| 
                
 ******************************
 
 <ミャンマーで今、何が?> Vol.165
 2015.10.14
 
 http://www.fis-net.co.jp/Myanmar
 
 ******************************
 
 
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━ MENU                                                                
                ━━━━━━━━━━━━━━━
 
 ■与党が勝つか、野党が勝つか
 
 ・01: 2015年10月13日(火)
 
 ・02:タイム&タイド・ウェイト・フォ・ノーマン
 
 ・03:和食料理屋での下馬評
 
 ・04:英国式パブでの下馬評
 
 ・05:中国のモノの見方
 
 ・06:地元の意見
 
 ・07:ヤンゴンの空気を読む
 
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
 
 
 ======================================
                
 01:2015年10月13日(火)
 
 ======================================
 
 
 そろそろ、原稿締切の夕方近い時間帯である。一通りミャンマー関連をあたって
 みたが、退屈なニュースばかりだ。こういうときは、近くの朝市で気に入ったハー
 ブを地元ラム酒に漬け込んだ密造酒で、その気になるまで待つのが流儀だ。退屈
 なイギリス人のハイソも無駄に過ごす人生こそ大切だとしている。屋上のトタン
 板がショパンを奏でる。気温が下がり、いい雰囲気だ。だが、それとは別にジョー
 ジ・ハリソンがプロデュースしたラビ・シャンカールを室内に流す。シタールが
 自由奔放にアンサンブルを奏でてくれる。
 
 10月中旬といえば、モンスーン明けと単純に考えるが、今年のダディンジュ(水
 祭りの対極で、6ヵ月後に廻ってくる)は10月28日(水)で、まだ2週間も先の話
 である。
 
 だが、ヤンゴンでは確実に季節の変わり目にきている。あちこちで、これまでに
 ない形の雲がもくもくと湧いてくる。だが、三寒四温ほどの間隔ではない。快晴
 ⇒一瞬にわかに暗雲⇒豪雨⇒晴天⇒曇り空のサイクルが、毎日どころか、一日の
 うちでも何回か、繰り返す。ワタシは個人的にも深夜、驟雨がトタン屋根を叩い
 て通り過ぎていくのが好きだ。ヤンゴンではそうであっても、カヤー州やチン州
 では、山崩れのために村落が生き埋めになったり、大勢の犠牲者が今日も発生し
 ている。ミャンマーは広大だ。
 
 
 
 ======================================
 
 02:タイム&タイド・ウェイト・フォ・ノーマン
 
 ======================================
 
 
 歳月人を待たず。テインセイン大統領がつくりあげた新政府は、今年2015年いっ
 ぱいが最後で、次は新大統領にバトンタッチと言われてきたが、早いもので、そ
 の2015年も残すところあと二ヵ月半。しかもその運命を決定するミャンマーの総
 選挙は来月11月8日に設定されている。今日からカウントダウンして一ヶ月もな
 い。
 
 それだけではない、次期大統領に意欲満々で、しかももっともその地位に近いと
 されたトゥラシュエマン下院議長が与党UDSP党首の地位を追い出された。これに
 よって、与党USDPの党首に返り咲いたテインセイン大統領が2016年以降も続投す
 る可能性が出てきた。うまく言ったもので、政治の世界は一寸先は闇で、先がまっ
 たく読めない。
 
 
 
 ======================================
 
 03:和食料理屋での下馬評
 
 ======================================
 
 
 聞こえてくるのは、日本人の話し声である。最初は小声で話していたが、酒量が
 増えるにしたがい、声量もオクターブ高くなる。聞き耳を立てずとも耳に入って
 くる。
 
 どうも、この時期、総選挙が格好の話題となっている。
 スーチーNLD党首の時代は過ぎた。政治の実務は、やはり、テインセイン大統領
 に限る。なんといっても実績がそれを証明している。彼のスピーディーな改革路
 線をこのまま続けて欲しい。
 ここで大統領が変われば、これまでのダイナミックな経済発展が停滞する。テイ
 ンセイン大統領には残りの5年間、その体力を消耗しきるまで頑張ってほしい。
 
 言いたい放題の政治談議を無断で聞かせてもらった。話しぶりからすると、どう
 も、30歳代から40歳代という年齢層で、同じ会社に勤める中堅のサラリーマンの
 ようであった。
 
 
 
 ======================================
 
 04:英国式パブでの下馬評
 
 ======================================
 
 
 金曜日の夜はハッピーアワーだ。その半額のカクテルを求めて多数の欧米人が集
 まってくる。英国系が多いようで、アイルランド、スコットランド、オーストラ
 リア、NZも混ざっている。もちろんイングランドもいる。ときにはここで、ユダ
 ヤ人やロシア人にも出会う。
 
 日本人同士と違い、ここでは、他業種の連中がミャンマー情報を交換したり、ス
 ポーツを含めた世界の話題で盛り上がる。初対面だと臆することはない。最初っ
 から、ファーストネームで呼び合う。よっぽどのことがない限り名刺交換はしな
 い。これが海外における彼らの情報収集の手口だ。
 
 ウィスキーやビールを片手に、国民総選挙も当然話題にのぼる。基本的に、新規
 の仕事はすべてストップしているようだ。新大統領の登場まで、様子待ちという
 ところだ。単純な日本人から見て、欧米人の老獪さに騙されてはいけない。大手
 の企業であればあるほど、裏で軍人トップと手を結びながら、“人権問題”“汚
 職反対”“透明性”を口にするダブル・スタンダードがお得意だ。特にオフショ
 アのエネルギー関係では軍人グループと手を結ばなくては何一つ話が先に進まな
 い。
 
 だから、テインセイン大統領を外交辞令で賛美しながら、実際のところ、反体制
 派のNLDを応援している。かといって彼らに投票権があるわけではない。居候の
 身分でありながら、大家さんの悪口ばかり口にする。イギリス人のサマーセット・
 モームも「自分たちは問題を一杯抱えながら、余計な他人のお節介をやく」と同
 胞のいやらしさを書き残している。
 
 そのために、欧米人の話術は、相手を説得させるロジックが実に達者だ。だから、
 仕事でミャンマーに駐在するとはいえ、ミャンマー情報を的確に把握し、分析す
 る訓練を積んでいる。この理詰めで来るところが、東洋人にはなかなかできない。
 
 
 同じコンセプトで、EUの選挙監視委員会が大量の選挙監視団をミャンマーに送り
 込んできた。EU国内では、ギリシャ問題、そして英国のEU脱退問題を、抱え込み
 ながらである。
 
 
 
 ======================================
 
 05:中国のモノの見方
 
 ======================================
 
 
 テインセイン大統領は、2011年3月31日の新政府発足すると間もなく、9月30日勇
 気あるミッゾーン・ダム工事差し止めを発表した。その中止期間は「私の大統領
 就任中」としている。東西南北研究所の見方は、裏で米国政府の後押しがあった
 と見るのだが、この突然の発表は当事者の中国を仰天・激怒させた。蜂の巣をつ
 ついたように、その後、中国の大物が入れ替わり立ち替わりネイピードにやって
 きた。もちろん人民解放軍のお偉いさんも含めてである。
 
 テインセイン大統領の凄さは、中国に文句を言われてもビクともしないところに
 ある。仕方なしに、中国は2015年が過ぎ去るのをひたすら待った。ところがここ
 にきて、テインセイン大統領があと5年、2020年まで続投というと、水力発電の
 供給だけでなく、すべての計画が瓦解する。ミャンマーの軍部とは太いパイプを
 保ちたい、一方で、テインセイン大統領を追い出すため、今回の総選挙では、反
 体制派を応援したいと、苦衷の選択を迫られている。
 
 もちろん、ミャンマーと中国の間には国境を接するだけに、問題はいくつもある。
 とりわけミッゾーン・ダムが最大の難問である。
 
 もうひとつ、外国人の専門家の間で密かに語られるウワサをご存知だろうか?
 
 太古の昔から、ミャンマー最北部はヒマラヤ山系などの造山運動で、地球規模の
 超高圧が掛かった。だから上ビルマ地域はヒスイやルビーの天然製造工場だと言
 う。いっぽう、中国人の海外開発は、労働作業員から建機類まで中国から持ち込
 み、自分たちだけですべてを処理する。この広大なミッゾーン・ダムは幸運なこ
 とに中国国境に近接している。立入り禁止にした工事現場では、強力な掘削機で
 膨大な土砂・岩石を延々と続くダンプカーに積み込み、勝手に中国国内に持ち去
 る。そして、フルイにかけて中国人の大好きなヒスイを選び出す。それどころか、
 高価なレア・メタルも選別できるという。
 
 そのためのシルクロードで、東西南北回廊であるという。アナタはこの話を信じ
 ますか?
 
 
 ======================================
 
 06:地元の意見
 
 ======================================
 
 
 ミャンマー人は、実に心優しき人たちである。けっして相手の嫌がることは言わ
 ない。それは徹底している。昨日今日きたばかりの欧米人がツアー・ガイドに質
 問する。スーチーさんの褒め殺しで、軍人の悪口ばかり言う。欧米人はニッコリ
 喜ぶ。政府高官に顔の聞く日本人ビジネスマンの通訳を仰せつかる。この政府高
 官は元軍人だ。それを見極めた上で、この通訳は、民主化への過渡期ではなんと
 いっても軍人でないと全国を治められない。スーチーさんでは実績もなく無理だ。
 ビジネスマンはニッコリする。
 
 ミャンマー人の天性的な外交上手には、表面的な付き合いだけでは、なかなか本
 音を聞かせてもらえない。それが、ここに駐在する外国人にとっての最大の課題
 である。日本人同士だけで、日本料理屋で情報交換しても、ピンボケの情報に振
 り回されるだけである。
 
 形だけのお土産を持参しても、それは一過性のもので、人の心は覗けない。
 建前でなく、本音を語ってくれる地元友人をどれだけ多く、アナタの周りに集め
 られるかは、アナタの能力しだいだ。
 
 
 
 ======================================
 
 07:ヤンゴンの空気を読む
 
 ======================================
 
 
 これらのことを考察しながら、ヤンゴンの空気を読むと、人心は徐々にテインセ
 イン大統領から離れつつあるような気がする。与党USDPから一線を画していた大
 統領が、党内クーデターで突然USDP党首に返り咲いたためだ。
 
 これまでは、2016年初めに潔く半期で大統領職を退くとしていた。そこに大統領
 の無欲さを感じていた。ところが軍人グループをバックに、突如次期大統領に意
 欲を見せ始めたというのが、反感を買う大きな原因だ。
 
 いっぽう、憲法上、大統領選に出馬する資格はなくても、党首として頑張ってい
 るスーチーに国民の気持ちは戻り始めているようだ。補欠選挙も含めて過去二回、
 野党NLDは地すべり的圧勝を勝ち取っている。ということは、国民が軍事政権を
 嫌い、民主化へ投票したということである。軍部がもっとも恐れているのが、そ
 の再来である。
 
 彼女には経験・実績がないという理由で、彼女を否定する人もいる。だが、オバ
 マ大統領にしても、それは同じであった。地位が人間をつくるのであり、彼女に
 人望があれば、それなりの人材は集まってくるのではというのが、現在の読みだ。
 
 
 繰り返すが、政治の世界は一寸先は闇である。まだ読めない。来週のメルマガも、
 そういう視点で分析に励みたい。
 
 
 
 
       
                ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ご意見、ご感想、ご要望をお待ちしております!
 magmyanmar@fis-net.co.jp
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
 
 =================================
 - ご注意 -
 このメールマガジンは情報提供を目的としたものであります。
 なお、内容につきましては正確であるよう最善を尽くしておりますが、その内容
 の正確性を保証するものではなく、内容についての一切の責任を負うものではあ
 りません。
 =================================
 
 
 ▽このメールマガジンは等幅フォントでご覧ください
 表示がズレる場合はお使いのメールソフトのフォントの設定をご確認下さい
 ※MS Outlook Expressの場合
 「表示→文字のサイズ」を選択、「等幅」にチェック
 
 
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ※「ミャンマーは今?」の全文または一部の文章をホームページ、メーリングリ
 スト、ニュースグループまたは他のメディア、社内メーリングリスト、社内掲示
 板等への無断転載を禁止します。
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ※登録解除については下記のページからおこなえます。
 ○購読をキャンセル: http://www.fis-net.co.jp/myanmar/
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 発行元:ミャンマーメールマガジン事務局( magmyanmar@fis-net.co.jp )
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
 
 
 |