける黄土色のヤンゴン川を眺め、ヤンゴン川向こう岸のビアステーションでも、こちら側のレストランでもビールを楽しんだ。ヤンゴン川を挟んで景色はまったく異なる。

ライトアップされた夜のシュエダゴンを東門近くのペントハウスから真近に仰ぎ見る機会もあった。雨季の、しかも夜のシュエダゴンは妖しく黄金色に輝き、時折黒雲に覆われ、シュエダゴンが雨に煙っていく。

システィナの天井には旧約聖書の天地創造から人間の堕落までが描かれている。それは西洋人の思想である。このペントハウスからは東洋人の宇宙観を仰ぎ見ることが出来る。それには、このモンスーンの雨季に限る。しかも日が落ち、夜間照明にシュエダゴンが妖しく浮かび上がる、この時間帯に限ると思った。

この日は、インパール作戦に従軍した菊軍団の日本人捕虜収容所跡地を訪ねたので、各種チーズを肴にワインで献酒の真似事もしてみた。

今回は友人と酒に恵まれ、名残惜しむように一期一会の会話を楽しんだ。心臓に爆弾を発見してから身につけた習慣だ。思い返すと、毎日が新鮮な一期一会だった。
食事と酒の味は相方次第で大いに異なる。健康に悪い相席は断るべきだ。その大事さを今回再確認した。



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・04:YouTubeに中毒

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この機会を幸いにと、この友人にYouTubeの手ほどきを所望した。

相手はGlobetrotterのプロであった。

ヤンゴンでは中国製海賊版DVDが手に入ると豪語してきた。だが、その考え方自身がアナログで、旧石器時代だったと、衝撃的なカルチャーショックを受けた。それは今も続いている。

参院議員選挙の時期だったので、“れいわ新撰組”および“NHKから国民を守る会”の手法は夜を撤して見続けた。党首の見解は対極にある。だが、その手法は目から鱗だった。
このメルマガは完全なノンポリで、政治的な主義主張にはまったく関心を持たない。
だがYouTubeを駆使する山本太郎の戦略と戦術は、ここヤンゴンで若者の教育に使える、その手法を盗みたいと思った。

この友人からは、スマホやWiFi、容量が大きなビデオの添付方法なども教わった。
遅まきながら、ガラパゴスに閉じ籠っている場合ではないと痛感した。



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・05:ビデオの参考記事

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試行錯誤しながら、それに挑戦してみたい。

今回この友人がヤンゴンを訪問するスケジュールを組んだのは、父君の足跡を訪ねるのと同時に、さいとうナンペイ著「アウンサン物語2015年」に記載された7月19日午前10時37分を目撃したいからである。その瞬間のビデオをこのメルマガにリンク貼り付けてもらったので、ご紹介したい。

https://youtu.be/Ajcd7EencRU

「同日朝、旧総督府のビル西側二階にあるアウンサンの執務室で閣議がまさに開かれようとしていた。

突然、階段を駆け上がる激しい足音とともに、守衛の少年の大声が響いた。いくつかあるドアのうち鍵がかけられていない扉が蹴り開けられ、4人の男が乱入してきた。

「逃げるな!」「立ち上がるな!」と叫んで闖入者たちは閣僚たちに銃を向けた。咄嗟に立ち上がろうとしたアウンサンは、「撃て!」の声とともにたちまち銃撃され、その場で即死した。

検死結果では、アウンサンは13発撃ち込まれたという。僅か30秒のできごとであった。男たちは直ぐに現場を去って姿を消したと根元敬はその著『抵抗と協力のはざま』で描写している。

ビルマ史を血で汚したアウンサン暗殺である。67年前の7月19日午前10時37分のできごとであった」

<3分9秒のビデオ説明>

旧総督府(またはセクレタリアート・ビルディング)を真正面に対面するバルコニーを特別の計らいで手配してもらった。石器人間がここからビデオを撮影した。

下に見下ろすのはマハバンドゥーラ大通りである。向かって左が西方向、反対の東方向にはUFJ銀行、CB銀行などが事務所を構えるガラス張りのUFCのビルが高くそびえている。
アウンサンの執務室を見上げるマハバンドゥーラ大通りには、毎年この日この時間、大勢のレポーター、TVクルー、そして殉難者9人の弔問に訪れる一般民衆がここに集まる。

この大通りを通過するYBSバス、タクシー、乗用車、サイカー、などもこのタイミングでこの現場に停車できるようのろのろ運転に神経を擦り減らす。

音量を上げれば、NLDを中心とした主催者がマイクで呼びかけているのが聞こえる。同時刻になったら全車輌その場に停止して、ミャンマー独立の犠牲となった殉難者に哀悼の警笛を一分間鳴らすようにと呼びかけている。歩行者というか詰め掛けた見物人はその場で頭を垂れて黙祷する。なお当時は町内会、ボランティアなどから、軽食・冷えたオレンジやパイナップルのジュースなどが無料で配られる。

赤いパラソルが見えるが、そこにはアウンサン暫定首相をはじめ合計9名の殉難者の名前と写真が張り出されている。そして主催者が用意したバラの花が配られ、弔問者は毛氈の上に額ずき哀悼の意を表明する。ズームインしたつもりだが、素人撮影で細かいところまでは捉えていない。雰囲気だけ味わって欲しい。

毎年毎年、国軍が指名したミエンスエ副大統領が総指揮を執り一般開放に向けた準備を施し、この殉難者の日の三大聖地、シュエダゴンパゴダ北門近くの“殉難者廟”、日本大使公邸裏にある“アウンサン将軍博物館”、ここ“セクレタリアート・ビルディング”の三ヶ所は厳重なセキュリティ体制が敷かれ、一般の大衆に無料で特別に開放される。

バルコニーの真正面に堂々と見える赤レンガの建物が、本日の主役“セクレタリアート・ビルディング”(旧総督府)である。

リンクの貼り付けにはメルマガのプロバイダー殿にご協力をお願いした。



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