******************************

<ミャンマーで今、何が?> Vol.147
2015.06.05

http://www.fis-net.co.jp/Myanmar

******************************


━━━━━━━━━━━━━━━━━ MENU ━━━━━━━━━━━━━━━

■現代の奴隷貿易船

 ・01:しつこくてスミマセン

 ・02:5月29日にバンコクで緊急総会

 ・03:ミャンマー海軍がボート難民を救助

 ・04:著名人もミャンマー政府を非難

 ・05:外国報道に対しヤンゴンでデモ

 ・06:ミャンマー人、バングラ人のみならずカンボジア人も

 ・07:奴隷貿易の幽霊船

 ・08:オーストラリアもニュージーランドも“ノー・サンキュー”

 ・09:さあ、そこで解決策は?・・

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


======================================

01:しつこくてスミマセン

======================================


5月13日付第144号「天国と地獄の間」、そして5月27日第146号「ボートピープル続編」に続いて、今回も同じ話題である。しつこいようだが、テインセイン政権を揺さぶる火種になるかもしれないとの予感がするので、今回もお付き合い願いたい。

テインセインにとっては、本件をうまく納めれば、逆に大統領職をもう一期の声が沸き起こるかもしれない。すなわち、この問題は両刃の刀である。植民地時代に英国の老獪さを充分に学習していれば、この問題を解決するのは、それほど難しいことではないかもしれない。

だが、失敗すれば、世界中(特に欧米)のブーイングはテインセイン政権に集中する。



======================================

02:5月29日にバンコクで緊急総会

======================================


当初、この会議への出席を渋っていたミャンマー政府であったが、最終的に5人の代表団を送込んだ。そして会議に出席した団長の声は6月1日付GNLM紙に掲載された。

ボート難民の原産国はミャンマーだとの非難に対し、原産国は近隣国でミャンマーは単に通過国に過ぎない、ミャンマー政府は人道的見地からこれらのボート難民を救助するが、本来の原産国に送り返すことになると団長は語った。近隣国と直接の名指しは避けたが、これは明らかにバングラデッシュを意味する。

人身売買と人間の密輸を撲滅し、ボート難民を捜索・救助することで協力することが議題の中心となった。この問題の真の悪玉は、ボートピープルを食い物にするマフィアの親分で、関係諸国は人身売買に対して協力して立ち向かわねばならないと代表団は発言している。

これらは充分な証拠を用意した上で説明したので、その後、ミャンマーを非難する声は出なくなった。

ボートピープルを巡るこの緊急総会は、米国オバマ政権の圧力で、タイ政府が近隣諸国に呼びかけ実現したが、ミャンマー政府のみを悪の根源に仕立てようとしたその目論見は完全に粉砕された。これはミャンマー外交の勝利である。かといって、ボート難民の解決策はなにひとつ採択されなかった。



======================================

03:ミャンマー海軍がボート難民を救助

======================================


5月21日、ミャンマー海軍はボート難民を救助した。救助した難民208名のうち、200名はバングラ人であるとミャンマー政府は見做すが、バングラ政府は更なる証拠を見せろと要求している。

連邦政府、ラカイン州政府、国連機関、国際NGO機関などの代表がラカイン州マウントウ町アレタンチョウ村の避難キャンプに救助された 208名の難民を調査のために訪れ、その大半がコックスバザール、チッタゴン、ダッカからのバングラデッシュ人で、仕事を見つけるためにタイおよびマレーシアへ向かおうとしたことが判明した。

救助されたひとりは、日給$26(=2600円)以上稼げると説得されボートに乗り込み、別の一人は、友人とお茶を飲んでいたら、三人の男にボートに連れ去られたと語り、あとで聞かされたところでは、お茶を一緒に飲んでいた友人が$260(=26000円)で彼を三人に売ったとのことである。いまとなっては、一日も早く家族のもとに帰りたいと訴えている。

職がないという深刻な背景があるとしても、危ない話との危機感はまったくない。生活苦で、それほどまでに追い込まれているのかもしれない。

バングラデッシュから来たと答えれば、バングラデッシュに送還されるだけ、どの国の官憲に尋問されても、自分はロヒンジャーだと答える場合もある。そうすれば、難民として国際機関が認定するチャンスがあるとの、知恵は身につけているという。

これに加えて、5月29日には、727名のボート難民がミャンマー海軍によって救助された。


======================================

04:著名人もミャンマー政府を非難 

======================================


5月26日、ノルウェーのオスロで“ロヒンジャーに対する迫害を、ミャンマーは中止せよ!”という著名人による国際フォーラムが開かれた。ビデオ出席を含めて国際投資家のジョージ・ソロス、マレーシアの元マハティール首相、ノーベル賞受賞者デズモンド・ツツ大司教などの出席者が声明を読み上げた。

ミャンマー外務省は即座に反論の声明を発表し、このオスロ会議は、これまでミャンマーが行ってきた問題解決の努力に対し、盲目的で的外れであるだけでなく、国際的にミャンマーに対する偏見のイメージを伝えるものであると強く非難した。



======================================

05:外国報道に対しヤンゴンでデモ

======================================


5月27日、ベンガル湾およびマラッカ海峡でのいわゆるボート危機に関する外国メディアの報道は不当である、と叫んで800人以上の大衆がヤンゴンの通りでデモを行った。

ボート難民はミャンマーが発進国だとして、その責任を一方的にミャンマーに押し付ける外国メディアの報道は間違っていると主張するものである。



======================================

06:ミャンマー人、バングラ人のみならずカンボジア人も

======================================


これは中国の新華社電が5月27日カンボジアのプノンペン発として、伝えたニュースである。違法漁船で不法労働を強いられていた59名のカンボジア人がインドネシア政府の協力で救助されたとカンボジア外務省は発表した。

インドネシアのアンボン島でタイの漁船から21名のカンボジア人が救助され、同じくインドネシアのベンジナ島でもタイの漁船から38名のカンボジア人が救助された。

彼らは長時間の労働を強いられ、肉体的にも精神的にも非常な苦痛を味わった。ほとんどは賃金を支払われず、数ヶ月間から時には数年間にわたる航海に従事させられていた。

これによって、強制労働にはタイの魚船が絡んでいること、その漁業基地としているのは多島国家(監視の目があまり届かない)のインドネシアであること、そしてバングラやカンボジアなどの近隣最貧国の無知な労働者がその犠牲になっていること、などが読み取れる。

そして、地球の裏側に当たる地中海でも、北アフリカからの難民が、危険を犯して続々とイタリアへ、そしてそれから先の欧州へと向かい、天国を夢見る。

いまは、ミャンマーがこの地球上で残された唯一のエルドラドだという経済思想だけで参入すれば、経営者として、一介の地球人として、将来取り返しもつかない汚点を残すかもしれない。



======================================

07:奴隷貿易の幽霊船

======================================


今、ここに一枚の大きな写真がある。日付はMT紙6月02日号である。写真説明には、5月29日、イラワジ地区沿岸沖合いで海軍に救助されたボートに座り込む難民たち、となっている。

接舷した海軍の救助艇から撮ったものであろう。中央部に水槽らしきものが6個ほど並んでおり、それは空っぽ。その両側に数えてみると、200名以上のヒゲ面の男たちが上半身裸で、座りこんでいる。座っているといっても胡坐をかくスペースはない。全員胸に膝を抱えるようにして、ぎっしりと座っている。トイレなどどうするのだろう。この写真を見ていると昔の奴隷船がこのような状況だったのではと想像する。

いま、欧米のメディアは“人権!人権!”と騒ぎ立てるが、何のことはない、この平和だった地球上で欧米人が発明・確立した奴隷貿易の積荷システムが、数百年の時差を経て、このアンダマン海域に再現されているだけではないか? アフリカ人の祟りが21世紀のアジアに。あるいは、奴隷貿易の幽霊船がアンダマン海にと、言ってもいいかもしれない。それを人権のひと言で済ませられるのか。



======================================

08:オーストラリアもニュージーランドも“ノー・サンキュー”

======================================


驚いたことに、バングラ発の難民船は南下、南下を続けて、マレーシア・インドネシアを抜けると、はるかオーストラリアにまで達する。その中には、スリランカ発の難民船もあるから、話はさらに複雑になる。だが、スリランカも世界最貧国のひとつといわれている。

これからすると、すべての発生源は、世界最貧国にあるともいえる。この問題はあとで取上げよう。

ところが、オーストラリアに出現した保守党内閣は2013年に移民政策を強化して、難民になる可能性のボートピープルをすべて海軍の力で領海外に押し返す実力行使をとるようになった。

オーストラリアはご承知の通り、白豪主義(英語でホワイト・オーストラリアン・ポリシーという)を採用し、20世紀初頭には、すべての有色人種の入国・移住を禁止することで、国民的合意が形成されており、白人国家オーストラリアのシンボルであった。この政策は1960年代まで続いた。1970年代以降はアジア系移民や難民を大量に受入れたが、忘れた頃に今回のように白豪主義の遺物が返り咲きすることもある。

オーストラリアの位置関係は、ティモール海を隔てて、インドネシアは隣国である。そこでこの両国の間でピンポンゲームが開始される。

そのとばっちりを受けたのが兄弟国のニュージーランド(NZ)である。NZ首相はオーストラリアが強攻策をとるようになってからは、難民船の目的地はオーストラリアを飛び越えてNZになったと警告を発した。ボートピープルにとっては、危険な航海の距離が大幅に伸びたことになる。

だが、NZの真意も肌の黒い貧乏人の難民は要らないという、オーストラリア人と何ら変わることのない発言である。



======================================

09:さあ、そこで解決策は?、、

======================================


テインセイン大統領は確実に大英帝国の老獪さを身につけたようだ。
機は熟してきた。次は、誰もが驚く、ネイピードで“ボート難民”解決の国際フォーラムを呼びかけたらどうだろう。

米国は最初は、ミャンマー・タイ・マレーシア・インドネシアの関係四カ国で解決を図るよう圧力をかけてきた。お前たちだけで解決しろという圧力である。どうして世界最貧国を生み出す経済システムが出来上がったかという原因にはなにひとつ触れていない。これでは本質的な解決にはならない。当然ながら解決策は提示されず、先送りになっただけだ。

21世紀の絶望的といえる経済格差を作り出したのは、16世紀以降地球を支配しようとした白人社会のアドバンデージがいまも脈々と引継がれているからだ。経済社会ともいえないまだ芽を出したばかりのチッポケなミャンマー村に、どうして地球規模での海外大資本が参入してこなければならないのか? 彼らは自由競争ができなければフェアではないという。大人と子供をケンカさせて、フェアなルールというものあるのだろうか?

本当は、ここで人身売買というビジネスについて、詳述すべきなのだが、紙数が尽きてしまった次に機会があれば、取上げたい。

テインセイン大統領とそのブレーンは、そこのところは充分に学習済みだ。これは経済格差問題であり、人種偏見問題である。欧米メディアが避難する宗教問題でも人権問題でもない。だから、テインセイン大統領は、最初からロヒンジャーの移住先は国外に設営し、国連でも、海外の人権機関でも引き取ってほしいと回答している。なお、ミャンマーの135のエスニック民族にはロヒンジャーという民族名はない。ベンガリ族が公式名称である。

そして、歴史的にネイティブの広大な土地を武力で略奪して、我が物顔で占有してきた、アメリカ、オーストラリア、カナダ、ロシアなどの巨大な白人国家は、歴史的にボート難民に対する責任の一端があるように思われる。それと、地球の規模・サイズなどから見て、領土の巨大な国も、これら大量の経済難民に対して受入れるフェアさがあってよいのではないか。

このようなことを考慮すると、経済難民産出国などの意見も聴取して、歴史的に経済大国を誇る国々は何らかの格差解消の貢献をすべきと思う。

だが、ここまで見事な舵取りをみせてきたテインセイン大統領であれば、その頭脳の中には参加国が驚く奇策が潜んでいるかもしれない。とにかく、前回リストアップした国々を含めて、歴史的な透明性のある国際フォーラムを企画すれば、テインセイン大統領のノーベル賞と次期大統領は夢ではないだろう。




━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ご意見、ご感想、ご要望をお待ちしております!
 magmyanmar@fis-net.co.jp 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


=================================
- ご注意 -
このメールマガジンは情報提供を目的としたものであります。
なお、内容につきましては正確であるよう最善を尽くしておりますが、その内容
の正確性を保証するものではなく、内容についての一切の責任を負うものではあ
りません。
=================================


▽このメールマガジンは等幅フォントでご覧ください
 表示がズレる場合はお使いのメールソフトのフォントの設定をご確認下さい
 ※MS Outlook Expressの場合
 「表示→文字のサイズ」を選択、「等幅」にチェック


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
※「ミャンマーは今?」の全文または一部の文章をホームページ、メーリングリ
スト、ニュースグループまたは他のメディア、社内メーリングリスト、社内掲示
板等への無断転載を禁止します。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
※登録解除については下記のページからおこなえます。
 ○購読をキャンセル: http://www.fis-net.co.jp/myanmar/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 発行元:ミャンマーメールマガジン事務局( magmyanmar@fis-net.co.jp )
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━