******************************

<ミャンマーで今、何が?> Vol.124
2014.12.10

http://www.fis-net.co.jp/Myanmar

******************************


━━━━━━━━━━━━━━━━━ MENU ━━━━━━━━━━━━━━━

■政治ダネにはウンザリ

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


政局が混沌としている。テインセイン大統領だけが、難問であった南シナ海問題も波風を立てずに、2014年の重大課題であったアセアン議長をこなし、ひとりホッとしている。そして、スーチーさんは予想通り、頑迷保守派から露骨な嫌がらせを受け、本来は政権奪取に集中したいところだが、不毛のエネルギー消耗戦に持ち込まれてしまった。2015年の幕開けまで、あと3週間しかない。そして国民総選挙は2015年11月に予定され、その結果によって大統領が決定する。時間的にはあと一年間あるが。そうのんびりもしていられない。彼女には有効なカードが残されていない。


ネイピードで開催されたアセアン東アジア・サミットにオバマ大統領が第二回目の訪緬を果たした。その出発直前にスーチーさんは、ミャンマーの民主化はこの二年間停滞したままだ。米国はあまりも楽観的過ぎた、とまるでオバマ大統領を非難するような声明を出している。実際に蜜月常態であった第一回目の訪緬と異なり、第二回目は両者の発言にしっくり行かないところがあった。


2016年を耽々と狙うヒラリーさんは、私ならもっと上手くやれるとほくそ笑んでいることだろう。だが、米国とミャンマーの大統領選では一年間の時差がある。両国ともに史上初の女性大統領が誕生すれば、レッドカーペットを準備し、国家元首としてお互いを招待し、手をつなぎながらの記者会見という夢の競艶は世紀のトップニュースとなることだろう。今このカードは手の内にない。


彼女は大統領・下院議長・国軍最高司令官・スーチーNLD党首からなる、四者会談をマスコミを通じ必死に呼びかけたが、特に大統領および最高司令官からは冷たく無視された。

12月3日付ロイター通信によれば、スーチー党首は12月4日にネイピードで国民投票で選抜されていない軍人籍の国会議員を招待して夕食会を企画していると発表したが、通信社は軍人議員からのコメントは取れず、さらには本件に関するレポートはその後流れてこない。つまり、この奇策も不発に終わったのだろう。


スーチーの有効カードは尽きてしまったようだ。


ところが、与党のUSDP(下院議長が党首)議員から六者会談の緊急動議が出され、採択された。そしてこの決定は大統領の署名を求め大統領府に回付された。ここで言う、六者会談とは、大統領・下院議長・上院議長・国軍最高司令官・NLDスーチー党首・少数民族を代表する議員一名という合計六者から構成される。そこで、暗礁に乗り上げてしまった憲法改正の打開策を討議しろという議案である。これは渡りに船で、スーチー党首に反対する理由はなく賛意を表明している。下院議長も同案を支持している。


大統領広報官は微妙な発言だが、消極的な賛意を表明というところか。


国軍最高司令官は、当初スーチー党首とは考えが異なるので、話し合いの意味はないとしていたが、最終的に大統領が同意すれば、これに従うものと思われる。だが、憲法に絡むこれまでの国軍最高司令官の発言は、欧米の経済制裁を氷解させたテインセイン大統領の努力および歩んできた足跡を後戻りさせるもので、洗練性にかけ、国家元首としては、その器を問われることになりそうだ。将来の大統領職を目指すのであれば、テインセイン大統領のしたたかさを見習うべきだろう。今のミャンマーを取り巻く政治的・経済的・文化的環境からすると、仮に欧米の民主主義国家を敵に廻せば、再び孤立化の袋小路に追い込まれることになるだろう。21世紀の今の時代、世界共存の哲学を語れるトップリーダーが求められているのではないだろうか。それは米国がモデルでもなく。中国がモデルでもない。ましてやビルマの領土を支配した英国でも日本でもない。ミャンマー自身がモデルになる。この点で独自路線を切り拓いたテインセイン大統領の功績は大きいと思われる。
あと3週間後に迫った2015年の大きな課題は“ミャンマーの大統領選挙”のみである。これによってミャンマーの将来は決まる。


もし、国軍最高司令官が闇将軍に忠実を尽くすあまり強硬派路線を突っ走れば、今の時代に要求される国際協調性に欠けるとして、大統領候補としては闇将軍から排除される危険がある。逆にこの点で、闇将軍から最も信頼されるのはテインセイン大統領そのひとであるように思われる。


テインセイン大統領にとっての2015年は、大統領候補としては死に体に徹して、ペースメーカーを埋め込んだ自分の身体の健康養生に努めるだけで良い。それでも、これまでの実績から世界中の各界のリーダーがお元気ですかとネイピードに立ち寄ってくれるだろう。だから、2015年は悠々自適と自宅、といっても大統領官邸だが、に引っ込んでいるわけにも行かないだろう。そうすれば、大統領選挙が近づくにしたがい、柿が熟するように敵は自滅していくものと思われる。つまり、闇将軍にとっても選択肢は、テインセインしかいないと言わせる家康戦略である。


テインセインなら、米国と中国をそれぞれにけん制させることができる。それは中国とインドにも当てはまり、ロシアと米国にも当てはまる。日本からも、韓国からも、シンガポールからも、それだけではない台湾からも投資資金を引き出せる。バランス感覚が優れているのである。だから、中国に気兼ねすることなく台湾ともつきあえる。この点では二者択一の西洋式ではないミャンマー式外交術を編み出した。テインセイン流といってもよいだろう。だから、国連も、世銀も、IFMなど、国際機関が今ミャンマーに注目している。世界の諜報機関、シンクタンクまでもがだ。


NLD党首もこの大統領と同じ69歳である。テインセインがさらに5年の大統領職を継続すれば、スーチーさん宿願の祖国大統領に就任する機会は非常に薄くなる。


だが、スーチーさんが最後の死闘を闘いたいなら、逆説的だが、唯一の戦略は小手先の戦術ではなく、2008年制定の憲法のおかげで自分には大統領資格がない。ついてはNLDも総選挙に参加せず、自身も大統領に立候補しないと宣言することだろう。そのひと言で、世界が、外圧が、動きはじめる。そうなれば与党側も、これでは民主選挙にならず、軍事政権独裁として慌てることだろう。だが、NLDも、本人も、それはないと早めに発表している。戦略の大失敗だ。政治家などというのは、前言を翻すなど朝飯前だ。果たしてそれが不可能だろうか?


最高司令官は21世紀の国家元首としては、バランス感覚のあるスマート性が要求される。残り一年間でその洗練された様をパフォームできるであろうか。それが大きな課題だ。スーチーさんの自滅を待つような今のパフォーマンスだけでは闇将軍としては物足りないだろう。


下院議長は、民主化路線の支持者を気取っているが、民族衣装の下から鎧がチラチラする。闇将軍からの採点だけでなく、国民の支持に欠けているように見受けられる。
だが、政治の世界は一寸先は闇である。2016年3月の大統領就任式に誰が選ばれるのか、今は誰もわからない。


東西南北研究所は、実を言うと政治にはまったく興味がない。時間の無駄だと思っている。だが、ミャンマーに関する世界のマスコミからミャンマーの今を読み解こうとしているだけである。


メルマガ今週号は、停滞しきったミャンマー情勢に嫌気が差して、南海の海の放浪者、シー・ジプシー、のご案内でもしようと用意していたのですが、欧米のマスコミが騒がしいので、それを取上げました。正直なところ、政治ダネはうんざりなので、年末・年始にかけては、ゆったりとミャンマーの歴史・文化・街角を散策したいと思っています。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ご意見、ご感想、ご要望をお待ちしております!
 magmyanmar@fis-net.co.jp 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


=================================
- ご注意 -
このメールマガジンは情報提供を目的としたものであります。
なお、内容につきましては正確であるよう最善を尽くしておりますが、その内容
の正確性を保証するものではなく、内容についての一切の責任を負うものではあ
りません。
=================================


▽このメールマガジンは等幅フォントでご覧ください
 表示がズレる場合はお使いのメールソフトのフォントの設定をご確認下さい
 ※MS Outlook Expressの場合
 「表示→文字のサイズ」を選択、「等幅」にチェック


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
※「ミャンマーは今?」の全文または一部の文章をホームページ、メーリングリ
スト、ニュースグループまたは他のメディア、社内メーリングリスト、社内掲示
板等への無断転載を禁止します。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
※登録解除については下記のページからおこなえます。
 ○購読をキャンセル: http://www.fis-net.co.jp/myanmar/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 発行元:ミャンマーメールマガジン事務局( magmyanmar@fis-net.co.jp )
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━