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<ミャンマーで今、何が?> Vol.118
2014.10.29
http://www.fis-net.co.jp/Myanmar
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■ミャンマー船員
・01:ミャンマーの船員がマレーシアで大量に足止め
・02:これらの船員に救いの手はないのか?
・03:女工哀史ではなく船員哀史
・04:救いがあるのか、あるいは不条理な仕置きが待っているのか?
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ミャンマーは資源に恵まれた国である、とはミャンマービジネスの常套句だ。だが、それは主に米などの農産物、チークなどの森林資源、ヒスイ・ルビー・ゴールド・レアメタルなどの鉱産物、オイル・天然ガスなどのエネルギー資源を指している。ところで、もうひとつ、肝心な資源を忘れていませんか? というところで、人的資源に思い当たる。
その安い労働力を求めて外資が殺到した。当然ながら、需給バランスが崩れ、コスト上昇を招き、見通しの甘い経営者は淘汰されていく。10月1日付第114回のメルマガは、その典型的な失敗例であった。
今回は雇用者側から見たもうひとつ別のケースを見てみたい。
国内に外資が殺到し、雇用されたとしても、賃金は高が知れている。それなら海外に雄飛しようとする若者たちがいる。まったくの未経験でも、国内の2・3倍は稼げるという。そのウワサを聞きつけて若者たちが集まってくる。それが船乗り稼業で、ミャンマー船員である。ある船員の体験談を追いかけてみよう。
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01:ミャンマーの船員がマレーシアで大量に足止め
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この若者は外国船の船員になるのが夢であった。この若者の両親は外国籍貨物船に乗せてもらうためにヤンゴンの船員雇用会社に約3.3百万チャット(円貨約33万円)を支払った。だが彼は、自分の仕事が外国の港近くで溶接工の見習いとして終わろうとは想像だにしなかった。
月給は900リンギット(約300米ドル)で、これでは両親が背負い込んだ借金を返済するどころか、東マレーシアのサラワク州にあるシブでの生活費をカバーするのがやっとである。
マレーシアで3ヶ月が経過したが、この若者はシブでの仕事と生活は極度に不快だと語る。彼は近くのオイルパーム・プランテーションで働く一人のミャンマー人のケースを語り始めた。その仕事から逃げ出そうとしたら、ヤクザまがいの男に死ぬほど殴られたという。大半の人はこの過酷な労働には耐えられない。可哀想だが、何一つ救いの手を差し伸べることが出来なかった。自分自身が彼と同じような境遇にあったからだとこの若者は語る。このプランテーションのオーナーは、逃亡すれば殺すと脅迫している。しかし、祖国での借金を抱え、ミャンマーへの帰国費用もない状態では、この若者に残された選択肢はなく、乗船する船がこのシブ港に到着するのを待つ以外にない。これは彼一人の話でなく、シブには乗船する船を待つミャンマー人が何百人も留め置かれているという。
中には6年間も待っているという。そしてチッポケな作業場、工場、漁船、建設資材を運搬する小船の仕事で食い扶持をつないでいる。全員が過酷な状況だ。今のところ、乗船のチャンスはなく、国に帰ることも出来ない。その代わりわずかの賃金で働き、両親の借金を返済する工面をしなければならない。だが、船乗りになる夢を棄てたわけではない、と若者は語る。
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02:これらの船員に救いの手はないのか?
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船員になるのはミャンマーでは憧れの職業であった。しかし、過去2年間、無知な若者と家族の夢を搾取する商売が台頭してきた。何千ドルもの金を船員雇用会社に支払えば、外国船で高給を稼げるという間違ったウワサに多くの人が飛びついた。
その結果、ミャンマーの海運行政局によれば、船員登録した人数は98,000人以上となり、実際に乗船しているのは30,000人に過ぎない。未経験の新米の船員にとっては非常に不利で、経験ある船員は希望すると同時に乗船が叶っている。
ミャンマーには二つの労働組合があるが、この問題を解決できず、非難の対象となっている。困窮状態の会員を助けるどころか、会員を募集して基金を増やすことにだけ関心を持ち、海外からの支援を期待しているとの声もある。
その事務局長は、船員雇用会社と揉め事があれば、交渉の手助けをし、船員が海外に向かう前には訓練も施しているという。船員雇用会社から騙された船員は裁判に訴えることも出来るが、大半は訴訟費用を準備できず、自分たちの権利も無知で知らない。しかも、ヤンゴン以外の遠方の船員家族は交通費もかかるので、結局はヤンゴンの船員雇用会社に支払い金の返還を求めるのは難しいとあきらめている、と他人事のような説明をする。
しかも、多くの船員雇用会社がサービス・チャージの名目で船員から搾取していることを認めているのである。それだけではなく、これらの船員雇用会社は配乗時に船舶のオペレーターあるいはオーナーから規定のコミッションを受取り、結局はひとつの仕事で二重取りしていることになる。そこで海運行政局は2013年7月17日に、船員にサービス・チャージを課すことは違法で、船主からのみ徴収するよう通告を発したが、実際にはその通告後、このサービス・チャージがさらに値上がりし、300ドルから現在は500ドル以上になっているという。
そして行政当局もこの事実を熟知しており、船員雇用会社は両者から稼げるために、乗船可能な人数以上に可能な限り船員を集めようとしていると語る。
海運行政当局も、船員の権利を保護すべき海運労働組合も、自覚があまりにもお粗末である。新米の船員や、船員の家族が無知なのではなく、それ以上に無知なのは彼らそのものである。
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03:女工哀史ではなく船員哀史
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ある船員雇用会社が語るには、荷役を完了した船が予定より早く出港することはありうる。その場合には、船が港に戻ってくるまで待たねばならない。だが、問題は乗船する船が実際に手当てされていないのに、仕事があると嘘をつく会社があることだ。契約で決められた本来乗り込む船名が違っていれば、会社にクレームすべきだが、その権利を知らない船員が多い。一方、国際労働機関(ILO)に救いを求めたミャンマー船員が、問題を国際機関にまで露呈したとして、海運行政当局から証明を再発行してもらえず、結局は船員生命を閉ざされてしまうのが、過去の通例であった。
ミャンマーの大半の人々は、権利などと言ってお上に睨まれるのを最も恐れている。特に学問を受ける機会のなかった貧しい人たちの多くがそうだ。日本なら、“出るところに出よう”、“警察に行こう”と簡単に言うが、こちらの常識は、出るとこに出れば、そこからも見かじめ料を取られる機会を悪代官に与えることになるので、決して届け出ない。
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04:救いがあるのか、あるいは不条理な仕置きが待っているのか?
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実は、この記事はミャンマー・タイムズ今週号の記事である。表題は「ペテンにあった船員が、これは単に人身売買だ、と声を上げる」となっているが、弱者の法的保護が不十分なお国柄で、登場人物の名前を実名なのか、特に仮名を使用したと断っていないところが気になる。
そして登場人物は、船員になりたいとの夢を追って、最後はシブの港で立ち往生してしまうミャンマーの若者たちが、いまでも次から次に送り出されてくる現状に何ひとつ対策を立てない、ミャンマー政府と船員組合に大きな怒りを露わにしている。この報道が実名であれば、当局の仕返しが恐ろしい。
あるミャンマー人の二人は、ミャンマーへ帰国するめどをつけたが、雇用会社の代理店が、その計画を警察に届けたので、現在は警察の目を逃れて潜伏中とのことだ。当然、正式書類は持ち合わせていないだろうから、飛行機での出国は不可能だ。すると陸路か、沿岸航路ということになる。今の時代に、そして今脚光を浴びているミャンマーで、安寿と厨子王の物語が展開しているとは時代錯誤もはなはだしい。だが、これは事実で、船員斡旋業のみならず、これとオーバーラップする話は、いろんな分野で、発生するものと思われる。当局の対応を含めて。
皆さまのケーススタディになれば幸甚です。
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