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 <ミャンマーで今、何が?> 臨時増刊号
 2016.03.25
 
 http://www.fis-net.co.jp/Myanmar
 
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 ■メルマガ臨時増刊号
 
 ・01:飛ぶ鳥あとを濁す
 
 ・02:新内閣が静かに動き出した
 
 ・03:スーチーは藤純子か?
 
 ・04:副大統領ヘンリー・バン・ティオとは?
 
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 01:飛ぶ鳥あとを濁す
 
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 最初にお断りしておきたい。
 このメルマガでは、ティンチョウ大統領と断定したタイトルを使用しているが、ご承知のとおり、これらの肩書きは3月30日の新大統領就任式までは暫定的なもので、現テインセイン大統領政府は、その最後の最後の瞬間まで、強力な権力を発揮するものと思われる。
 
 したがって、新大統領は英語ではPresident-elect(選出された暫定大統領)となっており、incumbent(現職)のテインセイン大統領とは明確に区別されている。
 
 
 
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 02:新内閣が静かに動き出した
 
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 3月21日(月)、ティンチョウ暫定大統領は議会で5分間の初演説を行い、その声は緊張で若干震えているようにも聞こえたが、これは武者震いだったかもしれない。そして、過去の軍事政権が“36”という数にまで膨張させた現在の大臣職を、削りに削って“21”大臣職にまで軽減すると発表した。それは多数決で議会の承認を得た。
 
 これまでの軍事政権が錬金術の重要ポストとして大臣職・副大臣職を乱造してきた放漫経営に対する、これはスーチー新政権の痛烈な皮肉であり、大いなる挑戦である。約半数(正確には58%の人員)でもこの国の舵取りは行えると、スーチーが元軍事政権に叩き付けた“女意気”である。
 
 3月22日(火)、暫定新大統領ティンチョウが次期閣僚18名の名簿をついに発表した。この日の目玉は、スーチーが重要な4大臣を一人でこなすという奇想天外な構想であった。ご既承の通り、外務大臣、教育大臣、電力エネルギー大臣、大統領府大臣の4ポストをスーチーがひとりで受け持つ。
 
 この日まで、ウワサはBBC、ロイターをはじめ、漏れ聞こえてきた。だが、スーチーは堅く口を閉じ、内部のNLD幹部にも、緘口令を敷いた。スーチーがどれだけ、緻密に思案思考したかが、見て取れる。
 
 今回の新閣僚で、“ドー”という女性に対する敬称がつくのは、スーチーただ一人である。ビルマの軍事政権は女性を一段低いものとして見下し、そのように取り扱ってきた。今回の布陣はそれに対するスーチーの大逆襲である。軍事政権に侮蔑されてきた女性でも外務・教育・電力エネルギー・大統領府ぐらいの主要閣僚はたった一人でこなせるという、啖呵を切ったのである。男性天国だった軍事政権に対する強烈な皮肉である。スーチーに藤純子の鉄火肌が重なって見えてくる。
 
 スーチーは軍事政権による自宅軟禁中、毎日瞑想を欠かさず、父親アウンサン将軍の関連書物のみならず、ガンジーをはじめとする数多くの人生劇場の闘士たちの人生を、自分の頭の中で疑似体験してきた。それは膨大な読書量が示してくれる。軍事政権による長期の圧政の中で、スーチーはオックスフォードでの優雅で、安易な、愛情に満ちた、普通の主婦に、いつでも戻ることができたにもかかわらず、ビルマの民衆とともに残るという、非情の選択をした。これは外の人間が覗けないスーチー内面の最大の決断であったと思われる。その時の、長く、暗い、将来も見通せない、岩窟王のような経験が、スーチーを彼女独自の哲学に熟成させていったものと東西南北研究所は解釈する。
 
 だから、これからの動きも、スーチーの熟成した思索が反映されていくものと見なければならないだろう。国内外のマスコミが囃すように、表面的な動きだけを見ていると、大いなる見当違いに陥る。自戒したい。
 
 だから、今回の新政府の布陣も、老獪な元軍事政権に対して、さらに老獪となったスーチーが最後の最後まで、練りに練った私案であると、当研究所は見ている。
 
 
 
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 03:スーチーは藤純子か?
 
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 では、東西南北研究所のものの見方をご紹介したい。
 
 まずはもっとも重要なのが外務大臣:
 
 11名限定とされる、国家安全保障評議会に大統領・上院&下院議長などとともにメンバーとなり、国家の最高意思決定機関に参加できる。だが、11名という数字に注目してほしい。2では割れないのだ。巧妙に仕組んだ2008年憲法で、最高司令官をはじめとする軍部が過半数の6メンバーを占領し、ティンチョウ新大統領以下のスーチー・グループは5メンバーという微妙な配分となっている。
 だが、老獪なスーチーは、この軍部の一角をじわりじわりと切り崩していく読みがあるのだろう。これは急がず、ゆっくりと、時間を掛けて、真綿で首を絞めるようにと、その手腕を期待したい。
 
 二つ目は教育大臣:
 
 軍事政権の最大の罪は、国造りにもっとも大切な“人づくり”を無視してきたことにある。スーチーは最初の最初から、その重要性を指摘してきた。だから、国造りの基礎は教育にありとして、母親の名前を冠した“ドー・キンチー基金”の主眼もそこにある。
 
 これは短期決戦ではなく、腰を据えて行わねばならない。他人に任されないという強い思いがあるのだろう。70歳という年齢のスーチーの決意が窺える大臣ポストである。
 
 三つ目が電力エネルギー大臣:
 
 これこそ、軍事政権が錬金術の巣窟としてきたところである。国家資産を軍は私物化して海外に切り売りしてきた。これこそ国家に対する反逆罪である。スーチーにはビルマの軍事政権が見事に花咲かせた汚職文化をブッ壊すという意気込みがある。この地球上のどこにでもいるヤワな政治家なら、怖じ気づいて手をつけようとしない伏魔殿である。
 
 過去のヤリタイ放題の悪事が芋づる式に発覚することも予想される。父親の暗殺が頭をよぎる、もっともヤバイ大臣職である。火中の栗を拾うとはこのことをいう。賢明なスーチーは闘争的な言葉は使用しない。スーチーらしいエレガントな言葉で、優雅に軍政側と交渉することだろう。この女性はそこに正義があるとみれば、誰もが避けたい方を意図的に、人生の重要なポイントで選択してきた。“いま”という瞬間に賭けているのだろう。アウンサン将軍の血のせいか?
 
 そして最後に四つ目が大統領府大臣:
 
 テインセイン大統領は最初に一人、それから二人と、次々に大統領府の大臣をインフレさせていった。ビルマで最強の大統領府である。各省庁の大臣の上に、大統領府大臣を置いたのである。これでは屋上屋を重ねるようなもので、責任所在もハッキリせず、費用的にも時間的にも無駄である。
 
 スーチーの凄いところは、見るべきところはきちんと見ていることである。そして大統領府の大臣をスーチー一人にすると公言した。
 
 表面的には大統領を補佐するのが職務だが、実質上は前から宣言していた“大統領の上に存在”し、大統領執務室の内部で忠実なティンチョウをコントロールできるのである。これまで透明性に欠け雲の上の存在であったタンシュエの機能を、明瞭・明確にシステム化した訳である。この場面は藤純子がお白洲で片肌を脱いでカッコよく啖呵を切っているとしか思えない。
 
 これらが東西南北研究所の見解である。
 
 これからの水祭り前は、政局の動きは速いと思われる。大統領就任式の水曜日(30日)一晩ではその式典を分析するのは不可能だ。ついては次回は、メルマガ発行が一・二日遅れる、ご承知おき願いたい。
 
 
 
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 04:副大統領ヘンリー・バン・ティオとは?
 
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 そして、お待たせしました。次席(または第2)副大統領のご紹介です。
 ですが、上記のように、重要案件が山積みなので、今回は手抜きの紹介となります。かといって、最優先課題である少数民族対策、そして軍事政権が達成できなかった国内統一平和を目指す場面では、大いに活躍が期待されます。それを狙ってスーチーが起用した目玉人選です。
 
 欧米人のような“ヘンリー”という接頭名から推測できるように彼はクリスチャンである。クリスチャンといってもいろんな宗派があり、突っ込んでいくとこの人物が見えてくるのだが、今回は省略。そしてチン州出身となっている。
 
 ミャンマーの歴史で学んだとおり、日本の1.8倍もあるという国土の南部および中央部は多数民族であるビルマ族が抑えていた。だが、巧妙な英国植民地帝国はその周辺で、国境地帯に住む少数民族地区に宣教師を派遣し、教会を建て、英語を教え、欧米人のマナー・考え方を教育して、彼らをビルマ人をコントロールする代理機関として育てて言った。ビルマ族に対立する少数民族である。
 
 この少数民族の文化背景に沿って、新副大統領も教育を受けてきた。
 
 2015年11月の総選挙で、NLD党員として立候補し、チン州選出の国会議員(上院議員)となった57歳である。インド国境に接したチン州の山岳地帯で生まれ、軍に入隊し全国7ヶ所に配属された経験をもち少佐で退官。2009年‐2010年にはフィリピンの大学院で国際指導者学を修め、NZのダニディンでも学んだ経験があるとされるが、その次期は不明。現在3人の子供がいる。妻もチン州出身で今現在、米国で医学を学んでいるが、家族全員ミャンマー市民とされている。
 
 このとおり、彼の履歴には不明な点が多く、詳細は謎に包まれている。
 
 
 
 
                   
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