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<ミャンマーで今、何が?> Vol.132
2015.02.11
http://www.fis-net.co.jp/Myanmar
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■マイ・フェア・レディ
・01:MFL
・02:コックニー言葉
・03:コベント・ガーデン
・04:ヒギンス教授とピカリング大佐
・05:イライザ再登場
・06:ピグマリオン
・07:映画「マイ・フェア・レディ」の唯一の汚点
・08:お詫びします
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01:MFL
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恐れていたことが、また起こった。呼び出しを受けたのである。メルマガVol.97に登場したヤンゴンに長く住む例の日本人だ。日本語教師をやっているくせに、英語の話題だと嬉々として難癖を付けてくる。最近オープンしたばかりの居酒屋に拉致された。
驚いたことに、話しぶりが穏やかだ。英語学習にはどのDVDが良いかと質問された。共に芋焼酎を飲みはじめたが、まだろれつが判然としない。イモ・ショウチュウ、これもISの一種ですな、とつまらぬ冗談を言う。話が見えてきた。この日本語の先生が密かに英語を勉強し始めたようだ。
その冗談を受け入れ、史上最大の傑作はMFLに限ると応じた。それは何だという顔をしている。少しばかり話しを真剣に聞く態度だ。古典的名画「マイ・フェア・レディ」のことである。酔っ払う前に、ナポリは見ずとも、このDVDだけは見ておくべきだと付け加えた。
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02:コックニー言葉
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ブロードウェーの舞台で大ヒットしたミュージカルを1964年に映画化したのもだ。ハリウッド映画だが、英国のロンドンが舞台で、ファックやシットなどの4文字卑猥語は出てこない。その代わりといっては何だが、上流階級からは下品と軽蔑されたロンドンの下町言葉コックニーがふんだんに出てくる。
ロンドンでは、セント・メアリー・ラ・ボウ(St.Mary-le-Bow)の鐘の音が届く範囲で生まれたのが下町っことされる。生粋のコックニーである。この寺院は東ロンドンを東西に走る大通りチープサイドにある。言ってみれば、浅草の浅草寺界隈、あるいは帝釈天で産湯をつかったようなものだ。だから、コックニー訛りをしゃべれば、ロンドンを代表する労働者階級と見做してくれる。
江戸っ子が“ヒ”と“シ”の区別が出来ないように、ロンドンの下町っこにも癖がある。“エイ”と“アイ”の分別を知らないのだ。“トゥデイ(今日)”を“トゥダイ(死ぬ)”と発音する。だから、“今日、病院に行った”が“死ぬために病院へ行った”とつまらぬジョークの元祖である。サンダイ・マンダイ・チューズダイの類である。
ヤンゴンの格式高いストランド・ホテルは1901年にオープンした。同じ年に、オーストラリア連邦が建国されている。言ってみれば、昨日今日出来たばかりの新興国である。あえて歴史に記録するとすれば、英国本国から遥か南方に隔り、流刑地としては最適であると大英帝国は考えた。オリバー・トゥイストに記述されるとおり、ロンドンの下町は犯罪の巣窟であった。ロンドン当局は、好ましからざる連中を捏造しては次から次にオーストラリアに送り込んだ。
これがアボリジニではないオーストラリア白人の祖先であり、オーストラリア人をからかうジョーク“I went to hospital to die!”とリンクしている訳だ。
もうひとつ話を脱線させると、英国人は鳥も通わぬ流刑地が大好きで、ナポレオンで有名な南大西洋の孤島セント・ヘレナ、タスマニア島、ベンガル湾東部のアンダマン島、海峡を隔てたビルマのココ・アイランド、ここには英国当局によって脱獄不可能な独房付き監獄が建設された。
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03:コベント・ガーデン
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コベント・ガーデンはウェスト・エンドの最東端に位置する。中央広場の野菜・フルーツ市場では労働階級の下町庶民でごったがえし、同名のコベント・ガーデンでは上演前と閉幕後には社交界の上流階級で賑わっていた。
劇場が跳ねたあとの一帯は、ロンドン名物の突然の雨で、着飾った紳士淑女が右往左往し、運転手付き自家用車や、御者付き馬車で、ごったがえしていた。タクシーまでもが今の目で見ると格好良いクラシックカーである。決して上流階級と労働者階級が入り混じらず共存していた。銀座と浅草の雰囲気を併せ持ったのがここコベント・ガーデンと言ったらよいだろうか?
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04:ヒギンス教授とピカリング大佐
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その猥雑なマーケットで、イライザという花売り娘が上流階級からは相手にされず、売れず仕舞いの花束を抱えて、雨降る中、コックニー訛りで当り散らしていた。その下品な言葉を盗み聞きしてはノートに記録しているのが傲慢な態度のヒギンス教授。
イライザの発音はまるで英語になっていない。腐臭を撒き散らす下水溝のような言葉だ、と散々イライザを馬鹿にする。ヒギンス教授はたいていのイギリス人ならその出身地を6マイル四方まで当てることができる。ロンドン市内ならば、2マイル以内も可能。場合によっては通りの名前まで当てられるとハッタリをきかす。
周りの連中が面白がって、自分の住む場所を当ててみろという。東京の地名で言うと、お前は築地、ご婦人は田園調布、お前は赤羽だな、と片っ端から正解し、皆を驚かす。そこに観劇帰りと思しき正装した老紳士が、話言葉で住所を言い当てる商売を浅草の舞台でやったらどうだと冷やかす。そこで野次馬が、この老紳士の出自を当ててみろという。「生まれはチェッテンハム、ハーロー校、そしてケンブリッジ大学。それに付け加えてインドが混じっている。」、「まさにその通り」と老紳士が目を丸くする。
簡単な音声学。すなわち話し方の科学。それが私の専門職で、趣味でもあると、教授は自己紹介する。すると老紳士は、私はインド方言を研究し、サンスクリット語の話法について本も書いていると応じる。それなら、インドに住む有名なピカリング大佐を知っているかと教授が問い返す。老紳士がさらに目を丸くし、私がそのピカリング大佐だと答える。「私はピカリング大佐に会いにインドに行こうと考えていたところだ。」と、ヒギンス教授が改めて自己紹介する。すると、大佐が「私はヒギンス教授に会うためにイギリスに戻ってきたところだ。」と応じる。
まるで映画のように旨くできたシナリオである。続いてどこに泊っているかと教授が聞き、カールトン・ホテルだと大佐が答える。大佐は誘われるままホテルを引き払い、教授の使用人付き大邸宅に逗留することになる。
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05:イライザ再登場
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「6ヶ月間の特訓でドブネズミの言葉でも、大使館の舞踏会で通用する貴婦人に仕立て上げる。」と豪語していた教授をイライザが訪ねてくる。授業料の高さに愕然とするが、大佐が助太刀を出し、6ヶ月を期限として、大佐と教授の間で賭けが成立する。負ければ大佐が授業料を払うということだ。
この映画は、それからの厳しい英語特訓の物語である。そして語学だけでなく、イライザが貴婦人に変貌していく。周りの上流階級が、彼女の変身振りにころりと・・・。これ以上は話さない。興味のある方は、ご自分でDVDを借り受けるなり、手に入れて鑑賞願いたい。
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06:ピグマリオン
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アイルランドが生んだ、あの皮肉屋バーナード・ショーの戯曲“ピグマリオン”が“マイ・フェア・レディ”の元本となっている。舞台上演の際には、 過激な“ファック”や“シット”ではなく、今の時代なら何ということもない“ブラディ”(血なまぐさい、残忍な)というセリフが過激だということで世間を騒がせた。言葉が生き物で、時代性を窺わせるエピソードである。
アイルランド人は紀元前4世紀にアイルランド島に移住してきたケルト人と9世紀に移住してきたノルマン人との混血で、イギリス本島のアングロ・サクソンとは気質はまったく異なる。そしてイギリスの圧政に反発して、“シン・フェーン(われわれ自身だけで)党”が結成される。英国に反旗を翻したビルマの“タキン(この国の主人は自分たちだ)党”と相通じるものがあり、アイルランド人に親密感を抱くビルマ人・ミャンマー人は大勢いる。
スーチーさんのために“ウォーク・オン(歩き続けなさい)”を書き・ライブのたびに唄ってきたU2のボノもアイルランド人である。
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07:映画「マイ・フェア・レディ」の唯一の汚点
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この映画は最優秀作品・監督・男優・音楽など、合計8つのアカデミー賞を総なめにした。だが、イライザ役を名演したオードリー・ヘップバーンに最優秀女優賞は与えられなかった。それがこの映画の唯一の汚点である。その責めは製作側ではなく、アカデミー賞選考委員会にある。
だが、この映画には英語の話だけでなく、インド方言の言語学者・ピカリング大佐がインドから帰国したりと、ビルマの植民地時代を沸騰させるようなセリフがあちこちにちりばめてある。英国上流階級のスノビッシュさと併せて味わっていただきたい。
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08:お詫びします
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前回の<英語の実験教室>で、各英単語には強のアクセントを下線(アンダーライン)で示したのだが、原稿送付の途中で下線が消滅してしまい、読者の皆さまにはご迷惑をお掛けしました。お詫びいたします。
2015年はテインセイン大統領仕上げの安定期に入ったのか、ミャンマーを揺るがす大ニュースは見当たらない。今週もパッとしない話題でお邪魔しました。
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