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<ミャンマーで今、何が?> Vol.12
2012.9.25

http://www.fis-net.co.jp/Myanmar


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■中国のミャンマー戦略

○トピックス
・01:オリエント-エキスプレス社が2013年にイラワジ川で豪華客船を運航
・02:ネイピードとヤンゴンで平和行進デモへの対応が異なる
・03:ミャンマー議会上院議長が中国での“世界平和の日”記念式典に出席
・04:世界周遊クルーズ会社が2014年の寄港地にヤンゴンを追加
・05:先週一週間の外電をどう読むか?
○中国の対ミャンマー戦略
○スーチー議員の動き
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・ミャンマーで今、何が?

■中国のミャンマー戦略



<01:オリエント-エキスプレス社が2013年にイラワジ川で豪華客船を運航>

同社は17年間、イラワジ川で「ロード・ツー・マンダレー号」を運航しているが、それに加えて来年7月就航予定の4層デッキ豪華客船プール付き「オルケラ号」を現在建造中である。冷房の効いた25の全客室には床から天井までの前面スライド式ガラスドアとジュリエットタイプのバルコニーが付いており、そのデッキチェアからはイラワジ川畔の人々の生活や自然の景観を身近に見学でき、特別に企画されたスポットでは錨を下ろし、寺院めぐり、幼児の出家儀式参観、熱帯雨林のジャングル・トレッキングなど陸上の小旅行も用意されている。最大乗客数50名に対して40名の乗組員がオリエント・エキスプレスとしての質の高いサービスを提供することになっている。水深の浅い操縦性に優れた「オルケラ号」はイラワジ川のヤンゴン・バモー間を1月から4月まで、そして7月から10月まで運航する予定とのことである。


<02:ネイピードとヤンゴンで平和行進デモへの対応が異なる>

国際平和の日を祈念する9月21日(金)のデモは首都ネイピードでは許可されず、5年ぶりに大規模なデモとなったヤンゴンでは結果的に看過されることとなった。どちらの事前申請も当局は不許可としていたが、ヤンゴン市庁舎前を出発したデモ行進に対しては警察官は何ら手出しをせず、最終目的地のインヤレークで“平和祈願”と刻んだ高さ1mの石膏記念碑を建て、平和の唄を歌い、短いスピーチのあと、大統領と議会に少数民族に対する内戦を終結するよう訴えた。そして5分間の黙祷をしたのちに白い花を参加者と取巻いて見守る警察官に配った。この平和行進は19の市民団体が組織したもので、人権団体・少数民族・宗教グループが含まれている。

当局側の対応が不統一といえばそれまでだが、強権的な態度が大きく様変わりしていることも見逃せない。



<03:ミャンマー議会上院議長が中国での“世界平和の日”記念式典に出席>

9月19日、キン・アウン・ミエン上院議長およびその一行は中国で開催される“世界平和の日”記念式典に出席のためヤンゴン国際空港を出発した。この短い記事は上記デモとの関連で取上げたが、同時にミャンマーの国際化が見て取れる。



<04:世界周遊クルーズ会社が2014年の寄港地にヤンゴンを追加>

乗客数382名の豪華客船「シルバー・ウィスパー号」は2014年1月6日にロスを出航し、ハワイ・サモア・トンガ・NZ・シドニー・上海・日本・シンガポール・インド・中東・スエズ・トルコ・ギリシャ・トルコを経由して4月30日に最終港スペインのバルセロナで解散する合計113日間の船旅を予定している。 しかし、最近のミャンマー人気を反映して途中で3日間のヤンゴン寄港を決定した。その旅程は合計29カ国で、途中で立ち寄る港は54に上る。

ちなみに113日間の一人当たりのクルーズ費用は$54,550-$160,450の範囲で、乗下船地まで・からのビジネスクラス航空運賃・その他バンコクからカンボジアへ移動する航空運賃・アンコールワットでの夕日見学・5星ホテル宿泊費用など企画された陸上経費すべてが含まれている。



<05:先週一週間の外電をどう読むか?>

それはほとんどスーチー議員の訪米記事(を参照)で埋まっていた。米国内でのスーチー議員に対する歓迎は民主化のヒロインとして熱を帯び国際的スター並みの歓迎振りである。一方、テインセイン大統領は今週NY入りし国連本部での年次総会に出席する。テインセイン大統領の知名度は国際的にはあまり知られておらず、スーチー議員とは雲泥の差がある。その辺りの温度差を恐れるワシントンDCのシンクタンクは国家元首でもないスーチー議員をホワイトハウスに招き、テインセイン大統領を招かないようなことがあれば、ミャンマーの民主化に影を落とす危険があると警告する。テインセイン大統領の面子を十分過ぎるほど斟酌して華を持たせよという警告である。テインセイン大統領の米国滞在は3日間。スーチー議員は17日間。そしてスーチー議員にはその間に約100件の行事が予定されている。そのたびにマスコミの取上げ方は米国の国内版としてよりも国際的ニュースとして増幅されるものと思われる。そしてその名声も東海岸から西海岸まで民主化のヒロインとして最高潮に達するものと予想される。

その人気が今、オバマ大統領、ヒラリー国務長官、米国議会、主要議員、そして国連の潘基文事務総長にとっても頭痛の種となっている。シンクタンクの警告どおりテインセイン大統領への配慮をどうすればよいかということである。スーチー議員を賞賛する発言にはみな気をつけるようになった。スーチー議員の賞賛だけだと片手落ちになるということである。“この民主化にはテインセイン大統領の指導力がなければミャンマーの民主化はここまでこれなかった”と必ず付け加えるのである。この名声の差はスーチー議員が一番心得ており、彼女は率先してそういう発言に努めている。バンコクでの不協和音から学習したものであろう。

この不協和音から教訓を学んだ人物がもう一人いる。当事者のテインセイン大統領その人である。自分の懐刀である大統領府のアウン・ミエン大臣を先発隊として米国に送り込み、米国議会におけるスーチー議員の最高栄誉賞であるゴールド・メダルの授与式に駐米ミャンマー大使とともに出席させている。そしてその懐刀の大臣に“スーチー議員の栄誉をミャンマー国民同様にミャンマー政府も誇らしく思っている”と声明を発表させている。これは明らかにテインセイン大統領の布石の一手と思われる。

あとはホワイトハウスの大統領執務室にスーチー議員を招いて二人だけの非公開会談を行ったオバマ大統領がテインセイン大統領にどういう配慮を示すのか、あるいは示さないのか、そして到着早々にスーチー議員を米国国務省に招いたヒラリー国務長官がテインセイン大統領にどういう対応をするのか、同様に国連の潘基文事務総長もスーチー議員への対応と比較して、試されることになる。



<中国の対ミャンマー戦略>

米国行き直前のテインセイン大統領の日程を詳細に見ていくと、別の戦略が見えてくる。それは中国のタイミャンマー戦略であるし、テインセイン大統領の対米国戦略である。先ずは、対中国に限ったテインセイン大統領の先週の動きを追ってみたい。

■9月14日:中国人民代表大会の呉邦国常任委員会議長率いる代表団が首相府にテインセイン大統領を訪問。これは今年2月に同議長の招待で中国を訪問したシュエマン下院議長への答礼という形をとっている。チャオピュー深海港からのガスパイプライン敷設など多岐にわたる両国間の友好関係を戦略的に強化する狙いで今回は各種の相互協定書を締結。そして南寧市で開催されるアセアン・中国エキスポへの大統領の出席を正式に招聘。

■9月18日:テインセイン大統領の特別機は代表団を乗せネイピードを出発し、中国雲南省の省都クンミン(昆明)に午前10時10分に到着。駐ミャンマーの中国大使を初め雲南省のトップ高官が勢揃いして出迎え、歴史的に関係の深いミャンマーとの友好関係強化を双方で確認している。午後2時、特別機はシェンシー(陜西)省の省都シーアン(西安)に到着。一行は兵馬俑を初め歴史博物館を見学。夕方は陜西省からミャンマーへの投資が主要話題で、特に中小企業の参入がトップ間で話し合われた。

■9月19日:唐朝時代の仏教寺院および農業森林大学のハイテック実験農場などを見学。午後シェンチェン(深?)特別市に移動。

■9月20日:香港の対岸にある中国初の経済特区であるシェンチェン(深?)特別市の国際コンテナ・ターミナルおよび通信関係の優良企業見学。夕方ナンニン市に到着。

■9月21日:テインセイン大統領が広西壮族自治区のナンニン(南寧)特別市で開催された第9回中国-アセアン・エキスポの開幕式に出席。テインセイン大統領がアセアン諸国を代表して、主催者中国側を代表して習近平国家副主席が開幕の辞を述べた。また両代表は個別に会談し、ミャンマーに対する中国からの投資を含めて広範囲にわたる両国の協力関係強化が話し合われた。そして副首席からは両国で合意したプロジェクトは誠意を持って遂行したいと、テインセイン大統領が一方的に中止させたミッゾン水力発電ダム計画を意識したような発言もあったが、特に個別のプロジェクト名は出していない。

■9月22日:午前、テインセイン大統領とその一行は南寧からネイピードに戻った。
テインセイン大統領が大統領職としての実務を淡々とこなしているのに、スーチー議員の場合は民主化のヒロインとしての華やかな個人的式典が主となっている。その温度差を利用して中国側のミャンマー攻略戦略と同時に、“アメリカ”という名前は一言も出てこないが中国側の対米国戦略が見えてこないだろうか。次の国家主席が約束されている習近平副首席がアセアン諸国の首脳、そしてミャンマーのテインセイン大統領接受のホストとして直々に応接している。これは米国との綱引きであり、碁石で言えば肝心要なところに布石が打たれたと見るべきでは。その辺りを感知したワシントンのシンクタンクがスーチー議員だけに浮かれていると大変なことになるとホワイトハウスの主に、そして米国議会に釘をさしたのではないのだろうか。

その辺りを対比しながら米国におけるスーチー議員の行動を見て欲しい。



<スーチー議員の動き>

スーチー議員は9月16日(日)随員3名とヤンゴンを出発。同じ飛行機に新任のデレック・ミッチェル米国大使が同行していることが判明。17日(月)ワシントンDC到着。

ミャンマー政府はスーチー議員到着数時間前に500名以上の大統領特赦を発表。

これはタイミングといい、人数といい、スーチー議員の名声を利用して米国のミャンマー製品輸入禁止を解除してもらいたいミャンマー政府の強いメッセージで、大統領選挙を50日以内に控えたオバマ大統領に対する共和党を含めた米国議会を説得しやすい援護射撃ととるべきでは。

スーチー議員は合計17日間の米国滞在中に約100件の行事をこなす予定、そしてワシントンDC滞在は4日間。

■18日(火)午前ヒラリー国務長官と会談。VOA・Radia Free Asia局の独占インタビューにそれぞれ応じる。米国議会が設立したシンクタンク米国平和研究所でのAsia Society Eventで演説。ヒラリー国務長官が露払い役でスーチー議員を出席者たちに紹介。これまで経済制裁解除に慎重すぎるほど慎重だったスーチー議員が米国の輸入禁止緩和の動きに賛意を表明。これは多分にテインセイン大統領の意向を反映したメッセージとなる。

■19日(水)米国両政党合同の議会で議会最高の栄誉賞ゴールド・メダルを受賞。受賞スピーチでもスーチー議員はミャンマーの民主改革はテインセイン大統領の率先した行動があったからこそ、ここまで来れたと同大統領への配慮を滲ませている。同日テインセイン大統領の側近中の側近アウン・ミエン大臣もヒラリー国務長官と会談、そしてスーチー議員のゴールド・メダル授賞式に出席し、マスコミに対しては「同胞がこのように栄えある賞を受賞したことにミャンマーの全国民が喜んでおり、ミャンマー政府も誇りに思っている」とスーチー議員を絶賛した。これはテインセイン大統領の意向を反映したコメントであることは明白で、前回のバンコクで流れた両者の不仲説を大きく改善する展開となってきた。例えて言えば、民主化という名前の両輪がシンクロして作動し始めた感がする。オーバルルームといえば通常は各国の大統領ないし首相クラスを迎える大統領執務室である。オバマ大統領とスーチー議員はこのオーバルルームでレポーターはもちろんビデオも入れず非公開の会談を行った。カメラでの記念撮影は最初の数分間に限られた。アジアの一国の一議員をここに招くということは異例のことである。したがって、ファーストレディのミッシェル・オバマの招待とも噂されている。とにかく、ホワイトハウスの広報係が情報を提供してくれないのである。これはテインセイン大統領を刺激して逆効果にならないよう目立たないことを最優先して神経質なほどホワイトハウス側が配慮したものといわれている。その直後スーチー議員の勇気と民主化闘争を称え、それに追加するようにテインセイン大統領の進める民主改革を高く評価するあくまでもバランスを考慮した声明を広報担当はやっと発表した。この二人は今回が初対面だが、二人ともノーベル平和賞受賞の仲間でもある。同日、ホワイトハウスはテインセイン大統領およびシュエマン下院議長に対する米国ビザ発給凍結を解除。

■20日(木)米国国際アムネスティ本部でスーチー議員は他5名のミャンマー人反体制活動家とともに受賞。そしてワシントン近郊に住むミャンマー人難民との集会を行った。

■21日(金)国連本部で潘基文事務総長と会談。同日アウン・ミエン大臣も事務総
長と会談。

今週のメイントピックスはテインセイン大統領の国連登場で、これは目が離せない。


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