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<ミャンマーで今、何が?> Vol.150
2015.06.24
http://www.fis-net.co.jp/Myanmar
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■ロヒンジャーは地球規模の問題だ
・01:ロヒンジャーとの出会い
・02:PCおよびインターネット
・03:ささやかに創刊第150号
・04:大統領選こそ一寸先は闇
・05:イスラム教徒に対する欧州の動き
・06:再び白人王国オーストラリアの動き
・07:ラカイン村から関係四カ国に問題発展
・08:問題を整理してみよう
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01:ロヒンジャーとの出会い
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読者から、ロヒンジャーとは何なのだ、と初めて質問を受けたのが、東西南北研究所設立後間もなくで、資料は何ひとつなかった。はじめて聞く名前である。ローン・レンジャーなら知っている、キモサベー、と頓珍漢な反応を示す老骨所員もいた。
だが大事な読者からの質問だ。真剣に対応せねばならない。そこで何とか、でっち上げたのが創刊第5号「多様な民族を抱えるミャンマー」(2012年8月7日発行)と第6号「多様な民族・・その続編」(同年8月14日発行)である。ここではじめて“ロヒンジャー”という言葉を「ミャンマーで今、何が?」は使用した。バックナンバーで覗いていただければ幸甚である。
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02:PCおよびインターネット
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だが、当時はインターネットがまだ完全には解禁されておらず、ネットカフェで何分間も待たされた挙句に“接続拒否”の×マークに頻繁に出遭い苦労した。だが、若い優秀な所員がヤケにITに詳しい男を当研究所の応接室である路上喫茶に連れてきた。どんな“接続拒否”のサイトでもアクセスできると機密情報を教えてくれた。出前の焼きそばでこの情報を買いとることを決定。喫茶代金とあわせて1,050チャットの出費であった。ヤッテミルと、驚いたことに片っ端からアクセスできる。スノードンの弟みたいな若者がヤンゴンにもいたのだ。ありがたいことに、民主化の掛け声に押されて、そのご不便なビジネス環境が徐々に改善されていった。
東西南北研究所のモットーは、「昨日はド素人で結構。ターゲットが決まれば、今日がむしゃらに全力投球。集中力との闘いである。それで明日はいっぱしのプロフェッショナル」である。
医学の分野でも、動植物の分野でも、農業でも、金融の話でも、ハリウッド・ゴシップでも、自分の苦手意識などまったく関係ない。その洗練されたシステムが雑多な仲間の援助で完成していく。世界最強の米軍が全米大学機関を巻き込んで開発発展させていったインターネットに大感謝。そしてスティーブ・ジョッブスと、ついでにビル・ゲーツにも。それから、テインセイン大統領の規制緩和政策にも大感謝。
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03:ささやかに創刊第150号
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何かを探求するという仕事は、システムが整備されるにしたがい、どんな苦手分野でも可能なことが分かってきた。そしてボツボツと読者の要望が聞こえてくるようになった。酔生夢死の人生を送ってきた所長にとって、正直言うと、ミャンマーとは、何年居候しようが未知の世界である。これまで無知の世界に安住してきた。だが、テインセイン大統領の出現で世の中が変わってきた。
コレは面白いということで、何でもかんでも根掘り葉掘り質問するように態度を改めた。ドキュメンタリー映画の「ティープ・シー」の世界である。もっともっと深く潜りたくなった。居酒屋で横のテーブルに着いた日本人同士が、チンプンカンプンな話をしている。よし、次週のテーマは決まった。それから、ネットカフェ通いである。片っ端から、居酒屋で盗み聞きしたキーワードを叩き込む。
それにありがたいことに、読者の方からも幾つかご質問と叱咤激励をいただいた。こういう風にして出来上がったのが無料メルマガ「ミャンマーで今、何が?」である。そのすべてが、東西南北研究所所長のまったく知らなかったことばかりである。あまりの文章のお粗末さに、文章の書き方に関する名著を贈呈していただいたこともある。かなり年齢の離れた若い友人にMSワードの便利な使用方法も教えてもらった。遠慮のない同年輩の連中には“てにおは”から“箸の上げ下げ”まで指導願った。その賜物が本日の「創刊第150号」である。
あらためて、読者の皆さまにお礼を申し上げたい。国民総選挙、そして新大統領の誕生まであと半年である。引き続きご指導のほど、よろしくお願い申し上げます。
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04:大統領選こそ一寸先は闇
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東西南北研究所の資料室も少しばかり充実して来た。ロヒンジャーのことも、もう少し分かってきた。そこでお届けしたのが、2013年3月27日付第37号「メイチーラ暴動は宗教戦争か?」と2013年9月25日付第63号「ロヒンジャーをもう一度考えてみよう」である。興味ある方は、こちらも覗いてもらえると嬉しい。
テインセイン大統領の老獪なイニシャティブで、ロヒンジャー問題はラカイン州の地方ニュースから、アセアン四カ国問題に格上げして、そして今は、世界の主要議題にまでランクアップされた。しかも、最初はミャンマーに潜入してきた外人部隊を相手にしてである。この外人部隊とは欧米人のジャーナリストであり、人権問題のNGOグループである。その尻馬に乗ったアジア(日本を含む)のメディアや怪しげな人権問題NGOグループも大統領は相手にせねばならない。
政治家はこれらのマスメディアや人権問題NGOの突き上げに弱い、そしてオバマ大統領も、欧州の首脳たちも元将軍テインセイン大統領を悪玉犯人に仕立てようと画策した。だが、ネイピードの大統領府はテインセイン大統領の冷静な仕掛けに従って動いた。時々失言するミャンマー政府の大臣もいたが、布石は着々と打たれていった。そして今は、ラカイン村の話題が、アセアン共通議題どころか、世界の主要議題になったというわけである。
このように先を見越した仕掛けは、武闘派で鳴らした元将軍では、とてもではないが不可能な仕事だ。21世紀の軍人はテインセイン大統領のようなクールで緻密な参謀タイプの人物が望ましい。いってみれば、司馬遷、諸葛孔明、秋山真之、山本五十六のようなタイプだろうか。あるいは南機関の鈴木大佐のバランス感覚だろうか。欧米のジャーナリストはテインセイン大統領を元軍人というとらえ方をするが、彼は豹変した君子である。同じ一個の人間でも、年を経る過程で、変化するという見方をする欧米のジャーナリストは少ない。嘆かわしいことだが、マイクを突きつけて、お前はガキのころ、何度屁をひったと追及する報道陣があまりにも多すぎる。
21世紀に突入した今も、冷戦時代を引きずり、米国に付くか中国に付くかなど、あまりにも狭量で貧弱な思想が横行している。米国に対しても中国に対しても、コソコソではなく堂々と“ノー”といえるテインセイン大統領はかなり格上である。彼の指導力を世界の政治家が見習う時代に変化したことを世界は見逃している。金満国の経済力だけでミャンマーを助けてヤルんだというあのさもしい態度が嘆かわしい。
あの中国に対してテインセイン大統領は「自分の大統領在任期間中は、国民の声にしたがいミッゾンダムの建設は封印する」と堂々と宣言した。あくまでも仮定の話だが、テインセイン大統領が国民の希望で、あと5年間大統領職を継続したら、どうだろう。ダムの着工がさらに5年間遅れることになる。中国最大の誤算が生じる。5年というスパンであれば、世界の雲行きが大きく変化する可能性がある。中国がもっとも恐れる事態である。これが政治的駆け引きの妙案ではなかろうか。
アメリカの属国になりたがる国もあれば、中国に対しきっぱりとダム建設を打ち切る、勇気を持った指導者もいる。自分たちの将来は国民が選択し決定すべきことである。
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05:イスラム教徒に対する欧州の動き
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話は大きく跳ぶが、ロヒンジャーをラカイン村の話から、ムリヤリ世界の議題に持っていきたい。生意気だが、テインセイン大統領の頭脳を邪推しての話である。
これは2014年12月28日付GNLM紙のニュース:「北アフリカとシシリー島間の水域で、クリスマス期間の4日間にオンボロ漁船数隻で危険を冒した約1,250名の難民を救助した」とイタリア政府が発表した。そのうちの数人はすでに死亡しており、一人の婦人は聖誕日にボートの中で男子を出産していた。そのほとんどがアフリカ出身のイスラム教徒である。
「ドイツのドレスデンで、17,000人という過去最大の移民反対のデモが賛美歌を歌いながら行進した」と2014年12月24日付GNLM紙が報じている。これは西洋のイスラム化を危惧してのデモで、ドイツに亡命を求める難民は2014年は200,000人に上った。ロイター電。
「今年4月19日北アフリカのリビア沖で転覆した難民ボートの800人の死亡を国連難民高等弁務官イタリア事務所が確認した」。イタリア警察は、人身売買業の一味と思われるチュニジア人船長と、シリア人乗組員を逮捕した。難民の国籍はマリ、ガンビア、セネガル、ソマリア、エリトリア、バングラデシュなどで、ほとんどが北アフリカのイスラム教徒である。AFP電。
2015年6月12日付GNLM紙チュニス発ロイター電:「隣国リビアからイタリアの島を目指す粗末な漁船に乗った不法移民350人をチュニジア海軍が救助した」。これらの漁船の出発地点は隣国リビアでリビアの人身売買業者が介入している模様。
今月6月15日付MT紙によれば、「イタリア首相が難民危機に対する最後通牒をEU当局に提出」となっている。イタリアは当然EU加盟国で、ダブリンでのEU首脳会議で「EUへの亡命は、最初に到着した欧州国で申請書を提出すること」と多数決で決定した。だが、北アフリカから難民ボートが最初に到着する可能性があるのは地中海のイタリアとギリシャで、この2カ国はこの決定は不公平だとして当然ながら猛反対した。
今年前半だけでも、亡命を求める57,000人(昨年同期54,000人)の難民がイタリアに上陸している。ご承知の通り、イタリア北部はフランス、スイス、オーストリア、スロベニアなどと国境を接しており、難民はそこを経由して英・独・北欧などで職を見つけそこへの移住を希望している。
イタリアは単に通過国である。だが、国境を取っ払ったはずのEU圏内で、これら関係諸国が国境での入国管理を厳格にチェックし、難民の受入れを拒否し始めた。それならEU全体に大打撃を与えるBプランを実行するだけだとイタリア政府が脅かしたのがこの最後通牒である。ただし、イタリア政府はBプランの詳細はなにひとつ明らかにしていない。結局は、EU圏といっても一枚岩ではなく各国はエゴの塊である。
「デンマークでは選挙が近づき、難民移民法に対する強化手段を訴える議論が活発化」(ロイター電)が今月15日付GNLM紙に掲載。いずれも、イスラム教徒の大量移民は、デンマーク社会に不穏な空気を生み出し、安全が脅かされるとするもので、結局はイスラム教徒の受け入れに反対するもの。
ここで何を言いたいのかというと、ボート難民問題は、ちっぽけなミャンマーだけの問題でなく、アンダマン・マラッカ海峡だけの問題ではない。地球の裏側でも同様の問題が発生している。これらをGセブンなどという金満国だけでフタをできると思ったら大間違いだ。地球規模の大問題である。136の民族が平和に共存できないか苦労しているテインセイン大統領ならば、この地球規模のボート難民問題は、おもしろいケーススタディになるかもしれない。
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06:再び白人王国オーストラリアの動き
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コレは今年4月22日付MT紙のAFP電:「難民ボートをすべてストップせよと豪州首相がEUに忠告」これがヘッドラインの記事。2013年9月に発足した保守党政府は海軍を出動させてオーストラリア大陸に近寄る難民ボートを徹底的に力で阻止し、領海外に追い出す政策を取っている。
いったん難民ボートを受入れれば、次から次にやってきて、結局は海上で溺れ死ぬ難民を、何百人どころか、何千人と増やすことになる。それをストップさせるためには徹底的に亡命を認めず、領海に入り込むボートを追い出すことだと語り、人権団体を含めた諸団体から強烈な批難を浴びている。欧米人が大好きな人権擁護のカケラもない。
これらの根っこには、外国人を排斥したがる民族主義者の主張、イスラム教徒恐怖症、これまで平穏だった市内でのホームレスの増加、それによる夜間の一人歩きやドライブの恐怖、日中でも人気の少ない公園での母親や子供たちの憩いに危険を感じる、など理由はさまざまだが、実際に犯罪の増加が予想され、恐怖が募る、そして共同社会内で不信感が芽生える。同種の言語・同民族・同文化に囲まれている限りは不安がないが、そのバランスが崩れると恐怖・不信・孤立化と不安定な社会が生じる。
これらの対策はオーストラリアの保守内閣のみならず、前項でお伝えしたとおり、欧州各国でも似たような手段を講じている。だが、それでは問題は解決されない。欧州各国だけの、あるいは白人各国だけの利己的な決議ではなにひとつ問題は解決されない。そこに21世紀の英知が求められる。
今年2月にシドニーのリント喫茶店に18人の人質とともに17時間閉じ篭り、二人の人質とともに警官に射殺されたガンマンの事件を覚えておいでだろうか。犯人は1996年にオーストラリアにビジネスビザで入国し、一ヶ月以内に亡命を申請し、のちにオーストラリア市民権を与えられたイラン人だった。すなわち移民移住者である。
だが、今年2月23日付GNLM紙の記事では、オーストラリアのトニー・アボット首相は、現在の国内法規制では、このイラン人は合法的に入国し、合法的にオーストラリアの市民権を得た。だが、この亡命者は本来はオーストラリアに入国させるべきではなかった。そうしていたら、この事件は起こらなかったとの、超論理的な弁論を弄している。このレベルの政治家が民主的と称する選挙で選出されこの世の中にはびこっている。欧州の首脳もこれに近い頭脳の持ち主が多い。
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08:問題を整理してみよう
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A: 今、世界中が貿易関税を撤廃して経済的な国境障壁を取り外そうと動いている。その一方で、移民・難民・出稼ぎ労働者に対して国境の壁を再構築し始めた。
B: 日本の歴史もそうだったが、鎖国の殻に閉じこもっていたミャンマーという小国をスーパー大国がムリヤリこじ開け、その豊富な資源と廉価な労働力を活用しようと殺到している。
C: 結局は世界的な大企業がその莫大な資本力で世界市場を席巻しようとしのぎを削る。グローバライゼイションを目指し、ひとり勝ちを狙う。70億人から一ドルせしめれば70億ドルの収益である。世界の富が一極に偏る。貧乏人は握り締めていた一ドルを奪い取られ、さらに貧乏になる。
D: 貧乏人には夢の世界しか残っていない。それはアメリカンドリームであり、中近東ドリームであり、日本ドリームであり、欧米の白人社会のドリームである。貧乏人は夢から醒めると、山椒大夫の甘言で朽ちかけたボートに詰め込まれる。人身売買が結構な金儲けになると山椒大夫がほくそ笑む。ほとんど教育を受けていない無知な貧乏人は、ウワサを信じて水平線の向こうに夢を見る。
E: その数が半端ではない。何百人、何千人というチャチな数字ではない。何万人・何十万人? とんでもない、何百万人・何千万人という単位である。いや、それどころか何億・何十億かもしれない。いま、この膨大な貧乏人の大移動が世界中で発生しているのがボート難民である。
F: 教育もない、腕に技能を持たない、彼らが手に入れられる職といえば「3K」しかない。だが、それにも縄張りがあり、白人の・日本人の、その他リッチ国の貧乏階層の唯一の仕事であった。その半分の賃金でも構わないと白人貧乏人の仕事を奪う、ボート難民が白人社会に浸透していく。お定まりの貧乏人同士の憎しみによる殺し合いがはじまる。
G: 経済活性化・経済成長しか頭にない今の政治家が、小さな地域社会に閉じ込めて、ふたをしようとしたボート難民が、気が付いたら、東洋の海上だけでなく、西洋の地中海にも発生してきた。しかも、その数は尋常ではない、エンドレスに湧き出してくる。人口爆発である。かといって、これは問題をすりかえようとしているイスラム問題ではない。
H: この大宇宙の銀河系で、虫眼鏡で覗かなければ判然としないちっぽけな地球星で、いま大問題が暴発しているところである。アメリカ最高の頭脳たちが、リーマンショックの牽引車となり、世界最強の軍が世界を覇権しようとしている。中国の指導者がアメリカが犯した轍を後追いするように追いつけ追いこせ競走に参加している。中国には先人が深慮した東洋の英知は消失してしまったのだろうか。
I: アメリカにも中国にも物怖じしないテインセイン大統領に、この問題をケーススタディとして取上げてもらうという提案はどうであろう。もちろん突飛なことは重々承知している。そして、彼ひとりで解決できるシンプルな問題でないことも承知している。だが、テインセインは将兵を使いこなせる真のゼネラルである。他は将軍という肩書きで周りを押し黙らせることはできるが、仕事師ではない。
またまた紙数がとっくに過ぎてしまった。要領が悪くて本当に困ってしまう。
冷えたミャンマー・ビールで頭をクールにして、もういちど出直そう。ウィスキーもまだ半分残っている。
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