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<ミャンマーで今、何が?> Vol.269
2018.10.2

http://www.fis-net.co.jp/Myanmar

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■支離滅裂な言い訳の羅列です

 ・01: 少年老い易く学成り難し

 ・02: 大型台風JEBIの日本上陸

 ・03: 昔懐かしい耳洗浄

 ・04: 単に経済発展だけでは解決できない問題

 ・05: 若者を対象とした教育の原点とは?

 ・公式ツイッター(@magmyanmar1)


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01: 少年老い易く学成り難し

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この後に「一寸の光陰 軽んずべからず・・」と続くのだが、棺おけに片足を突っ込んでから、この言葉の深遠さを噛み締めている。手遅れだが、一寸の光陰が残されているのなら、その一寸に賭けてみたい。それが今の心境である。「明日出来ることは、今日ヤルな!」の言い訳け人生、肝心なことは延ばし延ばしだった。一夜漬けの人生に、自慢できることは、何一つ無い。

昨年4月28日銀座で気を失った。20分間の心臓停止が永遠に続いてもオカシクなかった。それから一年半、ペースメーカー無しで、今も心臓が動いている。不甲斐ない身ながら、またしても助けられた。

週間英字紙ミャンマータイムズ2007年5月14-20日号の記事を要約する。

「ヤンゴンのXX町区YY番街ZZブロックで先週火災発生。14台の消防自動車が出動し、火災は午後7時58分に鎮火した」 

軍事政権時代のルールは厳しかった。出火元の外国人はパスポートは取り上げられ、即座に収監、裁判が終了するまで半年〜一年間は拘束される。保釈の認可は裏金次第。それが当時の掟だった。友人たちがあらゆる手を尽くしてくれた。深夜の翌朝まで聴取は続いた。友人は着替えを用意し、それにも付き合ってくれた。調べが一段落すると、お縄は頂戴せず、ホテルへの帰還を許された。

続いていつ終わるとも知れぬ長い裁判所通いが始まる。毎回、毎回の裁判所聴取に6人の証人が一回も、一人も欠席せず、好意的な発言をしてくれたのだろう。それが裁判官の心証を大きく動かし、最短スピードで裁判は完結した。

火災で迷惑を掛けたにもかかわらず、すべては隣人・友人たちの善意であった。その時代に知り合ったパソコン会社の社長がいる。朝から晩まで商売は繁盛していた。裁判所の尋問はすべてビルマ語である。その社長が達者な英語で通訳を買って出てくれた。そのとき英語は、私の命綱となった。

長い月日がやっと終わった。裁判期間中もオーバーステイの罰金は加算されていた。裁判から解放されると、残り人生は地元へのお返しをと誓った。形ばかりのお礼参りは済ませたが、満足できない。もう少し別の形でと、悶々と今日まで来てしまった。だが、どうすればよいのか見えなかった。11年前の話である。

昨年、銀座の失神事件を契機に、“待った無し”の自分に遅まきながら気付いた。同世代の訃報もぼちぼち入ってくる齢周りだ。次は自分の番だ。それまでに何が出来る?

スーチーが国家の指導者として大臣・役人に、そして若者・学生に、それから軍人に対しても、頻繁に口にする言葉がある。“Capacity Building”だ。一人の人間の持てる力を最大限に活用するため、その基礎になる能力・可能性を作り上げるということらしい。それを国家造りの礎としている。軍事政権時代は、尊皇攘夷に似た、独り善がりのポリシーだった。

サドンデスの人生にロスタイムは残されているのか。手持ちのキャパシティで対応するしかない。ヤンゴンの停電を幸いに、暗闇の中で懊悩が始まる。自分に刃を突きつけ、思案し、反問し、煩悶する。ジョセフ・コンラッドの“闇の奥”に落とされた感覚である。
彼は無からスタートした英語の達人だ。ポーランド生まれで海に憧れ船員になった。英語もその時代に勉強した。船長資格を取り英国に帰化し、英国人として多くの海洋小説を書いた。だが、人間の奥底を描く傑作は何と言っても「暗闇の中」である。ハリウッド映画「地獄の黙示録」の下敷きである。

フランシス・フォード・コッポラ監督のこの映画は問題作となった。ジャングル内に異様な王国を築いたカーツ大佐をマーロン・ブランドが演じた。そのモデルと噂されたのがトニー・ポーである。硫黄島で負傷し敗戦直後の日本に転送された経験がある。その後バージニア州にあるCIAの特訓施設をトップクラスで卒業した。若きダライラマのチベット脱出にも参与し、ベトナム戦争以降はバンコクの紅灯街に出没した。タイに移住したジェリー・ホプキンズがその著「バンコク・バビロン」で詳細に明かしてくれる。

この本には25人の欧米人が登場する。それぞれが非凡な人生を送った、その道のプロである。farangs(ファーラン)と呼ばれる西洋人はたびたびバンコクの紅灯街に出没する。

そのバーのスツールでは、桁外れの人物と隣り合わせになる偶然がある、とホプキンズは語る。DHLの創立者で自家用機で南海の藻屑となったラリー・ヒルブロム、ロンリー・プラネットのタイ案内を書いたジョー・カミングスも出てくる。一人ひとりの人間に型破りのドラマがある。作者のJ・ホプキンズ自身、タイに移り住む前、華々しいハリウッドの脚本家であった。エルビス・プレスリーやジミー・ヘンドリックスの伝記も出版している。

ヤンゴンに居候した頃、もう一冊興味を引いた本がある。ストランドホテルの売店で購入した同ホテルの歴史物語を書いた本だ。オーストリア人の著述だが、植民地時代の東南アジアに伝説のホテルを築いたサーキーズ兄弟が主役となっている。

この二冊の本から西洋人と東洋人のモノの見方、冒険心、行動力が、決定的に違うことを教わった。そこからラドゥヤード・キップリングの「東は東、西は西・・」と言う言葉が頭から離れない。そして今日まで、それにこだわり続けてきた。

9月17日(月)のGNLM紙にも、大きな見出しで「どうして英語がそれほど大切か?」と英語を俎上に上げている。ミャンマーでは英語が真剣に論じられている。その証拠に、このような単発記事や読者からの意見がたびたび掲載される。

“英語学”を若者たちに教える!というのはおこがましい。傲慢でもある。反面教師としてなら役に立つだろう。“DREAM COME TRUE ENGLISH CLUB”を立ち上げ、若者と一緒に英語を学ぶことにした。教えるどころか、逆に多くを学んだ。ミャンマー教育の実情と、ミャンマーで一般化している個人授業の内情も教えてもらった。ミャンマーでは、英語どころか、子供の躾、読み書きソロバンまでも、それら教育施設に丸投げしている。家庭での教育がなされていないところは日本にそっくりである。

ミャンマーの若者は人前では自分の意見を言わず、言えない。特に年長者がいるとダメだ。隣の生徒と目配せして他人と同調した意見を述べる。自信がなく、突出した意見は仲間外れを誘う。軍事政権時代、そのように育てられた大人たちも、同様に他人の顔色を窺う。

そこで英語の授業を工夫してみた。頭で考えるスキを与えず、発声練習のみに集中した。意味も文法も考えるなと宣言した。そこから突破口が見えないか。

これまでに幼児教育、それから僧院授業、日本人と欧米人の経営する授業も覗かせてもらった。これは反面教師として、大いに役立った。教師は生徒の個性などお構いなしに、マニュアル教程を押し付ける。生徒が発言する機会は少ない。先生が持ち時間の大半をしゃべりまくる。生徒の個性がもぎ取られる。マスプロ学級の弊害である。教育をビジネスとして経営すると、マスプロ意外に勝ち目はない。その挙句が人材派遣の下請けとなる。

経営を無視して考えた。

教育の原点は一対一にありそうだ。長男と次男の異なる性格を見分けて育てる。それが母親だった。家庭内での躾が存在した時代の話である。今では施設に丸投げされている。

21世紀の今、教育はビジネスに成り下がった。ミャンマーにも外国産の教育システムが黒船のごとく押し寄せている。メイド・イン海外の教材、パソコンを利用した教室、一見見栄えの良い制服、充実したスクールバス、授業料が高くなるのは当前だ。結果としてバカ息子とバカ娘が増産される。ミャンマーの歴史・文化・実態を無視した授業でもある。入学できるのはリッチな家族で、無知で貧乏な家庭がそのマネを始める。同じような教育システムが日本にも押し寄せた。第二次大戦敗戦後早々だった。

日本の理想的な教育を探ると、貧富の差がなかった寺子屋時代かもしれない。読み書きソロバンを学んだが、それ以上に大事なことは自分のことは自分で片付け、礼儀作法を身につけた。それが大人の日本人を形成していった。西洋式とはまったく異なる。その原型はミャンマーの僧院教育にもある。さらに遡ればインドの祇園精舎かもしれない。だが、精神の在り所はまったく異なる。だから鮮やかな黄金色、白、黒、赤のペンキを即席のコンクリに塗りつけた仏像に、日本人は違和感を感じる。有り難味がないということである。

東洋の教育システムに対して、西洋の教育原型はどうやら古代ギリシャにありそうだ。そのプロトタイプはソクラテスだろう。生徒に内在するキャパシティを対話で引き出す。ソクラテスは母親の職業にあやかり、それを産婆術と名付けた。

“DREAM COME TRUE ENGLISH CLUB”は「寺子屋」と「産婆術」を手本に、その真似事から開始した。東洋だけに囚われない、東洋と西洋のフュージョンである。

スーチーの説く、一方に偏るのではなく、対極も視野に入れる。自ずからバランスが生まれる。仏教の説く中道の精神に似ている。

英語の話に戻ろう。

日本でもミャンマーでも、ネイティブの発音とは似ても似つかぬ英語を教える。大学生になっても同じた。先生ができないから、それは当然の話だ。英米人のジョークの種でもある。ジョークなら構わない。成人して、海外に飛び出して、困ることがある。

例えば古代ギリシャ人の名前では、ソクラテスは英語では“サクラティーズ”、プラトンは“プレイトー”、ピタゴラスは“パイタガラス”、ゼウス神は“ズース”;西洋の画家では、ミケランジェロが“マイカランジャロウ”、ヴァン・ゴッホが“ヴァンゴウ”;美術館などでは、システィナ礼拝堂は“システィーン”、エルミタージュ宮は“エアミタージュ”などなど。日本で常識の地名、現代のパソコン関連でも、日本式発音は通用しない。英語教育だけに責任があるとは言わないが、日本で習得した知識で海外に留学しても、まったく歯が立たないのは事実である。例えば、ゲーテは当然、“コーパーニカス”と言わねばコペルニクスに話を展開できないのである。

英米の一流大学で、西洋史、先端医学、物理学、宇宙理論学、建築学、数学、などなどを学ぼうとしても、日本の若者は英語の基礎発音から学びなおさないと、落ちこぼれとなる。ノーベル賞獲得競争でも、日本の若者は、欧米人はおろか、中国人・シンガポール人の後塵を拝することになりそうだ。逆に言うと、日本の英語教育は若者に対して、それほどまでに不親切ということになる。そうであるなら、日本は美しき日本を護るためにTPPよりも鎖国を検討すべきではなかろうか?

余計なことを口出しした。

話を唐突に転換しよう。日本が舞台となった007シリーズ映画“You only live twice”には若き日の丹波哲郎、若林映子、浜美枝が出てくる。この三人は英語特訓のため数週間ロンドンに留学した。丹波は早口の英語もこなしたが発音が悪かったそうだ。浜の英語ではとてもとてもとのこと。結局は丹波と浜のセリフは吹き替えと決まった。

この主役ジェームズ・ボンド役は、元祖ショーン・コネリー以降、オーディションで決定される。そのオーディションはセックス・アピール、身体能力、演技力など厳しいが、特に重視されるのが、オックスフォード大学訛りの英語である。その難関で振るい落とされた候補俳優はスターの数だけいるという。それほど英語の発音はムツカシイということになる。

ジョージ・レイゼンビー、ロジャー・ムア、ピアズ・ブロズナン、ダニエル・クレイグと続く歴代選りすぐりの合格者はその難関を突破した貴重な勝者である。ボスのMに対する“イエス・サー”の発音一つ、秘書のMoneypenny(ふざけた名前だが、駄洒落も英国人らしい)とのユーモア溢れるヤリトリで、英国紳士らしい発音かどうかが試される。だからロンドンに語学留学しても、日本人、ミャンマー人には無理なのだ。

さらに余談となるが、最近友人から拝借した藤川大樹・大橋洋一郎共著「ミャンマー権力闘争」によれば、スーチーの好みは二代目ボンドのジョージ・レイゼンビーであるらしい。

本題に戻って、どうしてだろう?、と考えてきた。

到達した結論は、英国人の教え方が悪いのだ。それを見極めずに、語学留学する日本人・ミャンマー人も間違っている。英語の達者な(英会話を除いて)、あの漱石先生ですら、ロンドン時代、英会話と東洋人差別で神経衰弱に見舞われた。その明治時代の誤解を、そのまま継承しているのが、今の日本・ミャンマーの教育である。英語の発音のムツカシサを知らないネイティブの金髪先生に丸投げするから、留学生の英語はますますダメになる。英語で苦労してきた日本人こそ適任者と東西南北研究所は見抜いた。

話をまたしても脱線させる。

英国人は、中近東、アフリカ、中国、インド、そしてビルマを植民地として君臨してきたが、本当のところ、その実態を掌握していたわけではない。言って見れば、巨象の一部分を撫でて、巨象全体を理解したつもりになっていた。その結果が歴史を狂わせ、その結果が上記の英語教育でもある。

〜次号へ続く〜

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