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<ミャンマーで今、何が?> Vol.227
2017.9.25

http://www.fis-net.co.jp/Myanmar

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■ラカイン問題についてスーチーが演説

 ・01: 国連行きをキャンセル

 ・02: 昨年の国連総会でのスピーチを回想

 ・03: そしてNLDの登場

 ・04: 時間が足らない

 ・05: さ〜、いよいよラカイン問題へ

 ・06: 解決策はあるのか?

 ・07: アガサ・クリスティではない、スーチーの知恵

 ・08: その具体策は?

 ・09: 続きは次回へ・・

 ・公式ツイッター(@magmyanmar1)をはじめました!

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01: 国連行きをキャンセル

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スーチー・バッシングが世界を席巻している。

このメルマガは世の流行には流されたくない。ヤセガマンの反論をしたい。
ミャンマーは建国の創業期でしかない。

成熟した大国のように、安倍の対抗馬に蓮舫がいる、蓮舫がコケたら前原がいる、
あるいは毎年恒例行事で、総理大臣がコロコロ替わるというように人材豊富な国
ではない。

世界のマスコミがスーチーの首をすげ替えたら、たぶん、タブン、多分、Maybe
である、軍人がまたフンゾリ返る時代に戻ることだろう。この国では軍人が商人
に成り下がるから問題なのだ。今のところ、この国にはスーチーに代わる役者は
いない。その点を見極めて皆んなでスーチー降ろしに参画すればよい。

経験不足を理由に新人を貶めるのは古狸の常套手段だ。どんな名人も最初は素人
からスタートする。スーチーもそうであった。だが、今では世界の桧舞台で堂々
と外交戦略を展開している。

大勢のセキュリティに何重にも警護されたゴルフ場とか、待合料亭の密室など、
一対一の陰湿な外交交渉では決して無い。

先週からNYで始まった第72回国連総会出席を突然キャンセルし、急遽ヘンリー・
バンティオ副大統領を代行として送り込んだ。同副大統領は韓国ソウルのインチ
ョン国際空港でKOREAエアラインに乗り換え、NYのJFケネディ国際空港に到着し
た。思えば昨年の国連総会に出席したスーチーも全く同じルートをたどっている。
ルートは確立された。

野次馬としては、なぜ便利な成田トランジット、日の丸飛行機を選択させなかっ
たのか、日韓の対ミャンマー外交の温度差にも興味がある。ウラ情報によれば、
スーチーは日本食の大フアンである。

スーチーはラカイン問題を語る場として、NYの国連総会ではなく、自国首都のネ
イピードを選択した。

野次馬としては、NYにおいて哲学が全く異なるドナルド・トランプとの初出会い、
知的な会話の応酬を期待したのだが、これは暫くお預けだ。

外交巧者のスーチーならNYではなくネイピードに世界の注目をとの自信もあった
筈だ 。スーチーの性分および過去の手法からして、決して内に籠って逃げたの
では無い。今回の演説は、自国ネイピードで行われたにも拘らず、9月19日(火)
午前10時から30分間、すべて英語で語った。これは特に欧米政府そして海外の外
交官、それから外国の報道陣を意識しているのは明白だ。軍事政権と異なり、今
では多くの国家がミャンマーに大使館・領事館を設置している。マスコミの出先
機関も同様である

決して有能・無能の側近官僚に任せたスピーチ原稿ではない。自分の信念から自
分で起草した原稿で、時折、法律条項の番号などを確認しながら、英語スピーチ
を続けた。そして自国民の期待は大きかった。Hバンティオ副大統領も英語は達
者だが、スーチーの英語は筋金入りだ。欧米の首脳と通訳なしで語り合える非英
語国のリーダーは増えているが、アジア圏ではまだまだ少ない。

英語が世の中を席巻してしまったのは非英語国民として非常に残念だが、通訳抜
きだと本人の心意気が直接伝わる。通訳がいくら優秀でも、本人の迫力までは伝
えられない。スーチーはそれができる。世界の注目をネイピードに惹きつける。
それがスーチーの戦略である。

EUの首脳は日本以上に母国語に誇りを持っている、だが国際会議では誰もが英語
で応答する。それが今の時代の首脳の教養と見なされる。だが、日本・中国・韓
国の首脳は留学経験はあっても、その教養が身についていない。仮に国連総会で
演説のマネごとをしても、それは官僚が用意した英語の棒読みでしかない。世界
の外交官を唸らすほどの迫力は無い。小学生から英語を学ばせるのではなく、首
脳自らそれを実証しなければ、国民はついてこない。

あの時代に、学生時代のアウンサン青年は外国語である英語を猛勉強した。その
娘も父親を見習い倍の努力をして、英語を身につけた。

だから、自信を持って、世界に向けて英語でのスピーチを行った。
以下は、東西南北研究所の解説を挟んだ、スーチー演説の抄訳である。

鳥飼玖美子著「歴史を変えた 誤訳」(新潮文庫)に詳述されたように、日本の歴
代首脳でも宮沢・中曽根の英語をほめそやすようでは、レベルがかなりお粗末だ。
ましてや、いかがわしい東西ナントカ研究所の訳文など信じてはいけない。ご自
身で英語原稿を取り寄せて、ご自身でその真偽を確かめることだ。



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02: 昨年の国連総会でのスピーチを回想

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ここからスーチーのスピーチは開始した。
ミャンマー新政府の代表として国連憲章の目的と意義を確信し、国連一家の一員
として結束し、より平和で豊かな世の中を、そして全人類のために心優しく、思
いやりに溢れた家を建設するという、その信念を堅く信じ、国際社会のメンバー
と手を携えていきたいと強く願った。一方、それは我が国がいま対峙している諸
問題に打ち勝つという挑戦でもあると、スーチーは演説をスタートした。

今年、NYの国連総会には出席できないが、代わりに外交的ブリーフィングの機会
をここネイピードに設定した。



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03: そしてNLDの登場

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(* スーチーの話はギアアップする)

2015年の国民総選挙で、人々は実際にNLDを信じ投票してくれた。我々は3つの
責任を果たす使命を掲げた。"民主化への移行"、"国内の平和と安定"、そして"
国の発展"の3つである。これらの挑戦はどれ一つを取っても、安易で単純なも
のは無い。

"民主化への移行"とは軍事独裁政権が半世紀以上続いた後の民主化移行という作
業である。その端緒についたばかりで、これからそれを育て上げねばならない。
まだまだ不完全な民主化でしかない。

"国内の平和と安定"とは、1948年の国家独立の日に話は戻る。その日以来、約70
年間にわたって続いた国内紛争の末に、やっと今、成し遂げようとしている大事
業だ。

"国の発展"とは、国民すべての人々が平等にいつまでも享受できる、そういう永
続性のある発展を成し遂げたいと願っている。

皆さんすべてがご存知の通り(*ご存知ないだろうとの反語)、ビルマは複雑な国
家である。その複雑さには、(* 国民が民主化の熱に浮かれて)3つの挑戦を短時
日で実現できると期待している事実をも包含している。

(*バックナンバーでご覧いただきたい。前にも書いたが、スーチーは日本の外務
大臣に、ミャンマーは複雑なんですと訴えた。だが、大臣の話は経済問題に終始
した)




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04: 時間が足らない

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18ヶ月経ったものの、我が政府は権力を完全には掌握していない(*軍部だけの伏
魔殿が幾つか存在する) 。今月末で、新政権誕生後18ヶ月となる。これら3つの
使命を達成するには18ヶ月は短すぎる。だが、これらに挑戦する準備が未だだと
いうことでは無い。なぜなら世界中には、我々の問題を理解し、同情を示してく
れる友人たちがいるからだ。



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05: さ〜、いよいよラカイン問題へ

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(* スーチーの話は理詰めで、欧米人には分かりやすい)


世界の注目が今、ラカイン情勢に集中している事実を私は承知している。
昨年国連総会で述べたように、国際社会の責任あるメンバー国として、ミャンマー
は国際的な監視調査の施行を恐れないし、国内ですべてのコミュニティ(社会)が
平和・安定・発展を遂げる永続的な解決を約束した。そこで昨年、この問題を終
結に導く計画の作成に取り掛かった。

不幸にも2016年10月9日、国連総会における私の演説の18日後、辺境にある3つ
の警察駐屯地が武装したムスレム集団に攻撃され、続いて10月11日、11月12日に
も紛争が発生し、幾つもの生命が奪われ、負傷し、幾つかの村落が焼き払われ、
その地区の住民は退去を強いられた。そして多くのムスレムたちがバングラデッ
シュへ逃げ出した。
(* ムスレムとはイスラム教徒を指す)

それから政府は必死の努力を行い、平和と安定を回復し、ムスレムとラカイン人
社会との融和を図った。これらの事件が発生する前から、政府はラカイン州に法
律施行と発展のための中央委員会を設置している。

それから、コフィ・アナン博士を招聘し、ラカイン州における(*歴史的に)根深
い問題を解決するための委員会を主導するようご助力をお願いした。これらの努
力にもかかわらず、紛争が発生するのを阻止できなかった。昨年を通して、そし
て今でも、発展の計画と、平和と融和の建設を続行している。

数ヶ月間、表面上は静かで平和な日々が続いた。だが、8月25日に30カ所の警察
駐屯地が同時に、タウンタザ村の連隊本部(*国防部隊が常駐)も同時刻、武装集
団に襲われた。調査の結果、テロ対策法第6条第5項に従い、これらの襲撃はアラ
カン・ロヒンギャ救世軍(*ARSA=Arakan Rohingya Salvation Army)およびその支
持者たちによるテロ行為と断定し、テロリスト集団による犯行と政府は発表した。


(*駐屯地とは英語でoutpost、特にラカイン州などの山岳地帯では山の頂とか尾
根に土塁などを積み上げた監視所で、離れた別々の30カ所の警察駐屯地が、同日
ほぼ同時刻に襲われ、銃砲類や弾薬類が持ち去られた。これは民衆の政府軍に対
する反抗ではなく、訓練された武装集団による組織的なテロ攻撃である。当時も、
現地取材をせずに、バングラに逃げ出した難民情報では、政府軍による大規模な
掃討作戦が行われたと一方的な報道がなされた)

世界中からはラカイン情勢に関する懸念が寄せられた。この政府発表は非難を回
避したり、責任を放棄する意図ではない。

(* ARSAのリーダーはベンガリ出身で、パキスタンのカラチ郊外で育ち、パキス
タンをベースとするアジア最大のテログループLashkar-e-Taibaと密接な関係が
あるとされる)

ミャンマー政府は全ての人権違反と違法暴力を非難する。ミャンマー政府は国内
全土における平和と安定、法の施行の回復を約束している。国家の保安部隊は行
動規定を厳格に遵守するよう指示されており、罪のない民間人の二次的被害を避
ける細心の措置を取るよう、保安部隊の行動は徹底的に制限されている。人権に
対する違反、安定・融和を削ぎ、法律を無視する、その他の全ての行動は、法の
常識に厳格に従うことになっている。

これらの紛争に巻き込まれた全ての人々に深く同情する。数多くの人々は自宅を
放棄せざるをえなかった。それは単にムスレムとラカイン人だけではない、そこ
にはさらに少数の民族が含まれている。ダインネット、ムロ、テット、ムラマジ、
そしてヒンドゥと言う少数民族の存在はほとんど世に知られていない。

(* イカガワシイ研究所が調査したラカイン州の少数民族はRakhine, Kamein, 
Kwemyi, Daingnet, Maramargyi, Mro, Thetの7民族である。問題のロヒンギャは
含まれていない)

(* さらに、各州に分散している少数民族数を記録のために記載しておく: カチ
ン州=12、カヤ州=9、ケイン(カレン)州=11、チン州=53、バマー(ビルマ) =9、モ
ン州=1、ラカイン州=7、シャン州=33、合計=135の多種多様な民族の宝庫である)

2017年8月27日以降、社会福祉・救済・再定住省の大臣指導チームによって人道
支援が被災者に施されている。



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06: 解決策はあるのか?

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コフィ・アナン博士が議長を務めるラカイン州顧問団の最終報告は8月25日に公
表された。まさにその日である、(*テロの)大襲撃が挙行された。政府は顧問団
の勧告を実行する決意を即座に表明した。即効性ある情勢改善を狙う勧告事項に
は最優先の時間フレームを与え、その他の勧告事項はもう少し時間を食うが、ど
の勧告事項一つ一つもラカイン州の平和・融和・発展に寄与するもので、早急に
取り掛かることにしたい。

政府は(*現地の人たちが)普通の生活に戻れるよう作業を続けている。9月5日以
降、武力紛争は起きていないし、(*民族)浄化作戦も行われていない。それにも
拘らず、多数のムスリムが国境を越えバングラデッシュへ脱出したと聞き胸を痛
めている。

どうしてこの脱出劇が続くのか、それを解明したい。私たちは脱出した人たちと
話し合いたいし、同時に国内に留まった人たちとも話し合いたい。ラカイン州に
住む大多数のムスレムがこの脱出劇に加わらなかったということは、ほとんど知
られていない。ムスレムが住む村の50パーセント以上は全く影響を受けていない。
それらの人々は襲撃の前・後でも全く同じ生活を続けている。どうしてなのだろ
う? その理由を知りたい。

(* 浄化作戦は英語でCleansing Operationとしている。これは敵の民族を根絶や
しに殲滅(皆殺し)する時に使われる。最近のSNS作戦は巧妙で、ミャンマー中央
政府軍は民族浄化を狙っているという報道で、世界の人権団体がスーチー攻撃を
始めた。このような騒動は芥川龍之介の「藪の中」、あるいは黒澤明の「羅生門」
と一緒で、両者の言い分が食い違っている。それをどう解決するかを、突きつけ
られたのがスーチーである)



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07: アガサ・クリスティではない、スーチーの知恵

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(*スーチーは続ける・・)

これこそが解決の糸口とならないだろうか?
問題となっている所だけを見つめるのでなく、何も問題が発生していない地域を
も対象とする。これら特定地域の問題をどうして避けて通れようか?

そこで、(*逃げ出さずに)ラカイン州で現地に定着しているムスレムの人たちか
ら、もっと学びたいと努力している政府の活動に、外交団の皆様を招待して、見
聞してもらおうと考えている。もし、皆様の中で、我が政府の活動に参加したい
とお望みであれば、お知らせください。この地区を訪問できるよう我々の方で手
配します、そしてご自身で質問してください。どうして脱出しなかったのか?と。
どうして自分たちの村に留まる選択をしたのか?と。周りで暴動が起こっている
と見なされた、あの時期にである。

(*このメルマガがスーチーを応援するのは、自分の頭で考え、自分で悩み、だが
一人よがりとはならず、国際紛争の大ベテランで経験者でもあるコフィ・アナン
などの支援を受け、自分の頭で原稿を纏め、正々堂々と記者会見を開き公表する
ところにある。最近の世界のリーダーで有能・無能な側近や官僚に頼らずに、こ
のような思考方法が取れるのはちょっと見当たらない。孤独の闘いである。スー
チー頑張れ!!)



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08: その具体策は?

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(* スーチーは続ける・・)

地域住民の恐怖を和らげる努力とは別に、政府はラカイン州における社会経済的
発展計画を推進してきた。

その幾つかを説明すると、各分野における地域発展を図るために2017年-2021年
ラカイン州社会経済発展計画を起案した。民間と政府が提携して、地域の人々に
何百という新しい雇用を創設した。新経済特区によって新しい雇用と事業が認定
された。

インフラでは、地域電化と同時に道路や橋を飛躍的に拡張し、これまでボートで
しか近づけなかった遠隔地が高速道路で繋がるようになる。ラカイン州の全住民
が差別なく教育と医療ケアを受けられるようにする。

医療ケアでは、これまで受診不可能だった遠隔地も新たな移動クリニックでサー
ビスを受けられる。政府はラカイン州の学校300校を整備し直した。職業訓練校、
技術訓練校の計画も開始した。ムスレムの学生も何ら差別されることなく高等教
育を受けられる。

8月25日に攻撃された地域を除いて、被災住民の95%は、人道に基づく救援物資が
届いている。そして今、地域の全住民に人道的援助が届くよう、政府は新たな努
力を開始した。IDPに関しては、3カ所の被災民キャンプが閉鎖され、新しい住居
の建設など必要な援助が提供されつつある。この地区でやることは山ほどあり、
我々はそれを承知の上で挑戦し続けている。

市民権(*シチズンシップ)については、国民照合手続に向けた特別のタイムライ
ンを設定した。しかし、この手続には全てのコミュニティの協力が必要とされる。
一部のムスレム社会では、リーダーがこの照合手続には参加しないと表明してい
る。これによって失うものは何一つないので、全ての友人たちが彼らを説得して
くれるとありがたいのだが・・。宗派を超えた団体によって、地域間の宗教的融
和を図るよう努力もしている。学校においては、道徳的市民のアイデア、平和と
安定に焦点を当てた新しい授業内容を導入する予定だ。

(* スーチーおよび新政府の大変さは、135という民族を、その多様性を尊重した
上で、まとめ上げねばならないところにある。しかも、宗教も多様で言語も文化
も異なる。一昔前の横暴な同化政策で片付くシンプルな問題ではない。今の時代
は、国連機関をはじめとして、至る所にNGOやウォッチドッグが目を光らせてい
る。今回はラカイン州およびロヒンギャだけの問題だが、新政府は全武装民族と
の国内平和協定を締結するという使命も負わされている。これこそ前軍事政権が
国内をメチャメチャにした後始末である)

(* スーチーの話はまだまだ続く・・)

全てのコミュニティに向けた、特に、医療ケア、国民照合手続、教育に関する情
報を提供する新しいFMラジオ・チャネルを立ち上げた。それはラカイン語、ベン
ガリ語、ミャンマー語で放送される。

警察および保安部隊に対する訓練と能力向上は、目下、EUと国連機関に協力をお
願いしている。2016年12月以来、ラカイン州でオフリミット地区だった所にも、
内外メディアが接近できるようになった。8月25日の暴動発生後ですら、政府は
何社かのメディアグループを現場に案内した。(*スーチーが言いたいのは、現場
は孤立しているのでなく、新政権の努力で徐々に内外のメディアを自由取材させ
ているという事実を語っている)

(* 話は横っ跳びするが、9月21日付GNLM紙第1面に、英国議会がラカインの暴力
事件でミャンマから受け入れている兵士訓練計画を一時中止と決定した。これに
ミャンマーの軍部は即座に反応し、現在派遣中の兵士5名はロンドン駐在ミャン
マー大使館に収納し、即刻帰国させると発表した。そして今後二度と英国には絶
対にミャンマーの兵士を派遣しないと強硬な声明となった。

* 今後、これらが上記のEUと国連機関に飛び火しないか、興味津々だ。各国を見
回しても最近の外交関係はあまりもギスギスしていないだろうか? 英国議会の
決定もあの老獪な英国があまりに大人気ないと唖然とさせられる。一昔前の英国
なら、受け入れた5名の兵士の精神構造から鍛え直すチャンスと捉えたであろう。
これでは隣国から大使の召喚を決定した日本国と同じである。松岡洋右も国際連
盟を堂々と脱退して一見カッコ良かった。だが、日本はそれ以降、国際的な外交
の場で外交術を発揮する機会を失ってしまった。その結果は、日本国民すべてが
骨身に沁みてご存知の通りである。

* 当研究所の意見は、外交というものはどんなことがあっても閉ざしてはならな
い。そして外交官は、落とし所がない限り、相手を追い詰めても良くない。那辺
を呻吟するのが外交官の宿命で、醍醐味ではないだろうか? 対北朝鮮でも、手
の内があまりもお粗末なような気がする。皆んなで渡れば怖くないでは、どこに
外交の存在価値があるのだろう。その一方で、今は簡単に刀を抜く時代ではない)


(* 無駄話をした。スーチーの話に戻ろう)

政府はバングラデッシュとの関係改善向上を必死に努力している。国家外務関係
兼国家安全保障顧問大臣が、今年1月と7月にバングラデッシュを訪問した。その
見返りにバングラデッシュの内務大臣が我々を訪問してくれるのを希望していた
が、何かの理由で延期された。大臣には他のアポが入ったのだろう。

(* こういう皮肉は、スーチーはハッキリ言うし、実にうまい)

我々は(*バングラ)大臣の訪緬を何日いかなる時でも歓迎したい。そして国境安
全保障の取り決めを両国間で締結したい。

最近ミャンマーからバングラデッシュへ逃げ出した避難民の(*ミャンマーへの)
帰国呼びかけが今行われている。我々には照合手続を開始する用意がいつでも整っ
ている。この照合手続は1993年に設定され、両国で合意された原則に基づくもの
で、ミャンマーに戻りたい意思を持つものは、この照合手続を利用できる。その
当時合意された分類に従い処理されることになるだろう。国家安全保障顧問がバ
ングラデッシュ側に約束した通り、私は今ここでそれを再び確認し約束する、ミ
ャンマー側にはこの照合手続を今すぐにでもスタートする用意がある。この国(*
ミャンマー)からの難民と認定された人は、我が国は問題なく受け入れ、身の安
全と人道的援助に関する最大限の支援を保証する。

(* 前のテインセイン軍事政権は、国連機関が、ミャンマー国外にミャンマーか
ら脱出した避難民のキャンプでも作ればよいと語っていたが、スーチーはミャン
マーからの難民と認定したら新政権は彼らのミャンマー帰国を受け入れると、こ
の公の場で約束した。これは軍事政権時代と様変わりの外交移民政策の大転換で
ある。多分、憶測だが、軍部とは折り合いをつけたのだろう。

* ここの所は非常に重要なところだ。という意味は、スーチーが外圧を利用して
返す刀で伏魔殿の自国軍部の一部を説得できたとも取れる場面である。

* だが、ロヒンギャの原産地輸出国であるバングラの担当責任大臣が逃げ回って
いるところにも、テログループとの関連を疑いたくなるナニカがありそうだ。今
の情報過多の時代、網を張っておけば、面白いネタに出会えるかもしれない)

(* スーチーの話はまだまだ続く・・)

全世界の数多くの我々の友人たちが、焼け出された村落と大量発生した難民の群
れという報道に、心を痛めていることは了解しております。

前述した通り、9月5日以降の紛争はなく、(民族)浄化作戦も行われていない。心
配事があまりにも沢山ある。何が本当の問題なのかを見極めねばならない。最初
に非難があり、次にその反論が出てくる。我々はその全てを聞き取らねばならな
い。その上で、どの申し立てが確たる証拠に基づくものかを判定せねばならない。
それから、政府はやっと行動(*アクション)が取れる。

このアクションは宗教、人種、政治的信条に拘らず、この国の法律および国際社
会で受容される人権に違反しているかどうかで、全ての人に対して適用せねばな
らない。この国においては、人権に対して軟弱であってはならない。我が政府は
人権を擁護すると誓約して立ち上がった新国家である。特別なコミュニティの権
利を擁護するのではなく、この国の領土内に存する全ての国民が対象となる。

(* 世界の一般世論は今、スーチー・バッシングの真っ最中である。そして逆に、
ロヒンギャの権利を擁護しろと声高に叫んでいる。米国は世界貿易センターの同
時テロ以降、ジョージ・ブッシュはテロリストを識別しないでイスラム世界すべ
てを敵に回してしまった。トランプも似たようなもので、イスラム国からの米国
入国に偏見の移民政策を取り始めた。

* スーチーは違う。かなりスマートだ。ロヒンギャの権利だけを付け焼刃的に擁
護するのではなく、ミャンマーの領土内に住む全住民を平等に処分し、平等に擁
護すると語っている。

* このメルマガで何度も語ったが、自国の民族とは、人種・言語・食生活・文化
など文化人類学の観点からカテゴリーを判断すべきと思う。日本国の移民政策と
照らし合わせて考えて欲しい。だが、今回スーチーは軍部を説得してバングラか
らの帰国を呼びかけている)



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09: 続きは次回へ・・

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小心者で心臓が弱いせいか、くたびれてきた。

まだスーチー演説のド真ん中でしかない。ビールのお誘いもあるので、ここらで
一服したい。
読者の方も、人生死ぬほど退屈な方だけ、お付き合い願えればありがたい。
こんなメルマガをマジメに読んでは体に悪いですヨ!警告しておきます。

話は変わるが、9月22日の日刊英字紙"GNLM"は読みましたか?

第一面をはじめ、6&7ページに国連総会におけるHバンティオ副大統領の演説全文
が掲載されている。当研究所も、これはスーチー演説のコピーだと予想したが、
トンデモナイ。

事前にスーチーとよっぽど念入りに打ち合わせたのだろう。
9月19日のスーチーの演説と内容が見事にシンクロしている。

スーチーは当然ながらラカイン問題に終始したが、副大統領は最近起こったメキ
シコシティ大地震の被災者への同情を示し、米国の連続してのハリケーン災害、
プエルト・リコのハリケーン・マリアについても言及し、これを地球上に発生し
た気候異変として捉え、ミャンマーは2016年4月の気候変動のパリ協定への賛同
を示し、同時に京都議定書のドーハ修正案にも、国連の一員として賛意を表明し
た。

トランプとは全く逆の方向をミャンマーは見据えている。

そして、昨年ミャンマー新政権を代表してこの国連総会の演壇に立ったスーチー
の発言を引用して、ラカイン問題を説明していく。決してスーチーのスピーチ原
稿のコピーではない。一部はスーチー演説を補足したところもある。東南アジア、
アジア諸国の中では出色のスマートさである。ウ・タント事務総長のDNAが受け
継がれているのだろうか?
是非、一読をお勧めする。

ハタと思いついたのだが、スーチーはネイピードで、副大統領はNYの桧舞台でと、
ステレオ効果をこのスーチーは企んだのではないだろうか?
老獪なスーチーの外交術ではそれもありうる。読者の皆さんはどう判断しますか?



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