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<ミャンマーで今、何が?> Vol.140
2015.04.08
http://www.fis-net.co.jp/Myanmar
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■2015年水祭り雑感
・01:アルコールに弱いミャンマーの若者たち
・02:セクレタリアート・ビルディング界隈
・03:一般的な水祭りのご案内
・04:水祭りのジュネーブ協定
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テインセイン大統領にとって総仕上げの年2015年に突入したのはつい昨日だったような気がする。だが、2015年はすでに四分の一が消え去った。過ぎ去った三ヶ月間は二度と戻ってこない。であるなら、これから先、一日一日を大切に生きることだ。
日本では一月一日に新年を迎え、どういうわけか4月に学校も政府も新年度として開始する。だが、当地ミャンマーでは4月に新年を迎え、すべては4月にスタートする。実にすっきりしている。
2011年3月31日にすべては始まった。それから4年間、ありとあらゆる分野で、予想もつかぬスピードで大変革が実行されていった。東西南北研究所では、ミャンマーという世界最貧国がテインセインという人物を大統領に戴かなければ、これらは成し得なかった偉業と評価している。米国の大統領レベルに、あるいは日本の首相程度にノーベル平和賞が授与されるのであれば、ミャンマーに大変革を起こしたこの人物に授与されてもおかしくないのではと評価している。
だが、国民はこの4年間の激変に麻痺してしまったのか、テインセイン大統領を低く評価しているようだ。2015年の水祭りは、これまでの屈折した水祭りとは異なり、精神的にも実質的にもかなりの「自由さ」を謳歌できる雰囲気になってきた。水と空気はタダだと誤解している国民がいるのと同様に、この国の人々も民主主義というものがタダで入手できると誤解している節がある。
そのあたりも含めて、2015年の水祭りを目前に控えた今、雑感として心に思い浮かんだことをそのままに書き留めておきたい。
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01:アルコールに弱いミャンマーの若者たち
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普段はおとなしく、蚊の鳴くような声で話しかけるミャンマーの青年たちだが、水祭りは無礼講だと容認され、缶ビールを、ときにはウィスキーの小瓶を片手に、タバコを吹かし、肩を怒らし、欧米の怒れる若者たちの真似をする。日頃クソ真面目な若者ほど、アルコールへの抵抗力が弱い。
まるでワレワレの学生時代を思い出す。サントリーレッドやハイニッカを街角の洋酒バーではじめて飲んだころだ。その後仕事で出会った、ロシア人とウォッカを粋がってあおったり、スカンジナビアの連中とビールをチェーサーとしてアクアビットを一気飲みするうちに、もちろん個人差もあるだろうが、日本人が体質的にアルコールへの抵抗力が弱いことを痛切に勉強させてもらった。
その落差と同じくらいミャンマーの若者はアルコールに弱い。だが、水祭りはそれを体感するに絶好の機会だ。水祭りは無礼講である。大いに飲んで青春を楽しめばよい。逃げ場のない二日酔いの頭で、大人の痛みを知り、大きく成長していけばよい。
「民主主義はワーストの中でベストの選択である」はウィンストン・チャーチルの言葉だったかしら?
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02:セクレタリアート・ビルディング界隈
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ここはヤンゴン発祥の地ともいえるダウンタウンの中心街をなす。とくにこのビルディングの東端を南北に走るテインビュー大通りは交通を遮断して地下下水溝の大工事をおこなっている。本格的に鉄棒を組み込んだ木枠にコンクリを流し込み、これまでにない大々的なものである。水祭りを間近に控え、突貫工事で完成を目指すかと思えば、夕方になれば、その日の仕事は終了である。
高度成長に闇雲に突き進んでいった東京オリンピックの日本人とはまったく異なるミャンマー方式である。家庭にではなく会社に人生の大半を捧げてきた日本方式が果たして望ましいのか、それは個人個人が選択することで、どちらが正解とは言えない。ただミャンマー方式は、日本人にとって、人生の生き方を見直させてくれる良い教本でもある。
そのセクレタリアート・ビルディングの東端テインビュー通りとマハ・バンドゥーラ通りの角にUFCという総ガラス張りのビルが出現した。正式名称はユニオン・ファイナンシャル・CENTERと大きなロゴで書いてある。英国式の伝統を踏襲するヤンゴンでは異様な感じのロゴである。これがCENTREなら許せる。CENTERとは重厚な英国式とは違い軽薄な米国式である。だが、ここがどうもヤンゴンの外為銀行の中心地になるらしい。
MUFG銀行、OCBC銀行、CB銀行などの外銀の看板がすでに掲げられている。1階角の一等地にはミャンマーの誇る国防軍経営のミャワディ銀行が両大通りから見えるようについ数日前にロゴマークを設置した。ひょっとしてロンドンのシティー、ニューヨークのウォール街を目指しているのかもしれない。水祭り明けには営業開始予定で、現在は新規採用した従業員への研修に汗だくとのウワサも流れてくる。
ただ、長年ヤンゴンに居候している身分としては、あの総ガラス張りという高層ビルは見た目はマンハッタンやシンガポール並みの格好良さがあるが、停電になると日焼けサロン効果で全員こんがり小麦色かなとも考えこんでしまう。
同じマハ・バンドゥーラ大通りの東隣のブロックでは、ジャンクション・グループが開店するとのウワサも流れており、今、ヤンゴンの下町が大きく変わろうとしている。このマハ・バンドゥーラは日本企業が進出するティラワ深海港への通り道なので、そういう意味でもヤンゴンは北へ発展するだけでなく、東に向かっても発展していることが見て取れる。
ただし、これらはすべてこの界隈の行きつけの路上喫茶で仕入れたウワサなので、当たるも八卦、当たらぬも八卦と賢明に嗅ぎ分けてほしい。
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03:一般的な水祭りのご案内
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話は逸れたが、セクレタリアート・ビルディングの北端と南端を東西に走るアノーヤッタ通りとマハ・バンドゥーラ通りでは、水祭りの舞台となるパンドール(Pandal)がすでに木材を持ち込んで着々と組み立てが進んでいる。とくに最後の仕上げである蛍光カラーのスプレー式水ホースが最上階の前面にずらりと並ぶと、ミャンマー人の職人芸を見直したくなる。
すべては有力企業がスポンサーとなり、一日券あるいは四日間通用券を発売する。有名映画俳優が司会をしたり、有名歌手が大音響で歌ったり、それぞれの趣向を凝らしている。それで元手を回収しさらにもうけるスポンサーもいれば、大損をこくスポンサーもいる。
そしてリッチなファミリーは購入した券で一日このパンドールの舞台上で過ごし、家族で最前列に陣取り、過去一年の垢を落としに進んで列を作る大型トラックや小型トラックの行列にこの蛍光カラーのスプレー式ホースで集中攻撃し、お大尽になったつもりで一日を満喫する。これが今年は13・14・15・16日と4日間続き、翌17日が打って変わって静寂な新年となる。
そして仕事場単位で、友人同士で、車を手配して、YCDC(ヤンゴン市庁舎)前に設けられたパンドールをはじめとしてカンドジー湖周辺などの人気パンドールを次々に巡回していく。過去に最も楽しんだのは大型トラックをチャーターし、大型水槽を真ん中に2・3個固定して満タンにする。そして氷屋に立ち寄って、大氷柱をこの水槽に入れられるだけ購入する。この冷やりとする水を最近の性能の良い水鉄砲で行き交う車にぶちかますも良し、通り行く善男善女に狙い撃ちするも良し。
そして人気パンドールではこれらトラックの長い行列が二重・三重に順番待ちをする。30分待っても5メートルほどしか進まないときもある。このときに、隣近所のトラックとエールの交換でこの冷たい水が威力を発揮するのである。どうしても美人の女の子に放水は集中する。みな大きめのバスタオルで頭を被っている。でも、完全に被ってしまうと自分が美人であることを証明できない。そこで顔だけを覗かす。すると、そこへ集中攻撃がやってくる。美人もそれなりに大変なようだ。
毎年毎年水鉄砲の性能はテポドン並みに性能が向上している。逆に北朝鮮もミャンマーの水祭りから先端技術を吸収しているのかもしれない。中には高圧消防ホースを備えたトラックもある。後ろでしっかり結んでいないとチャチなサングラスなどどこかにすっ飛ばされてしまう。だから、ひたすらバスタオルで頭部を護るのだ。中には彼女と相合いバスタオルでいい気分になっていると、この高圧消防ホースでバスタオルが吹っ飛ばされることもある。
そしてやっとお目当ての人気パンドールの真下に来ると、舞台上の真上から集中放水を浴びる。ここでは華厳の滝と那智の滝を同時に浴びるよりもすごい重圧を感じるはずだ。しっかりと彼女を護るか、自分自身をガードするか、アナタの事情次第だ。
しかし、これにもルールがあり、ジュネーブ協定によれば、基本的には朝9時からこれらの儀式は開始し、ヒルの12時から休戦状態でホテルなどで昼食を取る。午後1時から戦闘は再開し、夕方5-6時ごろにその日の戦闘は終了する。
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04:水祭りのジュネーブ協定
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だが、これらの戦闘時間外にベビーギャングたちがジュネーブ協定を破って路地から飛び出し奇襲攻撃を仕掛けてくることがある。そのときは、その場を逃げずに立ち止まり、子供たちがなすがままに洗礼を受けるのが大人の態度である。そして、その心は、過去一年間の穢れた心を洗い流してくれてありがとうと、ベビーギャングに頭を垂れるのである。そうすれば、アナタにも良い新年が訪れるというものだ。
この車をチャーターしてのパンドール巡りは醍醐味ではあるが、荷台はずぶ濡れで滑りやすく、しかも運ちゃんが酒を飲んで無謀運転もありうる。そう、危険なのである。そこで、もうひとつの楽しみは、近くのパンドールの向かい側には、必ず路上喫茶や簡易屋台が特設される。この期間中限定の缶ビールでも飲みながら、ただし値段は普段の二倍を覚悟してほしい、カメラを片手に目の前のパンドール上の人たちと次々に集中放水を受けては去っていくトラック荷台の人たちをバシッバシッと撮影するのである。真夏の光線の具合、そして角度によって、ほとばしる水が逆反射して、幻想的な瞬間をモノにできることもある。
そしてジュネーブ協定で決められているのは、これら路上屋台などには、絶対に水を掛けてはいけないことになっている。もし、違反したときには、これらのおばちゃんたちからすごい剣幕でどやされ、その近辺に入られなくなる。だから、この路上屋台ではカメラも安全である。だが、そこに行き着くまでの路上でベビーギャングの奇襲はありうる。ビニール袋で財布とカメラは保護してほしい。そしてできたら小型タオルも一枚は用意したい。
この水祭り期間中に訪緬される方は、とくに初めての方は大いに楽しんでいただきたい。
ミャンマー人でも、この水祭り期間中に全財産を注ぎ込む貧乏人もいれば、普段勤務する工場ではあまり優秀ではないが、水鉄砲の改良には最先端の技術を導入しようと全エネルギーを投入するマニアもいる。
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