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 <ミャンマーで今、何が?> Vol.297
 2019.1.24
 
 http://www.fis-net.co.jp/Myanmar
 
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 ━━【主な目次】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
 ■海賊版DVD“AMAZING GRACE”の秘密−その6
 
 ・23:教会での結婚式
 
 ・24:この世に神は存在するか?
 
 ・25:ピット首相との仲が戻る
 
 ・公式ツイッター(@magmyanmar1)
 
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 ・23:教会での結婚式
 
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 ウィルビーにはバーバラという、頭が良くて、奴隷解放問題に強い関心を持ち、政治問題にも口出す、だが決して出しゃ張りではない、魅力的な女性が常に傍にいた。
 
 イギリスを攻撃するというナポレオン計画で、奴隷制度廃止問題は英国民の間から吹き飛んでしまった。この国難の時期に、奴隷など構っていられるかという国内世論が出来上がったのである。
 
 一途なウィルビーは、そのことに神経をすり減らし、持病の大腸炎はさらに悪化した。この病気の特徴は突然の激痛に倒れ、“く”の字に身を捩って痛みに耐えねばならない。
 最初は医者の用意した“アヘン剤”を拒否したが、いまはそれに頼り切る毎日だ。
 
 そのような時、ウィルビーとバーバラは一晩中、そして朝方まで話し込んだ。
 「貴方の法案が完敗したのは、すでに知っててヨ!自由黒人のエクイアーノはベッドの上で死んでしまったワ!鉄金具のトーマス・クラークソンはどこか山小屋を見つけて、身を隠しているようヨ!チャールズ・フォックスは老獪な政治家らしく、風見鶏というところネ!クエーカー教徒たちは嘆願書を送りつけるが、誰も相手にしていないワ!・・これが貴方が考えていた物語の結末なの?」
 
 イギリス人、および旧きよき時代のアメリカ人にとっては、クエーカー教徒は別名フレンド派として、歴史的にも非常に意義深いものがある。イギリスの急進的ピューリタンの神秘主義に端を発する。神の言葉に震えるとウワサされたため、Quakersの名前がついている。
 
 バーバラは焚きつけるような言葉をウィルビーに投げかける。
 「そうじゃないかい?」ウィルビーがあきらめ顔で、力なく答える。
 「否、そうじゃないワ!」バーバラは断固として言い切る。そして続ける「暗い夜の次には明るい朝がやってくるワ!」
 
 この場面は“風と共に去りぬ”のスカーレット・オハラの最後のセリフを想い出す。余談だが、スカーレットを演じたビビアン・リーはインドのダージリン生まれだ。という意味は、多くのイギリス人にとって、植民地のインドはかなり身近な存在だったということである。
 
 バーバラは続ける。
 「対フランス戦争が勝利をあげつつある現在、人々はそれほど恐怖を抱かなくなったワ。恐怖が無くなれば、思いやりの心を取り戻すはずヨ!」
 「人々の同情心が戻ってくるというつもりかい?」
 
 そこでバーバラがウィルビーを力づける。
 「貴方にはその情熱が残っている!それが、もっとも大事なことだワ!ウィルビー!」
 男は単純なものである。こういう聡明な女性の言葉にはコロリとやられてしまう。そしてウィルビーはその気になってしまった。
 
 今この場面はウィルビーのいとこであるソーントン議員の屋敷内の話である。そこにウィルビーもバーバラも長逗留していた。バーバラはソーントン夫人の親友である。
 
 ウィルビーは「至急ロンドンへ旅立つことにした」と、いとこのソーントン議員に告げる。
 「そんなに急に?」
 「グラスの水が僕に奇跡を起こしたようだ!」バーバラの言葉を照れ隠しでWatersに置き換えたようだ。
 その前に、ウィルビーとバーバラは地元の教会で結婚式を挙げた。
 
 この場面も感動的だが、式開始の前に牧師が参列者に告げる。「花嫁の特別の依頼で、賛美歌アメージング・グレースを皆で歌いましょう!」
 ウィルビーは学生時代、聖歌隊のメンバーで歌は得意だ。そして、精神的な師であるジョン・ニュートンのこの歌は彼の人生を変えた。
 
 オルガンの響きが木霊する。♪神の恩寵に感謝したい!なんと甘美なメロディーなのだろう♪こんな罪深い自分すら救ってくれた♪道を見失っていたが、いま見出すことができた♪かっては盲だったが、いまハッキリと見ることができる♪
 
 
 
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 ・24:この世に神は存在するか?
 
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 この映画の主題そのものが賛美歌の『アメージング・グレース』であるが、イギリス人の頭の中は“神様”で一杯だ。
 
 生まれたとき、そして七五三は神道、結婚式は丘のチャペルで、あの世への旅立ちは仏教で、それから山川海、鎮守の森、木の祠にも八百万の神が一杯、無節操なほどバラエティに富んだ宗教観を楽しむ日本人からすると、欧米人の“ゴッド”意識は異常と思えるほど、神がかり的である。
 
 そこのところを踏まえて欧米人と会話しないと、大きな行き違いが生じてしまう。
 しかも困ったことに、宗教問題に無神経な日本人が非常に多い。
 という意味は、子供のときから植え付けられた欧米人の宗教感覚を逆撫でするような発言を平気でやらかしてしまうことだ。
 
 ビルマ人もそれに似たところがあるが、日本人とは大きく違う。
 カレン族を初めとして、辺境の少数民族には欧米人のもたらしたキリスト教を後生大事にする人たちも大勢いる。それをクソミソにしてミャンマー人の大半は仏教徒ですと説明する安易な観光案内は多数見かける。
 
 話はまったく別の方向へ飛び火するが、昨日ジョン・レノンの“イマジン”をギターで弾き語りするMP3(多分?)をメールに添付してもらった。
 ギターもボーカルもプロ級の腕前で、外が暗くなた頃、この屋根裏部屋で聞くには最高のバックグラウンドだ。昨夜はウィスキーが切れたので、ワインでしっとりと楽しませてもらった。
 
 そう言えばと、確かにあるはずと、自慢のコレクションを漁ってみた。
 『ジョン・レノンのイマジン』そのものの題名の海賊版DVDが出てきた。
 出だしからジョン・レノンとオノ・ヨーコのベッド・アウトからはじまる。だが、そこは安っぽい連れ込み宿ではない。
 
 ここは、由緒ある英国連邦を構成するイングランド南部にあるアスコット地域にあるManorの館。競馬好きのオジサンはアスコット競馬でご存知のはずだ。実際は、赤鉛筆を耳に挟んだオジサンは入れないような、ハイソの社交場である。
 
 洒落た男性のスカーフ、アスコット・タイはここが発祥の地である。
 息子ショーン・レノンの証言だと、ここにジョン・レノンは1971年に99エーカーの広大な土地を所有し、豪壮なお屋敷にオノ・ヨーコと住んでいた。
 
 そのお屋敷に隣接して録音スタジオを建て、ここで名曲の“イマジン”がオノ・ヨーコと共同のプロデュースで産み出される。
 
 白いグランド・ピアノでジョンがこの名曲を弾き語り、何かが乗り移ったように名曲は出来上がっていく。
 
 ほとんどがジョン・レノンその人の語りで、子供時代からニューヨークのセントラル・パークに面するダコタ・ハウスの前で銃殺される直前までの一生を、数多くの親戚・友人・ビートルズの仲間・音楽友達・ファンなどが語るのを編集したものだ。
 
 神の怖れを知らぬ言い方をすると、私は“暗殺”大好き人間なので、この手の話はポケットに一杯詰まっている。このDVDでは明かしていないが、ジョン・レノンを殺したチャップマンのポケットにはJD・サリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」が突っ込まれていたとか、ダコタ・ハウスのことなど、かなりのエピソードを収集した。
 
 話をもどすと、その時代のジョン・レノンはピアノを弾いても、ギターを持たせても、やはり天才である。口ずさむと心地よい音楽になっている。それがほとばしるように沸いてくるのだ。その一方で、ベトナム戦争の反戦デモに参加したり、マリファナに手を出し、ベッド・インでわいせつ罪に問われ、実際にFBIに逮捕されている。
 
 その“イマジン”の歌詞は、天国など無いんだヨ、足元には地獄も無く、いくつにも分裂した国などなく、宗教なんて無いんだヨ、あるのは真っ青な突き抜けるような空しかないんだ。こんなことを言うのは夢見るドリーマーと言われるかもしれない。
 
 そのほとばしるようなメッセージは、その当時のジイサン、バーサンには受け入れられず、若者だけが理解していた。そのジイサン、バーサンの心情は、子供のときから躾けられてきた“神縛りの術”という深刻な信仰である。英語の端々に、その痕跡が残されている。
 
 ジョンの“イマジン”も神を冒涜するものとして、放送禁止になったり、大衆の前での演奏を禁じられた。ジョンは逆に、それらの反抗して、神の変わりに天国や地獄など無いんだヨ。そういう世界があるということを、想像してみれば、もっと気が楽になるかもしれない。そうすれば、人種・国境を越えた世界が見えてくるかもしれない。この程度のハイレベルに達すると、偶然だが同じ名前のジョン・ニュートンの境地に至るのかもしれない。
 
 ジョンも4歳で両親の離婚に遭遇する。そのトラウマは一生ついて廻ったようだ。
 欧米人は教会で平気でウソをつく。
 
 “死が二人を分かつまで・・”と神に誓いながら、欧米は離婚天国である。日本も偉そうなことは言えないかもしれない。
 
 離婚する手前勝手な両親など、どうなっても構わない。
 ジョンと同じように、両親の離婚で精神的に傷ついた子供が問題なのだ。欧米には成長した大人で精神的な問題児は多数いる。
 
 私のコミュニケーション能力も問題である。読者にお伝えしたかったことは、欧米人の“神”あるいはキリスト信仰はかなり深刻だということである。
 
 “イマジン”弾き語りの友人と次回お会いするときには、この海賊版DVDを寄贈して、続きをお話したいと考えている。
 
 
 
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 ・25:ピット首相との仲が戻る
 
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 場面はソーントンの屋敷に変り、多くの友人が集まりカクテル・パーティだ。
 何LDKというチャチな規模とは世界が違う。イギリス名物Manorと呼ばれる田園の中にある館だ。ジョン・レノンのお屋敷を思い出して欲しい。
 
 多くの客の雑踏を避け、ピット首相が控え室で一人静かに応接椅子に座り、ワインを飲んでいる。
 仲違いしたまま、疎遠となり、ピットとウィルビーは長いこと会っていない。
 
 客の間に愛想を振りまいていた新婚夫婦がピットを見つける。
 挨拶の後、積もる政治話が二人にはあると、夫人は気を利かして席を外す。
 
 気まずい再会だが、夫人を含めた三人の会話にはウィットに富んだヤリトリが憎たらしいほど随所に演出されている。これは日本語字幕がついたとしても、完璧な訳出はムツカシイだろう。
 
 「まさか、招待してもらえるとは思わなかったヨ!」
 「まさか、来てくれるとは思わなかったヨ!」
 「元気だったかい?」
 「気力は元気だが、与党としては瀬戸際に立たされている!」
 
 庭園を散歩しながら、昔の友情が二人に戻ってくる。
 この散歩ひとつでも、豪華臆ションの何LDKレベルでは、この雰囲気は出せないだろう。庭園内でボート遊びできる池もあり、時には小動物狩りのハンティングも、乗馬遊びもできる。
 
 「ウィリアム、僕はもう一度法案を提出するつもりだ!」とピット首相にウィルビーが語る。
 「今日は君の結婚式だ。君の言うことは何でも、すべて賛成するヨ!」
 「僕は何も変っていない!これまでも、そして今も、何一つ変っていない!」
 「その意気込みだ!頑張れウィルビー!今の雰囲気だと、君の提案に好意的に流れは変るかもしれない!」
 
 
 
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