******************************
<ミャンマーで今、何が?> Vol.153
2015.07.15
http://www.fis-net.co.jp/Myanmar
******************************
━━━━━━━━━━━━━━━━━ MENU
━━━━━━━━━━━━━━━
■ダゴン・プロジェクト
・01:ヤンゴン・ドライブ
・02:ダゴン・シティ・プロジェクト
・03:ダゴン・プロジェクト反対運動
・04:大統領の鶴の一声で計画中止決定
・05:プロジェクトの県連企業
・06:それだから、どうした
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
======================================
01:ヤンゴン・ドライブ
======================================
スーレー・パゴダでタクシーを拾い、真っ直ぐ北進するとしよう。新生シャングリラ・ホテルとサクラタワーを抜け、周回鉄道をまたぐ上り坂の陸橋にかかる。真正面にそそり立つメソジスト教会が一方通行の振り分けになっている。左側の道路が「アランピャー・パゴダ通り」で南に下り、右がアウンサン・スタディアムの北側を抜けてカーブを描きながら北上していく。
途中の信号で一時停止するが。そこで先ほど分かれた「アランピャー・パゴダ通り」の終着点と合流し、そこからは道路幅が一段と広くなり「動物園通り」と名前が変わる。そのまま真っ直ぐ進む。右手の延々と続く壁の向こうはヤンゴン動物公園の広大な敷地である。その広大な動物園に負けないさらに広大な敷地が、道路反対の左側に延々と続く。
この広大な左側一帯は、泣く子も黙る国軍の敷地で、「動物園通り」のはるか西側をほぼ平行に南北に走るシュエダゴン・パゴダ通りまでが、すべて国軍の住宅・施設となっている。もちろん一般人はおどろおどろしくて一歩も近づけない地域である。
そのとてつもない広大さを実感するために、ヤンゴン・ドライブをもう少し続けよう。先ほどの「動物園通り」を直進していくと、英国で言うところのラウンド・アバウト(環状交差路)、米国で言うところのロータリーにぶち当たる。正式名称は、ウ・タウンボー・サークルとなっている。荒っぽい言い方をすると、カンドージ湖の南西の角に当たり、シグネチャー・レストランもそこにある。そこを右に曲がって行くと動物園の正門、そしてカンドージパレス・ホテルに通じる。タクシーの運チャンには逆に左に曲がっでもらおう。
左折すると、この道はウ・タウンボー通りと名前がついている。シュエダゴン・パゴダの南面裾野に当たり、上り坂を登りきった右手がシュエダゴン・パゴダの南正門である。巨大なチンテが左右二像鎮座している。日本の狛犬のプロトタイプである。だが、狛犬をドッグと訳すとミャンマー人は嫌な顔をする。むしろ、伝説上のライオンと訳すとにっこりしてくれる。その南正門交差点を左折して、すなわちシュエダゴン・パゴダを背中にして、シュエダゴン・パゴダ通りを真っ直ぐに南下する。この通りの左側に延々と高いフェンスが続く。これがすべて国軍の広大な敷地である。
もういちど復習すると、「動物園通り」のスタート地点から、反時計回りに、ラウンド・アバウトを左折して、シュエダゴン南正門で、もういちど左折、左手には高いフェンスが延々と続く。その内側がすべて国軍の広大な敷地となっている。軍事関係者以外、内部がどのようになっているか、誰も知らない。深入りするとヤバイ、ということは誰でも知っている。
今日の話題は、この広大なミステリアスな敷地、どんな地図でもまったくの空白となり、アンタッチャブル・ゾーンである。
======================================
02:ダゴン・シティ・プロジェクト
======================================
いつのころからか、この「動物園通り」をタクシーで通ると、動物園の反対側(西側)に、高級コンドミニアム、高級都市生活、都市コンプレックス住宅街など都市開発の看板が目立つようになってきた。いよいよ、この秘密のベールも新都市開発かと、漠然と想像された方もおられるだろう。
地図上では、この「動物園通り」を境にして動物園側(東側)が「バハン町区」、国軍側(西側)が「ダゴン町区」となっている。ミャンマーでは“タウンシップ”という呼び名だが、勝手に“町区”と訳しておく。
この「ダゴン町区」も広大な地区で、シュエダゴン南正面に突き当たるシュエダゴン・パゴダ通りのはるか西側のピーイ通りまでの広範な地域をカバーしている。すなわちダゴン・センターはこの「ダゴン町区」の西端にあり、次のピーイ通りを挟んで、さらにその向こうはお隣さんの「サンチャウン町区」である。
気がついたら、このウ・タウンボー・サークル近くの広大な敷地に「ダゴン・シティ・ワン(1)」と「ダゴン・シティ・ツー(2)」を含めた合計5つのプロジェクトが持ち上がっていたようだ。
======================================
03:ダゴン・プロジェクト反対運動
======================================
そして先週の火曜日、そう7月7日に、テインセイン大統領の鶴の一声で、“ダゴン・シティ・プロジェクト取りやめ”というニュースが、国内外を震撼させた。
ミッゾンダム開発中止に続いて、またもや大統領の大英断かと、誰もが思った。
と、いうのが、この地域一帯は、ミャンマー人の誰もが誇りとする仏教の世界的な聖地シュエダゴン・パゴダの裾野であったからだ。
このプロジェクトからシュエダゴン・パゴダまでの最近接距離は500mしかない。まずは仏教会から異議が飛び出した。聖なるシュエダゴン・パゴダの眺めが阻害される。土木工学的にもシュエダゴン・パゴダの土壌基盤を危うくするのではないか。偉いお坊さまの声には、一般市民も耳を傾ける。そして「シュエダゴン・パゴダを救え委員会」が設立された。
即刻、シュエダゴン脚下の都市開発事業を中止せよ! 建設用機械類は撤去、作業員は今すぐに現場を離れよ! さもなければ、この反対キャンペーンを全国規模に発展させる。
この反対運動は、敬虔なる仏教徒が崇める聖なるシュエダゴン・パゴダ保護が目的となっている。急速に国民の関心が高まっていく。民衆の怒りが、いまの民主化推進には、もっとも危険な社会不安を呼び起こす。
======================================
04:大統領の鶴の一声で計画中止決定
======================================
テインセイン大統領の指示で大統領府が動き出す。そもそも、このプロジェクトに公的な認可を与えたのはMIC(ミャンマー投資委員会)である。それが取りやめとなれば、MICの沽券にも関る由々しき問題である。大統領府とMICとの間で、真剣な討議が行われた。
国内だけの出資者であればまだしも、国際的シンジケートが巨額の資金を投資することになっている。国際的シンジケートも法制など完備されていないリスクの大きいミャンマー事業に簡単には投資しない。充分な調査をした上で、乗り込んできたはずだ。その敷地は国軍の所有資産である。ソレナリの土地リース代金を支払った上で、国軍のパワーを充分に利用させてもらうとの、暗黙を含めて合意がなされているはずだ。
だから、MICにも面子があり、大統領の意向とはいえ、簡単に従う訳にはいかない。工事取りやめ、開発計画中止となれば、関係グループそれぞれへの説明・説得責任が生じる。
だから、今回の政府声明は、「シュエダゴン・パゴダ脚下でのいかなる形の都市開発も許可しない。関係業者にはヤンゴン市内に代替地を提供し、こうむった損失はすべて補填する」となっている。
これまでであれば、触らぬ神に祟りなし。国軍に楯突くものは、すーちーさんを除いて、この国にはひとりもいなかった。だが、マスコミが後押しし、民主パワーがデモ行進するにつれ、老練な大統領は、この追い風は利用できると判断を下したのかもしれない。
肚をくくった今の大統領には、「民衆の声」という葵のご紋がある。何も恐れるものがない。だから、できることなのかもしれない。
======================================
05:プロジェクトの県連企業
======================================
このプロジェクトに関連する企業は、次の五社である。面倒なことになるといけないのでカタカナで記す。
一:マルガ・グループ・シンジケート
二:トゥカー・ヤダナー
三:シュエタウン・ハイデイ
四:シュエタウン・デベロップメント
五:アドベンチャー・ミャンマー
それぞれに、政府関連の巨大プロジェクトに参画してきた大手企業、あるいは複合企業、デベロッパーといってよいだろう。
そして一番にあげたマルガ・グループは香港、オーストラリア、韓国、英国などのデベロッパー専門家集団が手を組んだシンジケートのようだが、実態はよく分からない。
======================================
06:それだから、どうした
======================================
ということになるが、これまでは、このようなケースにお上のメスは入れられなかった。アンタッチャブルであったからだ。日本語では、泣く子と地頭といってもよいだろう。
だが、民主化という怪物の横行で、世の中が変わってきた。風向きが変わってきた。最終的にどのような方向に進んでいくのか誰も予測できない。今の大統領だけでなく、軍関係のエリートも「老獪さ」というものを、旧宗主国のイギリスからたっぷりと学んでいる。
大プロジェクトを派手派手にぶち上げておいて、民主パワーに押された形で、あるいは屈した形で、計画を取りやめる。そして、莫大な補償金をせしめる。あくまでも例えばであるが、濡れ手に粟の新システムを編み出すことなど、いとも簡単であろう。
暴力団対策法と同じで、地下に潜るのではない。暗黒街の二代目が英米の一流大学でMBAを取得し、ついでに弁護士資格も取得して戻ってくる。オヤジの代からは想像もできない「組」が「横文字企業」にイメチェンする。巨大な資金を活用して、あるいは国際企業とシンジケートを組み、土地価格、そして株価を操作して、膨大な利益を国外に貯め込むのである。ダークなカネをクリーンなカネに洗い直すぐらい、この弁護士先生にすれば、簡単なことだ。
欧米のマスコミは、ミャンマーに対して、いまでも民衆に向けマシンガンをぶっ放す野蛮なイメージを報道をしている。だが、ピンウールインにある国軍士官学校のエリートたちははるかにスマートである。
今回の報道はまだはじまったばかりである。
乞うご期待である。
本当に大統領は勝負に出たのであろうか。そのあたりを行間から読み取ってほしい。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ご意見、ご感想、ご要望をお待ちしております!
magmyanmar@fis-net.co.jp
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
=================================
- ご注意 -
このメールマガジンは情報提供を目的としたものであります。
なお、内容につきましては正確であるよう最善を尽くしておりますが、その内容
の正確性を保証するものではなく、内容についての一切の責任を負うものではあ
りません。
=================================
▽このメールマガジンは等幅フォントでご覧ください
表示がズレる場合はお使いのメールソフトのフォントの設定をご確認下さい
※MS Outlook Expressの場合
「表示→文字のサイズ」を選択、「等幅」にチェック
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
※「ミャンマーは今?」の全文または一部の文章をホームページ、メーリングリ
スト、ニュースグループまたは他のメディア、社内メーリングリスト、社内掲示
板等への無断転載を禁止します。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
※登録解除については下記のページからおこなえます。
○購読をキャンセル: http://www.fis-net.co.jp/myanmar/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
発行元:ミャンマーメールマガジン事務局( magmyanmar@fis-net.co.jp )
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
|