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<ミャンマーで今、何が?> Vol.179
2016.01.27

http://www.fis-net.co.jp/Myanmar

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■ミャンマーはヤンゴンだけではない

 ・01: スーチー党首のイライラ

 ・02:軍事政権から民主政権への道のりは多難

 ・03:新議員の初登院は遅れるか?

 ・04:偉人たちと凡人

 ・05:ビルマのミッション系スクール

 ・06:山岳地帯のミッションスクールが我が母校

 ・07:ヤンゴン中心部で拉致事件発生

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01:スーチー党首のイライラ

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今度こそ政権を奪取するNLDが両議院(上院・下院)の議長・副議長、それぞれの候補者を決定したとの情報が漏れ聞こえてきた。その情報源はNLDの広報担当ウ・ニャンウィンだと、MT紙およびAFP通信社が報じている。

それによると、野党に転落したUSDPおよび少数民族リーダーも、国内融和を勘案して起用するとなっている。

国会内でレポーターから、その真偽を確認されたスーチーNLD党首は、「その質問にはお応えしません。情報を流した本人にお訊ねなさい」と憮然と突き放したという。

スーチーの態度は党則に反した情報流出に、明らかに苛立っている様子であったとされる。



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02:軍事政権から民主政権への道のりは多難

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今回の総選挙で当選した新国会議員は2月1日に初登院し、まずは上院議長・下院議長およびそれぞれの副議長の選出・投票手続きに入る。そのあとで、興味津々の大統領および新内閣の大臣選出の手続きへと続く。

シュエマンの処遇がどうなるかも気になる。スーチーには軍部トップへのパイプは幾くつもあるが、なかでも今回落選したシュエマン下院議長の使い道は有望である。

話を戻すと、大半が未経験の新人議員である。しかも、全員がスーチー党首のカリスマ的七光りで当選したものである。ヨチヨチ歩きのこれら一年生議員が、老練な軍人グループやマスコミから揚げ足を取られないように、監視しておく必要がある。

そのために、スーチー党首は厳しい緘口令を敷いている。それでもこのように党則違反のリーク記事がマスコミに流出する。スーチー党首にとってはイライラが高じるところである。だが、すべてはそこから着手せねばならない。

命令に従うこと、隊列を乱さずに行進することを、訓練されてきた議員たちを操るのはテインセイン元将軍の得意分野だった。だが、余所見をしながら横道に首を突っ込むピカピカの一年生を指導するスーチー保母さんは、その点では大変である。

そこのところを日本のマスコミや専門家が、NLDを日本の民主党に置き換えて、スーチーNLDが滑ったの転んだのと、小事で批判しては、それは大きな勘違いで、まったくの的外れである。

表面的ではない民主化への本格的マグマが動き始めるのは、一年そこらの短期間では成し遂げられない。昨年11月25日付メルマガ「超巨大タンカーの例え話」でお伝えしたとおり、腰を据えた辛抱と忍耐の準備期間が必要とされるからだ。その本質を見極められないマスコミからは、軍事政権を懐かしがる論調が出てくるかもしれない。本末転倒もいいところである。

しかも、新政府は何一つ始動していない。新政府が正式に発足する3月31日までは、分捕れるだけの大型契約を目下、旧政権は必死になって締結・調印しようとしている。今年一月・二月・三月に締結される大型プロジェクトをスーチー新政権は覆したり、破棄できない、合意が成り立っているからだ。

話を戻すと「ミャンマーで今、何が?」のような、野次馬的床屋談義では、何一つ進展・変革は起こらない。JFKがその大統領就任式で、アメリカ国民を鼓舞したとおり、ミャンマーの人びとが新国家のために、そして自由な民主化のために、何が出来るかを、そしてそれを実行できるかに、すべては掛かっているからだ。

70歳で大統領職を降りるテインセインは天の配剤で、運命としても自然の成り行きである。だが、去りゆくテインセインと同じ年齢のスーチーにとっては、これから大統領の上に君臨してその激務をスタートしてゆかねばならない。その政治的スタミナには驚愕すべきものがある。

それどころか、デズモンド・ツツ大司教、ネルソン・マンデラ、ビロード革命のハベル大統領、ポーランドのワレサ議長などの闘士たちと同じく、長期間の投獄、そして虐殺を危機一髪で逃れ、生き延びたスーチーには、国父とされるアウンサン将軍が自分の手で成し遂げられなかった「ミャンマー・ドリーム」を今、父親に代わって、国家のため、そして国民のために、成し遂げようとしている。まるで父親の魂が乗り移ったかのような鋼鉄の意志である。心底頭が下がる。

だが、ミャンマーに関与するほとんどの外国人は、自国利益のため、そして自己利益のために、この国を「経済発展」の観点からのみ援助しようとしている。そこにはスーチーの国を想う魂を揺さぶるような哲学は微塵もない。

「ミャンマーで今、何が?」も野次馬であることには変わりない。だが、“一寸の野次馬にも五分の魂”で、権力も持たない、カネもない、大プロジェクトのおこぼれも期待できない、もちろん日本料理屋の暖簾もくぐったことがない、ミャンマー庶民の目線で、新大統領就任の3月31日までを熱くならずに静かに見つめていきたい。



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03:新議員の初登院は遅れるか?

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ミャンマー議会は、国事に関与する連邦議会と、地方政治に関与する地方議会の両議会から、成り立っている。そして、中央政府と地方の両議会は同時にスタートするようにと、両議院からは指示されている。

新しく選出された議員たちは、来月2月1日から初登院とされているが、準備不足で2月8日になりそうだとのウワサの煙が立ち上ってきた。

このウワサはスーチーにとって有利に動くのかどうかは不明だ。いまのところ日程の正式発表はまだない。



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04:偉人たちと凡人

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日本の実業家の始祖ともいえる渋沢栄一、二輪車・四輪自動車を世界ブランドにまで押し上げた本田宗一郎、アメリカの大発明家であるトーマス・エジソン、アメリカの国民的大作家マーク・トェイン、独学で法律を勉強し大統領にまでなったエイブラハム・リンカーン、カーネギー・ホールにその名を残す鉄鋼王アンドリュー・カーネギー、蒸気機関を発明したジョージ・スティーブンソン、ノーベル賞の生みの親アルフレッド・ノーベル、お馴染みウォルフガング・アマデウス・モーツアルト。誰一人として大学教育を受けていない、むしろ経済的な家庭環境で小学校をやっとというところである。それでも歴史に残る大偉業を成し遂げた。

高等教育などというものが本当に万人に必要なのであろうか?ということをこのヤンゴンでつくづく考えさせられる。高等教育を受けずとも人生を豊かにする道はいくらでもありそうな気がする。卒業することのない人生道をこのミャンマーで修行する身としては、生涯を通して自分で模索するのが教育ではないのかと考えはじめた。

大学卒業の免状なぞを一夜漬けの試験で取得し、専門の経済学などろくすっぽ勉強もせずに、不経済な人生をひたすらに歩んでいる我が身が実に恥ずかしい。



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05:ビルマのミッション系スクール

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地勢図によるビルマのとらえ方として、英国人は、米作どころとして知られる中部から南部にかけての肥沃な低地帯を、英国人は下部ビルマそして北部の高地あるいは山岳地帯を上部ビルマと区分けした。英語ではLower BurmaそしてUpper Burmaである。だからマンダレーよりさらに北部に住む人たちはヒル・トライブ(山岳民族)と呼ばれた。

この多様性に富んだ魅力的な地域に多くの西洋人が惹きつけられた。彼らは植民地主義者だけでなく、今の一まとめ主義でいえば宗教家となるかもしれないが、その中味は聖職家の司祭であり尼僧であり、冒険家野郎で、山師と呼ばれる鉱山師、不老不死の薬草を追い求める怪しげな薬商人であり、一攫千金を狙う投機家たちであった。

そのアドベンチャー度合いでいえば、現在のディズニーランドなどはまったくのお子様用で足元にも及ばない。例えば、足元の砂地が、あるいは泥沼が、底なしのアンダーグラウンドの世界に案内してくれる。英語ではクウィック・サンドともいうが、象軍団でも、四輪駆動車でも、一歩でも、片車輪でも、それに飲み込まれると、決して助からないアリ地獄である。それが、このミャンマーの北西部には幾ヶ所もあるという。不時着した連合軍の戦闘機が流砂の中に埋め去ったという伝承も残されている。

幹線道路から離れた上部ビルマの山岳地帯に、西洋の聖職家たちが送り込まれ、自分たちの手でレンガ造りの、あるいは木造の教会を建築していった。そこに送り込まれたのはカトリック教のイタリア人尼僧たちであった。あるいはプロテスタント派のアメリカ人牧師であったかもしれない。
 
宗教を強制されることはなかったが、子供たちはビルマの地元学校では学べない新知識を吸収していった。学校での躾は時間厳守はもちろん実に厳しかった。そして校門をくぐると下校するまでは、すべて英語が強制された。ビルマ語で話しているところを尼僧に見つかると体罰が加えられた。だから、60歳を超える彼らは今でも、英語が達者である。この年になると、おばチャマでも平気で上品なワイ談に英語で付き合う。それを強制的に廃止させたのがネウィン政権である。そして強制的にビルマ語による学制がスタートした。



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06:山岳地帯のミッションスクールが我が母校

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その山岳民族たちの結束は固く、あるミッション・スクールの年一回の同窓会がヤンゴンのとあるレストランで先週開催された。200人を超える大盛況である。先生方はステージ近くの上席で歓談されている。北部ビルマからもマンダレーからも夫婦・親子・家族総出で出席した同窓生も多数いる。持ち寄った贈り物が山となっている。これを幹事がシェークしてもういちど再配分していく。それがこの会合のルールだ。ワタシはアルバムを供出し、三段重ねの弁当箱をゲットした。

それ以外にも、寄贈された洋酒が、そしてワインが各テーブルで次々に開けられる。グラスが空になると両隣の新しい友人が、気を利かして、アイスを入れ、ソーダで割るか、水で割るか、それともストレートかと聞いてくる。ここは一大社交場となる。あのテーブルに座っている女性は、学生のときは細身で、目の覚めるような別嬪さんだった、と右隣が説明してくれる。すると左隣が、コイツは登校中にラブレターを渡そうとしたが、愚図で、そのたびに無視されていた、と雑ぜ返す。そのテーブルにはいま、腰周りが小錦にも負けない女性が悠然と微笑んでいる。

芸達者の連中がステージに駆け上がり、得意のバンジョー、キーボード、パーカッション、そしてギターで、エルビス・プレスリー、ハリー・ベラフォンテ、リッキー・ネルソン、ディーン・マーチン、コニー・フランシスと、次々に懐かしい曲を奏でる。

右隣が、ステージに駆け上がり、マイクを握り、英語とビルマ語で絶唱する。すると、昔の目の覚めるような別嬪さんが、ステージに近づき、昔フラレタ愚図男に手を差し伸
べる。気がついた愚図男が小錦嬢をエスコートしステージに引揚げ、二人して盆踊りのような地元ダンスを披露する。

この瞬間、二人にとっては夢の再現なのかもしれない。あるいは人生をもういちど生きているのかもしれない。美女と愚図男の物語を知る仲間たちがあちこちから冷やかしの口笛を鳴らす。

ここは老人ホームの慰問団ではない。

全員が、昔のガキ大将、乙女に戻っている。“キミが夢見たその枕を送っておくれ!”と懐かしのカントリー・ポップスをこの愚図男がステージ上で膝まづき、見上げるように、右手を小錦嬢に差し出し歌いだす。妖艶な仕草で小錦嬢が投げキッスを返す。それが物語を知る会場の全員に大受けする。いまどきの年配者たちが、キャーキャー言ってステージに近寄り、ケータイで二人を激写している。

彼らは昔だけではなく、この瞬間も同時に楽しんでいるのだ。これこそ人生の達人ではなかろうか。人生のシアワセとは?自分探しの旅だといって、若者が世界をほっつき歩く。だが、何も見出せずに故郷に戻ってくる。だが、このオールドボーイ、オールドガールたちは、青い鳥が自分の身近にあることを、本能的に、生まれたときから知っているのではないだろうか?

ここで演奏され、歌われるほとんどが、ワタシの高校生時代にオーバーラップする。ワタシもうろ覚えの英語の歌詞を誤魔化しながら、調子外れで披露する。うれしいことに“アジノモト”や“キッコマン”の掛け声が跳ね返ってくる。気がついたら、風来坊で、この不経済なニホンジンを同窓生として受け入れ、仲間として扱ってくれた。



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07:ヤンゴン中心部で拉致事件発生

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まだ二日酔いも完全に回復していない、その翌々日のことである。まだ真っ暗な夜明け前にヤンゴン某所で集合。この同窓会の二次会を有志だけでベンガル湾に面するビーチで挙行するという。そのほとんどが、ヤンゴンあるいは上部ビルまで有力な起業家経営者およびその家族たちである。同窓生入学試験にコネで合格したこのワタシも半分拉致される形で参加させてもらった。

中国では、同郷(例えば雲南省の同じ村出身)、同学(小学校〜大学の同窓生)、同事(ある会社で同僚だった)、同姓(同じ黄さん、劉さんなど)、同志(趣味や目的を同じくする者)が、コネ作りの基本だといわれている。

ミャンマーもそれに近いものがありそうである。その話は次の機会にでも・・・



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