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<ミャンマーで今、何が?> Vol.106
2014.08.06
http://www.fis-net.co.jp/Myanmar
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■情報相と保健相を更迭
・01:情報省と保健省のトップを更迭
・02:二つの問題
・03:攻撃型か防御型か?
・04:したたかなテインセインが勝負に出る
・05:軍事政権方式
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01:情報省と保健省のトップを更迭
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ウ・アウンチー情報相とウ・ペッテキン保健相の二人は本人たちの自由意志で辞任することがテインセイン大統領に認められたと7月29日大統領府が正式に発表した。それぞれの辞任の理由は何一つ説明されていない。その後任人事についても何一つ触れていない。
しかし、ミャンマーのしきたりでは、辞任が認められるという回りくどい表現は強制的に圧力を掛けて罷免したという意味である。
テインセイン大統領の現政権は“第三の波”と称する汚職撲滅運動を進めているが、旧軍事政権時代から各省庁に巣食った汚職体質をクリーニングするのは内部の抵抗が厳しいのかなかなか捗っていない。そして8月4日には新たに大統領令が発令され、2014年2月25日付大統領令で立ち上げた“アンチ・ブライバリー(賄賂撲滅)委員会”の名称を“アンチ・コラプション(汚職撲滅)委員会”に変更するとしている。
この罷免の裏には二人の大臣が汚職撲滅キャンペーンの対象になっているのか否かの情報は何一つ流されていない。そのあたりの説明がないので、逆に内外のマスコミではさまざまな憶測を伝えている。
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02:二つの問題
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2011年に名目上は民政に移管したが、実際はその後も新政府を支配している軍事グループのひとりがアウンチー情報大臣であった。その中でも、彼は穏健派で目立たない態度をとり続けてきたとの一般的評価である。むしろイエトゥ副大臣のほうが大統領の広報担当官となり、メディアに対してずけずけとものを言い、スポットライトを浴びてきた。
テインセイン大統領の新政府は約50年間も続いた軍事政権時代のメディア検閲を廃止したが、最近は国家機密などその他の法律に違反したとして4名のジャーナリストに厳罰の判決を下したとして国内外のジャーナリストから激しい非難を受けている。
最近の閣僚の罷免は6月にも行われ、宗教問題担当大臣が閣僚を辞めさせられ、その後、汚職と騒乱罪で起訴され、同時にラカイン州の首席大臣の地位も仏教徒とイスラム教徒との間で騒動を生じさせたとして剥奪された。
2012年に発生した多数派仏教徒と少数派イスラム教徒の紛争では280名の生命が失われ、14万人の人々がホームレスとなり、国際社会からの厳しい非難を引起している。これは政府が過激派の取押さえに失敗したからだとされている。
そして追いかけるように、翌7月30日に後任人事が発表された。
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03:攻撃型か防御型か?
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その日の議会に、いまでは改革派内閣の顔ともなった大統領広報官のイエトゥ副大臣をアウンチー元情報相の後任に、そして保健省のタンアウン副大臣を同省のトップに指名するとのテインセイン大統領の声明書が提出された。政府系メディアも辞任または新任の説明はしておらず、どのマスコミもアウンチー氏およびDr.ペッテキンのコメントは取れていない。国会議員一人ひとりは大統領の指名に不服であれば、反対を表明できるが、この人事は何ら異議なく承認された。
先にも触れたが、罷免された二人の大臣は政府内でも目立たないことに徹していた。アウンチー氏は情報省のトップという役割であったが、政府の代表として国民に向き合うことも、ジャーナリストと対面することも一切なかった。イエトゥ氏が唯一ただ一人の事実上の政府の広報官として直接メディアに対応し、投資問題から外交政策まですべての問題にコメントしてきた。
元中佐のイエトゥ氏は2004年に情報省に入省し、テインセイン大統領の改革派政権内で情報省副大臣に昇格し、2013年2月には、新設された大統領広報担当のポストに指名された。
イエトゥ氏はフェイスブックの使い手としても知られており、政府や国防軍のニュースを流し、ミャンマーの現状および将来についても意見を述べている。
政府内部に大勢いる退役将軍と同じように、アウンチー氏は2010年に発足した民間政府に移管するまで、軍事政権と自宅軟禁中の反体制派アウンサンスーチー党首との連絡係を担当していた。メディア規制はアウンチー氏の監督下で大きく緩和されたが、この数ヶ月間ジャーナリストに対する弾圧で政府は広範囲にわたる非難を受けていた。
先月初め、ミャンマーのユニティ・ジャーナル紙のレポーター数名とCEOは軍事施設が化学兵器を製造しているとの記事掲載で、10年にもおよぶ刑期を宣告され、人権団体グループと外交団はあまりにも厳しい判決だと非難している。他のジャーナリストは名誉毀損で起訴された。
Dr.ペッテキンも2011年に発足した大統領の新内閣で保健相となり、これまで閣僚の中では目立たないようにしてきた。同省では、ミャンマー国内の健康問題に関するすべてを監督し、2月には医療救援団体であるMédecins Sans Frontièresをラカイン州から追放する決定を下した。
この決定は海外の監視団体から非難され、衛生状態の悪いキャンプにいた14万人以上が立退きに追込まれ、これは主に国籍を持たないイスラム教徒のロヒンジャーたちだが、多数派の仏教徒によって宗教暴力の攻撃目標とされてきた。
宗教関係省のサンシン大臣が罷免された6月20日の内閣改造は、大統領が不適格だと判断したので憲法の規定に従ってその大臣を罷免したまでだと政府は説明している。
専門家によれば、この政府説明は通常の大臣更迭よりも厳しい表現であるとしている。サンシン氏は現在汚職と騒乱罪で裁判に掛けられているが、同氏は無罪を主張し、自分は政治的な争いの犠牲になったと主張している。
同じく6月20日付の別の通告では、ラカイン州のラマウンティン首席大臣は辞任を認められ、その後任として前国境問題省の副大臣であったマウンマウンオン少将が指名された。
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04:したたかなテインセインが勝負に出る
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専門家はこの6月の内閣改造はラカイン州における多数派仏教徒と少数派イスラム教徒との宗教対立に対して、テインセイン大統領自身が事態の掌握を図る意図があると見ている。
このラカイン州の問題は過去2年間で、何百人という人たちが殺され、主にイスラム教徒である14万人以上の人たちが立退きを強いられた。この騒乱状態は政府の評価を貶め、他の多くに諸国および国連から厳しく非難されている。
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05:軍事政権方式
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前回、テインセイン大統領はレームダック(死に体)で、2015年の大統領選挙まで動きが取れないと解説したが、今回の内閣改造で、もう一つ確信したことがある。
それは、軍事政権方式ともいえるもので、大統領候補の選別だけでなく、内閣諸大臣の採用も優秀だと思われる人材を精査し、大臣なり、副大臣に登用する。そしてかなりの権限を与えて管轄事項のすべてを任せる。
もちろん、イエトゥ情報新大臣のように積極的に攻めに出る人材もいれば、前任者のアウンチー元大臣のように大過なく目立たないことに徹する人材も出てくる。どちらの場合でも、問題が表面化したらトップの首を挿げ替える。
今回のテインセイン大統領の方式も、自分を抜擢した闇将軍とまったく同一である。特にテインセインの場合は、これまで欧米の経済制裁解除という難題を解決するために、サプライジング方式を編み出してきた。いま、ラカイン州の宗教戦争、およびマスコミ対策で失敗すると今までの努力が水泡に帰す。しかも、2015年の行方が混沌としてきた。となれば、したたかなテインセインが真剣勝負を掛けてきたと見れないこともない。
しばらくは成り行きを見つめたい。
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