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 <ミャンマーで今、何が?> Vol.189
 2016.04.11
 
 http://www.fis-net.co.jp/Myanmar
 
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 ■2016年水祭り前夜
 
 ・01:ミャンマーのカレンダー
 
 ・02:ミャンマーの水祭り
 
 ・03:2016年水祭り前夜
 
 ・04:総選挙後の政局
 
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 01:ミャンマーのカレンダー
 
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 2016年4月のミャンマー暦は9日から20日まで連続12日間の赤字表記となっている。ミャンマー最長のゴールデンウィーク、水祭り連休である。
 
 路上で市販されているミャンマー暦は、ミャンマー語と英語の併記で、数字は縦に並んでいる。左端に曜日とそれを象徴する動物が記載され、最上段が日曜日(赤色)で、最下段がは土曜日(赤色)となっている。一般労働日の月曜から金曜日は祝日を除いて青色表記である。
 
 ということで、今年4月の30日場所星取表は、青色13勝、赤色17勝で、断トツ赤色優勢となっている。まったくNLDと同じ現象だ。NLDも赤色がシンボルカラーである。
 
 
 
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 02:ミャンマーの水祭り
 
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 ミャンマーでは明日12日から、いわゆる水掛祭りが始まり、その喧騒が一段落する4月17日の日曜日が今年の新年となる。
 
 いつごろから今の、騒々しいお祭りとなったか不詳だが、本来のティンジャンとは、陰暦の年の瀬に、天界より閻魔大王の降臨を迎えるための儀式で、各家庭は室内を清浄にし、門戸では香水を湛えた水がめを用意する。そして、道行く人びとに一礼し、往来の人びとも軽く会釈し、首を傾ける。そして用意した小枝を水がめに浸し、香水を善男善女の肩に軽く注ぐ。この一年間の不運を流し、閻魔大王に咎められることなく、この一年間が無事に過ぎることを祈るのである。
 
 だが、いつの頃からか、低音の響くリズミカルな音楽に酔いしれ、街中を車で旋回するお祭り騒ぎに変わってしまった。若者たちは、なれない酒に酔いしれ、一年間の溜まった鬱憤を晴らすように、不衛生な水を掛け合う。
 
 超リッチな金持ち連中は、欧米やシンガポールなどの海外に脱出する。まあまあの金持ち連中は都会を離れベンガル湾に面したリゾートなどのホテルやゲストハウスに、都心の喧騒から逃れる。その余裕のない、リッチとは縁のない人びとは、早朝の朝市で食材を買い求め、ひっそりと自宅で昔ながらの仕来りを守る。中にはこの期間中、僧院に篭り、バッサリと髪の毛を切り落とし、瞑想に耽る善男善女も大勢いる。人それぞれである。
 
 そして、この騒々しい水祭りも、永遠には続かない。あっという間に終わってしまう。そう閻魔大王が天界に戻っていくのだ。すると街の喧騒がウソのように、翌日がミャンマーの新年となる。善男善女は着飾り、新年の挨拶を交わし、敬虔な信徒として、仏閣や仏塔に参拝する。中には小鳥や魚を自然に帰し、年の初めの善行を積む。
 
 
 
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 03:2016年水祭り前夜
 
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 このメルマガは、ミャンマーの“今”という現在史を記録にとどめようと、いつしかその目的も変化してきた。そして、2016年水祭り前夜を見届けようと、ヤンゴン下街を徘徊してみた。YCDC(ヤンゴン市役所)前の、歌舞音曲の恒例のステージも今は鉄骨を使用して、立派に出来上がっている。街々のステージも準備万端整っているようだ。
 
 だが、季節を敏感にセンサーしているのは、樹木草花かもしれない。この季節になると、隣国タイの国花で、ミャンマー人が偽パダウと称するヌアのライトイエローの花が、いたるところで高木から垂れ下がって輝いている。藤の花を思わせる見事な景観だが、藤色ではない、黄色がこの国には一番だ。ヌアの花の寿命は長い。少なくとも一ヶ月間はその華美をたっぷりと見せてくれる。
 
 南国の花といえば、なんといっても燃えるように真っ赤な火焔樹を思いつく。これまで真っ裸だった樹木の先に日毎に鮮やかな新緑の芽を吹きはじめる。その情熱的な花に出会えるのも、もうすぐだ。
 
 とはいっても、ミャンマー女性が待ち焦がれているのは、やはり“パダウ”の花である。濃黄色で香りが強い水祭りの象徴である。水祭り前後にひと雨あると一斉に花開き、ほんの数日間で散ってしまう。時季からしても日本のサクラに例える人もいる。この高木も今の季節にたっぷりと濃緑色の葉っぱで覆われる。その小枝はドラゴンの背骨を思わせるように、反り返って下まで垂れ下がっている。よく見ると、雨が来なくても、水祭りのぶっ掛け水でも、お湿りさえあれば、いつでも花を咲かせんとばかりに、スタンバイしている。
 
 ミャンマー全国いたるところに立つ朝市。水祭りの期間中も休みなく開いている。ここに水鉄砲でも持ち込もうものなら、オバちゃんたちにどやしつけられてしまう。それは伝統的にもルール違反なのである。だから、しきたりを知る若者は、酔っ払っていても、路上の商い人には、けっして水を掛けない。まだ真っ暗な夜のうちから郊外で野菜・肉類・魚介類を仕入れて、都会の朝市にやってくる。オバちゃんたちには、休日も、水祭りもない。都会の食卓は、灼熱の真夏でも、雨の日でも、彼らに支えられて成り立っている。
 
 だが、彼らの生活も、経済発展という、政治家や経済評論家の唱える念仏のもとに、都会から追い払われようとしている。それを肌身で知るオバちゃんたちは、軍事政権の存続よりもと、反政府最大野党のスーチーに一票を捧げた。それが昨年11月8日の国民総選挙であった。
 
 
 
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 04:総選挙後の政局
 
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 その総選挙後の、2016年水祭りに至るまでの、一連の政局を追ってみた。
 
 スーチーは総選挙前後から、憲法がNLD党首を大統領に認めないのなら、自分は「大統領の上に立つ」と宣言してきた。これは常に憲法を超越してきたスタンスのタンシュエを揶揄すると同時に、軍部に対する頭脳的な挑戦である。
 
 アウンミンラインを最高司令官とする軍部は、知的な反論は何一つできず、軍事政権が捏造した2008年憲法を死守すると、無意味な遠吠えを繰り返すだけであった。そして、昨年11月8日の総選挙の結果に愕然とした。国民の総意がこれほどスーチーに傾いていたことを、見抜けなかった軍部インテリジェンスの完全敗北であった。
 
 2011年3月にパンドラの箱を開けたテインセイン大統領であるが、5年間の執政で軍部の傍若無人さは、すべて露見した。そして満を持して実施した総選挙であったが、軍部の総崩れ、スーチーの一人勝ちであった。そこ(底)には「希望」のみが残されていた。ギリシャ神話の復活である。
 
 国民の総意を取り付けたスーチーの動きは速かった。
 
 テインセイン・アウンミンライン・タンシュエという、軍部のトップ首脳と複数の極秘会談を繰り返し、民主化政権への移行を確実なものとしていった。国会を圧倒的多数のNLD政党でまず掌握した。25%という国民投票によらない憲法上の保護はあるものの軍部は後退していった。上院議長、下院議長を、NLD多数党が指名し、大統領および二名の副大統領も、スーチーの描くグランドデザインにしたがって、民主的な方法で決定された。ティンチョウ大統領は幼馴染であると同時に、夫婦してスーチーの忠実な側近である。
 
 大統領は組閣を発表し、賛成多数で、上院下院合同議会で承認された。
 目玉はスーチーの4閣僚ポストの独り占めと、大臣・副大臣職の大幅減量である。その後、教育大臣とエネルギー大臣職をスーチーは手放したが、重要ポストの外務大臣と大統領府大臣はスーチーが掌握している。
 
 これだけではない。スーチーの凄さは、忠実な大統領を動かして、多数決という伝家の宝刀を抜いて議員たちが見守る中で、スーチーのために“STATE COUNSELLOR”(国家相談役)という特別職を新設させたことである。これこそ、タンシュエが夢見た大統領の上に君臨するミャンマー最高の権力の座である。軍部の浅はかな知恵モノたちが考えつなかった奥の院である。
 
 国内外のマニュアル・レポーターたちが、“ステート・カウンセラー”とは一体何をやる職位なのだろうと、ぴーちくぱーちくウワサしているが、これこそスーチーが宣言した大統領の上に君臨する最高権力なのである。
 
 大統領が国の舵取りを決定するときに、国会が民の利益か国の利益かと迷ったときに、そして最高司法が正義はどこにありやと逡巡したときに、相談する先が“国家相談役”である。スーチーはそれを議会というレトリックを使って合法的に新設したのである。
 
 この大統領提案が多数決で議会を通過したときに、軍部の大物がこれは“民主的なbully(イジメ)である”とレポーターに対してほざいた。1962年以降の、すなわちネウィン以降の軍事政権は、54年間と長期にわたり、武器を使用して何千人という民衆を殺戮し、何万人という民衆を監獄にぶち込んできた。そしてスーチーやティンウーなどの著名な反体制派を自宅軟禁してきた。「それらは暴力的なbully(イジメ)ではなかったのか?」となぜ軍部の大物に直接食いつかなかったのだろう。
 
 ニクソン大統領を辞任に追い込んだあのマスコミも、いまではマニュアル化した報道とインタビューしか行わない。欧米をはじめとするミャンマー記事を追いかけていて、つくづくそう思う。
 
 スーチーの老獪さは、軍部さえも、手が出せない状況に、追い込んでいく凄さにある。すべて彼女が欧米から、そして中国などの、海外から学んだ手法である。
 
 最近、スーチーは白内障の手術をネイピードの病院で受けた。片目だけの手術は成功した。そして残る片目もこの水祭り期間中に手術するという。軍部独裁政権のリッチマンたちは、何かコトあるとシンガポールの病院に運ばれた。ミャンマーのドクターを、そして医療施設を、信用していないのである。そして国軍がどれほど愛国的であるかを空虚に喧伝する。本当にそうなのであろうか。スーチーは子宮摘出手術も、ミャンマーを脱出せずに、脱出できずに、母国で受けている。
 
 ミャンマーの将来を見通しているのは、ミャンマーで白内障の手術を受けた、スーチーの瞳だけかもしれない。
 
 その国家相談役に就任したスーチーの初仕事は、政治犯として収監されているとりあえず113名の恩赦であった。残りは水祭り後の仕事となる。
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 4月21日(木)から、ここミャンマーでは、新年の初仕事が始まる。
 このメルマガもマニュアル化することなく、「ミャンマーの今」を語っていきたい。
 読者の皆さんもどうぞ良いお年を!
 休み明けにまたお会いしましょう。
 
 
 
 
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