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<ミャンマーで今、何が?> Vol.158
2015.08.19

http://www.fis-net.co.jp/Myanmar

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■2015年8月12日の政変

 ・01:2015年8月政変のドキュメンタリー

 ・02:欧米政府の見解

 ・03:国軍の動き

 ・04:テインセインの考え

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この一週間、日本とビルマに関する近代史に朝昼晩没頭し、毎日のニュースにはまったく無関心を決め込んでいた。歴史はその因果関係がおもしろく、しかも繰り返す。だから歴史によって、最近の動きに納得いくものが多々ある。そしてミャンマー人の性格まで見えてくる。

だから、友人が日本の新聞記事をメールしてくれるまで、ネイピードの政変をまったく知らなかった。近くの和食屋で出くわした数人の友人からは、東西南北研究所の見解を示せと、注文を受けたのは、ほんの数日前のことである。

49歳の“I”さんからも、食事のお誘いを条件に、号外配信の依頼を受けた。

日本の各紙が書き尽くしているので、新鮮味のある記事は無理だと思うが、遅ればせながら、インターネットで海外の関連情報をあたってみた。ご期待に沿えるか自信ないが、事件再構築にゼロから挑戦してみたい。




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01:2015年8月政変のドキュメンタリー

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・8月12日午前    通常通りシュエマンはUSDP会議に出席 
・8月12日午後10:30 ネイピードの豪壮なUSDP本部ビルを警察当局が急襲
・8月13日午前02:00 20台以上の乗用車が同本部ビル敷地から走り去る
・8月13日朝     USDPの緊急会合が召集された 
・8月13日午後    USDP党首と下院議長の掛持ちは“超多忙”を理由にシュエマンを与党USDP党首から除外すると同党が公式発表。
・8月13日      党首剥奪事件後24時間以内に、シュエマン個人の、そしてUSDPの御用新聞と見做された二紙が無期限に発行停止となる。英語名「日刊ユニオン・デイリー」と「週刊ザ・リーダー」の二紙。
・8月18日      現在は国会閉会中で、18日(火)に再開予定



事件は現在も流動的で、しかもこのメルマガの原稿締め切りが18日(火)なので、最新の情報にはならないが、断片的に補足説明すると:

党本部急襲の翌朝、すなわち8月13日朝、USDP幹部による緊急会議が招集され、シュエマンのUSDP党首と下院議長の兼務は“超多忙”として、党首職を解任するとの決議がなされた。その空席にテインセイン大統領が再び指名された。だが、細則で大統領職と党首の兼務は認められていないので、テイウー副党首がUSDP党首代行を務めることとなった。

なお、シュエマン側近とされるマウンマウンテインUSDP事務総長および党幹部何名かも党から解任された。

5月末に四日間にわたるUSDP最高幹部会議が開催され、シュエマンの党首職は2013年まで党首であった前任者のテインセイン大統領にとって代られるとの観測が吹き出した。それが8月13日に現実化した。

ある幹部は、USDPの指導者は常にテインセイン大統領であり、憲法上、大統領職にある間は、党首との兼務は出来ないので、一時的に副党首であったシュエマンに権限を委譲しただけで、シュエマンはその点を履き違えて図に乗ったと解説する。

53名から構成される中央執行委員会(CEC)の大幅入れ替えも8月13日に行われ、シュエマンに忠実なメンバーは片っ端に排除され、大統領から辞任を認められた。という意味は刑に服すなどのお咎めがないという意味である。そしてその交代に、前の軍人エリートたちが新たに注入された。

シュエマンは自宅拘禁中とのウワサが飛び交ったが、シュエマン自身はいつもどおりに事務所に行ったとのコメントを自分のフェースブックに8月14日掲載。同時に事務机でラップトップPCに向かい執務中の自分の写真も流している。

シェエマンの義理の娘が関係するラジオ局の“チェリーFM”も放送中止に追い込まれた模様。

イエトゥッ情報大臣は8月15日、ロイター通信に対し、シュエマンは昨年国会で“非常に疑わしい”決定を何度か行い、それは党や国家に最良というよりも、むしろ自分の政治的野望を反映するものであったと語っている。

シュエマンは今年11月8日の総選挙までは、下院議長に留まるとの観測もあれば、外堀を埋められ、自主的に下院議長職を辞任するとの観測もある。

8月18日から再開する下院議会で、議長としてシュエマン自身を弾劾する議員案の採決票を求める事態に追い込まれ、結局は辞任に追い込まれるとの観測もある。

さらには、彼の性格からして、この程度のことで簡単にはギブアップせず、必ず復活するとの見方もある。



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02:欧米政府の見解

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米国・英国・国連ともに、11月8日の国民総選挙が近づく中で、まるで軍事政権時代に戻ったかのような、話し合いではなく、警察権力によって、しかも真夜中にUSDP党本部事務所を急襲するなど、民主国家への努力を続けるミャンマーにとってはあってはならない行為である。さらに、総選挙が公正に行われるよう監視を厳しくしたいとしている。

特に、米国議会は民主党も共和党もミャンマー関連の分科会が多数存在し、ネイピード政府に対する強力な圧力団体となっている。すでに経済制裁解除の見直しを迫る声も上がっている。

欧米の見方、そして公式見解は、歴史的にダブルスタンダードが甚だしい。だから、額面どおりに受取ると、大やけどをする。だが、ミャンマー政府に対する欧米の外圧は巨大である。これを機会に、これまで国内問題として手を出せなかったスーチーNLD党首の大統領選出馬を駆け引き材料として持ち出してくるかもしれない。警察権力が出動したという事実はこれまでの民主化推進に大きな影を落とした。そういう意味で駐ヤンゴン米国大使館の動きを含めて、外圧が見逃せない要素となってきた。



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03:国軍の動き

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一時は改革派として知られ、しかももっとも有力な大統領候補と見られていたシュエマンが追放された。これで、国防軍は与党USDP内におけるその役割を再び強化し、年末の総選挙を確実なものにすることができる。と同時に、いまだに軍部が議会を牛耳る強い意志をもっている証拠ともいえる。

2011年、民生に移管する前の約20年間、自宅軟禁に置かれた最大野党党首スーチーとシュエマンが接近することに国防軍は危機意識を抱いていた。そしてシュエマンが進める憲法改正は議会における軍部の勢力を削ぐことになり、これにも国防軍は反対していた。

国防軍は、NLDが国民総選挙で圧倒的な勝利を収めることをもっとも恐れ、危機意識を抱いている。

スーチーNLD党首は今回の騒動を聞き、すべての旅行予定をキャンセルしたといわれている。

最近軍籍を離れた将軍は、匿名を条件に語っている。もし自分たち仲間が国会議員になれば、現在憲法が保証する無投票による25%という議席数を減らすことも可能だと。

今回の騒動は、裏でテインセイン大統領と三軍最高司令官のミンアウンライン上級将軍が手を握ぎり、国防軍の保障を得たうえで大統領派が行動を起こしたと見られている。当然ながら、大統領といえども、国防軍をないがしろにしてこのような大胆な行動は取れない。

そして、何一つ声の聞こえてこない、タンシュエ元SPDC議長の、事前了解は当然ながら取得済みというのが専門家の意見である。

歴史は繰り返されるというのは、当時飛ぶ鳥を落とす勢いだったキンニュン首相が、元老タンシュエに危機感を抱かせるほど増長したという理由で、2004年にトップの座から追い払われている。そして11年間、自宅蟄居を命じられた。



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04:テインセインの考え

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海外首脳のテインセインに対する評価は非常に高い。それは軍政から民生へとスピーディに邁進しているからだ。出だしは民主化への味方はほとんどなく、保守頑迷派に囲まれていた。国軍制服組からは民主かなど出来るものかと冷たく見られていた。欧米の外国首脳も、民主化姿勢は本物かニセモノか、注意して見守りたいと、かなり懐疑的であった。

そのうちに、シュエマンをはじめとして、議員の間で、民主化仲間が増えてきた。そして大統領府が出来上がった。いってみればテインセイン派閥である。そして海外からも信頼を勝ち得るようになった。テインセイン大統領にとって不満なのが、これらの成果に対して、国民の応援歌が聞こえないことである。

ミャンマー国民はこれまで、軍事政権から骨の髄までひどい目にあわされてきた。だから、テインセインもシュエマンも、そしてタンシュエもおなじ穴のムジナだといまでも思っている。そう思う国民は年末の総選挙ではスーチーのNLDに投票するものと思われる。

その中でも見極めなければいけないのが、シュエマンの直近の身内には蓄財の美味しいビジネス・地位に就任させてきたことで、これが軍人の汚いやり方と国民の大半が信じている。

歴史的に大英帝国から彼らの老獪さを充分に学んでいるテインセインである。シュエマンを排除したあとは、軍部との折り合いを、総選挙までにどうつけるのかが見ものである。シュエマンのように強引にもっていけば、歴史的に国軍はクーデターという切り札がある。日本では平和ボケを楽しんでいるが、ミャンマーの隣国タイでもクーデターは日常茶飯事である。一寸先は闇である。


以上まとまりのない報告になってしまったが、今回目を通したのは、NYタイムズ、WSジャーナル、BBC、ロイター通信、新華社、バンコクボストなどを参考にした。


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