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<ミャンマーで今、何が?> Vol.137
2015.03.18
http://www.fis-net.co.jp/Myanmar
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■ミャンマーは今、平穏無事
・01:秘密諜報部員
・02:ビルマの近代史とミャンマーの現代史
・03:ミャンマーは今、平穏無事
・04:問題はラウッカイではなく老獪さだ
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01:秘密諜報部員
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早朝、いつものように、座り読み自由の無料図書館に行く。街角のニューススタンドのことである。そこで出来立ての新鮮な日刊英字紙GNLMを手に入れる。顔なじみの亭主が最新情報を耳打ちしてくれる。
これまで週刊だった英字新聞“ミャンマー・タイムス”が明日(3月16日)から日刊になるという。といっても、2日間は休刊で、一週間に5日のみの発行だそうだ。それでもデイリーとうたっている。多分テスト的な移行期間なのだろう。価格もこれまでの1200チャットから、500チャットに大幅値下げとなる。だが、読者からすると、一週間で2,500チャットの出費は、1,300チャットの大幅値上げとなる。そこで読者の反応を見ようと、テスト期間を設けたのかもしれない。もちろん年間契約だと販促特別レートが適用される。
これだけの情報を聞き出すのにちょっとした時間を費やす。愛想のいい亭主とワタシの会話は、
身振り手振り語・ミャンマー語・英語の3ヶ国語から成り立っている。この亭主と、もうひとり路上喫茶のオヤジは東西南北研究所の実に有能な諜報部員である。だが、このことは本人たち自身も知らない。
当局の目を欺くために、この二人の雇用契約は極秘の極秘となっている。そして給与もどじな現金手渡しなどではない。たまにクッキーを差し入れたり、写真を撮ってプリントして渡すと大いに喜ばれる。亭主もオヤジもともに愛妻家だ。カメラを向けると細君と一緒にニッコリしてくれる。二人とも偶然だが、細君を自分のボスと呼ぶ。本当は恐妻家なのかもしれない。
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02:ビルマの近代史とミャンマーの現代史
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路上喫茶に移動し、死ぬほど甘ったるいミルクティを注文しながら、いつもの日課でGNLM紙に目を通す。コーカン地区でのドンパチは政府軍と反政府軍との間で陣取り合戦が一進一退を続けている。勝敗がはっきりするまでにはかなりの時間が必要だろう。
いっぽうで、KIO(カチン独立軍)の代表団(8名)をミャンマー副大統領率いる中央政府平和交渉調停委員会(UPWC)が歓迎夕食会に招き、両者が平和交渉のテーブルにやっと着席した。16の武装民族グループを代表するNCCT(全国規模の停戦調停チーム)と政府の交渉も今週再開される。中央政府が武装グループすべてをコントロール下に置くのは理想的かもしれないが、それは多数民族国家を理解できないヨソモノの考えることで、各民族は政府が介入しない自治を要求している。
ビルマ族を代表したアウンサン将軍の臨時政府は、そのあたりの交渉に手間取り、最終的にはエスニック民族への大幅な自治を1947年に締結したパンロン協定で約束した。ところが、数ヵ月後のアウンサンおよび閣僚暗殺で、ビルマ族の中央政府はこの協定書を反故としてしまった。
これは明らかに、中央政府の各民族に対する裏切り行為で、その不信感が今日まで持ち越されてきた。ここにすべての原因は発する。ミャンマー劇場のおもしろさは、それだけではない。この芝居の劇作家はもっと巧妙な筋書きを用意した。それは共産主義とクオミンタン(蒋介石率いる国民党)の華々しい追討劇と、クオミンタンと麻薬問題というスパイスを利かせ、その上に麻薬にはCIAまで絡ませている。
欧米人好みの、善か悪かで、白黒つけられるような単純な問題ではないのだ。
それにもかかわらず、欧米の政府は、信じられないことに国連までもが、もっと信じられないことにはマスコミまでもが、早く決着をつけろとテインセイン大統領にプレッシャーをかける。
それに乗じて北京・中国政府までもが、奇妙な記者発表をしている。ミャンマー政府の果敢地区に対する掃討作戦で、大量の難民が中国雲南省に流入していると文句を言っている。毛沢東共産党は文化大革命などを通じて、自国の偉大な歴史まで否定してしまったが、近代も現代の歴史もそ知らぬ顔のようだ。少しは大国らしい対応を見せてほしいところだが、人間がコモノ化してしまったようだ。
古くは明の時代に中央から追われた中国人を無償で匿ったのが果敢地区で、近くは中国の人民解放軍に追われたクオミンタンが大量に逃げ込んだのがビルマの国境地帯である。それがミャンマー武装エスニック問題の大根源のひとつになっていることを、もう少しマジに勉強してほしいものだ。そして国境地帯での麻薬問題もこれら中国人が資金源として独占していることに、もう少しマジに責任を持ってほしいものである。
国境地帯でのドンパチも、果敢地区でのドンパチも、アフガン同様に、山岳地帯である。しかも最近の武器はコンピュータ制御でかなり高度化している。当然パワフル軍事大国からの援助なくしては整備できないものだ。そのあたりに、どこが支援しているかと、きな臭い話が飛び交っている。
口で平和交渉だ、平和協定だというのは簡単だ。とくに不信感が根深い場合には、そして歴史的に溝が深くなっている場合には、お互いが相手を信頼し、リスペクトするようになるまでは、相当の時間がかかる。仮に10項目だ、30項目だという、基本合意ができたとしても、それで安心はできない。細部の詰めで合意不成立もありうる。
だから、欧米政府が、国際人権団体が、プレッシャーをかけて、協定を急がすことには、別の危険が潜んでいる。欧米のリーダーたちはアフガン、中東、アフリカの現代史から何も学んではいないのだろうか。
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03:ミャンマーは今、平穏無事
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マンダレーからヤンゴンに向けて行進していた学生デモも、何故だか焦点が絞られていない。いっぽうで政府側と交渉の席に着いたかと思うと、いっぽうでデモを再開する。政府側の警察隊は完全にコントロールできと自信があるようだ。
工場の座り込みデモや路上行進デモも同様で、不満の捌け口のような役割を果たしているのが、今のミャンマーの民主化運動のような気がする。
その不満の捌け口を十分に斟酌した上で、対応策を考えているのが、テインセイン大統領の方針のようだ。国内問題は十分に抑えることができると自信を持っているのであろう。
だからこそ、マレーシアの招きに応じ、夫人そして大臣など政府高官一行を伴い、テインセイン大統領は、3月12日、国賓としてクアラルンプールを訪れた。国内治安に自信がなければ、できない行為である。小競り合いはこれからもあるとしても、ミャンマーは今、平穏無事ということである。
ミャンマーを支援すると大見得を切っていた隣国のタイや、東アジアの韓国のほうが、むしろ国内問題で頭を抱えているように映る。米国などその際たるもので、よくあれだけの国内問題を抱えながら、他国のことにお節介を焼けるものだと感心してしまう。
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04:問題はラウッカイではなく老獪さだ
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これらを総括すると、すべてはテインセイン大統領の手のひらでの出来事のようにも見えてくる。2015年を自分の任期の最後の仕上げの年のようなポーズをとっているが、どうしてどうして、そのしたたかさは今のコモノ化した世界のリーダーの中では卓越したものがある。
今のミャンマー軍人部落の中で、オレがオレがの連中は、テインセインの芽を摘んで、レイムダックに一時は追い込んだように見えたが、どうしてどうして、今この国を動乱を起こさずに発展させることができるのは、この人物を置いて他にいないような気がする。読者の皆さんはいかがお考えだろうか。
大統領は陸海空三軍の長ではないが、軍のお偉いさんたちを、時間を掛けて、相対的にコモノ化することに、成功してきた。外圧もうまく利用してである。この老獪さはチャーチルをも凌いでいるように映る。
今週、ミャンマーの高名なコラムニストが、ミャンマーは軍人の支配下に置かれた民主主義国家であると語っているが、言い得て妙の名言である。
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