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<ミャンマーで今、何が?> Vol.159
2015.08.27
http://www.fis-net.co.jp/Myanmar
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■8月13日の政変劇検証
・01:まえがき
・02:政変劇の起こり
・03:すべては2008年憲法にはじまる
・04:テスト・ケース
・05:シュエマンの野望
・06:シュエマンの流したウワサ
・07:シュエマンと軍の対決
・08:シェエマンの運命やいかに
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01:まえがき
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11月8日と言われている総選挙の結果で、誰が2016年以降の大統領となるのかが判明する。だから、ミャンマーのビジネスマンも、海外の投資家も、それを見極めてという慎重派がいるかと思えば、毒杯でも構わない、いま仕込まなければ、美酒は味わえないというギャンブラーもいる。
USDPの党首をめぐる政変劇はかなりの関心をもたれており、ヤンゴンに住む日本人から、予測を求められる。ワタシは予想屋ではない。だが、内外の報道をじっくり読み込むと、自分の足で取材したのと、内部事情に詳しい、いわゆるディープスロート的な興味津々な記事もある。「ミャンマーでいま、何が?」には、独自の意見などまったくない。歩き回ったりせず、他紙の情報をつまみ食いして、失敬しているだけである。あまり褒められた行為ではない。
だから、あまり真剣にならず、この無責任なメルマガの行間を適当に読み取ってほしい。最近の読者の傾向を見ていると、日本人の読者は簡単に、アッこれで決まりと、簡単に結論を求めているような気がする。どうして、チョット待てよと反芻しないのだろう。
ミャンマーの現代史を紐解くと、アウンサン将軍は非常に慎重で、遠くを見つめ、しかも読みが深い。アウンサン暗殺の黒幕といわれるウ・ソウは非常に老獪である。テインセイン大統領も、この二人の特質を充分に併せ持っている。シュエマンもスーチーさんも同様である。そして欧米のマスコミが嫌う軍部も非常にしたたかである。たぶん、英国の植民地という歴史がミャンマー人のDNAに後天的に何らかの影響を与えたのではないだろうか。
日本の政治家よりも、欧米の政治家よりも、はるかに巧妙だということを、お伝えしておきたい。
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02:政変劇の起こり
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シュエマンとその支持者が与党USDPの指導体制から追い出されたのは8月13日のことであった。その謀反劇を企画したのは軍部と政府の共同作業とされている。シュエマンはもはやUSDPの党首ではない。だが、下院の議長職には留まっている。
いま世間の関心は、元情報省のトップで2004年に追放されたキンニュン元首相と、シュエマンがおなじ運命をたどるのかどうかに集中している。
シュエマンは公式の自分のフェースブックで、このように不愉快なことが起こるだろうと予期している。ではなぜ、軍部と政府が結託して、しかも12日の深夜に警察権力を用いてまで、シュエマンを排除しようとしたのか。
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03:すべては2008年憲法にはじまる
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この問題の根底には2008年憲法がある。前軍事政権の指導層が、2008年憲法を起草した。これで引退後も自分たちは権力を保持できると考えた。その憲法によれば、国防軍最高司令官と大統領が共同で国家を統治していくと記載されている。軍事独裁者は自分たちの仲間が大統領になることを望み、その大統領職を確保するために軍服組みの一団を国会内に送り込んだ。だが、その割合はたったの25%で、大統領の選出を確実にするには不十分である。そこで、この25%に国民選挙で選出される議員団の票を上乗せさせる作戦が、与党USDPの本来の仕事である。
2010年の国民総選挙は。この2008年憲法を実行に移すための最初の試みであった。そして目論見どおり、市民服に着替えたばかりの軍人たちがマジョリティを制した。当然である、人気のスーチー党首およびNLD党員たちを巧妙に総選挙不参加のボイコットに追い込むことに成功したからだ。欧米のマスコミは不公正な選挙と叫んだ。
だが、軍部が企んだこの仕組みが本当にうまく作用するかテストする必要がある。軍部といっても決してガサツではない。高級参謀・幹部は、実に洗練されている。相手の顔色を見ながら作戦を実施するなど非常にスマートである。その典型的な例がテインセイン大統領と言えないだろうか。これまで大英帝国が独占していた“老獪さ”という技術を、すでに会得しているのである。
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04:テスト・ケース
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そのテストが2012年4月に実施された補欠選挙である。大統領をはじめとして、各省庁の大臣・副大臣は国会議員の資格が剥奪される。だから、彼らが抜けた議席は空席となる。それを補うのが補欠選挙である。
この補欠選挙にはスーチー党首を含めてNLDが全選挙区で候補を立てた。結果はNLDの圧勝であった。全勝といいたいが、NLDが資格を剥奪された一選挙区のみで、USDPはやっと一議席を確保した。USDPにとって、1990年の総選挙といい、NLDは悪夢に悩まされるほど恐るべき存在なのである。そこで、2008年の憲法では、外国人の夫または子女をもつものは大統領になれないと規定した。これは明確にスーチー個人を対象にした憲法条項である。
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05:シュエマンの野望
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そこで、もうひとつ別の問題が出てきた。それは、シュエマン自身が下院議長ではなく大統領になりたいと公言するようになったからだ。そして憲法条項を楯に、テインセイン大統領を党首の地位から追い出すことに成功し、自分がそのUSDPの党首となった。
その時点から、シュエマンは自分のもつ権力と影響力をフルに駆使して、大統領職を狙うありとあらゆる手段を講じるようになった。
党幹部の何人かも入閣すると、党活動が出来なくなった。前の軍事政権時代の大臣・副大臣たちは現在、議会の中でほとんど権力のない窓際族のようなものである。彼らは元のように権力を行使できる地位に戻りたいと切望している。そして、シュエマンが大統領になれば、彼らをそれら重要な地位に指名してくれるものと信じている。これが彼らがシュエマンを支持する理由である。これと党の過半数がシュエマンを支持することによって、シュエマンの権力は強大なものとなった。
これまでの党の機能は、軍に奉仕する道具であった。だが、シュエマンはそれを軍をコントロールする道具に変革しようとした。
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06:シュエマンの流したウワサ
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次にシュエマンが傾注したのが憲法改正である。この改正案は、大統領、副大統領、大臣たちを選挙で選ばれた国会議員から孤立させ、軍人グループが仲間内から大統領を選抜することを阻止するものである。これによって、大統領、副大統領、大臣職に就きたい軍服組みは、シュエマンがリーダーシップを握るUSDP党公認の候補者として選挙に出馬せねばならない。このシュエマンの動きが軍服組みを激怒させ、軍服組みは彼の憲法改正法案を否決した。
同時にシュエマンはスーチーとの親密な関係を構築し、二人の間には何らかの秘密協定があるように振舞った。それのみならず、シュエマンは大統領職をゲットするために、USDPとNLDが総選挙後に提携連合するとのウワサも流しはじめた。
これによってシュエマンは大統領に選出され、その上で、憲法上大統領職に就けないスーチーのために首相という新しいポジションを用意するというシナリオである。スーチーはこの案を拒否しなかったといわれている。これもまた国防軍が不安を募らせる原因となった。
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07:シュエマンと軍の対決
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最後にシュエマンが図った陰謀は、テインセイン大統領とその閣僚をUSDPから追い出すことである。USDP所属の下院議員はこの改正法案を支持し、まさに通過しそうになった。下院のスーチーとNLD議員もこの法案ではUSDPと歩調を合わせる素振りである。
この段階で、軍の指導者はUSDPを再び軍の管理下におく重要な計画を準備しはじめた。この計画は、国防軍から退任予定の140名の高級幹部をUSDP公認の候補者として次期選挙に出馬させることにある。これら候補者のリーダーは陸海空軍の参謀総長ラテイウィン将軍で、彼は2010年に軍を退いたシュエマンと同じランクの将軍である。
この動きが見えてきたとき、シュエマンは党選挙運動委員会と候補者選別委員会という二つの重要な責任者となった。そして、軍が提出した140名の候補リストのうち、わずか50名を党公認とし、しかもその半数は、重要度の低い地方議会の党公認候補者として認定した。
8月14日が次期総選挙のUSDP候補者の締切日となっていたが、この日が近づくにしたがい軍部の忍耐は限度を越えた。そこで、軍部はシュエマンを党首の地位から引きずりおろし、党の主導権を取り戻した。そして党執行委員会は再組織され、これまで副党首であったウ・テイウーがテインセイン大統領とジョイントで党務を運営することとなった。
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08:シェエマンの運命やいかに
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ラテイウィン将軍は選挙に出馬するため、軍を離れたが、彼の役目は懲罰委員長のようなもので、党の中でもっとも恐れられる役目である。
軍はUSDPを自分たちの組織に作り変えた。だから、USDP内部の問題は、軍内部の問題の延長線上としてとらえている。だから、今回の権力闘争劇も軍隊内部での反乱分子を制圧したとの見方をしている。
この過渡期の国際世論に配慮して、軍部はイメージダウンを嫌い、キンニュンに科したような厳しい処置を今回はシュエマンにとっていない。だが、これで問題が集結したと思ったら大間違いだ。軍部は今回の事件は反乱だと見ている。だから、適切な時期がきたらシュエマンに対する何らかの処置がなされるものと思われる。
今回はいろんな海外情報を読み比べたが、MT紙のシットゥアウンミエン氏の解説が抜群に優れていたので、同氏の筋書きを無断でコピー&ペーストさせてもらった。
49歳の“I”さん、今回の政変劇は、ひとまずこれで筆を置きます。
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